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1.ラムダちゃん叱咤激励編
とあるエピソードの終わりから
ずいぶんとまぁこっぴどくやられたものねー。やだぁ、そんな顔しないでよ。このラムダデルタちゃんが直々に励ましにきてあげたんだから!
…そんなのいらないって?あら。じゃあもうゲームはやめるのね?あれだけ強気の発言しておいて、なっさけない!
あぁ、あの子がアンタを選んだ理由が何となく分かった気がしたわ。同属嫌悪ってやつなのかしら。あの子とアンタは、よく似てる。
あ〜あ、ともかくこれでゲームは終わり!アタシもベルンもあの子も退屈へ逆戻り!
出来すぎたゲームってのも考え物ね。もっと長ぁく、ベルンと遊んでたかったのにィ。屑駒のせいで台無しだわ!
全くもう、ベルンったら相変わらず駒を見る目がないんだから。そんなうっかりさんなところももちろん愛してるけど!
ベルンもかわいそうだけど、他の駒もかわいそうだわ〜。もうお払い箱なんて。もっと色んな遊び方ができたのに、あ〜ぁ、勿体無いわ〜。
駒をここまで並べたあの子もかわいそう。最後までゲームを進められたっていっても、これじゃあの子も楽しくないわね。
なぁにぃ、その目は。ホントのこと言っただけじゃないの。
文句があるんならゲームに勝って、あの子を屈伏させてから言いなさい。今のアンタが何言ったってみっともないだけだわ。
……。ふぅん?続けるのね、ゲーム。でも勝てる?あれだけめちゃめちゃにやられておいて。
どこから考えていいのかも分かってない癖に。
うふふ、そうやって根拠もないのに強がってみせるところもそっくり。昔のあの子を見てるみたい。
…何でもないわ、独り言よ。
アタシはあの子の側だから、ヒントはあげないわ。代わりにはならないかもしれないけど、少し昔話をしてあげる。
どうしてアンタがこんな酷いゲームにぶち込まれたのか。…それを、教えてあげる。
きっと…いえ、『絶対に』。やる気が出るわよ。絶対の魔女、ラムダデルタの名においてそれを保障するわ。
tips 『魔女の退屈』 を 入手 しました
2.tips part1
tips 『魔女の退屈』
「ひっどい顔してるわねー。ベアトが心配するわけだわ。」
「………ラムダ、デルタ。」
書斎の机に突っ伏していたバトラが、のろりと顔を上げる。
半ばまどろんだような、酷く虚ろなその表情は、かつての彼が浮かべていた表情のどれとも違っていた。
例えば従兄弟たちに見せていたような、くすぐったくなるような笑顔とか。
例えば父親に見せていたような、拗ねたような表情とか。
例えばベアトリーチェに見せていたような、殺意と敵意だとか。
例えばあの雛に見せていたような、愛に満ち溢れた顔だとか。
それらを全部突き抜けてしまったかのような彼が浮かべているのは、なら、一体何なのだろう。
彼女には、ラムダデルタには分かる。彼女に限らず魔女という生き物は、”それ”を一番恐れているのだから。
「やだ、次のゲーム、まだ作ってないの?また砂糖吐きそうなゲーム作ってるわよってベルンに教えてげんなりさせたかったのにぃ。」
書斎に散らばる羊皮紙は、どれも白紙。新しいゲームの片鱗すらも伺い知ることは出来ない。
以前ならば威勢よく、今作ってるんだよ!とすぐさま反論が返ってきたものだが。彼は、俯き押し黙ったままで。
「ねぇ。どうして筆が進まないか。当ててあげましょうか?」
「……、やめろ、」
逃げるように、バトラが頭を抱え込む。答えが確定されることへの恐怖。
頭のどこかでは。心の奥底では分かっていても。分かりたくない、感じたくない、認めたくない。
それは、その感情だけはあってはならない筈なのに。
「アンタはね、要するに飽きちゃったのよ。幸せなだけの物語に。」
陽気な声で告げられた答えに、バトラの肩がびくりと揺れた。恐れていた、けれど分かりきっていたであろう答え。
領主の指輪を取り戻してから彼はずっと、カケラの世界を幸福で満たそうと物語を紡いでいた。
それはそれは、愛に満ち溢れた物語。血塗られた島の面影は、最早そこにはなかった。
―――しかし、それだけで魔女たる彼の心が満たされる筈が、無いのだ。
「甘いものだけじゃ、人は生きられない。確かに甘いものは、おいしいわ。けれどそれだけ食べ続けたら、胃がもたれるに決まってる。」
微かに震えるバトラの背を、優しく抱き締める。紅い髪に埋もれた耳に口を寄せて、睦言でも囁くかのように、そっと。
「辛いもの。苦いもの。人の苦しみ、悲しみ、痛み。恐怖、悲鳴、憎悪。そういったものが、アンタを満たせる。…幸せだけじゃ、
人は生きていけないのよ。」
「………俺に。ベアトと同じ過ちを、繰り返せって、言うのか。」
「そうしなければ、アンタは死ぬわ。退屈は魔女を殺す唯一の毒。それに殺されたら、このカケラの世界はどうなるのかしらね?
