「もう前みたいに、笑ってくれないの?」
ただ君の笑顔だけで、どこまでも飛んでゆけるような。
…そんな気がしていたのだと言ったら、君は笑うだろうか。
十代と共にいた時間は、長いとはいえない。
その長くない時間の中でも、楽しい事、嬉しい事のほうよりも辛い事、苦しい事のほうが多かった。
コブラの仕組んだデスクロージャー・デュエル、放り出された異世界。
そして乗っ取られていたとはいえ、十代を傷つけてしまった。
けれど何故だろうか、脳裏に残る十代の顔は、どれもこれも笑顔なのだ。
満面の。
朝日が冷たい大地に熱を与えていくような、そんな笑顔。
…でも異世界から帰ってきて、十代の笑みは変わった。
あんなに、眩しく笑っていたのに。
「…そりゃ、異世界で色々あったけど…って、元凶の俺が言うのも、変だよな。」
「ヨハンのせいなんかじゃねえよ。…俺が…全部、悪かったんだから。」
ユベルのことも、覇王のことも。
そう付け加えてまた、眉を寄せ笑う。
諦め?孤独?絶望?―――それとも、全部?
たまらなくなって、首の後ろに手を回して強引に引き寄せる。
やけにあっさり抵抗も無く腕の中に納まった彼に、また少しの悲しみを覚えて。
「そうやってお前は、ずっと、独りで立ってきたんだよな。」
「……。」
「それが当たり前だって…自分も他人も思い込むくらいに。」
ぎゅう、と彼を閉じ込める腕に力をこめる。
苦しかったのか、十代が咎めるように自分の名を呼ぶのが聞こえたが、
どうしても離す気にはなれなかった。
「なあ、十代。今は、いいよ。俺の手をとってくれなくても、構わない。」
あまりにも多くの事を背負った彼に自分の思いを押し付けるのは、酷い事のように思えた。
抱きしめられる十代はされるがまま、そして背中に手が回される気配もない。
でも、それでいい。…今は、それでいい。
「だけど十代…覚えておいて。世界中の誰がどう言おうが、俺はお前の味方だから。」
大好きも愛してるも、言えない。ただ、さよならだけを。
だけどもう少しだけ…もう、少しだけでいい。抱きしめさせて。
ヨハンは気付いていなかったけれど、
降ろされたままの十代の掌は。
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あとがき。
初ヨハ十。ヨハ→十でもヨハ→←十でもお好きな解釈をどうぞ。(相変わらず適当だな!)
おかしいな、ヨハ十も好きな筈なのにラブラブさせてあげられない(ドシリアス物書きの悲しい性質)
ブログ掲載:12/2
サイト掲載:12/8(加筆修正)