レイマリってステキ

 

 

 

「おい、マスタースパークのことマスパって呼ぶの止めてくれよ」

 いつものように神社に遊びに来た魔理沙が、汗を拭きながらそんなことを言った。

「いいじゃない、マスパで」
「マスパってなんかスパゲティの種類みたいだろ? 困ってるんだよ、私だってこんなこと言いたくないけどスパゲティの種類みたいだろ?」
「何で二回言ったの」
「昨日チルノがさ『マスパちょうだい!』ってお財布握り締めてやってきたんだよ。目を輝かせてお昼ごはんにする! とか言ってんだ。さすがに子供を騙しているとなると魔理沙さんも気が引けちゃうさ。お金だけもらって帰したりすると特に」
「それは最後がまずいんだろ」
「だから今度からマパークって呼んでくれ」
「それはどうなのよ。マパークってねぇ……テーマパークと勘違いしたチルノが遊びにやってきちゃうわ」
「来るわけないだろ、チルノを何だと思ってんだ。じゃあ頼むぜ。明日からマパークな」
「はいはい」

 翌朝、いつものように神社に遊びに来た魔理沙が、大失敗だと言った顔でこんなことを言った。

「霊夢大変だ、チルノが勘違いして遊びに来た……!」
「早速来てるじゃないの」
「何でかなぁ、かわいそうだから遊んでやったんだけど、大分懐いちゃって夏の間だけ家で飼うことにした」
「何故!?」
「夏にチルノがいると涼しいだろう、冷房のお金もけちれるし。あーあ、マパークの建設費用に今月は大赤字だよ……霊夢、同棲してるからってチルノに嫉妬するなよ」
「しねえよ!? ってかマパーク作ることに突っ込みいれたかったのにあんたって奴は!」
「というわけでしばらく忙しくなるから、あんまり来られないと思う」
「別に来なくてもいいけど」
 
 そうやって帰っていった魔理沙が次に来たのが三日後だった。

「まいった、まいった。チルノがチルノベホマズンに進化しちゃった」
「なんでだよ!?」
「縁日の出店でカキ氷作らせてたらレベルが上がっちゃったみたいでさー。だけどMP足りないからベホマズンうてないって毎日泣いているんだ」
「なんて分かりやすい」
「だがな霊夢。私は諦めない。必ずチルノの賢さを上げてベホマズンをうたせてみせる。その為に今日はこれから図書館に行ってくるぜ」
「ああ、調べもの――」
「パチュリーが賢さの種栽培してるから盗んでくる」
「するなよ!」

 ぼろぼろになった魔理沙が帰ってきたのが夕方だった。

「……き、気をつけろ霊夢、紅魔館じゃ小悪魔が小悪魔ベギラゴンに進化していた……」
「幻想郷はどうなってんの!?」
「っとに、あいつはまず頭の『小』を取れよって話しだよな!」
「突っ込む順序違わない!?」
「チルノのベホマズンがなかったら私もこうして無事じゃいられなかったところだぜ」
「待て、使えてるじゃねえか!」
「使えてるじゃば!?」
「落ち着け」
「でもな、霊夢、クラスチェンジは慎重にしろよ。レティも、冬の妖怪>冬将軍と順調に来てたのに今年『鍋奉行』に間違ってクラスチェンジしちゃってからは温暖化の一途だからな」
「あいつらが弱ると温暖化になるんだ……」
「さて霊夢。家にチルノとリグルとミスティアを待たせてあるからもう帰るぜ」
「なんか増えてる!」

 次の日、魔理沙がほとほと困ったという顔で歩いてきた。

「助けてくれ霊夢。家が狭くてしょうがない」
「……まさか、また増えてるんじゃないでしょうね」
「昨日帰ってシャワーを浴びようとしたら中にアリスがいて『きゃっ、もう魔理沙のバカァ!』とかいってタオル投げつけられたんだが、何で私の家でシャワー浴びてるのか良く分からないままアリスが住み着いた」
「追い出せよ」
「追い出すんだが、いつの間にか空気のように戻ってきてるんだ。しかもアリスを家に放置していると『そこまでよ!』といいながらパチュリーが窓ガラスを突き破って飛び込んでくる。もう三枚やられた」
「もう駄目だわあんたの家。しばらく匿ってあげようか?」
「え? うーん、そうだなぁ、そうするかなぁ。でもチルノとかに悪いしなぁ。申し出は嬉しいんだけど」
「そう……」
「もうちょっと頑張ってみるよ。一家の大黒柱として困難から逃げちゃいけないよな」
「すっかり家族じゃないの」

