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" Phoenix " |
藤原妹紅 「あなたに恨みはないが」 さらに傘が傾いて、男の頭部すべてが露わになる。短く整えられた黒髪と、その間からにょっきり伸びる一対の白く大きな耳。右の先端がちょっと欠けた、兎の長い耳。 妖怪兎。 目を見開く妹紅の前で、傘が雨中に投げ捨てられた。たちまちその身に雨が染み、だがそんなことには一切頓着する風もなく、ヒノトは空いた手を懐へ素早く走らせ、そこから抜いたのはひと振りの小さな刃物、匕首。鞘を払うと同時、 「お命、少しばかり頂戴いたしたく」 推参致す。草鞋で泥を跳ねさせて、ヒノトは切っ先をこちらに向けて飛び出してきた。 はっと妹紅が我に返ったとき、彼我の間合いは既に三歩もなかった。もはやかわせる距離ではない。 そもそもかわすつもりなどなかった。ほとんど思考を挟まず、妹紅も戸口から外へと踏み出している。降雨が頬を濡らすよりも早く、ぬかるんだ地面を力強く踏みしめて、 「くれてやるものか!」 |
ある年の梅雨、彼は雨と共に訪れた。 一羽のイナバとの出会いから、妹紅は奇妙な戦いへと巻き込まれてしまう。 イナバたちによる紅魔館への奇襲計画 「サルベージ作戦」
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" Black Fly " |
霧雨魔理沙(恋符) 「確かに、それなりの契約金は結んださ。だけどそれよりなにより」 傾いだ陽光を頬に受けて、魔理沙はやや上気した笑顔を作る。 「私は恋の魔法使いだからな。人の恋路を助けてなんぼの商売だ。邪魔する奴は、流れ星となって蹴り殺してくれるぜ」 |
" Silver Hawk " |
十六夜咲夜 レミリアは右手を頬に添え、わざとらしい溜め息を吐く。 「困るわー、雨は動けないわー」 「私は動けますよ」 咲夜が目を細めて、薫るような微笑を浮かべた。 レミリアは横目で睨んで、しっしと追い払うように手を振る。 「じゃあ動いて」 「はい。お嬢様はどうぞ、ごゆっくり」 涼やかな声を残し、咲夜は姿を消した。 |
" Desperado " |
鈴仙・優曇華院・イナバ ああ、いやだいやだ。 だからこんな戦いに加わるのは嫌だったんだ。月に残してきた罪を思い出すばかりで、気が重くなる。 もう仲間が倒れるところを見るのは御免だ。自分を頼りにしてくれた仲間に報いることができないなんて真っ平だ。 |
" Strega " " Keepers Core " |
パチュリー・ノーレッジ&小悪魔 「……ここのところ色々あったから疲れてるのよ。例によって濡れ鼠が泥棒に来たり、何度も決闘させられたり」 本を閉じると腕を伸ばし、テーブルに上体を投げ出すようにする。むきゅう。 「だいたい、私に指揮能力みたいなものを期待するの? 末期のゲーリング並よ、私」 「打撃力は全盛期のロンメル師団並みでしょう。そちらを期待しているんです」 要するに前線へ出てほしいのだ。ひと山いくら程度の妖怪なら何匹だろうと、パチュリーひとりで粉砕できるだろう。途中で喘息の発作に襲われるといったアクシデントでも起こらない限り。 それでもパチュリーはいやいやと駄々をこねた。レミリアなどの前ではまず見せない姿で、甘えられているような気がして小悪魔はちょっとだけ嬉しい。だが、ここは心を鬼にする。だって悪魔だから。 「ね、お願いしますよ」 「責任って言ったけどね、私のそれは、この図書館内でのみ発生するのよ。ここが戦場になるってのならともかく、外のことまでは負いかねるわ」 |
" Rabio Lepus " |
因幡てゐ それでも、てゐの顔には不安の色どころか、状況を楽しんでいる様子すらあった。 陽動とはつまり敵を引っ掛ける技術、詐欺行為に通じ、これはてゐの本懐でもある。活き活きとしてくるのは、むしろ当然なのかもしれない。 「いつだったか、島津に釣り野伏を伝授したときのことを思い出すなあ」 誰も聞いていないと思って、大法螺を吹くのである。聞かれていたとしても構わないのだろうけれど。 |
" Red Wasp " |
レミリア・スカーレット チェーンギャング。本来ならこのままオーラを急速に膨張、爆発させて対象にダメージを与えるのだが、レミリアはそうしなかった。 互いを結ぶ鎖の端をぐっと握ると、ちっちゃな牙を剥いて、 「ちょろちょろするな、このネズ公っ」 |
" Scarlet Bee " |
Unknown?? 「……お姉様が、ね」 |
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明日晴れたら、戦場へ
表紙:KOTO
戦術級弾幕ラヴコメ ふじつぼ 東1ホール L54b 文庫 172頁 頒布価格 600円 書店価格 735円(税込) 「紹介動画」 委託 とらのあな メロンブックス
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雨なら歌おう。 Let Us Sing If It Rains.
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