無邪気と従属の夜明け






誰も知らない小さな噂。


人とは曖昧なもので、嘘も平気でつき、騙し、裏切ったりする。

だが、それだけが全てではない。

その中でもなお不屈として従うものがいる事を忘れてはならない。

冷静で寡黙、絶対にして従属、そして、ただそれだけの「イェーガー」。

彼女はそういう女だ。

朝に狂った棺桶の中で「クラウン」を狩り、昼に屋敷を整理し、夜にお嬢様の遊び相手をし、罠を仕掛けて寝る。

それが毎日の女だ。

それは「薔薇のアンクル」に2人いるメイドの内の1人。

名をホーリーといった。



眉毛は寸分も動かない、口調も穏やか。

だが、内心は今すぐにでもその後頭部を撃ち抜きたかった。

「これ、どう思う?ホーリー。」

……まただ。

「かしこまりました。お嬢様。」

一体こんな物をどうするか、お嬢様が指差したのは自動芋皮ムキ機だった。

きっと意味はないのだろう、これまで倉庫に詰め込んだガラクタと同じだ。

大抵、包装もとかないうちにもういいわ、と言って見向きもしないのだ。

全く、無駄の以外の何者でもない。

ホーリーはそんなミス・クィンが嫌いだった。

いやむしろ、大嫌いだった。

だが、彼女はそれ以上に従属で、なにを言ってもかしこまりました、と言うだけだ。

それが契約であり、それが彼女にとっての絶対であった。



あれから1年が過ぎていた。

いい陽気だった。

冬は過ぎ、天気は穏やかで、ただ居るだけで気持ちいい。

「ねぇ、ホーリー。私、外の様子をほとんど知らないわ。」

それは、もちろんホーリーが見せてないからに決まっているが。

「知るべきだと思わない?」

まさか、冗談を……

「で、このニューサーというものなんだけど……。」

それは、お嬢様に渡すカタログにほんの一行、見落としてしまいかねない小さな字で、ニューサーでも好評と書いてあった。

ニューサーとは最新の事件や出来事のみ扱う、小型のスキャナーにあたる。

「どう思う?ホーリー。」

答えは決まっていた。

「かしこまりました。お嬢様。」

いい陽気だった。

ただ、それは天気だけに限った話だが…。



本館よりも大きい倉庫はすぐに満杯になった。

すぐ返品するようにしたが、受け付けないところもあり、事態が好転する事はありえなかった。

やっぱりこうなったか…

「ホーリー。いるならおいでなさい。」

あれからお嬢様はニューサーに張り付いている。

そして、ときおりこうやってホーリーの名を呼んで言うのだ。

「ねぇ、ホーリー。」

これが必要だとは思わない?と。

「御覧なさい。」

……いつもと違う続きに、ゾワゾワと嫌な予感が湧き出してくる。

見るな、危険だと頭の何かが訴えていたが、従属は絶対でありそれが変わることなどありえない。

「素晴らしいと思わない?」

そこには何かの影が見えた。

あまりにすばやいため残像しか写されていないそれ。

「ホーリー、私には足りないものが多すぎるけれど、足りてないものはどこにもなかった。…でも、それも今日でお終い。」

それは最新のニュース。

北の田舎町で「あるもの」が暴れ、「クラウン」たちと戦ったという事件。

「これにはあるわ。」

ゾッとした。

これは、まさか……

ミス・クィンはゆっくりとニューサーの画面を指差した。

「サンタ・「ヘイバーマン」には、……そうじゃない?」

あぁ、それ以上は言ってはいけない。

頼むから。

「……どう思う?ホーリー。」

しばらく間を置いて、一度大きく息を吸うと、ホーリーは言った。

「……かしこまりました。お嬢様。」




物事の始まりとはダイスを振るより簡単に起こるもの。

あの長く凍りついた夜はあっという間に割れて溶け出し。

白む空がこの「薔薇」を撫で、耳元で朝をささやき始める。

そう、そして、「三本足の柩」はいびきを止めた。



そんな、誰も知らない小さな噂。




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