ニュースの時間です

 

 

 

 こんばんは。
 心の隙間にジャストフィット。
 八雲紫のスキマニュースの時間です。

 それでは、最初のニュースです。

−撮影中の事故? 故意?−

 永遠亭在住、鈴仙・優曇華院・イナバ(年齢不詳・家事手伝い)さんが、あれはやっぱり盗撮ではなかったのかと、十一日午後、重い口を開きました。
 騒ぎの元は、三日前の弾幕ごっこ。
 容疑者の射命丸文が、鈴仙さんの狂気の弾幕をカメラを使って撮影していたところ、偶然にも弾幕以外の何かが映ってしまったという事。
 しかし、あくまで偶然であると言い続ける射命文に対して、鈴仙・優曇華院・イナバさんは、その理屈はおかしいと主張しています。
「彼女は執拗に下からの撮影を試みてました。しかも、あれだけ激しい風を吹かせたなら、スカートがどうなるかぐらい解っているはず」
 これに対して、射命丸文は、
「危険意識が足りないとしか言えません。突風とは言いますが、風の息づかいを感じていれば、事前に気配があったはずです」
 と、論点をずらしつつ猛反論。
 風の息づかいとは何なのかという説明は全くありません。

 被害者の鈴仙さんは、事件後、永遠亭に塞ぎ込んでおり、
「今は、二度とあんな事がないようにと願うばかり。スカートの丈は三cm伸ばしました」
 と、涙混じりに語っていました。


 では、次のニュースです。

−衝撃! あの博麗の巫女が討たれる!?−

 昨夜未明、巫女装束の女の人が境内の雪の中で倒れているのが発見されました。
 巫女の名前は、博麗霊夢(年齢不詳・巫女)さん。
 彼女は、ご近所でも有名な、妖怪ハンター。
 右手に残る歯形や極度の衰弱振りから、何者かと交戦した後に力尽きたのではないかと見られており、現場は今も緊張が走っています。
 尚、右手にしっかりと握られた玉のようなものから、謎のメッセージが検出されました。

「こめくれ」

 巫女の回復を待って、捜査を続けたいと慧音警部は話しております。


 では、次もニュースです。

―人権を尊重した結果―

 紅魔館に勤める十六夜咲夜(年齢不詳・メイド)さんに朗報がもたらされました。
 幻想郷ではこれまで、スリーサイズの偽造は『肉体の詐欺』と呼ばれ固く禁止されていたが、日増しに大きくなる貧乳層の声を深く受け、今度その不名誉な罪名を撤廃するという。
 十六夜咲夜さんは『貧乳の地位向上及び差別的意識の撤廃』を目標に、日々活動を続ける『スモールラブ』の中心人物。
 この朗報に「やっと私達の想いが届いて嬉しいです。でも私はパッドじゃありませんから」と涙を流し喜んでいる。

 尚、新しい罪名は『偽乳罪』に決まりました。

 
 では、次のニュースを……。
 あ、ここでスキマに明るい話題が届いてます。

―二人は仲良し―
 
 どうやら、追いかけっこに終止符が打たれたようです。
 最近になって、幽々子さんとミスティアさんが白玉楼で仲良くご飯を食べている姿が、頻繁に目撃されています。
 幻想郷のトムとジェリーと言われていた彼女達の関係に、一体何があったのでしょうか。
 この件に関して、動かない有識者と聞こえが高い、紅魔館のパチュリー・ノーレッジさんは、
「生物学的に有り得ない話ね。何処かに落とし穴があると思うわ」
 と、やや懐疑的なコメントを残しています。

 しかし、二人の仲睦まじい関係の前には、パチュリーさんの心配も杞憂に終わりそうです。
 我々の取材に対し、ミスティアさんは笑顔でこう語っています。
「食べ物じゃないという叫びがやっと通じました。付き合ってみると悪い人じゃありません。お菓子もたっぷりくれるし、今は幸せです」
 お友達の幽々子さんも、その笑顔につられて「最高の鳥肉に育てます」と話してくれ、最後の最後で台無しにしてくれました。

