四十六人の霊夢と、一人の普通の魔法使い

 

 

 

「続々と霊夢が集まってくるな……!」

 神社の境内に立っている魔理沙は汗を拭った。
 雲の無い空は、昼から暑くなるだろうと予感させていたが、今掻いた汗は間違いなく別の理由でだった。
 まさか、これほどとは……。
 整列する霊夢は今三十を越えたあたりだろうか。
 まだまだ集まってくる。
 こうして並んでいるのを見ると壮絶な思いがある、朝方神社に訪れた時の心臓が止まりそうな驚きとはまた違った、ねっとりとした恐怖が胸を侵食していた。

「魔理沙、大分長くなってきたけどこのまま並んでいいの〜?」
「あー、縦で縦で」

 こうして霊夢を素直に整列させるだけでも魔理沙側にとてつもない苦労があったのだが、ただ魔理沙は既にぼろぼろだと、それだけ言えば苦労が伝わると思うので割愛しておく。
 四十人同時夢想天生。
 拡散、無敵、三十六秒の地獄、霊夢と霊夢の喧嘩なのに被弾したのが魔理沙だけという理不尽。
 こんな世界に誰がしたのだろう。

「魔理沙、並び終わったわよ〜」
「おー、全部か? もういないかー?」
「もういないわ」
「えーっと、何人だ……」

 朝方来た時に物凄い数いたが、実際に並ばせてみると物凄かった。
 総勢46名。
 全て霊夢である。

「よし、今から大事な質問するぞ」
「え、何?」「だるいわね」「あ、お茶とってきていい?」「ちょっ、押さないで」「お手洗いいいかな?」「は〜や〜く〜し〜て〜」
「シャラップ! さっき言ったばっかりだが私の質問には一番前の奴だけで答えるんだ!」
「うん」
「根本的な質問だからな、冷静に簡潔に答えてくれよ」
「だから何よ?」

 魔理沙は大きく深呼吸してから言った。

「……なんで霊夢増えてるの?」

 四十六人の霊夢が一様に首を捻った。
 ぼそぼそ、と相談声が聞こえる。
 それから十三番目あたりの霊夢が自信ありげに手をあげたので、魔理沙はとりあえずその霊夢を指名した。

「十三番目だけな!」

 魔理沙は喋る霊夢は一人だと釘を刺してから、十三番目に口を開かせた。

「よし、言ってみろ!」
「大したことじゃないんだけどさ、昨日ね、玄爺が神社の階段で甲羅干ししていたのよ」
「はあ?」
「それで私は普通に境内を掃除してたんだけどさ、最近ちょっと階段の方ほったらかしにしてたなって、階段を掃除しようかなってそっちの方へ歩いていったのね」
「あ、うん。で?」
「でもさー、まさか階段に玄爺が寝そべってるなんて思わないじゃない?」
「まあな」
「だから私もあんまり下みないで一気に駆け下りたのよ、そしたら悪いことに玄爺踏んじゃってさぁ……」
「そりゃ災難だな玄爺も……それがどうかしたのか?」
「だから階段に亀よ。分かるでしょう? 私もすぐに気付いて離れれば良かったんだけど、そのまま、ぽいん、ぽいんとしばらくそこで……」

 ちょっと待てと、魔理沙は右手で霊夢の発言を遮って、左手はおでこに当てた。
 これはあれか、超有名な――。  

「無限1UPっすか!?」
「ん、まあ」

 頭痛がした、眩暈がした。
 倒れこみそうな魔理沙を霊夢はしれっとした顔で見下ろしていた 

「あのさぁ、階段での亀の扱いは慎重にって口がすっぱくなるほど前にさぁ……!!」
「めんご、めんご」
「可愛いだけにむかつくんだよその姿勢! 猛省して状況を認識して何とかしようという気概を見せてみろよおたんこ巫女!」
「だってさぁ」
「どうすんだよこんなに増えて、46、46人だぜ!? お前一人でも貧乏神社の賽銭箱じゃ養いきれてなかったってのに、46人もどうやって食っていくのよ!?」
「増えた分は魔理沙に養ってもらおう」
「四十五人!?」
「四十六人」
「全員じゃねえか!」

