あなたと生きたい










――永遠に終わらない夜――

 異常な月の異変を解決した人妖達は秋の月夜を楽しもうと
それまで出会った者達としばしの宴を開いていた。

「この、マイクを貸しなさい夜雀、次は私が歌う番なんだから!」
「やだやだー、まだ歌いたいのがあるんだもん!」

 宴会にはありがちな歌の順番争いである。
歌が専売特許の夜雀が夜の王と揉めていたその時、瀟洒な従者がその腰を上げた。

「えぇい、分からん夜雀ね!殺人ドール!!」
「ちょ、おま……ひぎぃっ!」
「歌いたいならそこの竹林で歌いなさい、私が聞いてあげるから」
「うぅ……な゙〜み゙〜だぁの、リークーエースト」
「ほう、生意気にビブラートがかかってるじゃない」
「それ震えてるだけなんじゃ……」
「さぁ終わったわね、後はお嬢様の麗しい歌を……」
「I'm香霖パスタライス♪目を閉じて〜♪」
「いいぞー香霖!」
「ちょ、なんでアンタが歌ってるのよ!」

 そんなこんなで宴会は進んでいき、飲むほうも勢いを増していった。

「飲め飲め飲めえぇぇぇいっ!」
「ゆーゆこの、ちょっといいとこ見てみたい!それイッキ!イッキ!……ってあれ?」
「もう飲み終えたけど何か?」
「鬼に匹敵するわね……」
「私の胃袋は……宇宙よ?」

 場所は永遠亭、暇を持て余していた姫はこの宴を喜んだが
遅くまで続いている宴会に屋敷の住人達は参っていた。

「うー……」
「あれ、てゐどうしたの?」
「あー鈴仙、もう遅いから寝るね……健康に悪いし」
「あら、もうこんな時間……そろそろお開きで帰ってもらおうかしら」
「そうですね、師匠」

 永琳がその旨を告げると参加していた者たちはじゃあ帰ろう、いやまだ飲める、などと
様々な反応を示していた。

「えー、夜はまだ始まったばかりじゃない。夜の王は不満だわ……そうだ、続きは神社でやろう!」
「オォォーーー!」
「ちょ、レミリア……うぅ、折角今回は片付けしないで済むと思ったのに」
「諦めろ霊夢、私も手伝ってやるからまだまだ飲もうぜ?」
「うぅ……約束だからね、魔理沙」

 吸血鬼の提案に周囲の意見は殆ど一致したようでそれぞれ酒瓶やつまみを持って
神社へ向かって羽を伸ばした。

「はい二次会開始ー!」
「萃香ぁ、お酒ー」
「ほい来た、こっちは幾ら飲んでも無くならないからドンドンいっていいよー♪」
「うわ、ちょっ……ストレートで入れないでよ、せめて水で割って」

 時はちょうど丑の刻くらい、先ほどと同じように神社での宴会が始まった。
色んな人妖が馬鹿騒ぎする中、霊夢は一人縁側に座っていた。
そこに魔理沙が話しかける。

「どうしたんだ霊夢、疲れたのか?」
「……当たり前じゃない、それより片付けする時手伝ってよね」
「あ、あぁ……あのさ霊夢、もしかして怒ってる?」
「別に……あー、そういえば魔理沙。もうちょっと考えなさいよね」
「え……な、何がだ?」
「あんたのラストスペル、初めて見たけど軌道からパターンから分かり易過ぎるのよ。アレは興ざめ」
「やっぱ怒ってるな……ごめん霊夢、足止めする気は無かったんだ」
「別に怒ってないわよ、足止めにもなってなかったし」
「うぅ……」

 数日前の事である、異変解決に向かった霊夢の前に偶然妖怪退治に出かけた魔理沙が
立ちはだかり弾幕ごっこでの勝負をする事になった。
魔理沙としては親友でありライバルである霊夢の目に物見せてやろうと張り切っていたのだが
そこは異変解決中の巫女である。
地味な努力を重ねて準備をし、一気に放った弾幕も
持てる力を出し切った魔砲も全て避けきられたのである。
おまけにこんなセリフを吐かれては凹まないはずは無かった。

「……冗談よ、そんな泣きそうな顔しないの」
「ん、くっ、ぅ……」
「……ごめん、言い過ぎた」
「う、ん……いいよ、私はただ……アレだ、その……」
「ん、何?」
「霊夢と一緒に行こうと思ったんだ、けど……紫と居たから、その」
「攻撃してきたっての?」
「じゃなくて、先に異変を解決してやろうと思ってたら偶然会ったんだよ」
「偶然会って勝負?ま、いいけど……何で私より先に異変を解決しようと思ったの?」
「そ、そりゃあその……ズバっと私が解決してだな、霊夢が私を……ああああ何でもない!」
「な、何よ急に大声出して」
「先に解決して霊夢に嫌味の一つでも言ってやろうと思ったんだよ、以上!」
「はぁ……あんたらしいわ」

 二人で盛り上がっている向こう側ではもう、宴も酣といったところ。
夜行性の妖怪たちもそろそろ家路につこうかという時間でお開きとなった。

「ふー、騒いだ騒いだ♪さぁ帰ろ」
「お嬢様、さぁ帰りましょう」
「幽々子様寝ないで下さい、うぅ重たい……」
「もう寅の刻か、僕も帰らないとな」
「こらー!あんたら片付け……はぁ」

