(周瑜は羨ましい男だ)
自分の下で荒い息をついている小喬を見下ろしながら、劉備は思った。
劉備が手折った美しい花は、涙がこぼれ潤んだ瞳は焦点定まらず、あえかに開いた口からは喘ぎとも付かない甘い吐息を漏らしている。
劉備はというと身のうちの昂ぶりを放ってもなお、彼女の肉に包まれた杭は萎えるどころか堅さを取り戻していた。
あどけない少女と思ったが、彼女は立派に女そのもの。想像と現実の落差は劉備の劣情を昂ぶらせた。
自分は動きを止めているのに腰に蠢きを感じるのは、劉備の気のせいではない。おそらく、彼女は無意識なのだろうが――劉備の感触では、小喬はまだ達していないはずだった。
劉備は彼女の体を抱えて体を起こした。
「ぁぅ…っ」
繋がったまま、劉備にまたがるような体勢で起こされ、小喬は軽く背を仰け反らせながら喘いだ。
同時に、ぐちゅ、と劉備と小喬の体液が混ざり合って二人の間をぬらす。
それに気づいたのだろう、打ちひしがれた様子で小喬はうつむく。
しかし、長い睫毛と唇は快感にわなないているのを見て取った劉備はにまりと笑い、自分の唇を嘗めた。
「翼徳」
劉備が呼ぶと、待ってましたとばかりに張飛が立ち上がった。
「兄者、交代か?」
「バカ。この状況を見て言ってんのか?」
劉備が繋がったままの自分たちを示して言う。
着物の帯を解きながら寝台へと近づいてくる張飛を、小喬はぼうっと見返した。
「油だ、油持ってこい」
慣れた様子で劉備が告げると、張飛もまた当然のようにそれを了承した。
「相変わらず好き者だな、兄者」
「やんのはおめぇだろが」
「へいへい」
軽口を言い合いながら、張飛は荷物を探り始めた。
小喬はそれを眺めながら、これからされることを考えた。
(…二人に、同時に…?)
靄がかかったように鈍った頭が、記憶を反芻する。それを辿って、自然に意識がそちらへむいた。
寝台の脇にある小さな戸棚へと。
「そっちに何かあるのか?」
意地悪い声で劉備に突然問われるまで、小喬は自分が何を考えていたのかすら自覚していなかった。

ゆるゆると顔を彼方に向ける小喬に気づいて劉備は小喬の視線を追った。そこにあるのは変哲も無い小さな棚。
そこで劉備は小喬の異変に気づいた。いや、異変ではなく、変化がないことに。
戸棚に愛する夫の絵姿や贈り物でもあるのなら、助けを求めるような表情でもよいだろう。彼女はただぼんやりとそちらを見やっただけ。
何もかも諦めたのか、自分が何をされるのかわかっていないのか、それとも、わかっていて――?
「そっちに何かあるのか?」
劉備が問うと、小喬はびくりと体を震わせて振り向いた。
「何があるんだ?喬夫人」
振り向いた小喬の顔にあるのは狼狽。それは、現実を認識し恐怖したからではなく、「はしたない行為に耽っている所を暴かれた淑女」のそれだった。
「翼徳。そこの戸棚を探してみろ」
手だけで荷物を探っていた張飛に指図をする。目は、震える小喬を見据えたまま。
「喬夫人、俺はあんたのことが好きになれそうだ」
張飛が戸棚から美しい白磁の壺を取り出した。
「兄者、香油があったぜ。ふぅん、こりゃ上等だ」
蓋を開け、匂いをかぐ張飛。
「残りは半分ほどだけどな」
「香油か。そうだな、あんたからはとても良い匂いがする。だがよ、喬夫人。この香油、何に使ってた?」
涙を浮かべ小喬は沈黙した。意地悪く劉備は小喬の耳元でささやく。
「あの周瑜に、そんな趣味があったとは驚かされたな」
「ち、違…」
「…じゃあ、旦那の親友?」
蒼白になる小喬を眺めて、くく、と喉の奥で笑う。
「まぁ、どっちでもいいんだ。喬夫人、俺はいやらしい女は好きだぜ。俺の予想を言わせてもらえば…」
そこまで言って、突然小喬の両の二の腕を掴んで、一緒に後へ倒れ込んだ。
「あぁぁんっ」
繋がれたままの不意の動きに小喬が高い声を上げる。
「あんたはこういうの、結構好きなんじゃねぇか?」
楽しげに笑う劉備を、小喬は悔しさに顔をゆがめて睨んだ。涙がぽつりぽつりと劉備の顔に落ちる。
「非道いことしないなんて…思った私が馬鹿でした」
「今更気づいたか?お楽しみはこれからだ」
「…っ、放して、放してっ」
暴れる小喬をさしたる労も無く捉え、ぐいと引き寄せた。張飛の方に小喬の尻を突き出すような格好にして、劉備は張飛に合図した。
「よっしゃ!」
張飛は言うが早いか白磁の壺の香油でべったりと濡れた指で小喬の菊座をもみほぐし始めた。
「あぁあ…いやぁ…」
小喬ののどがひくひくとわななく。張飛の指が動くたび腰から背中へ何かがじわじとあがってくるのを小喬は感じた。
怖気のような、肌が粟立つ、快楽の前兆。
(ダメ、ダメぇ…このままじゃ、私…)
「嫌、やめて…お願い、…っ」
涙を流して、小喬は劉備に訴えた。このまま意志を保っていられそうにない。今の小喬にはそれしかできなかったが、だがそれは逆効果だった。
「説得力ねぇよ。そんな顔見せられちゃあな。おい、翼徳」
「ひ…ぁっ」
呼びかけに応じて、周辺に油を塗りたくりながら不浄の穴の内側へと張飛の太い指が進入していく。小喬の菊座がすんなりと太い指を飲み込んで行くことに張飛は感嘆し、だんだんと動きを大胆にさせていった。
唇を噛みしめて小喬は疼きに耐えた。しかし、奥を蕩かされ、そして満たされなかった体の熱は引かないどころか貪欲に刺激を求めた。
「ん、ふ…あっ、あぅ…あぁっ…」
張飛の指の動きは小喬の体を揺すり、小喬の腕を掴んで動かない劉備の肉棒が自然と小喬の体の奥を刺激する。
それは、体の疼きを解放へ導くには弱く、さりとてその疼きを忘れることもできない。
小喬の意志に反してその疼きは大きくなっていく。声を抑えることも、最早限界だった。



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