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欲望のDLS3 by... 474(◆grMr.KOUTA)様
「 」
「 」
二人はまさにその視線だけで会話を交わすと、シミュレーターのドアを開けた。
あれから数週間。
しばらくは普通の、とはいってもかなり言葉の少ない日常ではあったが、
平穏に過ごしていた日々は1週間も続かなかった。
人間は一人である、という事実は時代が進んでも変わることはない。
確かに一卵性双生児が同じようなことを考えていたり、といったことは研究されていたが
人の孤独を真に癒すような技術は誕生していない。
しかし、突然にリンクした二人の精神は、相性が悪く最悪の結果を招くといったことが無かった変わりに
正反対の反応を生み出した。
二人は孤独に耐えられなくなっていた。
抱き合っても、キスをしても、セックスをしても満たされない感覚。
強烈な一体感と安心感。
数日が経過し、事故で起こったあの出来事を再現する。
次第にそのことを考え始め、考えれば考えるほど、実現に向け、かなり無謀とも言える計画が進行し始めた。
新型DLSを使う事、さらに見つからずに行う必要があり…
光太は綿密な計画の元メインサーバールームに侵入し、ログ自体の書き換えが行えるよう遠隔操作のハードウェアを設置した。
志麻は自作のプログラムで、インフィーのDLS使用記録を自由に書き換え、その作業自体のログも削除する事を可能とした。
あとは、インフィーへと潜り込むだけ。
しかし、この段階に来て大きな問題が発生した…。
「これって…」
「くそっ…よりによって・」
志麻のパソコン画面に映し出されている格納庫の監視カメラ映像。
このストリームを乗っ取り過去のものを流せば、クラスの皆でダンスパーティーをしても気付かれることはない。
格納庫の装甲は分厚く、音が漏れる心配はなかった。
だが、あの事故から警備が厳しくなり、ほぼ24時間誰かがいる状態が続いている事実を
二人は映像で初めて知ることになった。
「麻酔ガスを使えば」
「だめだよ…」
事件にしないこと、そのための準備だった。
ここに来て過激な方法で、この計画をつぶすわけにはいかない。
"感じた"より少し過激な志麻の発言に一瞬驚く光太だったが、自分たちが何かに突き動かされていることは認めるしかない。
しばらく考え込んでいた光太が驚くべき発言をしたのは5分ほどたった頃だろうか。
「んっ、やだっ」
首筋に唇の感触。
ぞくっ、と震える志麻の手は、無関係かのように猛烈な勢いでプログラムを組んでいた。
インフィーをエミュレートしてDLSのハードを手に入れれば、それほど高性能なCPUが無くともDLSリンクは実現できる。
この事実に気が付いた光太は、さっそく志麻と共に行動を開始していた。
でっち上げの転入生で部屋を1つ確保、
ミッションの為に高性能なパソコンがいる、と嘘を付いて5台近くのコンピューターをリンクさせた。
DLS自体は調整のため、という単純な理由でインフィーから持ち出すことができた。
驚くほどあっさりと、必要なものはそろった。
インフィーからダウンロードしたプログラムから、DLSリンクのためだけのプログラムを最適化し、
志麻はその禁断のプログラムを完成させようとしていた。
最初は手伝っていた光太だが、すぐに足手まといだと気が付くと、DLSの複製を作っていた。
いずれは持ち出しが見つかる、それまでに新しいDLSを作らなければならない。
だが、いつのまにか二人の考案で作られた複製は、もはやコピーではなく新型といってもいいものになっていた。
天才でも思いつかないような斬新な設計やアイディア、異なる考え、アイディア、それらが融合して生まれた機械だった。
わずか数日で設計から製作までを行う。