 いつもの光景だった、宴会で騒ぐだけ騒いで後片付けは霊夢任せ。
どの妖怪もこの時だけは天狗並みの速度で分散して帰るため、
宴会疲れの霊夢には成すすべも無い。
 そしていつもは一人で片付けるのだが今日は違った。

「じゃあ魔理沙、約束どおり手伝ってね」
「あ、あぁ……そうだな」

 霊夢に言われて無理やり、というような態度で片づけを手伝う魔理沙だが顔つきが少し違う。
私生活でも片付けをろくにしない魔理沙なのに何故か機嫌のいい顔をしている。

「……何よ、そんなに片付け楽しい?」
「ん、……あーいや別に楽しくないぜ!あー詰まらん、片付けつまんないぜ!」
「変な奴……」

 そして一通り片付け終わった後、いつもはそのまま寝るのだが今日は魔理沙がいるということで
労い、なのかどうかは分からないが宴会には使わなかった茶菓子を出し
酒を抜くには丁度いい濃さのお茶を淹れた。

「しかし珍しいわねぇ……本当に手伝ってくれるなんて、掃除とか出来ない子じゃなかったっけ?」
「出来ないんじゃない、しないだけだぜ?私はやれば出来る子なんだぜ」
「そういうのに限って出来ないもんなんだけど……ほんと珍しいわ」

 魔理沙はいつもの笑顔で霊夢はいつものしたり顔。
時間は違えどいつもどおりの縁側の風景だった。
 魔理沙にとっても霊夢と縁側でお茶を啜るこの時間は何よりも大事なもので、
図書館で本を読みふけったり自室で研究や実験をしている時間とは違う、格別なものだった。

「なぁ霊夢、髪切らないのか?もう、大分伸びてるぜ?」
「切らないわよ、だって今切ったら……その……失恋、したみたいじゃない」
「……え?」
「あー何でもないわ、願掛けみたいなもんよ」
「あ、あぁ……そう、なのか」

 何気ない会話、何気ない受け答え。
しかし魔理沙にとっては意味深に受け取れた。

 霊夢が髪を切らないのは切ったら失恋したみたいで嫌、との事。
つまり今現在、恋をしている相手がいるということと受け取れる。

 魔理沙にとって霊夢は親友だったが、いつからか自分の中では親友では無くなっていた。
いや幼い頃、一緒によく遊んでいた時からそうだったのかも知れない。
友人としてではなく、魔理沙は霊夢を恋愛対象として好きなのだ。
魔理沙が自分自身の気持ちに気づいたのは最近だがとてもじゃないが言い出せなかった。

 同姓であり相手は博麗の巫女、自分は道具屋の娘で普通の魔法使い。
だから恋人になれなくても何とか親友以上の関係でありたかった。
妖怪退治の真似事をしたり弾幕の研究をしたり、霊夢の得意な分野で霊夢に近づきたかった。
しかしその想いは先ほどの会話で根底から覆されてしまった。

 霊夢に既に恋人が、思い人がいる……
20にも満たないが自分の半生が無駄になった、と思った魔理沙の表情は曇った。

「……どうしたの魔理沙?今頃飲みすぎのツケが来た?」
「あぁ、どうやら酔ってたみたいだぜ……じゃあ私は帰るぜ」
「急に何?気分悪いならゆっくりしていきなさ……」
「うるさいっ!」
「きゃっ」

 考え込んでいる時に考え事の対象である霊夢が声を掛ける。
居たたまれなくなった魔理沙は帰ろうとするが袖を掴んで静止をかけた霊夢の腕を
振り払った際に、不安定な体勢の霊夢は尻餅をついてしまった。

「ご、ごめん…………と、とにかく帰るぜ!じゃあな!」
「痛……何なのよ急に……馬鹿」


――そして翌日――

 魔理沙はほとんど眠れず朝から自己嫌悪に陥っていた。
自身の感情で何も知らない霊夢を邪険にした事、直接心を聞く勇気が無いこと、
そして何より考え込む事が性に合わないと思っていても考え込んでしまうこと。
――心が読める妖怪でも居ればそいつに頼み込んで確かめられるのに……

 などとあり得ない前提で物を考えたりと色々悩んでいたが窓を見てある事に気がついた。
日差しが強く気温も暖かい。
 朝と夜は冷えるのにこの暖かさ、即ち昼。
さっき起きて考え事してる内に昼になってしまった。
鬱ぎこんでいるだけでも時間は残酷に過ぎていく、ならばどうするか。

 日ごろは強がっていても自分で霊夢に彼女自身の事を聞く勇気はない。
ならば……そう、周りから攻めればいい。
 早速魔理沙は霊夢の身近にいる男性に取材(?)をする為、箒を手に持ち飛び立った。


――香霖堂――

 魔理沙の馴染みの店であるが霊夢にとっても馴染みである。
二人で押しかけて一日中雑談したこともしょっちゅうある。
 店主の霖之助は魔理沙の実家で働いていた事もあり、
魔理沙とは兄妹みたいな関係であるが霊夢とは血縁も何もない。
つまり霊夢が恋した相手の第一容疑者という訳だ。