 それでは、CMを挟んだ後、話題の大怪獣の真相に迫ります。

〜CM開始〜

「永琳と〜」
「てゐの〜」
「ななころびやごころー!」

BGM:千年幻想郷〜History of the moon〜

「はい、いつもお世話になっております。八意医院院長の八意永琳です。今日は一周年特別企画と言う事で、三分もCM枠を貰いました!」
「うーん……うーん……」
「あらあら、どうしたの、てゐ?」
「永琳様〜、最近、自分の健康に自信がもてなくなってきたんですよー」
「まあ、それは大変ね、そういう時はこれよ」

『商品No:1698 八意特製強力青汁(特定保健用食品)』

「わっ、知ってます知ってます! これ健康にいいんだよねー、私、毎朝に飲んでたもん」
「あら、過去形?」
「だってぇ、この青汁は凄く健康にいいけど、血反吐が出るくらいまずいから、続けて飲むのは辛いんです〜」
「そういう声は私にも届いてるわ。ま、とにかく一杯どうぞ」
「いただきます……ぷへっ! ぺっぺっ! たっはーっ! まずい! もう一杯!」
「このままだと確かに青臭いのよね。でも、今度からは無理しなくていいのよ、てゐ」
「ええ? どういう事ですか?」
「だって、この青汁の栄養そのままに! 青臭さだけ消す事に成功したのですから!」
「うそー!? 信じられない!」
「その商品がこれよ!」

『商品No:1703 真八意特製強力まろやか汁(特定保健用食品申請中)』

「永琳様ぁ……」
「あら、不満そうね、てゐ」
「だって、これって前のと同じじゃないですか、どす黒いし黄色い煙出てるし」
「まあまあ、騙されたと思って、飲んで御覧なさいよ」
「うぅ、こんなのがまろやかなわけ……ま、まろやかだ〜!!!」
「そうなの、これでもかと言うほどにまろやかなのよ! 栄養価は全く同じなのに!」
「永琳様! わたし、この中で起こってるミラクルをとても知りたいよ!」
「いいでしょう! 成分表示はこちら!」

 いろんな生薬:たっぷり
 きっつい薬草:たっぷり
 ごっつい薬草:たっぷり
 その辺の雑草:たっぷり
 うどんげ汁:1000mg

「さあ、もう解ったわね?」
「うどんげ汁!」
「その通り。うどんげ汁を惜しみなく1000mgも配合する事で、青臭さの一切を消したのです」
「あのレア汁を一本につき1000mgも! なんて贅沢な飲み物なのかしら!」
「でもね、うちのは混じりっ気無しの天然搾りだから、数に限りがあるのよ」
「うわー、残念。それで今回は幾つご用意出来たのでしょうか?」
「はい、今日は私が前日から徹夜で頑張ってきたので、百個! 百個まで皆様にお届けできます!」
「やった、すぐにでも買占めに走りたいよ!」
「ご注文はフリーダイヤル、0120−オーウドンゲ、オーウドンゲへ!」
「限定数百個だよ! お早めに〜!」

*まろやか汁は、多量に摂取することによって効果が高くなったりする事はありません。一日一本を目安にお飲みください。

〜CM終〜


 続いて、ニュースの時間です。
 
―噂の大怪獣に迫る―

 このニュースは、現地に特班員の藍さんが行っておりますので、早速中継に繋げたいと思います。
 それでは、藍さん、お願いします。

「………っ!………!………ザザザッ……」

 ちょっと声が遠いでしょうか……。
 藍さん、藍さーん?

「………っ!?………!………ピーガガッ……」

 えー、今ひとつスキマの調子が良くないみたいですね。
 状態が良好になるまで、昨日までの展開をおさらいしておきたいと思います。
 皆様も知っての通り、十一日の夕方、大怪獣事件が幻想郷を騒がせました。
 まず、事の発端になった萃香(住所不定・無職)さんの言葉から検証してみたいと思います。

「巨大化した私が、我が物顔で深雪にのっしのっしと足跡を付けて回っていた時に、一際大きな山を見つけた。喜んで駆け上ったのだけど、良く見ると、それは山ではなく靴だった」

 このままでは意味が解りませんので、少し意訳したいと思います。
 つまり、山より大きい靴を見つけてしまったと、それが近くに巨大生物がいる証明だと萃香さんは言うのです。
 まるで現実味の無い話ですが、丁度、博麗の巫女が倒れていたのが運が悪いところです。
 この異変は嘘か本当かと有識者達が議論してる間にも、チルノやルーミアを中心に、噂は幻想郷の端から端まで駆け抜けていきました。
 そのうち、話は尾ひれが付いて、その巨大生物が町に攻めてくるぞとまで――

「……ガガッ……ゆ……様……ゆかり様」

 あ、スキマの調子が良くなってきたようですね、少々お待ち下さい。
 藍さーん? 聞こえますかー?

