暴力・流血描写が含まれておりますので、苦手な方プラウザバックプリーズ。
何でもどんとこい!な勇者様はずずいっと下へどうぞ




























分からずやのお前に分かってもらうには、どうしたらいいかなぁ。





意識の覚醒は唐突に訪れた。ぼやける視界に映る景色と身体の痛みが、変わらぬ現状を伝えてくる。
頭上で一纏めにされた手首から伸びる鎖が、十代の身体を吊るし上げていた。せめて足が地面についていれば。そうしたら少しは楽なのに。
最初の内はなんとか足がつかないものかともがいてみたが、全く徒労に終わった。それどころか手首や肩に余計な負担が掛かっただけ。
随分と長いこと吊るされているせいで、もう微かな動きすら苦痛に繋がる。
そっと、そぉっと息をして。じっと動かず、ただひたすら耐える。彼に出来ることは、最早そのぐらいしか残されていなかった。

しかし、カツン、と遠くから響いてくる足音に呼吸が跳ねる。
瞬間ぎしりと全身に走った痛みに顔を顰めて、それでも何とか顔を上げて、部屋の唯一のドアを睨み付ける。
程なくして、耳障りな音とともにドアが開く。この部屋に入ってくる人物なんて、そう、一人しかいない。
閉じ込めて、吊るし上げた挙句に痛めつけて、それでも愛しているのだと囁いてくる、狂ってしまったひと。
蒼の瞳が愛おしげに細められる。口元には柔らかい笑みを佩いて、けれどその実彼は笑ってなどいない。
「十代。」
「ヨハン……、」
搾り出すように十代が彼の名を呼ぶ。呼びかけに、彼はことり、と首を傾げて。
「一応聞いとくけど。どう?俺の傍にいる気になった?」
もう言葉を紡ぐことすら面倒くさくて、ありったけの敵意を込めて睨み付ける。
射抜く視線に、ヨハンはやれやれ、と大げさな所作で肩を落として。
「そっかぁ。まだ駄目かぁ。粘るよなぁああ、お前もさぁ。さっさと言っちまえよ、俺のものになるって。そしたら楽になれるぜ?
 辛いだろ?痛いだろ?苦しいだろ?もう嫌だろ?こんなこと。な?」
白い手が、十代の頬を包み込む。ぞっとするような冷たさに思わず身を捩った。ぎしり、と身体が軋む音。
首を振って彼の手から逃れると、ふん、と至極つまらなさそうな声が聞こえた。一拍置いて、頬を思い切り打たれる。
「だからさぁぁ、そういう風な態度取るからいけないんだって。何で分っかんないかなぁあぁ。犬だって叩いて躾けりゃ覚えるってのに。」
「…生憎と俺は、犬みてぇに従順な性格じゃないんでな。」
憎まれ口を叩いてやると、彼は呆れ顔で口の端を吊り上げた。笑っているけど笑っていない。冷たい、冷たい色を宿した蒼の瞳。
「そこまで言うんだったら、もう容赦しなくていいよな?今までちょっと手加減してやってたけど、もういいや。もう知らない。
 お前が分からず屋なのがいけないんだからな。」
残骸が散らばる部屋の中を見渡して、ヨハンはあるものに目を留めた。にやりと笑ってそれを手に取る。
握り締めれば、鋭利な感触。…掌ほどの大きさの、酷く綺麗な硝子片。
値踏みでもするかのように十代の身体を頭から爪先まで見遣って…まろやかな線を描く太腿に、切先を突き立てた。
「ひッ!あ、…っ、っぐ…!」
透明な硝子片が、流れ出たものに染まり紅く光る。
痛みに震える十代に見向きもせずに、ヨハンは違う硝子片を手に取った。元は何かの器だったのだろうか。微かに青く紋様が刻まれた破片。
愛おしげに、労わるように、欠片に触れるだけの口付けを落として…そうして唐突に、乱雑にそれを十代の脇腹に容赦なく穿った。
衝撃に、見開かれる十代のオッドアイ。揺らぐ二つの色に、ヨハンは満足そうに微笑んで。―――また別の硝子片を、手に取った。
後ろに回って、痛みに震える十代の背中を、ゆぅっくりと、撫ぜて。
「怖い?十代。俺が怖い?止めてほしい?」
「……っ、」
「黙ってちゃ分かんないぜぇええ、十代ぃぃい。ほらほら言ってみろよ、怖いんだろ!止めて欲しいんだろおぉお!?言えよ、言ってみろよおおお、
 止めてくださいってさぁあああああ!!」
「……っ…!…、や、やめ…!!」
その言葉が終わらないうちに、ヨハンは十代の背中に三つめの硝子片を打ち込んだ。これはおまけ、なんて甘ったるい声で囁いて、
続けてもう一つ肩口に。
体のそこここから結晶を生やした歪で、それでいて美しいオブジェ。ぽたりぽたりと流れ出る紅がそれを彩って。
「洗脳だの暗示だのそんな不確かなものに頼りたかない。俺が欲しいのは”絶対”。愛じゃなくても構わない。お前が”絶対”に俺の傍にいてくれる。
 それだけでいい。だから、お前を恐怖で支配してあげる。だってそれが一番確実で、手っ取り早いからな。」
「…っ、狂ってる…!」
その言葉にヨハンは、不気味なまでに澄んだ蒼の瞳を細めて。
「今更だろ?」


そうしてまた、お前に分かってもらうための楔を一つ。
綺麗な、綺麗な。鋭く光る、楔を一つ!!





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あとがき。

二十代様祭第三弾。ラストです。そして気付けば全てが注意書き付きという惨事に。なんてこったい!!
またほうろさんからネタ振ってもらいました。ほんとにほうろさん偉大です。愛してます。(自重しろ)
オプションをガラス片にするか火かき棒にするか迷った。でも火傷の描写に俺が耐えられそうになかったからガラス片になりますた。
ガラス片と火かき棒でダニ○ラさんが思い浮かんだ人は俺と握手。

(サイトアップ09.04.10)





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