「よう香霖、単刀直入に聞くが霊夢とはどうなんだ?」
「……は?突然来たかと思えば……どう答えればいいんだい?」
「お前と霊夢の関係だよ、正直に答えろ」
「ああ、分かったよ、大じきに言うと……いや、中じきに……いや正直に言うとだな」
「何処のいとしこいしだよ……真面目に答えろ!」

 魔理沙はいつにない剣幕で怒鳴った。
霖之助はいつもの下らない雑談と思い適当に茶化したのだが
そうでもないな、と感じた霖之助は少し真面目に答えた。

「霊夢は……まだツケが残ってるな、さっさと払って欲しい。それだけだよ」
「私はお前と霊夢は交際してるのか、と聞いてるんだが」
「していないよ、霊夢は数少ない客の一人で……よくても友人までだな」
「ほ、本当か!?……良かった」
「……なんなんだ?」

 魔理沙は下を向き安堵の息を吐いた。
霖之助はこういう大事な話で嘘をつくような男ではない、小さい時から見ているのでそれは知っている。
ともかく最低限、霊夢と霖之助は恋愛関係では結ばれていないのだ。それだけでホっとした。

「僕は……店に来る少女達に色目を使った事は無いしそんな素振りをされた事も無いよ」
「香霖ってさ、恋人とかいないのか?片思いでもいいが」
「僕の嫁はほら、店内にいっぱい居るじゃないか。このストーブとか電子計算機とか」
「いや、何か将来というか……家庭を持つとか考えないのか?」
「どうしたんだ急に……考えた事は無いな、そもそも純粋な人間とは寿命の長さも概念も違うからね」
「そうか……となると霊夢の相手は」
「さっきからどうしたんだ?霊夢の事ばかり気にかけてるようだが」
「あ、いや……こ、香霖には関係ないぜ」
「そうか……僕は魔理沙を妹のように思っているし、相談くらいなら聞いてあげられると思ったんだがな」
「う、ん……むー、ぅぅ……相談、しても……いいか?」
「いいよ、昨日の宴会で神社に行ってからずっと悩んでる顔だったからな……どんな相談だい?」
「そこまで知ってたのか、じゃあ……話すぜ」

 魔理沙は話した、霊夢に対する思いとこれまでの事、そしてこれからの事。
 霖之助が魔理沙を妹だと思っているようにまた、
魔理沙も霖之助を兄のように慕っているからこその相談だった。

「成る程ね、それで僕を疑った訳だ」
「ごめん、香霖……」
「そんな謝り方は魔理沙らしくないな、それに……ここは幻想郷だ、もっと柔軟に考えていいんだよ」
「……どういう事だ?」
「例えば……女の子が女の子を好きになって何が悪いんだ?」
「それはその、良く分からないけど……種の保存に支障をきたすとか」
「それは大きな問題だが……恋を阻む理由にはならないな、人が人を愛すのに理由なんて要らない」
「じゃあ……私は霊夢を好きでいていいって……事か?」
「ふむ、疑問文に疑問文で返して悪いが……霊夢も同じような事を考えていたとしたら?」
「……えっ?」
「その場合、霊夢と一番身近な人物は誰かな?……アリス、レミリア、八雲紫?……違うだろう?」
「え、ちょ……まさか」

――バタンッ!

 その時だった。
勢いよく入り口のドアが開いたと思うと魔理沙がよく知る人物が立っていた。

「え、あ……」
「魔理沙……ちょっと来て」
「あ……ちょっ、おま……うあっ!」

 霊夢だった。
 物まね歌合戦をしている時に本物が現れたときの様なタイミング、
仕組まれたかのような絶好の瞬間に現れた彼女は魔理沙の手を掴み
店から少し離れた場所まで走っていった。

「はぁ、はぁ……れ、霊夢……なんで」
「魔理沙……霖之助さんと何を話してたの?」
「そ、それは……その……何というかだな」

 走ったばかりでまだ少し息を切らせ気味の魔理沙の返答を遮る様に霊夢は語りだした。

「私もね、魔理沙が来るちょっと前に霖之助さんに相談してたの」
「……え?」
「好きな人が出来た、その子は女の子で幼馴染みの子でね。悩んでたの。
 博麗の巫女である私が恋愛なんてしていいのか、しかも同姓の子と……って相談してたのよ」
「え……えぇっ!?」
「そして言われたわ……女が女を好きになって何が悪い、人を愛すのに理由なんて要らないってね」
「ちょ、おい……それって……」
「ま、魔理沙は?……どうなのよ?」
「どうって……聞いてただろ?……その通りだぜ」
「た、確かに聞いてたけどさぁ……プ、くくっ……」
「ククク、はははっ……」

 少しずつおかしくなってきたらしく、二人は含み笑いの後、同じタイミングで大笑いしだした。
取り巻く環境や立場も違うし性格も違う、しかし似たもの同士でもあった。
だからこそ笑いあった、今までの異変解決時や宴会の時でも無かった類の笑いであった。

「何か思い悩んで損したぜ……考えてた事は同じかよ」
「同じだったら悪い?私は、その……嬉しかったり……魔理沙は?」
「あ、あーうー……その、なんだ……アレだ」
「もう、はっきり言いなさいよ……私だって言うの恥ずかしかったんだから」
「うー……あぁぁぁっ!じゃあ言ってやる!私はなぁ、霊夢が私を想ってる以上に私は霊夢が、霊夢が……」
「私が、何?」
「あうぅ……す、好き……んぅ?」