 魔理沙は突っ込みを入れた。
 霊夢の胸にパンと音を立てたしなやかな突込みが入った。
 ただ、それはありふれた突っ込みだったのだけど、不幸にも二つの原因が、これを普通の突っ込みに終わらせてくれなかった。
 一つ、霊夢達は縦にぎっしりと並んでいたこと。
 もう一つ、悲しいけど、霊夢の胸が控えめだったこと。
 つまり衝撃吸収には頼りない控えめな胸が、魔理沙が加えた力をちっとも緩衝せずそのまま次の霊夢へと伝え、また次の霊夢も同じようにぺったんこであったのでやっぱり次の次の霊夢へと伝え、それが四十五回繰り返されて一番最後の巫女、つまり四十六番目に伝わったのである。
 一番最後の霊夢の立ち位置は、鳥居を超えて、階段のすぐ上だった。
 それまでも結構微妙なバランスで立っていたのである。
 そこに強烈な突込みが来た。
 イヤッホー、という勢いで霊夢は階段に飛んだ。

「れ、れいむーっ!?」

 予想してなかった事態を前にして、魔理沙は焦った。
 魔理沙は四十五人の霊夢の横を超加速して、階段に飛び出した霊夢へと追いすがった。
 既に霊夢は凄まじい勢いで転がっていた。
 楽しそうなほど素直な回転を繰り返しながら、下へ下へと下っていった。
 時に力強く縦にローリングアタック、時に滑らかに横にソニックブーム、そんな回転を繰り返しながら神社の階段を全て終えて、そのまま坂道へと転がり出した。
 箒も取らず走り出した魔理沙は、その勢いに追いつけない。
 しかし魔理沙には、四十五人の心強い仲間達がいたのだ!
 四十五人の霊夢達は次々と手を繋いで、最後の右手を魔理沙に差し出した。

「こ、これは一体!?」 
「四十五人分の霊夢の力を魔理沙に合わせるわ! いくわよ! 霊夢ターッチ!」

 四十五人の博麗の巫女の力をあわせた、その結果!

 別に速くはならなかった……。


――――


 転がってった霊夢は森に突っ込み、木々を薙ぎ倒しながら走り、最後には池にざぶんと落ちた。
 結局、魔理沙達が駆けつけた頃には、その波紋すら消えていて、池を覗き込んでも霊夢の姿はどこにも見えなかった。
 
「なんてこった、霊夢、霊夢!」

 魔理沙は水面を叩き、池の底に呼びかけた。
 返事はなかった、底はどんよりとしていて窺い知れない。

「別に46分の1霊夢なんだから、一人くらいいなくなってもいいんじゃないの?」
「馬鹿野郎! この世界にいなくていい霊夢なんていないんだよ!」

 魔理沙の熱血反論には、さすがの霊夢もはっと口に手を当てて目を潤ませた。
 それから46人で池の底に呼びかけたが、期待してたような変化は一向に見られず、いよいよ魔理沙は帽子を取ると、池に飛び込もうとした。

 ――その時である。

 池がぺかーっと光った。

 オレンジ色の光の下から、同じように輝く人物が顔を見せた。
 その眩しさは魔理沙でも思わず目を細めるほどだったが、その人物は霊夢ではなく、ルーミアに似た女神様だった。
 あ、もしかしてこれは、と魔理沙は悟った。
 落し物を池に落とした時の定番ってものがある。
 
「お前が落としたのは〜――」

 ほらほら、きたぜ。

「この金のアリスなのかー? それとも銀のアリスなのかー?」
「いいや、私が落としたのは普通の霊――アリス!? なんで!? 私が落としたのは霊夢だよ!? 博麗霊夢だっての! ドーユーアンダースタン!?」 
「ほう、お前はとても正直な奴なのだー。お前には褒美にこの金、銀、パールのアリスをあげましょう」
「いらな――パール!?」

 まあまあいいから、と三種のアリスを無理やり押し付けると、女神はぶくぶくと池に沈んでいった。
 困ったのは魔理沙である。
 左に金、右に銀、後ろにパール、キラキラと光るアリスが三方向から魔理沙をじっと見つめている。
 しかもアリスさん全員半笑いである、目だけ笑ってない、某有名RPGのスライムみたいな笑いなので、囲まれてる魔理沙はこれなんの虐めだよという気分である。
 四十五人の霊夢は遠巻きにひそひそ噂していた。
 
