<縁談少女>
「では、あとは若い人たちだけで……」
仲人さんたちがすっと席を外す。
あ、ちょ、ちょっと待って。
い、今二人きりにされると……。
僕は慌てて引きとめようとしたけど、しびれた足は立ち上がることを許さなかった。
「ふふふ、足をお崩しになられていれば良かったのに」
向かいの席から鈴を鳴らすような声が聞こえた。
今日、会ったばかりの、僕の結婚相手。
いや、まだお見合いの席で、そうと決まったわけでは……。
「いえ、もう決まりました」
艶やかな和服姿の<縁談少女>はきっぱりと言い放ち、微笑んだ。
「貴方は、このお見合いの席までの三十三日間、
見事禁欲なされたので、わたくしは貴方に嫁ぎます」
ぽぅっと顔を赤らめながら、人外の美少女は僕ににじり寄った。
「うわ、ちょ、ダメ、近寄らないで……」
「なぜです? ……ふふふ、もう精をお漏らしになりそうだからですか?」
「!!」
おおよそそうしたこととは無縁そうな上品で清楚な少女の唇からとんでもない言葉が発せられる。
事実、僕は先ほどから狂おしいほどの射精衝動をこらえていた。
三十三日の禁欲と、人外の美少女と二人きりで閉じ込められたことで、
僕の理性は、今にもはじけ飛びそうだった。
このままでは、<縁談少女>に襲い掛かってレイプしかねない。
さっきまでは、仲人さんたちもいたからなんとか我慢できたけど、もう限界だ。
くすり。
振袖姿の美少女が微笑む。
「いいのですよ。わたくしはもう貴方の妻になることに決めました。
今のご時勢、二世を誓い合った男女なら<婚前交渉>もよろしいかと思います」
ふうっ。
甘く、涼しく、かぐわしい吐息は、びっくりするくらい近くだった。
「ほら、私を娶りたくて、私をご自分のものにしたくて、
貴方のここは、こんなになってます」
白魚のような手が、礼服の上から僕自身をなでさする。
「あ、ちょっ……」
そこだけでなく、身体全体がびくんびくんと痙攣し始める僕を、
<縁談少女>は潤んだ目で見つめた。
「駄目ですよ、そこで出しては。夫の精は、妻の中に出すものです」
しゅるり。
片手で僕の性器を掴んで爆発を押しとどめながら、<縁談少女>はもう片方の手で帯を解いた。
「あ……」
裾を割ってあらわれたのは、白い太ももと、その奥の翳り。
黒い柔毛がつつましく守る桜色のそこは、誰かに捧げられるために大切に守られていたところだ。
誰のために? ──僕のために。
「さあ、娶ってください、わたくしを……。」
<縁談少女>が夫となる男の性器を自分の入り口に導いた。
ゆっくりと腰を沈める。
じゅぷっ、じゅくっ!
「んっ……」
自分の指も届かない身体の一番奥深くに、男を迎え入れる。
潤んだ粘膜を押し破って彼女の中に入った瞬間、僕は射精をはじめていた。
「ああっ!」
<縁談少女>も、のけぞって達する。
これから何千、何万回と繰り返される夫婦の営みの最初の一回目は、あっというまに終わった。
「ふふふ、これで貴方と私は、晴れて夫婦(めおと)ですね」
僕の頭を抱きかかえながら、<縁談少女>がささやいた。
「これも縁(えにし)でございます。不束者でございますが、末永く可愛がってください」
自分の妻の、ぞくりとするくらいに蟲惑的で美しい声と仕草に、僕は陶然となった。
Fin