続・爪紅
夕暮れの赤い陽の射す居間に、微かに硬質な音が響いている。
ぱちり、ぱちり、と。
爪を切る音だった。
一回り大きな手に自分の手を預け、ナルトは目を丸くして、伸びた爪の切られていく様を見つめていた。
くすりと、声を立てずに笑う気配。
「ナルト君?」
「へ? はいっ」
「爪切りがそんなに珍しいですか?」
「え? え、えーと」
ナルトは自由になる側の手で、頬を掻いた。
「誰かに爪切ってもらうのって、すっげ久しぶりだから……」
少し上気した頬を見て、ハヤテは目を伏せて笑った。
乱雑に切られていた爪を、労るように整えてやっていく。
「手や足の爪の手入れも、忍びの務めの一つなんですね。伸びていたり割れていたりすれば、布等に引っかかって、身動きが妨げられます……切るだけでなく、きちんと最後までヤスリをかけて下さいね。二枚爪になってしまいますよ?」
「ヤスリって、ここについてるギザギザのことだってばよ?」
「ええ……まあ、これもそうですが」
ハヤテは呟き、一度、片手の爪を全て切り終え、一旦役目を終えた爪切りを置いた。代わりに、今度は黒灰色のざらざらしたものを貼り付けた、細い金属の板を取り上げる。
それを斜めにナルトの爪へあてがい、そっと磨き始める。
「金属のヤスリは、少し削り過ぎてしまうんですね。ですから私は、爪切りに付いてるヤスリは、あまり好きではありません」
「それは?」
「これは鮫皮です。金属程硬くはないので、爪を痛めないんですね」
「へー……」
赤い陽差しが照らす庭で、鳳仙花が最後の花を咲かせていた。
もう、夏も終わる。
細やかな手つきで右手の手入れを終えたハヤテは、ナルトへ左手を出すように促した。それに、薄く頬を染めたナルトが、素直に左手を差し出す。
夏の初めに染めた薬指の爪の色は、ほとんどなくなっていた。後一度切れば、全ての色はそこから姿を消す。
落ちかけた陽をちらりと見て、ハヤテは一つ咳をした。
「陽が落ちた後に爪を切ると、親の死に目に遭えないと、良く言いますが」
ナルトは、上目遣いにそんなハヤテの顔を見た。
「……オレってば、父ちゃんも母ちゃんもいないから、そんなん関係ないってばよ」
「ええ。それは私も同じなのですが……これは元々、昔、夜の灯りが乏しかった時代、薄暗い所で爪を切るのは危ない、と戒めた為です」
ぱちり、軽い音を立てて、白い半月が広げられた半紙の上に落ちる。
「灯りもないような状態で爪を切れば、思わぬ事故が起こるかも知れません……まして衛生状態も良くない環境であれば、小さな怪我だって、破傷風のような感染症に繋がりかねません」
ぱちり。
小さな音を立て、薄赤く染まった爪の破片が、紙の上に落ちた。
「親の死に目に遭えないというのは、本当は、親より早く死ぬかも知れないぞ、という警告だったんですね」
コホリと小さく咳をして、ハヤテはヤスリを取り上げた。固まっているナルトの手を取って、綺麗に切られた爪を整え始める。
「……ハヤテせんせー」
「はい?」
「オレってば、もう夜んなったら爪切らねー……」
ハヤテは苦笑した。
「昔の話ですよ?」
「でも、オレんチってば古いからたまに電気すげぇ暗いし、オレってば不器用だから爪切んの下手で、よく血とか出るし!」
「……それは、少し問題かもしれませんね」
使い終えた道具を仕舞いながら、ハヤテは眉をひそめた。
「君が上手に切れるようになるまで……私が、切って差し上げます。爪が伸びたら、すぐにいらして下さいね」
「うえ? ……うん」
すいと両手を取られて微笑まれ、ナルトは慌てて頷き、身体を引こうとした。だが、それより先に背へ腕が回り、気付くとハヤテの腕の中にいた。
抵抗する間もなく抱き締められて、深い口付けを受ける。漸く幾分か慣れ始めた、抱擁と口付け。絡んでくる舌に拙く応えると、笑う気配が伝わって来た。
