帳の狭間から、鋭い陽光が差し込んでいる。  
薄暗い部屋は、張り付くような熱気と、それを優しく取り払う風が競い合っている。
 夏の一角、女の嬌声がその空間に響いていた。

「ん・・・はぁ・・あん・・。はぁ・・はぁ・・・ん!」

 山積にされた木簡の谷間で、女が仰向けになっている。
腰から下は、覆うものはなく露で、やや腰を浮かせ恥ずかしげも無く股を大きく広げていた。

「くふぅ・・や・・・あ!?」

 夏の熱気は、白皙の肌に玉の汗を浮かべさせ、熱くなった体を更に昂ぶらせる。

「んっ・・・ん・・くうん・・・。」

 女は自らの秘裂を痛いほど一杯に広げ、片方の指を突き入れる。
小さな体を仰け反らせ、やけに濃厚な自慰が齎す快楽に夢中になっている。

「だ・・め・・・。・・たりないのぉ・・もっと・・・。」

 女は手探りで、手元に転がってた木簡を掴んだ。

「ごめんなさぃ・・・。おとうさま・・・。」

 許しを乞いながら、太いそれを自らの秘所に埋めた。

「んふぁああぁぁぁっん!!」

 筒状に丸められている木簡を男自身に見立て、女は愛撫を始める。

「あ・・はぁ・・ごめんなさ・・い・・。ごめん・・さ・・ぃ・・んんぅ!!」

 木簡は、体の奥まで貫くような勢いで突き刺される。

「・・・っあ・・・!!!」

 飛んでしまうような刺激に頤を限界めで反らし、搾り出された声は甲高い。


「ふぅぅ・・・。」
 
 中に当たるまで飲み込まれた木簡の堅さをじっくりと味わうように、じわじわと引き抜く、と

「はぁ・・あ・・・。」

 再び一気に突き入れる。

「ん、んああぁぁあ・・くぅ!!」

 秘所から口までに杭を打たれたような錯覚、甘い痺れに身を震わせる。

「わたし・・だめ・・だぁ・・・。」

 淫蕩に溺れる自分を罵りながら、御しきれない意識はより激しい動きを求めた。
汗だくになりながら、甘さと陰りが混じった声が止むことは無い。

「あ・・きもち・・い・・ぃ・・ですぅ・・・。」

 そこに存在しない責め手に女はそう告げる。
汗と淫汁を吸い取り、黒味を帯びた木簡は犯すように荒々しい。
 女の指が、菊門を抉る。 爪で内を引っかき根元まで捻じり込む。

「・・・い・・いですぅ。 イキ・・ます・・。イ・・ク・・んん!」

 小さな穴から波濤が起こる。
全身が浮くような、どこかに飛ばされそうな、逆に天空から堕ちていくような、前後上下が不確かな感覚。
 意識下では、力有る者に組み敷かれる喜びを思い出していた。

「ん・・んあぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 全身を限界まで仰け反らせ、足先だけで体を支える。
串刺しになった女身は、快楽と嫌悪に抗うこともできず絶頂に達した。


「あはは・・・またやっちゃった・・・。」

 未だに過去と決別できぬ己を自嘲い、情けなさに涙した。
一際強い風が帳を払いのけ、部屋は刹那に明るくなる。
 光に切り取られた世界は、その女の姿を照らし出した。

 幼子のように、凹凸のない体躯、世の理に逆らうように三十を越えても幼いままの顔、
だが、太い木簡の筒を苦もなく飲み込む女自身は、その体には似つかわしくない。

 女の名は蔡エン、字は文姫。

 蝉の声が聞こえてくる。世界は正しく夏だった。



*

 文姫は疲れ果て眠ってしまっていた。  隠さなければならない所も隠さずに。

「・・・ちゃん・・・。」

 何の音だろう。 睡眠に濾過された意識は思考の成分を欠いていた。

「・・・ねえちゃん・・・。」

 音ではなく声? そう感じるも、まだ大事な事に気付かない。

「おねえちゃん・・・。」

 これは女の子の声?誰を呼んでいるのだろう。

「こんなところでねちゃったらだめだよう。」

 寝てるというのは、わたしの事かな?

 睡魔の揺り篭にすぐ戻るつもりで、うっすらと目を開ける。

「おねえちゃん、あつくってもはだかでねちゃうとかぜひくんだから。」
「・・・!? え・・・!だれ!!? てかわたし裸!?」

 文姫の股の間に体を入れ、見下ろしているのは女の子。
その真下では、文姫の大事な部分が丸見えである。

 その時、ようやく文姫本来の怜悧さが目覚めた。

「きゃあああぁぁぁあああァ!!!」

 蔡エン文姫、三十と幾年。  それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのであった。




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