「霊夢、手伝ってくれ、とりあえずアリス像は邪魔だから池に戻そ、いっ!? あれ、今だれか私蹴らなかった!? 変だなぁ、おーい霊夢、頼むよ、早いとこ戻してしま、いたぁ!? ちょっ、お前今絶対動いたろ!? なあ!? 金のアリスさんあんた動けるんだろ!?」

 金像をマジで問い詰める魔理沙の姿に引いて、霊夢達は2m下がった。
 魔理沙は半泣きでアリス達の処理を諦め、池に向かって今度は大きな石を二、三個投げ込んだ。
 池がまた、ぺかーって光る。
 
「神聖な泉になんてことするのだー!」
「バカ! 無茶苦茶どんよりとして藻まで漂ってるのに何が神聖だ! 尤も、お前の池のせいでこっちの気分は更にどんよりとしてるがな!」
「落し物はちゃんと返したのに、一体何が不満なのだ?」
「私はアリスなんて捨ててないんだよ。落としのは博麗霊夢だ、霊夢をここにもってこい」
「えー、そんな人落ちてきたかなー?」
「来てるって絶対、もっとちゃんと池の中探してこいよ」
「むー……」

 女神が一度引っ込んだ。
 しばらく待つ。
 続けて輝きながら上がって来た女神は、今度は確かに両手に霊夢を持っていた。
 …………確かに持っていたが。

「お前が落としたのは、こっちの白スク水霊夢なのかー? それともこちらの紺ブルマー霊夢なのかー?」

 瞬間、魔理沙に衝撃走る……!
 なんてこった、やっこさんスゴイレアな霊夢を引っ張ってきやがった……!
 ルーミア似の女神が持ち上げてきたのは、間違いなく霊夢だったが、服装がかなり特殊な霊夢であり、魔理沙のハートをがっちりとキャッチした。
 いやぁ、いいのかなぁと、魔理沙の頬が緩む。
 このまま普通の霊夢を返してもらえば流れ的にスク水とブルマーもついてくるわけで、でもそれは霊夢救出の為には避けては通れない仕事であるからして全く問題ないし、むしろ後ろめたく感じる必要なんて微塵もない行為なわけで、私はこのまま普通の霊夢を返してくださいと言うだけで全てが終わるのだと、そこまで自分を説得してから魔理沙は叫んだ。

「いいや、私が落としたのは普通の霊夢だぜ!」
「そーなのかー」
 
 女神はそれだけ言うと二人の霊夢を持ってぶくぶくと池に沈んでしまった。

 …………。

「ちょっと!? え、何なの!? 確認しただけ!?」

 魔理沙は水面を叩いた。
 それはもう親の敵のように叩きまくった。
 しかし出てこない。
 
「こんなことってあるかよ……! いらないアリスだけ押し付けといて、肝心な霊夢をスルー、いてぇ!? すんませんアリスさん!」

 とりあえず金のアリスを刺激しないように謝ってから、憎々しげに池の底を睨む。

「ぐぬぬ、魔理沙さんを馬鹿にした礼は高くつくぜ……!」

 魔理沙は四十五人の霊夢を集合させた。
 そして四十五人の霊夢……と3人のアリスで円陣を組む。
 それから、みんなで悪巧みに入った。
 いけ好かない女神を引き摺り上げて、ついでに霊夢を取り戻す方法をこれでもかと語り合った。
 普通の霊夢? 馬鹿野郎! ここまで来たら満足いくまで取るんだ!
 スク水も、ブルマも、腋巫女も、一人だって欠けたエンディングは迎えさせねえ!!
 そんな魔理沙の意見に胸を打たれ、みんなの心が一つになった。