「約束、でしたね?」
ナルトの左手を取り、ハヤテは薬指の先に唇を押し付けた。
ナルトは耳まで赤くなった。
元の、薄い桃色に戻った、左手の薬指の爪。
それは、猶予期間の終わりの証。
「君を頂いても、よろしいですか?」
柔らかな声音で、それでいて否とは言わせぬ色を帯びた瞳で見つめて来るハヤテに、ナルトは目を伏せた。
こくりと頷く。ハヤテは微笑した。
「では、寝室に行きましょうか?」
「うえぇ? まだ、お日様出てるってばよー!?」
思わず叫んだナルトに、ハヤテはちらりと窓の外を見た。腕を伸ばして障子を閉じ、静かに赤味の強い陽差しを遮る。
室内は少々薄暗くなった。
「さて」
「……さてって何なんだってばよ」
「この家では、暗くなれば夜という事になっているんですね」
「先生ってば結構わがままだってばよ……」
がっくりと項垂れたナルトを抱き上げて、ハヤテは笑った。
「そんな事も、初めて言われました。ですが、そうですね。殊、君に関して言うのなら、わがままにならざるを得ないようです」
いささか機嫌を損ねているらしいナルトの額へ、口付けを一つ。
「そうしなければ、こうして君を手に入れる事も出来なかったでしょうし」
「それって……」
ハヤテの腕の中で身動ぎ、ナルトはむうと眉を寄せた。
「オレのせい、ってことだってばよ?」
「そういう事です。というわけで、責任は取って頂かないと」
「んじゃ、しかたないから取ってあげるってばよ」
ハヤテは笑い、首に腕を回して来たナルトの身体を抱え直した。
「それは、ありがとうございます」
***
指先で触れられるだけで、目眩のような感覚に襲われる。
縋る物を求めて伸ばし、敷布を掴んでいた手を取られて、その指先を含まれた。
短く切り揃えたばかりで敏感な爪と肉との境目を、舌先でなぞり上げられる。背筋にぞくぞくと寒気のようなものが走って、ナルトは上がりそうになる声を必死に堪えた。
目が合い、ハヤテが笑みの形に目を細めるのが見えた。
「んっ……ひゃっ、あ……」
軽く歯を立てられて、思わず声が上がる。指先を含んでいたのを一度放し、ハヤテは白い掌に舌を這わせた。
何でもない場所の筈なのに、ひどく感じてしまって仕方がない。手首の、丁度脈を取るあたりにきつく口付けられて、ナルトは首を振った。
「やーっ……なんで……?」
「別に、おかしくはないんですね」
腕の内側をなぞりあげながら、ハヤテが呟く。
「指先や手首には、神経が多く集まっていますから……敏感なのは、当然です」
丁寧な解説にかえって羞恥が募り、ナルトは堪らず自由になる側の腕で顔を覆った。苦笑する気配が、上から降って来る。
「ナルト君。顔を、見せて下さい」
「や……だ、っ……あ……」
空いた脇をなぞりあげられて、そのまま這い上がって来た手が、忙しなく上下している胸を撫でる。立ち上がりかけていた胸の突起を摘まれて、息が詰まった。
「や……ッ」
「それでは、キスもしてあげられませんよ?」
耳元へ息を吹き込むようにして、ハヤテが囁いて来る。ナルトはぴくりと肩を震わせて、そろそろと腕を下ろした。素直な反応に、ハヤテは思わず微笑する。
「いい子ですね……」
下ろした腕、額、瞼、頬にそれぞれ軽く唇を押し付け、最後に深く口付けを交わす。
そうしながら、腰の辺りに這わせていた指を、するりと下肢へ忍ばせる。開かせていた脚の、柔らかい膝裏を撫で上げると、途端にナルトが身体を強張らせた。
「怖い、ですか……?」
ゆっくりと敏感な内腿を辿りながら、そう訊ねる。ナルトは大きな瞳を潤ませてハヤテを見上げ、小さく頷いた。その答えに、ハヤテは目を眇めた。
「では、嫌ですか?」
ハヤテの問いに、ナルトの目が揺らいだ。赤味を増した唇が、微かに震えながら開く。
「ううん。……ヤ、じゃないってばよ」
