孫堅軍は森を隔てて董卓軍と対峙していた。
向こうの陣容は僅かな弓兵を除けば騎兵のみ。
西涼の優秀な騎馬軍団の能力を生かすためであろうか、機動力に劣る槍兵は見当たらない。
わずかな平地に向かって一点突破を仕掛けてくる騎馬兵たちの防衛に孫堅軍は主力を裂き、唯一、呉景だけが森を抜けてくる遊撃部隊に備え、自城前の防衛についていた。
森の向こうに砂塵が上がった。兵の数までは分からぬが、別働隊がこちらへ向かっているようであった。
機動力と防御力ではこちらが劣る。防護柵もここにはない。
残された唯一の対抗手段である痺矢が尽きる前に森を突破されればこちらに勝ち目はない。
「ありったけの矢を射てやれい!」
そして呉景もまた、弓を引き絞った。
おそらくは守りが手薄なところを抜けて城壁をめざすつもりであったのだろうが、森の中ではその機動力の半分も発揮できなかったと見えた。
さらに、呉景の部隊が射掛けた痺矢が決定打となり、董卓軍の別働隊は森を抜ける手前で完全に沈黙した。
呉景は森へと踏み込んだ。
敵兵の動きがないか慎重にあたりをうかがいながら、一歩一歩進んでいく。
途中、いくつか敵兵の亡骸を見つけた。どうやら偽退誘敵の類いではないようだと思いながら、杉の大木の裏を覗きこんだ。
「おや…」
思わず漏らした呉景の呟きに、森にうずくまっていた少女が振り向いた。
その身に纏うのはおよそ戦場に似つかわしくない豪奢な黒衣であった。
それと対照的な、少女めいた、大きな髪飾り。
まなじりにかけて注された戦化粧の赤が、気の強そうな彼女の顔を引き立てていた。
魔王と呼ばれた男の孫娘、白に違いあるまい。
董白の傍らには一頭の馬が横たわっていた。黒毛の、おそらくは駿馬であっただろうが、首を射抜かれすでに絶命していた。
跪いた少女――董白は上腕をかばうような格好をしていた。押さえる指の間から、血が滲んでいる。
鏃にべったりと血が付着した矢がその傍らに転がっていた。それはおそらく己の放ったものだ。
痛みに顔をしかめながら、しかし少女は殺気のこもったまなざしをこちらに向けていた。
殺気を向けられることに慣れている呉景が驚くほどの迫力が、魔王の血筋を感じさせる。
呉景は董白のもとへ近づくと、その体を軽々と、横抱きに抱き上げた。
「!!…何をする…!」
己の身に何が起こったかにわかに把握できなかったのであろう、遅れて董白は怯えた声を上げた。
威圧的な台詞とは裏腹に、その声は明らかに少女のものだ。
「本当は私もこういうことはやりたくないのだがね」
宥めるように呉景が言った。
「放せ…放せ無礼者ッ!!」
董白の振り上げた掌が、呉景の頬を打つ。不自由な体勢であったとはいえ、至近より直撃した拳にも呉景は怯まなかった。
視線さえも董白に合わせることなく、董白を抱きかかえたまま、進んでゆく。
「あまり激しないほうがいい。回りが早くなる。」
途中、そう一言呟いただけであった。
杉の巨木の根元に、そっと彼女の身体を下ろした。董白の抵抗はない。
抱き上げた際に無意識に掴んでしまったのであろう、呉景の戦袍を掴んでいた董白の右腕はかすかに震えていた。
瞳はどこか潤んでいるようで、頼りなげに視線をさまよわせていた。呼吸も荒い。
呉景の放った矢は、もとは騎馬の動きを緩めるための薬である。
見る限りすぐ矢を抜いたようだが、小さい身体は無事ではすまないだろう。
身体が熱い。先程から首筋の脈動がどくどくと響いて止まらない。
太股に伝う液体の感触に、董白はひるんだ。
