なぜミス・クィンが死んだのか
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誰も知らない小さな噂。
オーグベルト大公が何故それを建てたのか、結局誰も分からなかった。
もうそれの完成当時にはオーグベルト大公の状態は末期であったし、今の主人は生後まもなくの幼児だった。
避暑の別荘にしてはあまりに簡素で、手入れさえされていないそれは、10巻にもわたる大公の全所有物名簿にさえ一行も記載されていない。
その上、設計も、家具も、インテリアも、関わった人物は誰1人として分からないまま現在にいたっている。
だた1つ言えるのは「薔薇のアンクル」は最初から死んでいたということだ。
主人のミス・クィンと同じように……。
最初はただの嘘の噂だった。
ミス・クィンの両親が呪われているという噂を、迷信深い使用人が漏らしたのが愚かな始まり。
もっとも不幸なのはそれを大公が信じた事だ。
ミス・クィンの欲がミス・クィンを殺すだろうという嘘を、ミス・クィンが死ねば大公も死ぬという噂を。
皆大公に従い、そしてそれは「事実」になった。
その年にミス・クィンの両親は死んだ。
それから10年ミス・クィンには何も与えられなかった。
うかれる恋はブクブクに太った溺死体に代わり、こっそり味わう大人の味はブドウ畑ごと燃やされ、初めての冒険は代償としてその両足と、右目を取っていった。
誰にも会うことを許されなかったし、存在も無い物とされた。
それが、ミス・クィンと呼ばれるものだった。
11年目の春。
オーグベルト大公が死んだ。
遺書には、
ミス・クィンに「薔薇のアンクル」と「三本足の柩」、それと2人のメイドを与える。
ミス・クィンは死んだ。私がジワジワと殺したのだ。
そのせいで一族は呪われた。哀れだ。
ミス・クィンは呪いそのものだ。
ミス・クィンに生なるを知らせよ。
そう書かれていた。
一族は狼狽した。哀れな一族はミス・クィンを殺そうとした。
そうすれば生きられると、そうすれば呪いにかからないと信じたからだ。
だが、そうではなかったし、そうはならなかった。
「三本足の柩」と2人のメイドがそうさせなかった。
遺書が発表される前に2人のメイドは「三本足の柩」を既に用意していた。
あらゆる物から守り、遠ざけ、破壊し、主人を守る。
マジックドールの中でも数少ない「エクストリーム」の1つ。
彼女は殺される前にそれに座った。
だから、もう1つの「柩」へ収まれた。
その日から「薔薇のアンクル」は銃声をもって平和とし、狂乱をもって愛となった。
一族は哀れなマジックドール、哀れな「クラウン」達をもって「薔薇のアンクル」に挑み、そして破壊され、また挑み、幾度となくミス・クィンを殺そうとした。
呆れたことに、今でも誰一人としてオーグベルト大公の言葉を理解するものは居なかった。
悲しく哀れな、そして狂った一族だけでなく、ミス・クィンと2人のメイドでさえ何故そうなのか疑問すらわかなかった。
無理もない。ミス・クィンは「狂う」という事が何かを知らないし、2人のメイドも昔から「そういうもの」だからだ。
目覚めとともに銃声が響き、庭には死体とガレキの山。
ミス・クィンはそれを横目に朝食をとり、お茶を飲み、そしていつものように退屈そうにあくびをする。
それが、ここでは普通なのだ。
それが、「薔薇のアンクル」という柩なのだ。
ミス・クィンが知るまでは……。
そんな、誰も知らない小さな噂。
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