言って、遠慮がちにハヤテの首へ腕を回す。ハヤテは一瞬意外そうに目を見開き、次いで、苦笑に表情を歪めた。涙を滲ませて閉じた瞼に口付けを落として、開かせた脚の間に、身体を割り込む。
そうして、とうに立ち上がり、蜜を零していた幼い牡に触れる。抱き締めた腕の中で、華奢な身体が震えるのが判った。
「っや……ハヤテせんせ……」
自ら慰める事さえも、恐らくはほとんど知らないような子供の、それ。指先で軽くなぞり上げるだけで、透明な蜜を溢れさせて、より一層硬く立ち上がる。
可愛らしい嬌声を懸命に堪えている唇を、無理矢理に覆う。強引に歯列を割って、その声ごと吐息を奪った。
「……ッ」
ぴんと強張った小さな爪先が、数度敷布を掻く。そうして、小柄な身体からくったりと力が抜けた。
「っく……ふ……ぅ」
離した唇の間で、幾度も大きく息を吸う。ハヤテを見上げる瞳が、熱を帯びて潤んでいた。
「……やて、せんせ……」
縋って来る腕に答えて汗ばんだ額へ口付けてやりながら、ハヤテは腕を伸ばして、枕元を探った。置いてあった花紙で乱暴にナルトの放った物を拭い、片手で、器用にその脇へ置いてあった小瓶を開く。
中身を数本の指で掬い取って、膝を使い、華奢な脚を大きく開かせる。
「……っひゃ、なに……?」
あらぬ場所に触れたひんやりとした感触に、ナルトは身体を強張らせた。怯えて見上げた瞼に、唇が触れて来る。
「潤滑剤代わりの……傷薬です。気休め程度にしか、ならないかもしれませんが……」
力を抜いて下さいね、と囁かれて。答える間もなく、解すように周囲を撫でていた指が、内側へ入り込んで来る。
薬の滑りの所為か、痛みは無かったが。異物感と圧迫感に、涙が出た。
「うくっ……あ、う……」
「痛いですか?」
ナルトは首を振った。痛くないけど、と、震える声で呟く。
「や、なんか気持ち悪いっ……」
ハヤテは小さく溜息を吐き、白い頬を汚した涙を唇で拭った。
「少しだけ、我慢して下さい。どうしても無理なら、途中でやめますから……」
「うー……」
唸るように答えると、ハヤテは苦笑したようだった。数度、慣らすように出入りしていた指が、やがて本数を増やす。
「んうっ、やあ……ッ」
腑を掻き回される感触に、気色悪さや苦痛よりも、恐怖が勝る。涙を滲ませてハヤテの首筋へ縋ったその時、不意に、今までと全く異なる感覚が、身体の内部で生まれた。
「やっ、なに……」
体内へ潜り込んだハヤテの指がそこを掠める度、身体が震えるような快感が走る。知らず、食い締めるように、そこがハヤテの指を締め付ける。
ナルトの変化に気付いたハヤテが、安堵したように息を吐いた。
「ここ、ですか……」
「やぁ、ああんっ!」
狙ってそこを強く掻かれて、びくんと腰が跳ねる。指を増やされた事も気付かずに、ナルトは夢中でハヤテの背へ爪を立てた。
「んーっ、やだ、やだ怖いっ……なんで……?」
「怖くないですよ……内側にも、こういう風にイイ所があるんです」
「ふあっ……」
一度、強く内側を掻き回し、ハヤテの指が抜かれる。圧迫感と異物感が去った開放感以上に、中途半端に投げ出された熱が苦しくて、ナルトはハヤテの腕の中で身を捩った。
「や……ぁ、せんせ……」
「ナルト君……」
「せんせ、たすけて……」
困惑したような目で見つめて来るハヤテに縋り、自分から唇を押し付ける。苦笑する気配が、肌を通して伝わって来た。
「そんなに、煽らないで下さい」
「ふぇ……?」
「もっとも、煽って頂かなくても、充分引き返せない所まで来てはいるんですがね……」
腰に腕が回り、強く引き寄せられる。こめかみに口付けが落とされた。
「このまま続けてしまって、構いませんか?」
「……ん」
ナルトは小さく頷いた。それに、ハヤテが目を細める。大きな手が、汗で湿った金髪を撫でた。
「力を抜いて……それが無理でも、息を吐いていて下さいね」