かなり突貫工事にはなったが、目の中への直接投影、脳波自体のコントロールは
シンプルなビアンカのDLSを元にし、かなり高性能なものができた。
そんな作業が終わるとやることが無くなり、光太は飲み物を持ってきたり、
志麻に抱きついてみたり、暇をもてあそんでいた。
「やだって、…」
そう言いつつも手が止まることはなく、プログラムが次々に完成していた。
あの時のようなトラブルを防ぐ安全システムも構築。
プログラムは9割方できた、しかし、
「志麻ちゃん、タイムアウト…、今日はここまで」
「あ、、あとちょっとだったのに…」
「部屋でプログラムすると怪しまれるから…気を付けてね」
「もうしないよ…」
アリサに怪しまれてから、本来の自分の部屋でプログラムすることはなくなった。
「明日は、泊まり、だね?」
待ちに待ったプログラムの完成。
一晩中、あの快楽を…楽しめるということを意味していた。
人類の大きな一歩なのかもしれない。
しかしそんな事は二人の頭をよぎることはなかった。
「準備してくるよ、明日1時間ほど作業すれば、もう完成だから」
「わかった。私もどこかに泊まってくることにする‥」
「うん、じゃあ、明日」
名残惜しそうに、唇を重ねる。
軽く舌を絡ませすこしうっとりとした表情の志麻を見て、光太は慌てて離れた。
「(楽しみは取っておかないと…)」
どこか自分たちがおかしいのではないか、そう思うことは何度かあったが
あの後の検査でも異常はなく、その考えは否定された。
「あ、じゃあ…」
「うん」
部屋へと戻っていく二人。
危険な明日へと、向かってゆく。
「お願い、リンナちゃん…」
「ん〜。 ま、今回はそう言うことにしてあげちゃおう! 光太とラブラブしってきってねぇ☆」
「え、ちょっと、光太くんだなんて。 あ…切れてる」
「アリサー、今日はリンナちゃんの所に泊まってくるねー」
「え? パーティーとかするの? 誘ってよー!」
「あはは、ごめん…なんだか相談があるみたいで…」
「珍しいな、、まぁそう言うことなら、頼りにしてもらいなさい」
「うん、夕食前には出るね」
「夕食……やっぱり食事食べたい…」
「アリサったらー」
「うん、ちょっと用事があるから、そう、今日は帰らない……。うん、じゃあね。」
携帯電話の通話終了ボタンを押す光太。
ほぼ同時に、志麻が部屋に入ってきた。
「しまっ!」
まるでそうするのが当たり前のように強く抱き合う。
ここ数日、会う度にこうしていた。
孤独を少しでも埋めるために。
しばらく抱き合った後、唇を舐め、そのまま舌を舐めあった。
淫靡な音が、機械類以外何もない部屋に響いた。
「ん、ぁ、こうたくん…」
「ふふっ…。さぁ、設定は完了してあるよ…始めようかー」
心底楽しそうに改良した2つのDLSを持ち上げて示す。
「うん、」
唯一用意された生活環境にあるもの、少し調達に苦労した大きめのベッドに腰を下ろす。
接続された数台のコンピューターから伸びたケーブルは頭に装着するのではなく、ベッドのほぼ全体を圏内とする
無線システムに大きく姿を変えていた。
それを受信し、処理する小型の装置をこめかみにぴたりと付ける。
それだけで準備は整った。
「ハウリングキャンセルは?」
「自動・標準に設定…」
最終設定の確認をする。
「不明なリンク部分の処理は?」
「全遮断に設定…必要なら音声指示で、つなげられる…」
「リンク同期調整」
「平均値に自動設定、あとは自動…」
「最大リンク帯域」
「75MJリミット」
設定を眺めていた光太が志麻の方を向くと、肩に手をかけた。
「…志麻ちゃんの身体は」
「、、いいよ…」
「HDLS起動。リンク開始」
ベッドに倒れ込む二人、光太の言葉に反応し、一気にCPUの負荷が上がる。
「ん、、あ…」
「志麻を…感じる。この感じ」
記憶がよみがえる。
何を考えているのか、うっすらとその思考が伝わる。
