類稀なる美貌の、残酷なる魔女よ。
讃えよ、讃えよ。その名を、讃えよ。

無力なる人間共よ、我が名を讃えよ!





「無様だなぁああああァ、遊城十代ぃィいいいい?」
靴に従順にキスをする少年に、魔女―――ヨハンは綺麗な顔を醜く愉悦に歪めた。
白磁の肌に流れる、高級な翠玉で作られたかのような髪。淡い紫色をした花の髪飾りが翠を一層引き立てて美しい。
爛々と輝く瞳は髪と同じエメラルド。ながぁい睫に、唇には薄く紅を。纏うドレスは豪奢そのままに。
まるで中世のお姫様が絵本の中から抜け出してきたかのような、整いすぎて造りものめいたその容姿。
けれど綺麗な綺麗な殻の内を覗き見れば、彼女がお姫様などではないことは一目で分かる。
彼女は…そう。運命を、命を、感情を無限に玩ぶ、残酷極まりない”魔女”なのだから。

ここのところその魔女様は、一人のニンゲンにご執心だった。
魔女などいないと、魔法なぞあるはずがないと声高に叫び、断固として魔女の存在を否定する。
魔法の何たるかも知らない―――知ろうともしないニンゲン風情が何を、と初めは思っていた彼女だったが。
だが、壊しても壊しても立ち上がり、歯向かってくる彼に…折れない意志を灯して睨みつけてくる彼に。
端的に人の言葉で表すならば、恋をしてしまったのだ。綺麗で綺麗で、とんでもなく残酷な、恋を。



けれど、やっと認めさせた!やっと貴方は全ての真実を受け入れてくれた。恋が成就するって、こんな感じなのかしら。ああ、だったら恋も悪くない。
こんなゾクゾクする快感と暴走する享楽と果てしなく膨らむ支配欲なんて、めったに味わえるもんじゃない。
無能な癖に抗ってばかりの愚かな十代!さっさと認めてしまえばこんなに傷付くこともなかったというのに!ああでもそんなところも気に入っているの。
鳥籠から出ようと足掻いて足掻いて足掻くほどに傷つく、そんな無駄な努力を無限に繰り返す貴方も大好き!
でもでも、こうやっておとなしく素直に従う貴方も悪くない。いいえそう、愛していると言ったほうがいいのかしら!


「くっくくくく!これでもうお前は逃げられないぜぇえ?なんたって認めちまったからなぁ!魔法はあるんだって!”俺”は”い”るんだって!」
首枷から伸びる鎖をぐいと引き寄せ、彼の瞳を覗き込む。苦しげな吐息が彼の口から漏れたがそれだけ。反抗は無かった。
「そうだよなぁ、十代ぃ?言ってみろよ!魔女は…俺は”い”るんだよな!この事件はぜぇえええんぶ、俺の魔法の仕業なんだよな!」
「……は、い。いままでの…ことは、ぜんぶ…よはん、が…」
その最後の言葉に、魔女は十代の頬をひっ叩いた。乾いた音が響いたが、彼はその衝撃のままに少し顔を傾けただけ。
「言葉が足らねぇなぁ、十代。いいかぁ?今のお前はもう人間じゃない。俺の家具なんだ。
 家具風情が主の名を呼び捨てにしていいとでも思ってるんじゃねぇだろうなぁ。まさかそんなことねぇよなあぁ、十代ぃいい?」
男にしては細く頼りない肩を、高いヒールでがしがしと容赦なく踏みつけると、か細い謝罪が漏れた。
「すみ、ませんでした…よはん、さま…、」
「そぉそぉ。そーやってすなおにイイコにしてりゃあ、大事に大事に、可愛がってあげるぜぇえ!精々頑張って俺の機嫌をとるこったな!
 くっくっく、きーっひひひひ、きゃーっははははは!!」」

可愛がってあげる。その言葉に一片の嘘もありはしない。貴方が望むなら赤字で言ってあげてもいい。
でも、俺は、どこまでいったって魔女なのだ。
「今夜のディナーはどうしようか。十代がイイコだから、特別に豪勢なフルコースにしてやろうか!」
そう言うと、今まで無表情だった…否、無表情を『装っていた』と表現したほうがいいだろうか…十代の表情が微かに揺れた。
そうだよ十代。魔女のディナーは甘美で、享楽に満ち満ちていて、けれどとても恐ろしいもの!
「ワインカクテルを染める血は誰のがい〜い?サラダに添える眼は?スープに浮かべる脳味噌は?メインディッシュのステーキは?
 デザートも忘れちゃいけねぇよなぁ、いったい誰を林檎と一緒にオーブン焼きにしようか!う〜ん。悩むなぁ。俺には決められないなぁ。」
「…っ、よ、よはん、さま…、」
ディナーのアイディアを並べれば、かたかたと震えだす。ああ可愛い。もっと見せて。その可愛らしい顔を、もっと見せて!
「そうだ。折角だから十代。お前に決めさせてやるよ。なんて優しいんだろうな、俺って魔女はさ!家具に選択権を与えてやるなんて!
 ほらほら言ってみろよ。誰をどうやって料理してあげたいぃぃい?」
「それは…よはんさま、おゆるしを・・・それは…どうかそれだけは…!」
途切れ途切れに紡がれる、哀願。薄く涙の膜を張った琥珀の瞳に、魔女の顔は不機嫌に歪む。そう、主の恩寵を拒むなど、あってはならないこと。
全く!お前は俺だけの家具なのだから、俺だけを見て俺だけを喜ばせていればいいというのに。
あんなニンゲン共の為にそんな風に悲しむ必要なんてどこにもない。
「さっきも言っただろぉ?お前は俺の家具なんだッて!主に逆らうのかぁ?それとも俺の躾がまだ足りないだけか!そうだな、そうなんだな十代?
 分かった。いいぜぇ十代。やってやろうじゃねぇか。お前がディナーの献立をすらすら言えるようになるまで躾けて躾けて躾け直してやるよ。
 お前がダイスキなアイツラの名前を、すらすらとディナーの献立に載せられるまでなぁぁああ!」
「ひっ…う、あ……、うあああぁあぁぁああああァっッ!!」
響く断末魔は、狂宴への誘い。



壊して、壊して、壊してあげる。貴方が魂の底の底から屈服するまで。
そうして俺に永遠を誓ってくれたなら、そこは二人だけの黄金郷。
誰にも邪魔されない、二人だけの楽園。





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あとがき。

当サイト初となる注意書き付き文となりました。ナンテコッタイ。
当初はにょハン→ベアト、十代→戦人、にょ覇様→縁寿な十代サンドを書こうと思ったのだけれども、
BGMを超パーのテーマにしてたらヨハンが絶好調になってしまって覇王様の出番がなくなりましたナンテコッタイ。
とりあえずはとさんは全方位土下座確定。





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