サンタ・「ヘイバーマン」
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誰も知らない小さな噂。
普段、我々がみてるものは酷く利己的で断片的だ。
必要ないものはその存在や、理由すらなくしてしまう。
有事の時に出てくる「なんとか」評論家は普段何をしているのか、テレビにでてこなくなった「アイドル」は普段何をしているのか……。
……そして、12月24日の「あの人」は普段何をしているのか。
サンタ・ヘイバーマンはサンタクロースではない。プレゼントを配らないし、ソリに乗るわけでもトナカイがいるわけでもない。しかも、「ヘイバーマン」だ。「ヘイバーマン」にサンタの名がつくなんて実に滑稽な話だが、悲しい事に事実でしかない。
「ヘイバーマン、サンタ、ヘイバーマン、サンタ……」
逃げ込んだ廃屋で、頭より一周りは大きいオーガアームを器用に使って、拾った枯れ枝を先からポキポキとおっていく。
主人の部屋で見た映画では花を使っていた。
こんな田舎なら幾らでも花はありそうだが、あいにく外は雪。
「サンタ……」
枝はもう無い、仕方なく幹を折った。
「ヘイバーマン……」
まだ折れる。後一回は折れる。
「……」
ぽいっと、幹を投げ捨てて、サンタ・ヘイバーマンは外を見た。
壊れた屋根の隙間から雪がフラフラ迷い込んでくる。
あれは事故だ。もし人であればサンタ・ヘイバーマンに非は無かっただろうし、名前に「ヘイバーマン」がつくことも無かっただろうが…。
「マジックドールに人権は無い……。」
「主人殺しは正当防衛に入らない……。」
「マジックドール三原則に当てはまらない……。」
迷い込んだ雪が真っ赤な腕に落ち、すぐに染み込むように溶けて消えた。
「非常に危険。よって、破壊を宣告する……か。」
しかし、サンタ・ヘイバーマンはそうではなかった。
性的暴力に晒されそうになっても、体中を改造されても、破壊されそうになっても、そうではなかった。
「あらら、かわいいお客さんね。うちの廃屋に何か御用?」
女の柔らかい声。
サンタ・ヘイバーマンは無我夢中で飛び退いた。
サンタの名の由来である赤いハーフコートがひらりと舞う。
見上げてみれば、若いが物腰の柔らかそうな女性がそこに居た。
油断した…いつの間にやらうつうつと寝そうになっていたらしい。
……どうしようか?どうする?殺す?まさか……
「駄目よ~。こんなところにいちゃ~。町に1人「ヘイバーマン」が逃げ込んだのよ。とっても危険!」
相手は気付いていない?
それでも、「ヘイバーマン」と聞いて思わず身を硬くする。
「大きな手ねぇ~。分かった!工場区の子でしょ?」
なんだかよく分からないが、やり過ごすためにとにかく頷いた。
畑しかない田舎なのに工場区なんてあるのか……
「やっぱりねぇ~!?そうだと思ったわぁ~。そとは危険な人が一杯よ!ほら、家にきなさいな。」
「でも、その、迷惑だし……」
すぐ側を軍のトラックがけたたましく通っていく。
「なに言ってるの。さぁさぁ、はやく!」
毛布でグルグル巻にされ、強引に腕を引かれ、ぐいぐい押され、頭をなでられ、抱きつかれられ、近所の愚痴を聞かされ、気が付いたらおんぼろ小屋でお茶を飲んでいた。
うとうとと睡魔は広がるばかりだというのに。
「あたしねぇー、ホントはこんな可愛い妹が欲しかったのよぉ~。それなのに、できたのは弟!もう、可愛くないんだから。この間なんかねぇ……」
視界が狭くなっていく…
……真っ暗だ。
早く、逃げないと、離れないと。
頭を撫でられてる、あったかい。
背中に毛布がかけられる感触。
「お休み、かわいいサンタさん。」
次の朝、郊外の林で大砲がなった。
爆発が起きた。
粉塵が舞い、木々も幾つか吹き飛んだ。
爆音でマリーも飛び起きた。
体をぺたぺたと触る。
「……あら、生きてるじゃない。やっぱりあの子いい子ね。」
そのいい子はとっくに町を出たと分かったのは、それから2呼吸必要だった。
階段を下りると、やっぱり飲み干されたカップと置手紙が。
かくまってくれて、ありがとう。
迷惑がかかりますから、もう出ます。
毛布借ります。
また返しに来ます。
何度か読み終わる頃には、爆発音はもう随分と遠くなっていた。
「……バカねぇ。妹が欲しいって言ったじゃない。」
次の日、政府は軍の大規模な「ヘイバーマン」狩りなど行っていないと見解した。
だからこれは全て嘘だ。こんなこと全く起こっていないし、サンタ・ヘイバーマンが人の家でお茶を飲んだのも嘘だ。
ただのデマで、へんてこな噂だ。
サンタ・ヘイバーマンは今も昔も非道で残虐なマジックドールに違いないんだから……。
そんな、誰も知らない小さな噂。
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