 魔理沙が言ったか言わないかの間に魔理沙の口は遮られた、霊夢の唇によって。
最初は突然で驚き、呼吸をも遮られたが二人は互いの頬を両手で挟み、
いつしか唇も触れ合うというより押し付けあっていた。

「んー……んむ」
「むぅ、ぷぁ……れ、霊夢」
「あ、ごめん……魔理沙、びっくりした?」
「い、いや……何か、ドキドキする……熱くて、柔らかくて、優しくて……」
「ね、魔理沙……もう一回、してもいい?」
「……うん」
「んっ、はむ……」
「あむっ……ちゅ」

パチパチパチ……

 二回目のキスの最中だった、一定のリズムで刻む音……拍手だった。
慌てて音のほうに目をやると霖之助が居た。
何故かアリスや紫までいる、この訳の分からないキャストに訳の分からない拍手を送られ
二人は驚愕と怒りと羞恥が混ざり合いどう反応していいのか分からないくらい困惑した。

「おめでとう、おめでとう、おめでとう……」
「コングラッチュレーションッ……コングラッチュレーションッ……」
「うわぁぁぁぁっ!な、何よあんたら!?」
「ど、どっから沸いた!?いつから居た!!?しかも何で拍手!!!?」
「なんでって、おめでたいからに決まってるじゃない。あぁ、ロマンチックねぇ」
「百合はいいね、百合は心を癒してくれる……幻想郷が生み出した文化の極みだよ」
「幻想郷は全てを受け入れる……それはそれはおめでたい話ですわ♪」
「何かムカつく……夢想封印 ‐散‐!」
「だああああっ!!!散れっ帰れっ!マスタースパークぅ!」
「あらココで恋符なんてお熱いわねぇ♪おっと避けなきゃ」
「いやーいいもん見たわ、じゃあお言葉どおり帰るわね♪」
「ちょ、ちょっと待て何で僕だけ置いてけぼり……うわらばっ!」

 そんなこんなで二人はめでたく結ばれ、これといった異変も無く穏やかな日々を過ごした
結ばれたといっても傍目から見て何かが変わったようでもない。
魔理沙は魔法使いをやめた訳では無いし霊夢もまた巫女のままである。
 ただ、魔理沙が神社にいる時間が少し長くなり一日の終わり、帰り際にキスをするようになったくらいである。
そんな穏やかな日々が永遠に続けば……とは思っていたがそうもいかない様だった。



――しばらくしたある日――


「……み、見合い?」
「人間は勿論、妖怪用の道具なども取引している所の息子さんでね、霧雨道具店とも面識がある家だよ」
「いや、相手はともかく……なんで私が見合いを?」
「あぁ、ワシから言うのも難なんだが……今、魔理沙ちゃんの親父さん……体が悪くてね」
「そ、そんなこと言われても……困るぜ」

 魔理沙は魔法の研究に使う道具を調達する為、人間の里へ来ていた。
そこへ霧雨道具店、つまり魔理沙の実家の隣の家に住むおじさんの目に留まり声を掛けられたのだ。
少し前から随分と魔理沙の事を探していたらしい。

 話を聞くとどうやら魔理沙の父親はこの所、床に伏せており里の医者が言うにはあまり長くないとのこと。
隣のおじさんは魔理沙の父親とは旧知の友人であり、
少しでも喜ばせたい、世を去る前に安心させたいらしいのだ。

「あの親父が、か……少し、考えさせてくれないか?」
「ま、まぁ一生の事だからな……考えてもいいが余り長くは、な」

 魔理沙としても父親が嫌いで家を飛び出した訳ではない、魔法に没頭するあまり
勘当同然で家を出たのだ。

 母親は幼い時に死去し、男手一つで育てられた。
普通の道具を扱う店の娘が幻想の象徴である魔法に執着しているのが気に食わず
何度も親子間で衝突し、魔理沙は家を出たがその事を除けば別に仲が悪い訳ではない。
 面と向かえば憎まれ口も叩くだろうが嫌いあっている訳でもない。
霧雨親子は似たもの同士、素直じゃない人柄なのだ。

「親父は……?」
「あぁ、家で寝てるよ……ワシも1日に1回は様子を見に行ってるんだが……行くかい?」
「うん……」

 そして二人は霧雨道具店の勝手口に手をかけた。
何年か見ない間に色んな物に埃が被さっている。
商売道具の手入れはかかさない父親がここまで物を放置しているという事は……
大分具合が悪いであろう事は容易に想像できた。

「具合はどうだ?」
「あぁ、大丈夫だ……毎日済まんな、今茶を淹れるから……うっ」
「お、おい無理するなよ親父……」
「ぬっ、ん……?ま、魔理沙か……?」
「あー、偶然そこで会ってな。お前の事を話したら飛びついて来たってわけさ」
「魔理沙……何で今頃この家の敷居を跨いでるんだ?」
「お、おい……そんな言い方無いだろう、魔理沙ちゃんはお前を心配して」
「煩いっ!お前には関係……」
「お、親父……私、今度結婚するんだ」
「あぁ?」