『いや…あたし…どうして…』
それがどういうことか、すでに董白は知っていた。
男と女の交わりがどういうものか、知らぬわけではなかった。
初めて感じる身体の奥の疼きと初めて自覚する"おんな"に恐れを抱いた。
自分はこれからどうなってしまうのか。
もどかしげに太股をくねらせる董白に、呉景は優しい声で言った。
「隠さずともよい…あの痺れ薬は少々強すぎるのだ」
「…あつい…」
董白は呟き、帯を解こうとした。呉景はそれを助けてやる。
微かな音とともに帯がはらりと地面へ落ち、丈の短い彼女の着物の裾からのぞく太股には、一筋光るものが見えた。
豪奢な紫の着物の合わせ目を開く。ゆるやかな弧を描く肢体があらわれた。
細い腰も凹凸の乏しい胸もまだ女のものではなかった。
まだ発育しきっていない幼い娘だという事実に、呉景は一瞬だけ顔を曇らせる。
しかし、この状態では彼女を陣に送り届けたところでどうしようもないだろう。
董白の腕を引いた。不意をつかれた董白の身体が倒れこむ。かすかに声が上がった。
「…やんっ」
それを受け止めた呉景は、己の身体に董白を縋らせた。
「少しだけ我慢してくれ……すぐ終わる」
膨らみかけた胸の頂に色づく乳首を口に含むと、雷に打たれたように董白の身体が跳ねた。
指で弄った秘所は、すでにしとどに濡れそぼっていた。まだ薄い草むらをかき分け、秘裂をさぐる。
たどりついた呉景の指先が、露に滑った。
「…ぁ、あん」
すっかり呉景にしなだれかかった董白は、我を忘れた様子で腰をくねらせた。
まだ男を受け入れたことがないであろう秘唇は硬く閉ざされていたが、呉景が指を滑らせるにつれて緩んでいった。
親指で、微かにその存在を主張しはじめた陰核を弾く。予想していた以上の反応が返ってきた。
「やっ!…そこ、だめ…」
硬くなりはじめた乳首を舐り、指の動きを早めていった。止めどなく溢れてくる液体が呉景の指を濡らし、さらに董白自身の太股へも伝わり落ちる。
その液体を溢れさせる泉の元は、ひくひくと呉景の指を欲しているかのごとくに蠢いていた。
「あ、いや、…あ、ん」
董白は先ほどからがくがくと膝を震わせ、倒れそうになる体を呉景の首にすがりつくことで辛うじてとどめている状態だった。
呉景の指が動くたびに、自分の股がくちゅくちゅと音を立てる。そのひどく淫猥な音が羞恥心を掻きたてる。
その腰は言葉とは裏腹に、悩ましげに揺らめくばかりだ。
「あ、やっ、やめて……そんな、…しないで……だめ、だめ、っ、……あ、ああんッ!!」
秘芯の一点が痺れるような感覚が強くなり、腹の底から何かがせり上がる。
その何かが頭を突き抜けるような気がして、あっさりと董白の身体は絶頂を迎えた。
硬直した董白の身体が弛緩し、膝ががくりと折れた。倒れてきた身体を受け止めてやる。
「…ぁ…は、あ…っ、は…」
呉景の頬に董白の乱れた吐息が伝わってきた。紅潮した頬に光るのは汗か涙か、もはや判じえない。
宥めるように背を撫でてやる。
落ち着いてくれただろうか、と呉景が思うよりも早く、董白の手が動いた。
「……どこで覚えたんだね」
着物の前の膨らみを鷲掴みにされ、少しだけ呆れた声で呉景が言う。
「興奮してるのか」
目を細め、董白が言った。まだ呼吸が整わぬ唇から、ちろりと赤い舌が覗いた。
―――恐るべきは魔王の血筋か。
「いやらしい下郎め」
声とは裏腹に、悩ましげに腰を揺らめかせながら董白は呉景の怒張したものを擦る。
「…しょうがないな」
呉景は呟き、董白の身体を抱き寄せた。