「いくぞぉぉー!」

 魔理沙と霊夢は力を合わせ、転がる霊夢が通過したときに薙ぎ倒した木を丸ごと一本持って、池に――。

「えいやっさ!」

 と投げ込んだ。

「ごほごほっ、な、なんてことするのだ、池が滅茶苦茶になってしまったのだー!」
「お前がさっさと霊夢を返さないから悪いんだ!」
「全く落し物のレベルってのを考えて欲しいのだ、ついでに普通の霊夢なんて落ちてきてないって何度言えば理解してもらえるのだろうか!?」
「え? 本当に? 巫女服来た少女が落ちてきてないの?」
「来てないのだ。最近落ちてきたのは、腋が開いた変な服着てる女の子くらいなのだ」
「そいつだよ!!」
「え、あの子なのか? 全然普通っぽくなくて解らなかったのだ」
「まあ、珍しい服だけどあんまりだな……それじゃあ、解ったところで早く霊夢を返してくれよ」
「ふふん、これだけ池を滅茶苦茶にして、ただで返してもらおうなんて甘すぎるのだ」
「なんだと?」
「私は落し物の女神! 今回の霊夢さんには落し物のルールを適用させていただきます!」
「つまりなんだよ?」
「一割頂く!」

 ルーミア似の女神は指を突きつけて、そう宣言した。
 魔理沙は頭をぽりぽりと掻いて、あー、いいよ、と答えた。
 どうせ一割、春度か袖くらいなら余ってるから幾らでもくれてやるよと魔理沙は軽く考えていた。

「私は霊夢さんの一割! 腋を頂く!」

 ピシャ、ドゴォーン! と漫画的な雷鳴が魔理沙と森を切り裂いた。
 馬鹿な、こんな短時間で霊夢の急所を知り得たとは……! この女神の観察眼、只者ではない!
 魔理沙は膝を折って土に手をついた。
 お茶の水博士に「では、わしはアトムから電子頭脳と原子力エンジンをもらうことにするよ」と言われたサーカスの団長の気持ちが今なら理解できた。
 それにしても腋かぁ、くそぉ……!
 突きつけられた指が今は剣のように見える、ああ、ここが戦場じゃなかったら、この女神をいつか友と呼べただろうに……!

「本気なのか、おい……! 霊夢から腋を奪ったら優しさくらいしか残らないじゃないか……!」
「むしろお前の優しさに全米が泣いたのだ」
「な、なぁ、腋以外にどっかないのか、他にいっぱいあるだろ、どうしても腋じゃないと駄目って話じゃないだろ?」
「いいや、駄目だね。条件が呑めないなら素直に帰るんだね」
「こ、この野郎! 腋下見やがって……!」
「それを言うなら足下なのだ」
「……分かったよ、交渉決裂だ女神さん。穏便に済めばと思っていたが……なんて、私は最初からこうするつもりだったんだけどな!」
「なに?」

 女神の上空を45人の霊夢が囲んでいた。

「神と戦おうとでもいうのか!?」
「その通りだ、最後には強い奴が全てを手に入れる。実にシンプルで結構な答えじゃないか……!」
「いや、そちらの45+1+1という構成は複雑で卑怯だと思うのだけど……」
「戦場に卑怯もヘチマもないんだよ!」

 会話の隙にゴールデンアリスも自慢の蹴りを浴びせるべく、地味に間合いまで移動していた。

「ふふふ……」
「何がおかしい!?」
「お前達は私のことを、そのへんに飛んでたはらぺこ妖怪と同じように思っているようだが、全くの見当違いだ。私はあいつよりずっと強い!」
「じゃあ、やってみろ……!」
「いいだろう! 神の力、お前に見せてやるのだ! くらえ! 神技! 閉じちゃうムーンライトレイ!」

 魔理沙は冷静に上に移動した。

「アーッ! ずっこ!?」
「幾ら閉じても上下があるからなー……」
「迂闊なことをするなー! そういうことをしたら2Dシューティングが成立たないってのが何で分からないのだ!?」
「時代は3Dなんだよ。それ一斉攻撃」
「ぎゃあああああっ! やめてーっ! いたい、いたい! 中でも一番痛いのが針でもマスタースパークでもなくて、さっきから執拗に脛を狙って蹴ってくる金のアリスなんだけど、何なのこの人、あいたたっ!」

