枯れ果てて、灰になって


「あ゙〜」
この上司が書類を前に筆を投げ出したのは一体何回目だろうか。七緒はそんな事を考えた。
「隊長、その書類期限切れてるんですよ。今日こそ終わらせて下さい」
「判ってるよー判ってるんだけどねえ」
春水は放り投げた筆を手に取り、溜息をついた。
「なんかこう、やる気が起きないんだよなぁ」
それはいつもの事だろうと七緒は心の中で思い、口にはしなかった。
「何かしたら、やる気が出るのですか?」
その言葉に、春水は飛び付いた。
「そりゃあもう、七緒ちゃんがあんな事やこんな事をしてくれたら書類なんてあっという間に―――」
「あんな事やこんな事って、具体的にどういう事なんです?」
「え。あ、いや、あんな事ーこんな事ー…」
いざ口にするのは恥ずかしい事を考えていた春水は、この質問に戸惑った。
「例えば…」
「ん?」
「例えば、こういう事ですか?」
七緒は春水の机に歩み寄り、彼の前で跪いた。そして、目線の先にある帯を紐解いていく。
「な、七緒ちゃん!?」
「動かないで下さい」
暫くすると、下半身だけ露になった男が、何だか情けない格好で椅子に座っている状態になった。
「あ…あのー…」
七緒は目の前にあるモノをそっと手に取り、自分の口の中へと導いた。
「っ!」
まさか彼女がという思いと、何が起こるか全く予想も出来なかった春水は、突然の事態に動揺を隠せなかった。
手の冷たさと舌の温かさが、春水の身体の中を駆け巡る。
七緒は慣れない事に躊躇しつつも、根元まで飲み込み、愛撫を始めた。

たまに上目遣いで見つめる七緒に、春水は我慢が出来なくなっていく。
「な、なぉちゃ…」

――やばい

「離れて――」
春水の言葉を余所に、七緒は更に動きを増した。
途端、春水は精を吐き出した。
その全てが、彼女の口内に流れ込んでいく。

「ちょっ…七緒ちゃん、出して」
そう言って手元にあった紙を差し出すも、七緒は喉を鳴らした。
そしてまだ奥に残っていたものも吸出し、全てを、飲み込んでしまった。



「あのー…七緒ちゃん?」
服を整え、気が抜けて机に突っ伏した春水は、持っていたハンカチで口を拭いながら部屋を出て行こうとする七緒に話しかけた。
「何ですか?」
「いや、そのー…」
「隊長」
「へ」
「その書類全て、終わらせたら、続きもお相手致しますよ」
「本当に!?」
「はい」


それは何だか夢のような話で。


――御馳走様でした


そう思ったのはどちらだったのか。





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