「うん……」
細い脚を抱え上げて、ハヤテは華奢な腰を引き寄せた。既に苦しい程に張り詰めている自分の牡を、先刻出来る限り慣らしたとば口へ、あてがう。
想像以上の熱さに息を詰める間もなく、ゆっくりと入り込んで来た物の容積に、ナルトは身体を硬直させた。
「や……ア、ひあっ……」
「ナルト君……」
思った以上に強い抵抗に、自分も眉をひそめながら、ハヤテは涙に濡れた頬を掌で包んだ。
「息を吐いて……力を入れれば、余計辛くなりますから……」
「ん、う、だって……ッ、ひ、痛いっ……」
下肢に、熱く裂ける感覚があった。微かに鉄錆の匂いが漂う。ハヤテは浅く息を吐き、手を伸ばして、萎えてしまったナルトのものへ指を絡めた。
「ひあっ、やぁ……」
強い刺激に力が抜けるのを見計らい、一息に身体を進める。ひっ、と細い喉が、笛のような音を立てて鳴った。
「あ……っ」
先刻までは拒むばかりであったそこが、やんわりとハヤテを締め付けて来る。それでも過ぎるきつさに眉をひそめつつ、ハヤテはナルトの頬を撫でた。
「ナルト君……大丈夫、ですか?」
「ん……」
幾分焦点の合わない目が、ぼんやりとハヤテを見上げて来る。こぼれた涙が一滴、こめかみに筋を引いた。
「あんま、大丈夫じゃねーけど……ヘーキだってばよ……」
弱々しく笑い、キスして、と掠れた声でねだる。それに応えてやってから、ハヤテは恐る恐る訊ねてみた。
「その……動いても、いいですか?」
その問いに、少し困ったように眉を寄せてから、ナルトは幾らか上目遣いにハヤテを見た。
「多分……」
ハヤテは苦笑した。
「辛かったら言って下さいね。……もしかしたら、止めてあげられないかも知れませんが……」
「ん、でもいいってばよ……」
ナルトは溜息のように言い、あてがわれているハヤテの手に頬を擦り寄せ、目を閉じた。
「ハヤテせんせだったら……何されてもいいってばよ」
ハヤテは絶句して目を見開いた。そうして、大きく溜息を吐く。
「ナルト君」
「ん……?」
「そういう事は、簡単に言ってしまわない方が懸命なんですね……」
「え? ……っあ、やっ……」
ゆるく突き上げられて、ナルトは声を上げた。
震える脚を胸へ付く程折り曲げさせながら、ハヤテが余裕のない声で言う。
「そんな事を言われてしまったら……もう、止まれないんですね……」
「ふぁ……あ、や、ああっ!」
指で触れられたときでさえ、震える程に感じたそこを、幾度も深く抉られて、ナルトは背を仰け反らせた。そのまま身体の奥まで犯されて、苦しさと過ぎた快感に涙が溢れる。
内側からの刺激で立ち上がった幼い欲望が、透明な蜜を溢れさせている。それに混じり、うっすらと赤い筋が、繋がった場所から流れ、白い腿を汚していた。
まるで年端の行かぬ少女を犯しているような錯覚に囚われ、その視覚刺激に、ハヤテは目眩のような快感を覚えた。
「ナルト君……」
「ふあっ……んっ」
切れ切れに嬌声を上げる唇を奪って、深く口付ける。汗で滑り落ちたナルトの手が、苦しさに、ハヤテの二の腕に深く浅く、爪痕を刻んだ。
その痛みすら、快感に転じる。
苦痛とも快感ともつかぬものに必死に耐えている子供を見下ろして、ハヤテは自分でも判らない感情に、小さく笑った。
「溺れて……しまいそうですね……」
「ん……っ、ハヤテ、せんせ……」
限界が近いのか、浅い呼吸に胸を喘がせながら、ナルトが必死に両手を伸ばして来る。
その腕に逆らわず抱き寄せられ、ハヤテはそのまま、衝動に身を任せた。
***
「……?」
障子越しの朝日に目を開いて、見慣れない天井に、ナルトは首を傾げた。
次いで気付いた違和感。隣に、自分以外の誰かがいる気配。あまり馴染みのないその感覚に、そろそろと視線だけを動かして、そちらを伺う。
思わぬ間近にあった相手の顔に、ナルトは思わず声を上げてがばりと身を起こした。