しかし、感覚が、またもっと奥にあるものは伝わらなかった。
志麻を抱き上げ、上にする。
「ひゃ、…上?」
「うん、脱いで…入れて。」
「恥ずかしいから…いやだって」
「恥ずかしい思いもしてみたいし…ね。 …不明リンク接続率0から20に変更」
しゅっと、頭の中に広がる違和感。
「あ…」
「続けて…もう、入れられるよね…」
体内にある熱さを感じる。
1つになりたいという強い欲望。
「あ、、」
志麻がゆっくりと腰を下ろした。
「ふっ、う… いい、気持ちいい」
「ん、ぁ、」
おそるおそる落とす腰。
「だめだ、、感覚が伝わってこない。…やっぱり…性差も不明なリンクなのか…」
気持ちの良い志麻の体内、しばらく時間をかけ。光太のうえに完全に密着した。
「は、ああ、、光太くん…、」
わずかに涙を浮かべた志麻の目。
視線が少しの間だけ絡んだ。
意見が一致した。
「…不明なリンクを全て接続」
「ひゃっっ!!」
「くっ、、」
一瞬嘔吐感がこみ上げるがすぐに収まった。
体内になにかがある、感覚。
体内に、深く埋まった感覚。
それぞれがありえない感覚を共有した。
同時に、恐ろしく黒く、残酷で汚れたなにかが伝わってくる。
「……。 いい、いいよ…しまちゃん…」
「はぁ、、あ、光太くん」
快感からではなく、身震いをする。
混じり合う感情、しばらく身をゆだねる。
じゅぷ
「ひゃっ」
「わっ!」
志麻を軽く突き上げた、が、悲鳴を上げたのは光太の方だった。
「ぅ、ちょっと、辛いかな…」
「私だって、こすれたらジーンって、感じ」
しばらく呼吸を整える光太。
志麻も快感と混じり合う未知の感覚に小さく震えた。
「いい、…このまま、動くよ」
「ひゃっ」
突然の決定と同時に、光太が起きあがると、そのまま志麻を抱きしめる。
一気にねじり込まれるペニス。
「ぐっ、ああっ!!」
最大リンク帯域の警告が突然鳴り響く。
「いゃっ、すご、すっ、」
「リンク帯域150MJにっ!」
光太が叫ぶ。次の瞬間、志麻が悲鳴を上げた。
「ぃ い ....」
ずちっ
無謀にも大きく1度腰を動かす。
「あっあ、ぁあああ!」
まとわりつく体内からの快感、それに耐える未知の感覚、何かがこみ上げる。
「こわ、こわれる、あ、あ!」
「このま、まっ、壊れっ!!」
志麻に、そして自分に言う。
志麻を押し倒し、腰を激しく打ち付ける。
そのたびにあふれ出る体液のからみつく音が響き、
絶叫が響く。
動くと、キモチイイ。
その快感は相手へと伝わり、相手が感じたその感覚が…。
「いいっ、ひいっ!」
無茶苦茶に志麻を突く。
ガクガクと震え、拭くこともできずよだれが流れる。
「ひっひいっ、」
何かが来る。
その恐ろしいほど強い感覚に光太が気が付いた、次の瞬間。
「ぎゃあああああ!!!!!!」
志麻がのたうち回るように震え、
「!!!」
光太は言葉も出ず、倒れ込んだ。
ドクドクと、止めどなく注ぎ込まれる精液。
時のながれを、二人は認識できなくなっていた。
「(女の子が、イクって…あんな……)」
呆然とそんな事が考えられるようになったのは10分ほど経過した後だった。
全身の痛みに気が付いた。
「っ、志麻、、全リンク切断!」
志麻は、ただ放心し、人形のようにベッドに転がっていた。
「しま…」
慌てて脈を確認する。最悪の事態は無かった。
しかし、普通の様子ではない。
準備しておいた医療キットを開け次々と薬を取り出した。
「ん、、」
「志麻…大丈夫だよ…ごめんね」
優しく頭を撫でる。
鎮静剤と水分補給と…色々と混ざった薬が点滴でゆっくり流れていく。
「あ…光太くん…、、なんだか」
「しばらく休んだ方がいいよ…」
「そう…だね…ん、、」
すぐに眠ってしまう。
そんな志麻の様子を確認すると、ベッドに腰掛けたまま膨大なログの解析を始めた。
二人の不審な行動は必然的にウワサになっていた。