 明くる朝、晴れやかな顔の魔理沙がスキップでやってきた。

「霊夢、聞いてくれ! ようやくマパークが完成した!」
「まだ引っ張ってたのかその話題!?」
「開園早々大盛況だぜ! 霊夢には特別にタダ券やるから是非一度来るといいんだぜ!」
「いいわよ、私は別に興味ないし……」
「バカ、違うだろ!! そこでデレないでいつデレるんだよ!」
「駄目出し!?」
「まったく、ツンデレのアリスやヤンデレの天子を見習えって話しだぜ」
「天子? なんで?」
「天子は不良天人だろ? 不良っていったらヤンキーだろ? ヤンキーが時々デレたらつまりヤンデレじゃないか」
「新しいわね、ってかデレるの?」
「デレるデレる、私の家に今住んでるし」
「また増えてるのかよ!」

 一晩経って、魔理沙が苦笑しながら飛んできた。

「まいったぜ『ドールハウスアリス』のM&Aがしつこくてしつこくて仕方ないんだぜ」
「え、マパークの企業買収を!?」
「ううん、コンビ組もうって」
「マリサ&アリスかよ!」
「そんな、ナッツ&ミルクみたいに言うなよ――おい、&しかあってないうえにマイナー過ぎて誰も解らないんじゃないかコレ!?」
「見てるほうが困るほど焦るなよ! 自信を持て!」
「まぁ、あれだ。マパークが儲かって儲かって仕方ないって話しだから、賽銭代わりに今日はいいものやるぜ霊夢」
「え、何?」
「はい、マパークの無料パスポート」
「どれだけ来て欲しいのよあんた!」

 二日後、魔理沙がしょんぼりしてやってきた。

「もう駄目かも、マパーク……」
「やけにしおらしいじゃない。どうしたのよ?」
「アトラクションの事故で怪我人出しちまった……」
「なんと、それは大変ね……でも一体どんなアトラクションで事故が?」
「紐無しバンジー」
「それは事故じゃねえ!!」
「凄い大人気で回転率も良かったから、設備の細かい整備にまで時間が回らなかったんだぜ」
「設備が無いだろ!? しかも何で人気あるの!?」
「落下場所のクッション数が足らなかったのかなぁ………くそう、下にもっと巨乳を集めていれば!」
「挑戦者多い理由が丸解り!」
「閻魔からはちょっと過激すぎるって前から注意されてたんだ」
「二つの意味でな」
「はぁ……これからが大変だ。じゃあな、霊夢。しばらくここに顔出す事も無いと思うぜ……」
「魔理沙……」
 
 三日経った、四日経った。
 一週間して、ぼろぼろになった魔理沙が夕暮れの境内を歩いてきた。

「久しぶりね魔理沙」
「……霊夢」
「あんたの仲間達はあんたを助けてくれなかったのかしら?」 
「魔理沙ファミリーは解散になった。みんな自分のことで精一杯だったんだぜ……」
「ふぅん」
「ああ、美味い。霊夢はこんな私にもちゃんとお茶を出してくれるんだな」
「まあね」
「……家なくなっちゃったんだぜ……」
「……」
「今晩泊めてもらえると、その、有難いんだが」
「あら、うちは有料よ」
「諦めるぜ……」
「そう」
「…………」
「あ、前金貰ってあるんだったか。じゃあ、しばらく泊めてあげられるわよ」
「前金? 何の話だ?」
「ほら、タダ券とパスポートくれたじゃない」
「え、でもそれはもう――」
「一度の失敗で情けない、あんたがもう一回マパークを建てたらその時使わせてもらうわよ」
「霊夢……」
「ほら、元気出して!」

 魔理沙は霊夢の優しさから身を隠すように後ろを向いた。
 そして涙を拭ってから、草むらに向かって叫んだ。




「おーい、良かったなアリス、チルノ、パチュリー! 泊まる所見つかったぞー!」
「待てや、コラ」

 

 

 

 


レイマリとは成長の遅い植物である。
それが百合という名の花を咲かすまでは、 幾度かの試練・困難の打撃を受けて、耐え抜かねばならぬ (ワシントン)



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2008年7月25日 はむすた

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