 魔理沙には一目見てから分かっていた、目の前でがなり立てている父親が本当に弱っている事を。
認めたくないがよく似た性格同士、精一杯元気ぶっているのがよく分かったのだ。
 なんだかんだ言っても肉親である、恩も情もある。
だからこそ、親孝行として……あくまで親孝行として見合いをする事を選んだ。

「魔理沙、結婚するのは勝手だが……ワシに気を使って、何て言ったらはっ倒すぞ?」
「そんなこと無いぜ、私がしたいからするんだぜ」
「ほ、本当か……?」
「あ、あぁ……本当だぜ」
「……ワシは動けんからな、新婚生活が落ち着いたら……ここに来いよ」
「う、うん……じゃあ、な……お父さん」

 家を出たところでふぅ、と暗いため息をつく魔理沙と
縁談が決まった事を喜ぶおじさん、全く以て対称な二人である。

「いやー良かった、魔理沙ちゃんが決心してくれて本当に嬉しいよ」
「あ、あぁ……ふぅ」
「なに、心配するこたぁ無い。ワシも何度か会ってるが悪い人じゃないから」
「うん……」
「実はね、縁談の日取りと場所はは決まってたんだ。
 その日までに了解が取れなければ、って条件だったんだよ」
「そ、そうなのか?……何かトントン拍子だな」

 何か引っかかりながらも魔理沙は日取りを教えてもらい自宅へ戻った。そして……考えた。
父親の姿を見て結婚する、と言ってしまった事。
後悔しないかと問われれば、当然後悔はする。
 既に愛する人が居るのだから。
 霊夢がこの事を聞いたら怒るだろうか?悲しむだろうか?
親友という段階を超えて恋人同士になったばかりなのだ、喜びはしないだろう。

 一日中一人悩み、苦しんだ。
親のためとはいえ、恋人を裏切り顔も知らない男と生涯を共にする。
周囲はどう思うのか、自分は納得できるのか。納得できないから悩んでいるのではないのか。
 自問自答を繰り返し、相談できそうな相手を探してみる。
霖之助ならどう言うのか、アリスならどう答えるのか、パチュリーならば……

 考えてから気づいた、魔理沙に相談できる相手は純粋な人間が居ない。
前に霖之助が言っていた、妖怪や半妖は『純粋な人間とは寿命の長さも概念も違う』と。
 ならば相談する意味が無い、価値観等ではなく根底から人間とは違う見方をしているのだから。
となると霊夢しかいない、しかし霊夢は……

 考えれば考えるほど胸がズキズキと痛み、目じりから雫がこぼれ落ちてくる。
そんな時、家の扉がガチャリと開いた。

「魔理沙ー今日うちに来ないからどうしたのか……って、魔理沙?」
「う、ぐ……れ、霊夢?」
「魔理沙……泣いてるの?」
「ぅ、ぁ……霊夢、れいむぅっ!」
「わわ、どうしたのよ魔理沙……落ち着いて」
「れいむ、わらひっ、……ごめ、ごめん……」
「いいから、全部聞くから……何があったの?話してみて」

 一日中悩み、考えてるうちに夜になっていた。
電気もつけない暗闇の中、周囲に飲み込まれたかのように暗く沈んでいた魔理沙の心の
扉を開いたのは霊夢だった。

 霊夢の声を聞き、霊夢の顔を見た途端、崩れそうな所で何とか保っていた魔理沙の顔は
涙でグシャグシャに崩れた。
飛びつき抱きしめた時に感じる霊夢の鼓動、触れている部分から伝わる霊夢のぬくもり。
結婚すれば、霊夢を裏切ればもう二度とこれは味わえないのだろう。
そう思うと霊夢があやすのにも関わらず魔理沙はより一層の涙を流した。

「だから落ち着きなさいって、泣いてばかりじゃ分かんないでしょ?」
「ひぐ、うっ……うぅっ」

 霊夢は魔理沙の横に座り肩に手を回すと、魔理沙は少しずつ落ち着きを取り戻していった。
不思議なものである、霊夢と居るとどんな不安や心の蝕みも癒されてゆく。

 そしてエプロンで顔を拭いた魔理沙はありのまま、全てを話した。
泣いた為、少しえづきながらだが本当にありのままの事を話した。
 霊夢の思いと自分の想いを裏切る事になる事、自分の幸せではなく肉親を安心させるために
生涯を犠牲にする事を。

 全てを語り終わった後、魔理沙は下を向いた。
霊夢の顔が見れなかった、自分がどんな顔をしているか見られたくなかったし
霊夢がどんな顔をしているか見たくなかった。
 そしてどんな返答を期待したのか、それは魔理沙にも分からない。
ともすればどっちにも崩れ落ちるような不安定な揺らぎ。
シンと静まり返った空気の中、霊夢が口を開いた。

「私は反対、結婚に反対……だけど、だけどね、魔理沙……」
「……?」

 霊夢の声が震えている、下を向いている魔理沙にも霊夢が今どういう表情なのか
上を向かずとも分かった。

「私にはそれに……その事に、口を挟む事なんて……出来ないっ、の」
「霊夢……」

 本当なら、他人の為に自分の生涯を見知らぬ相手に捧げるなんて馬鹿げていると言いたい。
しかし博麗の巫女となってから両親も身内も居なくなった霊夢には
魔理沙の気持ちが痛いほどよく分かった、だからこそ突っぱねられなかった。

