「ふふ……駄目よ」
「あっ!……ぐ、うぅ……っ」
彼がおおきく身を仰け反らせた瞬間、鄒は左の指で根元を摘んだ。
つよい快感に堪えきれずに吐き出されようとしていた精液は、ほんの三本の指によって
せき止められてしまった。代わりに先走りが物欲しげにだらりと垂れた。
きつく根元を掴んだままで亀頭の根元を扱かれると、やがて足に力が入らなくなってきた。
膝ががくがくと震えだすと、孫静は自分のからだが自分でもどうにもできなくなる恐怖を覚えた。
さっさと全て吐き出してしまえれば楽になるものを、この悪女は簡単にはそれを許してくれなかった。
ふと、視線を鄒の手元にうつすと、彼女の両の手が孫静の垂らした液で濡れそぼっているのが見えた。
はっとして視線を上にずらすと、今度は鄒自身と目があった。
にやりと笑う。開いた口から赤い舌が見え隠れした。
「もっとちゃんと見て……ほら、私の手だけじゃないわ……貴方の服だって、こんなに汚れてるの……」
確かに、言われたとおりだった。深い青色に染め上げられた孫静の服は、彼自身が漏らした
先走りの所為で随分と濡れて色を変えてしまっていた。
「お漏らしして、いけない子……ふふっ」
「ちが……違います……うぅっ」
言葉で虐めるとより快感を覚える、そんな孫静の性格を、鄒は随分と前から見抜いていた。
そして、可憐な少年をそういう方法で虐めるのも、彼女は嫌いではなかった。
「いい子にしてなきゃ駄目よ、ねえ」
指が、刺激を与えるのをやめた。
絶えず薄い腹が震え、声を漏らし続けていた孫静が、それにより、にわかに正気を取り戻す。
しっかりと根元をつまんだ左手はそのままに、鄒は右手だけで器用に着物の胸元を寛げた。
はらりと服が落ちた。帯をしめていたので上半身しか露わにはならなかったが、それでも孫静は、
まるで鄒の体が、なにか見てはいけないものだとでも言うかのように、ふっと視線を泳がせた。
「もう、可愛いのね。好きなだけ見てもいいのよ」
裸になった豪奢な体が触れると、びくりと体を震わせ、もう逃げ場もないというのに孫静は身を引いた。
「逃がさないから……」
だが鄒はお構いなしに、その柔らかな乳房で孫静の屹立を挟んだ。
「えっ……あ、」
困惑する彼を尻目に、彼女はまだ子供のそれといってもいいような孫静自身の包皮を引っ張るように
舌を差し込む。

「あっ!?ぅあ、い、痛、痛い!痛いよぉ!!」
鋭い痛みが、刺激を与えられたその部分のみといわず、爪先まで駆けていった。
反射的に流れた涙はけして快感からではなかった。
少年は凄惨な悲鳴をあげたが、舌は尚も乱暴な動きを続けた。否、舌だけではなく唇も使って、鄒は包皮を剥くような動きを見せた。
「嫌、いやぁ、痛いの……嫌っ、あ、うあ、ああ!」
体が弓なりに仰け反る。
「た、すけ……兄、様……、兄様ぁ……!」
天を仰ぐように顔はくらい天井を向き、瞳からはとめどなく涙が溢れていた。
「もう、本当にボウヤなのね……」
思った以上の痛がりように少し可哀想になり、鄒は舌を抜いた。
孫静は荒い息を吐きながら、流れる涙や涎もそのままに鄒をただ呆然とみつめていた。
呆けてしまったかのように小さく口を開き、だが舌はだらしなく突き出されていた。
「気持ちよくなりたいなら自分から動けばいいじゃない」
「え……?」
鄒は、己の胸の柔肉を、二の腕でぎゅ、と挟んだ。一層強い圧迫を受け、ほんの数秒前には酷い悪戯を受け萎えかけていた
孫静自身が、またぴくりと震えた。
「腰を振りなさい。私は動けないもの……貴方が動かなきゃ駄目だわ」
促されて、恐る恐るというふうに腰を揺らした孫静は、だが、先ほどから漏らしていた先走りのお陰で思った以上の
快感を得たらしい。ゆっくりとではあるが、「快感を貪る為に」、自ら動き出した。
自由の利かないからだである癖に、彼は器用に、動かぬ鄒の肉に自らの欲望を擦りつけた。
喃語のような喘ぎを漏らす少年の顔を、鄒は満足げに眺める。
「ふふ、いやらしい子。一人だけそんなに腰を振って、ごしごし擦り付けて善がったりして」
「や……違う……ぅ、違うぅ……!ボク、いやらしくなんか……ぁ……!」
言葉は殆ど不明瞭だった。余りの事に、孫静は自身の纏っていた服の肩の部分に噛み付いた。
だが、それこそ声はでなかったものの、喉を鳴らして歓ぶ、盛りのついた猫のような喘ぎは、しっかりと鄒の耳にも届いていた。
「ぅう、ん……んん、あ……ん……!」
胸の間で、確かに脈うつのが分かった。鄒は何も言わず、そっと口を開けた。

「も……、ボク……いや、出る、出ちゃうっ、嫌ぁ、見ないで!見ないでぇぇ!!」
そういい終わるのが先だったか。孫静の吐いた精液を、鄒は口腔で受け止めた。
唇に熱を感じる。上手く入らずに口の周りにかかった白濁も舌で舐め取ると、もうほとんど意識も朦朧としながら
ぜえぜえと肩で息をしている孫静に言い放った。
「ご馳走様ぁ……」
さて。美女は考える。
まだ夜は長い。これから先、この少年をどうしてやろうか?
いたぶって、玩具にしてやろうか。それとも可愛がって手なずけてしまおうか?
あれこれと思いを巡らしながらふと視線をそらした瞬間、孫静が何か呟いた。
「……ほうがいいよ」
「えっ?」
再び孫静に視線をもどそうとしたその瞬間だった。
鄒は何か体に衝撃を感じ咄嗟に受身を取った。気がついたら、背中の後ろにつめたい床があった。
「ボクをなめないほうがいいよ!」
何と、先ほどまであんなにも身を捩り、しどけなく喘いでいた孫静が、鄒の身体の上に座っていた。
(何故動けるの?)
確かに、がっちりと手首を縛った筈なのに。
僅か首を上げてみてみると、孫静がいた場所に、何か光るものがあった。
目を凝らしてみた所、輝いていたのは、ほんの手の大きさくらいの短刀のようだった。
どうやら忍ばせていた短刀で上手く縄を切ったらしい。
(この子……あんなになっておいて、いつの間に)
だが鄒は、別段恐怖も何も感じなかった。
それどころか期待に胸を膨らませ、相変わらず妖艶な笑みを浮かべて言う。
「もう、好きねぇ」
今夜の計画は少し狂ってしまったけど、愉しみには変わりないじゃない。
さあ、坊や。頑張って、私を喜ばせてみなさい……。
「今夜は好きにしていいわよ」
そういって、彼のほそい手を引いた。華奢な体が、鄒の体に覆いかぶさる。

夜はまだ長い。



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