「っわ、何でーっ!?」
「……。何事ですか……?」
その声に、眠っていたらしい彼は、ひどく億劫そうに薄く目だけを開いた。
相変わらず不健康そうな隈に縁取られた、黒い瞳がナルトを見る。
無論、ハヤテである。
「なっ、なんでハヤテ先生が一緒に寝てるんだってばよー!?」
「それは一緒に寝たからに決まっているでしょう……それよりナルト君、身体は平気なんですか……?」
眠たげな声でそう問われ、ナルトは一時、何の事かと首を傾げた。
が。
何より自分が一糸纏わぬ姿である事。
ひどくだるそうに横になっているハヤテも、ほぼ同様の姿をしている事、に気付き。
一気に昨晩の記憶が甦り、ナルトはみるみる赤面した。
幾分か身体の中に残る違和感。だるい身体。それでも、動けない程ではないようだ。
黙り込んでいるナルトをしげしげと見つめて、ハヤテは一つ咳をした。
「その様子だと、大丈夫そうですね……」
「そ、そーみたいだってばよ」
ちょいちょいと指先だけで招かれて、ナルトは一度首を傾げてから、もぞもぞとハヤテの側へ近寄った。
「私が大丈夫ではないので……もう少し、一緒に寝ませんか」
「うえっ!? な、なんでっ!?」
慌ててそう言い、ハヤテの肩へ触れる。と、ハヤテはぴくりとその肩を揺らした。
「ナルト君……痛いです……」
「え? あ……」
見れば、そこには痛々しく伸びた、赤く血を滲ませた傷痕。朧気な記憶を辿り、恐る恐る自分の手を見たナルトは、そこに予想通りの物を見て青ざめた。
短く切られた爪の中に、それでもはっきりと判る血の痕跡。
「ご……ごめんなさいってばよ……」
「は? ああいえ、別にこの程度の傷はどうという事もないんですが」
ナルトの手を引いて腕の中に抱き込みながら、ハヤテは何事も無かったかのように言う。
「でもでも、大丈夫じゃないんだってばよ?」
半泣きでそう訊ねる。布団を引き寄せてしっかり眠る体勢になりながら、ハヤテはそれに答えた。
「いえ。単に朝が早いので眠いだけです」
「……へ」
「私は大抵午後からの任務しか引き受けませんので……朝は弱いんですね……」
既に半分眠り込んだような声で、ハヤテがぼそぼそと言う。ナルトは一瞬無言になった。
「そ、そんなのありなんだってばよ……?」
「低血圧なもので……」
ナルトは深々と溜息を吐き、それでも、ハヤテの腕に身を擦り寄せた。
「オレってば、そんなハヤテ先生でもちゃんと好きだから、安心するってばよ」
「ありがとうございます……」
言いながら、そのまま眠り込んでしまったらしいハヤテにくすりと笑い、ナルトは傷を気遣いつつ、その背へ手を回して、自分も目を閉じた。
傷の傍らに、そっと添えられた小さな手。
小さな爪に入り込んだ血は、新しく施された爪紅のようにも見えた。
End.
0307212249
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少し男っぽいハヤテ先生が書きたかった話。あんまり成功しているとは言えませんが……
まあ取り敢えずは。
ハラショーショタ!(何故ロシア)
ハラショーハヤナル!(今更)
行間(?)を読むとたまに管理人のツッコミが入っておりますがお気になさらず。
爪。○印の爪切りに付いてるヤスリを使い、良く削れるのに調子に乗り、はっと気付くと肉が見えそうになっていた事があるのは私だけでしょうか?
私もハヤテ先生に爪切って欲しいです……なんかネイルアートとか出来そう……(いやそれもどうよ)
ナルトの回復が異常に早いのは、まあ九尾の力って事で。嗚呼、なんて便利なんだ九尾。
マキナお姉様に捧ぐ。遅くなってホンマすみません……
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