「魔理沙、ごめんね……ごめんね魔理沙、もうっ、ちょっと私が強かったら、ひぐっ……」
「あ、謝るのは私の方だぜ……霊夢、本当にごめん」

 霊夢の涙を見て、魔理沙の中の揺らいでいた気持ちが固まった。
トンと突けばまた不安定になるような弱い固まり方だがともかく、
覚悟を決めた心は決意という名になり、弱い魔理沙を後押しした。

「霊夢、よく聞いてくれ……お願いがあるんだ」
「え……?」
「私を……私を、抱いて?」
「え、あ……それって、もしかして……」
「に、二度言わすなよ……この台詞……物凄く恥ずかしいんだぜ?」
「あ、ごめん……でもなんか、おかしいね……女の子同士で抱く抱かれるってのも」
「ちゃ、茶化すなよ……私は、その……『初めて』は好きな人にって……ああもうっ!……んむっ?」

 魔理沙の顔が照れくささで完熟トマトの様になったと同時に霊夢の唇が被さった。

「ほら、魔理沙……舌出して」
「ん、おほうか?んあ、むぅ……」

 霊夢は突き出された魔理沙の舌を咥えると、自らの舌を絡め
飴玉を転がすように舐めまわした。
唾液を帯び、ザラついた舌の感触に二人は夢中になり互いの身体を抱き合い、求め合った。

「ん、ちゅっ……ほら、魔理沙も吸って」
「んむ、れいむぅ……んぅー……ん?」

 霊夢が深いキスをしながら魔理沙の上着ボタンを外していき、また魔理沙も
拙い指先で霊夢の巫女装束を脱がせ、直接互いの体温を肌で感じあえる状態になった。
腹部と腹部、胸部と胸部が密着し背中の体温を手のひらで感じ取る。

「霊夢……あったかいな」
「魔理沙、分かる?私の胸……ドキドキしてるの」
「あ、うん……伝わってるぜ、余計な肉が無い分な」
「何よ、魔理沙だって似たようなもんじゃない……えい」
「ひゃっ、れ……霊夢だめっ!」

 霊夢は膨らみかけの幼い乳房を同じような大きさの魔理沙の乳房に押し付け、
ぐりぐりと小さな突起を擦り合わせた。

「魔理沙のココ、固くて……イイよぉ、んっ」
「く、はぁ……霊夢の、霊夢の乳首が当たって……ひゃんっ!」
「ひゃん、だって……可愛い、魔理沙……じゃあ、可愛い魔理沙のココはどうなってるのかな?」
「あ、ちょっ……霊夢」

 魔理沙のスカートとエプロンを外し、一気にドロワーズを降ろすとそこには
小さな割れ目が顔を出し、幼いながらも湿り気を帯び、雌の香りを放っていた。

「可愛い割れ目……」
「あ、あんまり見るなよ……恥ずかしい、んだぜ」
「ね、キスしていい?……答えは聞かないけど、ちゅっ」
「やんっ、ソコだめぇっ!」

 霊夢が秘部にキスをすると魔理沙の上半身は跳ね上がり、腰をビクンと動かしながら喘いだ。
ちゅくちゅくと入り口を唇と舌で愛撫し、時折鼻先が膣上部の小さな突起に当たる。
その度に魔理沙は普段の口調とは180度違う黄色い声をあげ、歓喜に打ち震えるのだった。

「れい、むっ……何か、なにかキちゃうっ!」
「……イキそうなのね、魔理沙……ちゅ、れろ」
「ひゃ、あっ……らめぇっ、んっ――!」
「んっ……コク、コク……ぷぁ」

 魔理沙の身体が一際大きく跳ねたと思うと秘部からは多量の愛液が分泌され、
こみあがった感情をぶちまける様に魔理沙は絶頂に達した。
 そしてその噴出されたモノを霊夢は一滴残らず喉に流し込み、顔を紅潮させた。

「ん、ふぁ……れい、むぅ」
「ふふ……魔理沙、気持ちよかった?」
「うん……ごめん、霊夢……私、だけ……私だけ気持ちよくなっちゃって、ごめん」
「……ほんっと可愛いんだから、魔理沙……じゃあどうする?」
「霊夢と、霊夢と一緒に……気持ちよく、なりたい」
「うん……見て、魔理沙……私ももう、こんなになっちゃってるの」
「あ……」

 霊夢は自分のスカートの留め金を外し、ドロワーズを脱ぎ捨てると
先ほどの魔理沙と同じくらい、いや待たされた分それ以上にトロトロの粘液を垂れ流していた。
そして魔理沙の片足を持ち上げ、股を股で挟み込むように魔理沙と正対した。

「魔理沙、今度は一緒に……気持ちよくなろ?」
「……うん」

 霊夢がお互いの秘部を重ね合わせ、腰をグラインドさせるといやらしく火照った肉は
ズリュ、ズリュと音を立て、互いの愛液が互いの肉壷を行き交い混じりあった。

「れいむっ、れいむとわたしっ、繋がってるよぉっ!」
「んっ、魔理沙……擦れてぇ、気持ちっ、イイよ、んっ」

 肉と肉がぶつかり合い、腰に手を回す。
腰を揺らし互いの汗を舐めあい、時折唾液を吸いあった。
貪るように求め合う二人の、擦れ合う性器と唾液から徐々に悦楽の波が押し上げてきた。