「聞こえます、紫様。こちら現地の藍です!」 

 はい、結構です。良く聞こえてますよ。
 そちらの様子はどうですか?

「懸命な調査活動を続けているのですが、なにぶんこの吹雪では満足なテンコーの一つも出来ず、皆様の期待に応えられません」  

 応えなくていいです。
 何か、手がかりは見付かりましたか?

「いえ、辺りは全て雪、もしくは山ばかりです。しかし、座標はここで間違いありません。やはり萃香の言葉は嘘か勘違いという事になりそうです」

 なるほど、そうですか。
 怪獣らしきものに見える何かはありますか?

「北方にとても大きな山がありますね、形は多少歪んでおり靴に似てなくもないです」

 では、それを勘違いした可能性が高くなりますね?

「そう思います。こうして私も近付いて見ている最中なのですが、どう見ても只の………え? 何これ」

 どうしました?

「こ、これは巨大な靴下です! まさしく靴下です! 吹雪が晴れたら一切の証明が出来ると思います!」

 落ち着いて下さい。
 こちらには何の事か全然伝わりません。
 何故、靴下だと?

「あ、ああっ……萃香は嘘吐きじゃなかった……大変……だとしたら近くに……くそっ、吹雪さえ……」

 藍さん? 藍さーん?
 勝手な行動は謹んで下さい。
 雪山での単独行動は危険極まりないですよ〜。

「……ああ!? 何かでっかいのが見えます! 凄い……と、とびっきりでっかい二本の柱です!……ち、違う! 膝から下!?」

 でかいの? あ、藍さーん?? 

「マジでっ!?」

 あの〜……。

「レ、レ……レ……」

 レ?

「レティクール!!」

 え? 何クール?

「…………」

 藍さーん。
 あれ? どうしました?
 藍さーん?

――ドドドドドッ……

 え? この音は何ですか?
 何か流されるような……

――ドガッ……ドドドドッ……

 もしかして、雪崩?

「………ガガッ……ザザッ……く〜ろ〜……ま〜………ザザッ……ガビー……」 

 や、やばいわ、スキマ止めて、スキマ!
 どうしたのよ、藍? 藍?
 そっちで何があったの?
 返事くらいなさいな。

「……その…レティ……天空を……貫く……ぐふっ!」

 な!? まさか、まさか貴女! 伝説のフロストジャイアントが見えてしまったというの!?
 駄目よ! 戻ってきなさい! 早くっ!
 とにかく見ては駄目よ! それは見ては駄目! 目を塞いで逃げて!
 全て忘れるのよー!!

「………ザザッ……ピーッ……!」

 ちっ、発信音が……!
 緊急事態だわ、警戒レベル3だわ、アーアー、幻想郷全ての妖怪に告ぐ! Lが目覚めた! 繰り返す! Lが目覚めた!
 総員、速やかに戦闘配置に付け!
 ……藍、そこにじっとしてるのよ! すぐに私が救援に向うから待っ――

『紫様〜、味噌ラーメンが出来ました〜』

 あ、ラーメン出来ちゃったの!?
 橙ラーメン来たわよコレ、どうしましょう? ラーメンが先かな? 先でいいかな?
 どう思う藍? 私は伸びたら大変だと思う!

「………………」

 大丈夫よね。
 藍は強い子だものね。
 ううん、言わなくても解るわ。
 すぐ行くからね、食べたら行くからね、待ってなさいね!

『伸びますよ〜?』

 はぁ〜い♪

 

 

 

 

■スキマからのメッセージ

以上、スキマニュースでした。
それでは、良い夜を。



SS
Index

2006年1月13日 はむすた

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