ナイト・オブ・ラウンズのナンバー7、枢木スザクがエリア11に再びやってきてからの数日は
黒の騎士団のトップである―今は記憶を失いただの学生となっている―
彼の監視という任務はあったがスザク自身は監視を行う部下の管理という任務だったため
比較的時間の余裕があり久しぶりの学園生活を堪能していた。

しかし…
一癖もふた癖もある同僚の2人が来てからというものの彼のつかの間の休息はあっという間に消えてしまった。


「君達、夜は静かにしてくれないかな…」
ある日の朝、とうとう我慢出来なくなったスザクは、まずは年長者の同僚に苦言を呈した。

しかし苦言を呈された当の本人はあっけらかんとスザクに応じる。

「君達?静かに?…ってなんのことだよスザク」
「…ここはブリタニア本土とは違うんだよ」


「だから、スザク、お前は何を言いたいんだ?」
ジノがスザクの肩を抱きかかえる。
――相変わらず近いんだけど。

「ジーノ、君の部屋から聞こえてくる音や声がうるさいんだ!」
「部屋から?」
ジノはスザクを抱きかかえた腕とは反対側の手を顎に当て考える素振りを取る。

「アーニャはまだ子供だろう。そんな相手いないはずだが…ましてやここはエリア11だぞ?男を連れ込…イテェ!」
「馬鹿!誰か連れ込んでるのは君だけだ!アーニャの部屋からはマウスとパソコンの音しか聞こえないよ!」
ジノの暴言を最後まで言わせずスザクが彼の頬を抓る。


「というかアーニャの部屋から聞こえてくる音も確かにうるさいけど、問題は君だ!ジノ!」
「俺?」
「そうだよ!あんな…」
それだけを言ってスザクはここ最近彼の不眠の原因となっている騒音の原因を思い出して顔を赤らめた。
そんな彼を見てジノは口を開く。


「そんなに音が気になるんなら、スザクが来るか?」
「は?」
スザクに抓られて若干赤くなった頬をさすりながら唐突に言う。
ジノの発言に意味を理解できず呆気にとられているスザクのことは気にせずジノは言い続ける。

「うん我ながら良案だ」
「え?」


「良し!決まったら善は急げだ!俺の部屋に行くぞ!」
そう一人で納得しながらジノはスザクを肩へと担ぎ上げる。
普段のスザクならばこんなジノの暴挙も自慢の身体能力でやり返すところだが今回ばかりはジノの突飛な行動に対応できないでいた。


それ以降、アーニャの部屋から聞こえ漏れていた機械音はぱったりとやみ、代わりにジノの部屋から
スザクの声だけが漏れていたが幸いなことに彼の声を聞く者は、ラウンズの3名+1匹以外は居なかった。
そして両隣からの騒音というスザクの悩みは解消されたが、彼にとってまた新たな悩みが生まれたのを知っているのもこの3名+1匹だけだった。





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