 攻撃は五分ほど続いて、遂に女神は大地に倒れた。
 眩かった女神は見る影も無くぼろぼろで、黒煙がプスプスと上がっている。

「よーし、この辺でいいだろう」
「うぅ……ひどい……鬼も裸足で逃げ出すような極悪非道な奴らなのだ……だが、覚えておけ、私は落し物女神四天王の中でも一番弱い存在、すぐに上の連中が――」
「そういう長くなりそうなフラグはいいから」
「仕方ない〜、霊夢は返してやるのだ……とほほ」

 池に泡が立ち上がり、霊夢がすぅーっと静かに上がって来た。
 魔理沙は「霊夢〜!」と呼びかけて走ったが、当の霊夢の口に一般人には識別不能な魚がぴちぴち跳ねていて近寄れなかった。

「あ、魔理沙。晩ご飯に良い魚が手に入ったわよ」
「えぇ〜、何この展開。もうどっから突っ込んでいいのか解らないよ、とりあえず生臭いよ……」
「じゃあ神社に帰りましょうか」
「帰る前にさー、四十六人の霊夢の一人分ってなんなのとか、とりあえず本体はどれなんだとか、白黒はっきりさせないと動きにくくてしょうがないって話だぜ」
「そっか、うーん……」

 その瞬間、池がとてつもない光を放った。
 あまりの眩しさに全員が目を塞ぐ。

「白黒はっきりさせるなら――!」

 光の中に、高い声が響いた。
 なんだ、なんだと思ってるうちに、池の水はモーゼの海のように割れて、そこから見ていられないほどの後光を背負った人物が現れた。
 あまり背は高くないが、とにかく光り方が凄まじい!
 もう、なんていうか……!

「あ、あれは!?」
「し、知っているのかルーミア似の女神!?」
「あれは……四天王最強と謳われた、ジャッジメントえーきちゃんだ!」
「なんか可愛いな!?」
「大変なことになったのだ、もうお前達は終わりなのだ……! えーきちゃんは朝早く来て一方的に説教を始め、昼になってもまだ説教は終わらず、そのまま晩御飯を食べてから帰るのがデフォという鬼女神なのだ……!」
「ただの、たかりじゃねえか!」
「いや、魔理沙……」
「え?」
「分かるわ、この女神、凄く強い……!」

 最強の霊夢ゆえに感じるものがあるのだろうか。
 突然空に暗雲が立ち込めた。
 天は泣き、大地は激しく揺れ、ジャッジメントえーきの怒りは相当なものだと肌で分かった。

「女神の一人が世話になったようですね、このお礼はたっぷりとさせてもらいます……。今すぐ白黒つけてあげましょう!」

 空気が獣のように叫びを上げていた。
 世界中の光が、女神の元へ集まっているみたいだった。
 圧倒的な力を前に、足がすくんで動けない。
 魔理沙は後悔した。
 神に逆らうなどと、安易に考えてはいけない話だったのだ。
 あぁ、自然を荒らしてしまった罪はどれだけ重いのだろう……!
 これまでか、魔法使い人生……! 楽しかったけど、もう少し生きたかったなぁ……! 
 全ての色が消し飛んで真っ白になってしまった世界で、輝く悔悟の棒が自分の首筋に張り付いているのがはっきりと見えた。 
 今……最期の審判が下ろうとしている……!



「今日のあなたのラッキーカラーは、白!」


 ……白黒つけた女神様は満足して池に沈んでいった。

 

 

 

 

■ 

君の目の前に賽銭箱がある。
君は1歩進んでそこに五十円を入れてもいいし、百円を入れてもいい。

――ひきかえすな

――さもなくば




忠告を無視して引き返した幻想郷のカッパさんはこんな不幸な目に合いました。

*アイスキューカンバーを飲もうとしたら「それ、キュウリ入ってないんでしょう?」と気分を削がれるようなことを巫女っぽい人に言われた。
*帰ってから飲もうと楽しみに冷やしておいたキューカンバーが、猫除け用ペットボトルのところに並べられていた。
*意気揚々とお店にキューカンバーを買いに行ったら、商品棚にはもう別の商品が入ってた。


大変なことになってしまいます。
神様の祟りは怖いですね。
博麗神社に赴いた際は、必ずお賽銭を入れてから帰りましょう。



SS
Index

2007年6月30日 はむすた

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