「霊夢っ、わたしっ……もう、またっ、あんっ!」
「イ、んっ、イキそうなのっ……?私もっ、やんっ!」
「れいむ、れーむっ……ぎゅってっ、ギュってしてっ!」
「まりさ、まりさぁっ!んあ、あ、ぁ、あっ……」
「れーむ、れーむっ!イクっ、やぁんっ!ん、んつ、ふぁっ……」

「ひあああああ――――っ!」

 愛し合う二人だからなのだろうか、どちらかが無意識に合わせたのか
偶然なのかは分からないが鼓動が重なり合い、二人は同時にオーガズムに達した。

 それでも一旦求め合った二人は留まることなく情事を続け、どれが汗で
愛液か分からなくなるくらいまで愛し合った。
 そして夜が明けた頃――

 霊夢が目を覚ました頃、魔理沙はもう出支度を整えていた。
そして霊夢に背を向けたまま最後の挨拶を交わす。

「ん、魔理沙……おはよう」
「おはよう霊夢、実を言うと……今日なんだ、縁談の日」
「もう……行くの?」
「ああ、このまま霊夢といると……決心が揺らぎそうなんだ、その……ごめん」
「もう、謝ってばかりじゃない……いいのよ、でも一つだけ約束して」
「……なんだ?」
「恋人同士じゃなくなったかも知れないけど……ずっと親友でいてね」
「うん……ずっと、ずっと……な」
「じゃあ……行ってらっしゃい」
「式には……呼ばないからな、見せたくないから」
「うん、分かった……」
「じゃあ、行ってくるぜ」

 魔理沙は会話中一度も後ろを振り向かなかった。
霊夢の声が震えていたのもあり、後ろを向くと自分が言ったとおり決心が揺らぐからだ。
指定された時間より少し早かったが魔理沙はいつものように箒にまたがり、指定の場所を目指した。


――そして里の中の某所――

 魔理沙が着くと、既に準備と役者は整っていた。
相手方の親とその息子、魔理沙の父親の代理のおじさん。

「おお、来たか。じゃあ紹介しましょう、こちら霧雨道具店の一人娘の」
「魔理沙だぜ」
「フフ……知ってるよ、時々里の中でも見かけてたからね……ほんと可愛いなぁ」
「また随分と若いじゃないか、てっきり嫁に行き贈れた年増女が出てくるのかと思ったよ、大丈夫か?」
「ぬ、あのなぁ……」
「心配いらないよ、パパ。前田まつが前田利家に嫁いだのは12歳の時だったし、普通だよ」

 魔理沙はある程度予想はしていた。
見合いなんてこんなものだと。
 鼻持ちならない金持ち特有の上から目線と、そのDNAをしっかり受け継いだバカ息子。
しかも目を合わせた時からしきりにいやらしい目で嘗め回すように見てくる。
このバカ息子は私を気に入っているみたいだがこんな奴の伴侶になるのか、と思うと
また決心が揺らいできた。
とりあえず注がれたお茶を飲み、相手の話も聞き流すように窓のほうを向いていた。

 そのうち、睡魔が襲ってきた。
一応婚約を決める席なので我慢していたが何やらおかしい。
頭がクラクラとして気分が悪い、その旨を伝えてこの席を間延びさせてもらおうと
席を立ったその時だった。

「す、済まないけど……昨日、寝てなくて頭が痛いんだ。出来ればこの話は後日に……」
「だが断る!」
「……え?」
「延長なんてしないよ、でも君はゆっくり眠るといい。後はこちらで決めておくからね、フフ……」
「ま、まさか……図ったの、か」

 湯飲みが倒れ、その上に更に魔理沙が倒れ落ちた。
どうやらお茶のせいらしい。
 この場所に来たときから、いやもっと思い返せば返事をする前から日取りが決まっていた
時点で怪しかった。
 そう、父親の友人ヅラをしていたこの隣のおじさんもグルだったのだ。
相手の家は幻想郷でも有数の資産家である。
大方、何らかのリベートを受け取るつもりで魔理沙をハメたのであろう。



 しばしの睡眠から少しずつ意識が覚醒しだした魔理沙。
何やら身体がスースーする、妙に涼しい。
それもそのはず、魔理沙が身に着けている衣服は何もないのだから。

「――なんだこれっ!?」
「やっと気が付いたかい、僕の魔理沙ちゃん♪」
「だ、誰がお前の……」
「僕と結婚するんだから僕の魔理沙ちゃんだよ……しかしほんと……脱いでも可愛いなぁ」
「ば、馬鹿見るな!服返せ!」
「いいじゃないか、結婚したら毎日見る事になるんだから……」
「くぅ……」
「いやほんと我慢したよ僕、君が目を覚ますまで何もしなかったんだよ?
 やっぱり最初は愛のあるエッチがしたいからねぇ……ククク」

