その日は、きっと何かがおかしかったのだ。
その日はたまたま、弟と一緒に買出しに行く約束をしていて、だからヨハンは十代の高校の校門で待っていて。
そんな日に限って、いつも言い寄ってくる後輩がしつこくて。
たまたまそれを…十代に見知らぬ男が言い寄っている様を、ヨハンが見てしまって。
だからその日は、きっと何かが確実に、おかしかったのだ。
修羅のような表情の弟に、ここまで引っ張ってこられて。正直何が何だか分からない。買出しに行くんじゃなかったのか。
学校の中に出戻ってどうする。夕飯どうすんだよ。ってか何で体育倉庫。埃っぽくて、好きじゃないんだけどな…。
などとさまざまな疑問が頭の中に浮かんだが、今のヨハンにおいそれと迂闊な質問をぶつけるのは、何だか怖かった。
「……ヨハン、」
何とか搾り出した声は、掠れていて。情けない声だ!何で、こんな、弟を怖いと思わなきゃいけないんだ。
けど、弟じゃなくったって怖い!目の前でネクタイを殊更ゆっくりと外しながら近づいてくるこいつを怖いと思わない奴なんているのか否いる訳がない!
「…なあ、ヨハン、」
再度の呼びかけにもヨハンが応じることはなく。外したネクタイで両手を後ろ手に縛られた。
あんまりな展開に、目を白黒させることしか出来ない。こめかみを、冷たい汗が伝うのを感じる。
後ずさる。けれど狭い体育倉庫の中では大して逃げ場なんてなくて。すぐに壁際まで追い詰められた。
かちゃかちゃという金属音にはっと見やると、ベルトを外して、スラックスを寛げていて。
眼前にヨハンのものを突きつけられる。何これ。何だこれ。どんな状況だこれ。
「咥えて。」
体育倉庫に入って初めて、ヨハンが言葉を発した。字面だけ見れば懇願の形だが中身は命令だ。
拒否という選択肢を与えないような、絶対零度の声。
固まる十代にイラついたのか、更にヨハンが続ける。
「舐めて、俺のイカせてみろよっつってんの。分っかんねーのかよ、兄貴の癖に。」
聞いたことのないようなヨハンの声に、更に十代は縮こまる。
そんな彼に、大げさに溜息を吐いて。ああもういいや、と心底イライラしたように吐き捨てて。
十代の前髪を引っ掴み、無理矢理咥えさせる。
「…!っ、んぐ…!」
入ってきた異物を押し出そうとしても、前髪を掴まれていて出来ない。
十代のことを物かなにかのように、乱暴に、ヨハンは自身で十代の口内を蹂躙した。
「んんっう、……ん、ん…っゃ、んう、う〜!」
確実に質量を増し、熱を帯びるモノが怖い。
けれど、拒絶も逃避もできない。受け止める、ことしか。
どれだけそうしていただろうか。ヨハンが息をつめる音が聞こえて、口内にどろりとした液体が容赦なく注ぎ込まれた。
たまらず、噎せかえる。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い!生臭い匂いが口中に広がって、吐きそうになる。
「なーに吐き出してんだよ。ったく。行儀の悪ぃ兄貴だな。」
次いで、いきなり胸を蹴られる。仰向けに転がされて、ああまだ彼の怒りは収まらないのだと知る。
頭の片隅で、ベルトが外される音を聞いた。ズボンが剥ぎ取られて、下半身が晒される。
後蕾に硬いものが当たる感触に、意識が浮上する。これって。まさか。だって、ヨハンと自分は兄弟で、っていうかそれ以前に男同士で。
「……ヨハン、なあ、俺、何かしたのか?…謝る、から、何かヨハンが傷ついたんなら、謝るから、だから、もう、止めよう?な?」
途切れ途切れに発した懇願に、けれどヨハンが返した答えは。
「やだね。」
悲鳴を上げたのか上げなかったのか、十代には分からなかった。
ただ、真っ白になるぐらいの衝撃が、身体を駆け抜けていって。遠くなる意識を歓迎したけれども、頬を走る痛みに引き戻される。
…叩かれた。ヨハンに、叩かれた。
身体の痛みと、心の痛みと、ああ、ごちゃまぜになって酷い気分だ。
上気した顔でヨハンは自分のことを貫いているけれど、ヨハンはこれで気持ちいいのかな。
自分がヨハンを傷付けたなら、ヨハンはこれで、この行為で満たされるのだろうか。これが己の贖罪となりうるのだろうか。
空しい気持ちを抱えたまま、それでも十代はヨハンに揺さぶられ続けるしか、なかった。
そうして、今度は後蕾にヨハンのものが注ぎ込まれる。
中に広がる熱いものを感じながら、十代はまた意識が遠くなるのを感じる。目の前にいるはずのヨハンの顔が、ぼやけて見えない。
―――ああせめて、彼が傷ついて泣いていないか…それだけ確認してから、寝たい、のに。
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あとがき。
これは酷いwwwwこれは酷いwwww(事実なので2回言いました)
4810祭閉幕チャットでhうろさんのリクを受けて書いてみた。弟ヨハン×兄十代、体育倉庫、ネクタイで拘束、鉢巻で目隠し…というリクの筈だったのに、
お前鉢巻どこへやった。影も形もない件。そしてこのヨハン口悪すぎるよ。確かにヨハンは口悪いけど物事には限度というものがあってだねはとさん。
サーセンちょっと鳥肉になってくる。
(08.06.01)