月九ドラマ 霧雨家の人々

 

 

 

「まだシラを切るって言うのね……!」
「お義母さん、信じてくださいよ、私がアリス以外に手を出すような魔法使いに見えますか?」

 霧雨邸。
 蔦が伸び放題の玄関の前に、唾を飛ばして迫る魔界神と、対照的に冷めた顔の魔法使いがいた。

「いいわ、この写真を見なさい!」
「ほぅ、これは……」
「もう言い逃れ出来ないんだから! 興信所の射命丸さんに頼んで調査してもらったのよ!」
「お義母さん、こんなのは合成ですよ、合成。私はパチュリーなんて魔法使いは知りませんって」
「じゃあ、こっちはどう!」
「む……」
「昼間から霊夢のこんな所に手を入れて! 破廉恥極まりないわ! どういう教育を受けてきたのかしら!」
「そんな目くじら立てることじゃないでしょう、誰だって冷え切った夜に、開いてる腋を見つけたら手を突っ込むでしょう?」
「突っ込まないわよ!」
「どうかなぁ、口じゃあそう言っててもなぁ」
「とにかく、霊夢とパチュリーからは手を引きなさい! そうしないとアリスちゃんに全部ばらしちゃうんだから!」
「…………」
「……なによ?」
「やれやれ、嫌になるぜ。これだから田舎の魔界神ってのは困るんだよ……」
「開き直るつもり!?」
「ここに来る前にアリスの所によって来たんだろ? どうだい、あいつの目はもう華やかな都会に向いてるんだ。都会には自由な恋愛がある。それを楽しむ権利がある、一対一なんて古い考えは幻想郷じゃ通用しないぜ」
「馬鹿なこと言わないで! あなただってアリスちゃんが好きって言ってたじゃないの!」
「言ったさ。でも、私はアリスも好き、霊夢も好き、パチュリーも好き、みんなが好きなんだ。だって一人に決めたら残ったのが可愛そうじゃないか。そうだろう? ははっ、ここが私のスタート地点で誰とゴールを迎えるかは私の自由なのさ!」
「こ、この外道!」
「もういいかな? 忙しいんすよ、こっちは。これから神社の炬燵に足を突っ込んで、寝ている霊夢のふくらはぎでもぷにぷにして喜ばせてあげないといけない。それがすんだら図書館で弾幕のシャワーを浴びてから、パチュリーの大切なものを頂きにしっぽりするんだぜ」
「ま、まさか大切なものって……!」
「おおっと、それを私の口から言わせるんですかい?」
「あなたアリスちゃんにもっ!?」
「あっはっはっは! アリスねぇ、あいつはいい、朝まで私を(蓬莱人形が)離してくれなくて死にそうになったぜー!」

――ギラッ

「……」
「……ハァハァ……」
「……仕舞えよ、そんな物騒なものは」
「許さない……」
「手が震えてるぜ、虫も殺さないような顔してるあんたにアホ毛で人が刺せるのか?」
「別れて、お願い別れて――アリスちゃんは純朴なの!」
「お義母さん、現実が見えていない」
「汚れてる魔法使いなんかに解らないわ! あの子は優しい子、私の帰りに合わせてご飯が炊き上がる時間を調整してくれる優しい子だったの! 立った立ったお米が立った! 一方クララは……ちきしょおクララが!」
「落ち着けよ」
「一時の気の迷いよ! そうよ、ここで別れさせてもアリスちゃんならいつかきっと分かってくれる!」
「好きあってるんだぜ?」
「聞きたくない!! アリスちゃんを返してっ!!」
「ふんっ……お義母さんはさっきからアリスアリスって言ってますけどね」
「ええ!」
「どうも本当に大切にしてるのは、お義母さん、あなたの立場なんじゃないですか……?」
「だ……黙れぇぇぇえ!!」

――ザクッ

「……」
「……」
「……アリス……?」
「えへへ、間に合った……」
「お前、なんでここに……いや、それよりさっきの話、い、いやそれより、お、おい!」
「良かった……魔理沙が無事で……」

――ドサッ

「アリス!! どうしてだよ、アリス! しっかりしてくれ、オイ何突っ立ってんだ魔界神、早く安全マットを!」
「……アァ、アァァ」
「なんで私なんて庇ったんだ……! お前、知ってたんだろう、全部知ってたんだろう、なのに、なんで、なんでだよぉ!」
「魔理沙……」
「頼むよ、頼むから生きて――」
「……好きよ……」

――ガクッ

「おい? アリス? アリ……アリスゥゥゥウーーー!!」

 

 

 

 

■ 霧雨家の人々、次回予告。



アリスの捨て身を見て、ようやく真実の愛に目覚めた魔理沙。
名医八意先生の活躍もあり、アリスは何とか一命を取り留めたのだが……。
その下半身には、まだ甘い痺れが残っていた……。

幻想郷全ての愛人関係を清算し、魔理沙はリハビリを続けるアリスを支えようと誓った。

「アリス……」
「へっちゃらよ、このくらい」

真人間になろうと魔理沙は、怪しげなメガネ男の店に週三のバイトを入れる。
刺激のない日々に戻ったが、二人は確かに幸せだった。
だが、しかし! 魔理沙のいない昼の間を狙って、元愛人のパチュリーがアリスの下を訪れる……!
彼女はこれまで魔理沙が破損した本や紛失した本の請求書を持ち、今すぐ払えとやって来たのだ。
その額、なんと二億四千万ぱちぇ!

(魔理沙には言えない……わ、私が……頑張らなくちゃっ……!)

車椅子を押しながら、人形達と一緒にひたすらチョコレートぱちぇを作り続けるアリス。
一つ、また一つデコレートする過程で、病み上がりの身体は取り返しの付かない過ちを犯しているとは誰も気付かなかった。

「魔理沙、すぐに家に帰りなさい。箒は外に立ててある……」

次回! 霧雨家の人々!
「魔理沙は知る、アリスの喘ぐ夜に!」

このお話はコンテニュー出来ないのさ!



SS
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2006年12月13日 はむすた

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