 まだ意識がちゃんと覚醒していないのか、睡眠薬に痺れ薬でも混ざっていたのか
魔理沙はろくに身動きが取れず、成すがままにされていた。

「小さくて膨らみかけの可愛い胸、このお尻も絶品だなぁ……あとは何と言っても……じゅる」
「や、やめろ馬鹿!な、舐めるなぁ…………霊夢、助け……て」
「ん〜?誰の名を言ってるのかな?」
「れ、霊夢は……私が愛した最高のパートナーだぜ!お前みたいな……
 お前みたいな気持ち悪い男と違って強くて、可愛くて……最高にカッコいい女の子だぜ!」
「へぇ……そんな刺激的な台詞を吐かれちゃあ気になるな、しかし今は……」
「……ひっ!」

 男の目の色が変わったかと思うと、徐に股間に聳え立つ太く、
長い一物を取り出し魔理沙の顔に近づけた。

「まずその生意気な口をお仕置きしなきゃな……嫁の教育は夫の役割だから……ねっ!」
「ん……んぶぅっ!」

 魔理沙の体格、口の大きさとは明らかにミスマッチな一物を無理矢理
口の中にねじ込むと、男は欲望のままに腰を動かした。

「どうだい魔理沙ちゃん、初めて味わう男の味は……もうコレ無しじゃ生きていられないだろう?」
「おぼっ!や゙めっ、ヴぇっ!」
「そうかい、そんなに気に入ったかい……喉の奥で擦れて気持ちイイよ……ウッ」
「んぐっ!?……げほっ、がはっ!」

 男はためらいも無く喉の奥にねじ込んだ逸物から精液を吐き出し
魔理沙の食道へ直接流し込んだ。
 喉から胃まで異物感で満たされた魔理沙は何度も吐きかけたが口から突っ込まれたモノが
引き抜かれない限り吐くことも出来ず、呼吸することすら難しく
結局は男の汚らしい白濁液を飲み込むしかなかった。

「げほっ、ごほっ!」
「ふぅ、気持ちよかったよ……じゃあ今度は二人で気持ちよくなろうね、フフフ……」
「なっ、ちょっ!やめっ……そんなの入らなっ……」

 男は一度出したにも関わらず硬さを失わない一物を魔理沙の秘部に
挿入しようとグニグニと押し付ける。
 魔理沙は必死で抵抗しようとしたが力が入らず、男の身体を押しのける事も
できずいよいよという所である異変が起こった。

「ぐっ!?ん、う……があああああああああああっ!!!」
「ひっ!……ん?」
「あ、あがっ!ん、ぐっ……げっ、げっ……ぶぇ」
「……な、なんだ?」

 男は突然奇声をあげ、喉を抑え苦しみに満ちた声でもがいたかと思うと
魔理沙の横へうつぶせで倒れた。
 怪訝に思った魔理沙が男に触れると明らかな異常が男の身体に進行していた。
脈拍は弱まり、体温は徐々に失われ身体全体が少しずつ硬直していく。

 そして一分も過ぎた頃……男は完全に事切れていた。
何故なのか分からない、意味不明の突然死。
魔理沙は悲鳴をあげ、駆けつけた者が医者を呼んだが
その医者でも何が原因で死んだのか分からなかった。

 死因自体は窒息死らしいが自分で首を絞めた形跡も無ければ他人がやった跡も無い。
最初は魔理沙に疑いがかけられたが医者のお墨付きもあり、すぐに疑いは晴れた。

 そしてその翌日、また信じられない事が起こった。
床に伏せていた魔理沙の父親の容態がみるみる内に回復してきたのだ。
 父親が言うにはいつの間にかベッドの横に”永遠亭”と書かれた袋が置いてあり
中に入っている薬を飲むと回復してきたと言うのだ。
 どこの誰が持って来てくれたのかは分からないがこれを機に永遠亭の名は
人間の里で広まり、それまで居た医者は仕事が随分と減って困っていたようだった。

 そんな中、幻想郷全てが見渡せる博麗神社の上空で何やら穏やかなのか物騒なのか
分からない会話をする妖怪達が居た。

「いいの?人間殺しちゃって……霊夢に退治されちゃうんじゃない?」
「フン、あたしゃ悪霊だからねぇ……知ったこっちゃないね、それに神隠し常習犯に言われたくはない」
「酷い言い方ねぇ、それより永遠亭の兎達が驚いてたわよ。悪霊が薬取りに来たって」
「さぁ、知らないね……さて、行くかね」
「何処に?」
「まだ痛い目にあわなきゃいけない人間が居るからねぇ……悪霊も難儀なもんだ」

 そう言ってふと姿を消した悪霊に大変ね、と一声掛けた後
遥か下の神社で楽しそうにはしゃぐ巫女と魔法使いを見て一匹の妖怪は
幻想郷と外の世界の境目にある自宅へ帰っていった。


                                        糸冬


後書き

よっしゃああああああ!何とか纏まった!
実は元ネタがあるんです、2007年くらい前のネチョスレに最後の部分だけ書かれた
プロットがあり誰か書いてくれとリクエストされたまま放置だったので
色々甘くしたりアレンジして書き上げてみました。

「虜」というテーマだったですが……紆余曲折あって元鞘なら結局それって虜なんじゃね?
霊夢は魔理沙の、魔理沙は霊夢の虜ですよ。
そんな二人が熱すぎてクサ過ぎておせっかいやいちゃうみたいな、ね。

色々自分なりの拘りはあるんですがとりあえずオリキャラ出してごめんなさい。
しっかり殺しといたんで、後は上手に焼くなりなんなりしてくださいw

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