…アンタの愛するベアトリーチェは、どうなるのかしらね?」
我ながら意地悪な問いかけだと、ラムダデルタは思う。けれど、これが一番効果的だろう。
この優しすぎる魔女は、こうでもなければきっと壊れてはくれない。
「親族の駒が嫌なら、アタシが適当に駒を見繕ってきてあげてもいいわ。…この島にもう一度、惨劇を。」
びくりと身を強張らせて動きを止めたバトラの横顔を窺う。そこには確かに、魔女が”い”て。
「さぁ、ペンを取りなさい、無限の魔術師。…ゲームを、始めましょう?」
3.ラムダちゃん指南編
tips 『魔女の退屈』 読了後
分かった?このゲームはね、暇潰しなのよ。あの子…バトラの。まぁ、アタシとベルンもついでに楽しませてもらってるけど。
つまりアンタは。アンタとそのオトモダチは。…退屈凌ぎのための、体のいいオモチャってわけ。
オモチャがどうなろうと、遊ぶ側は知ったこっちゃないわ。泣こうが、壊れようが、そんなの知ったこっちゃない。
だから痛めつけられる。手を引きちぎって、足を切り裂いて、首を挿げ替えて。
そんなことしたって、別に心は痛まないもの。オモチャなんだから。
悔しい?だったらゲームに勝ってみなさい。自分がオモチャでないってことを、証明してごらんなさいよ。
今のままじゃ一方的過ぎて、ゲームになんないもの。
アタシたちはね、『ゲーム』が見たいの。殺して、殺されて、そういう『ゲーム』が見たいの。
ワンサイドゲームも…それはそれで楽しいけど。もっとこう、スリルが欲しいのよね。
バトラは今、アンタの事を対戦相手…プレイヤーとして認識してない。都合のいい、ただの駒。オモチャとしてしか見てない。
まずは考えられる、戦えるって事を示しなさい。どうやって?…はぁ、そんぐらい自分で考えなさいよー。
忘れてるようだから言っとくけど、アタシ、アンタの敵なんだからね!
でもまぁ、やる気は出たでしょう?ふふん、お礼はいらないわよー。アタシが楽しむためだもの。頑張って頂戴よね。
そうそう、今度ベルンに、バトラが戦った過去のゲーム。見せてってお願いしてごらんなさい。機嫌がよければ見せてくれるかもしれないわ。
で、第2のゲーム見ましたよってバトラに言うの。あぁ、第6のゲームでもいいわね。かっこよかったですよー、って。
くすくす、きっと半狂乱になって泣いちゃうから!その状態だったら、勝てるかもしれないわよ?
あの子ね、あんななりして意外と脆いから。そこもおもしろくて気に入ってるんだけど!くすくす!
tips 『黒のキング』 を 入手 しました
4.tips part2
tips 『黒のキング』
「どうだ、あの駒。…まだ遊べそうか?」
書斎を訪れたラムダデルタに、ゲーム盤から目を離さずバトラが問いかける。
一手進めては戻しを繰り返し。盤の最終調整に入っているようだった。
そこにはかつてのような、慈悲や愛は存在しない。ただただ相手を追い詰めるためだけの、布陣。
「バッチリよー。ちょっとつっついたらやる気でたみたい。感謝してよねー?」
「そりゃあ良かった。ゲームが無駄にならずにすんだな。ありがとうよ、ラムダデルタ。」
その顔に、この間まで彼を支配していた退屈は見当たらない。
黒のローブを靡かせて、死体を踏みつけて、返り血を浴びながら…彼は、生きている。
「結構けしかけたつもりだから、今度はワンサイドゲームになんないといいわね。…つまんなかったでしょ?」
「第2のゲームのベアトの気持ちが、今なら分かるぜ。アレは、手ごたえがなくてつまらないかったから八つ当たりしたんだ、ッてな。」
盤上から黒のキングをつまみ上げて、空中へ放り投げる。
漆黒の駒はくるくると宙を舞い、再び魔女の手の中へと収まった。
「あんたの言った通りだな、ラムダデルタ。」
「んー?」
「人は幸せだけじゃ、生きていけない。」
「…そんなこと言ったかしら?でも全く、その通りだわ。」
だって幸せだけで生きていけるのなら、何故ホラーやミステリーが存在するのか。其処に住まう自分達が、存在するのか。
ニンゲンとは、全く複雑怪奇な生き物だ。それが魔女ともなれば、尚更。
「でも今度、前みたいなゲームを作ることがあったら。きっと素敵な物語になると思うんだ。」
「そしてそれも、やっぱり飽きるのよね?」
問いかけにバトラは一瞬きょとん、とした顔を見せて。それからくつくつと笑い出す。
魔女の釜の底のような、不気味な笑みだった。
「…違いねェや。」
next game start?
始まりません。ゲーム盤構築はカプリチオで懲りました。無理です。
脳内設定としては事件後の六軒島に潜入した大学のミステリー研究会の面々が不可思議な猟奇殺人に巻き込まれるとかそんな系
登場人物は割と設定固まってるが長くなるし誰得なのでカット。名前まで考えてないし。
このお話のバトラさまは外道だけどベアトのことは愛してます。
…赤で言えよって?そんな無粋なこと俺がするわけないジャマイカ