微かな衣擦れの音と共に、衣が滑り落ち、白い肌が露となる。
揺れる灯が、春日源五郎の前に、三条夫人の裸体を照らし出す。
いつも見慣れた男のそれとはまるで異なる、女の柔らかな肉体。
「お方様・・・」
圧倒されたように、源五郎は呟いた。
「そちは、女子は初めてであろう」
三条は微笑むと、源五郎の傍らに跪き、するすると衣を脱がせた。
解かれた下帯の下から現れた、未だ女を知らぬこわばりを、白魚の様な指で弄ぶ。
「あ・・・・」
微かに顔を歪め、喘ぐ源五郎。
その甘い喘ぎ声を聞くや、三条の表情が変わった。
(この者は、御屋形様の腕の中でもこの様な声を・・・)
突然、彼女の心の中で、冷たい嫉妬の炎が燃え盛った。
「少し待ちやれ」
源五郎から離れ、部屋の片隅にあった小箱から何かを取り出す。
「お方様?」
三条の様子を訝しげに見つめる源五郎。
やがて・・・、
「今宵は、これで愉しもうではないか」
「!」
振り向いた三条の姿に、源五郎の目が大きく見開かれた。
三条は、腰に木製の張り形をつけていた。
胸こそ貧弱であるとはいえ、三条の体は女性的なふくよかさに溢れている。
その彼女の腰に、紛い物とはいえ男根がそそり立つ様は、異様さに溢れていた。
「ふふふ、恐がらずとも良い。そちは慣れているであろう」
先程までの仏のような慈悲に満ちた顔とは異なる、嗜虐心に溢れる笑みを浮べた三条。
腰で、黒光りする張り形がぶるんと震えた。
それは、源五郎がいつも見慣れた晴信の物を、太さ、長さ共に圧倒していた。
「お、お許しください!」
本能的に恐怖心を感じた源五郎は、這ったまま逃げ出し、部屋の戸に手を掛けた。
だが、突如その戸が開いた。
現れた人物に、源五郎は縋りつく。
「げ、源四郎! 助けてくれ」
だが、両目に微かに涙を浮べて訴える源五郎の顔を、飯富源四郎は無言で見下ろす。
「・・・源四郎?」
怪訝な顔で見上げる源五郎。
全裸で縋りつくその顔を見下ろしながら、源四郎は呟いた。
「源五郎・・・、お前は・・・、いつもそうやって・・・」
愛、嫉妬、羨望・・・。
様々な感情の入り混じった炎が、源四郎の瞳の中で燃え盛っている。
源五郎の裸の肩を、源四郎の両手ががっしと掴んだ。
「源四郎!」
源五郎はもがくが、源四郎はびくともしない。
「源四郎・・・」
絶望の涙声で呟く源五郎の背後に迫る三条。
「さあ、今宵は三人で愉しもうではないか」
嗜虐の微笑が呟いた。
揺らぐ灯の下、絡み合う三人の裸身。
彼らの姿を、ただ不動明王像の両の眼だけが見つめていた。
<おわり>