どれも確信を突くものではなく、ラブホテル街に通っているとか、
新種の危ないプレイにはまっているとか、非合法ドラッグに手を出しているとか、そういったものだったが、
本人達に聞いても、適当にはぐらかされるだけだった。
周りの不安はよそに、HDLSの使用は続いていた。
リンクするだけでお互いのことが全て分かる。
当初予測していた、性行為の時に使うと…、といったことに実はあまり意味が無いようだということが分かり、
ただ会って、リンクして、それだけで十分すぎるほどの満足感が得られ、そのまま一晩何もせずに過ごす日々が続いていた。
他の人の夢を見るのは楽しいことを知ったのはこの2人が初めてだろうか。
インフィーのシミュレーションの結果はどんどん良くなり、
教官達も驚きを隠さなかった。
以前あった事故が原因だと疑うものは居たが、まさか…。
「…よし、志麻ちゃん、じゃあ次のテストを」
「うん、じゃあセンサーデータ2倍でノイズを抑えてみる」
志麻の手がパネルの上で複雑な操作を、しかしあっという間にやってのける。
「…ん、、」
光太が少し声を漏らした。
「…うわっ、ノイズが、」
「ちょっと、、これは」
DLSを通して見える世界はノイズだらけになってしまった。
「…DLSが対応できないみたい…。半分に変換して、、つないでみるね」
「うん…、…あ、」
再びパネルの操作音が響く。
「あ…」
「どう?」
心配そうに聞く。
光太はぼーっとした様子で返事は帰ってこない。
「光太くん?」
「……あ、、ごめん、、すごい。全然違う。細かく…見えるんだ…色々なことが…」
「良かった、、ノイズをもうちょっと、減らせたら…」
「そうだね。チクチクする感じが…。いっそ、全部のセンサーをオンラインにして、見えるくらいまでに下げたら、」
「…そうだね、ちょっとずつ試してると時間かかるし、」
パネルを操作すると、すべてのセンサーが一斉に動き始める。
人間が感じ得ることのできない情報、それらが次々と頭の中へ飛び込んでくる。
「ノイズ除去処理を複数に…感度限界まで上げて、、DLSは限界まで下げて、、」
「……。」
「素晴らしい…その設定で見えるとは…」
無線から声が聞こえた。
その光景は恐ろしいほどすべてを見渡せていた。目の前の宇宙を飛ぶ小さな塵、重力、そしてステルヴィアの形。
「あ…、、第…21区画、太陽方向の隔壁にヒビがあります。小さいけど深い…危ないと思います。」
「え、、?」
突然、ステルヴィアのキズが飛び込んできた。数ミリのキズに気圧の力がかかり、
わずかに、本当にわずかずつ、それが広がっていくのが見えた。
「ほほー、それは凄い。いや、大変ですな…。 調査を出してくれ。」
リチャードの落ち着いた声が響く。
「す、すごい、光太くん…」
「…うん、、いっぱい見える…怖いくらい」
「あ、調整しようか?」
「もう少し静かになると良いかな…」
自分もDLSを見ながら、感じ取れる限界まで感度を落としていく。神経を集中させる。
「うん、これなら…見える」
「はぁ、」
「あれ…志麻ちゃん…胸が大きく」
「え?」
「あ、いや…」
「…! エッチっ! あっ、他の人、見ちゃダメだよ!!」
微調整を続けながら、さらに良い結果を求め、
数時間に及ぶセンサーの調整が続けられた。
素晴らしい成果を上げたこの日のシミュレーションは
驚くべき新型DLSの力が示された、と担当の開発者・科学者は思っていた。
実際起こっていたことに気が付いていたものは誰一人としていなかった。
「…はぁ、、なんだか、疲れた。体がヒリヒリするみたいだ、」
「私もなんだか、、DLSに集中してたら…」
「二人とも。もういいですよ。と、いいますか、集中していたようなので声はかけませんでしたが…もう4時間です」
「あ、はい…分かりました」
「じゃあ、センサーオフライン、調整用したプログラムはこのまま保存」
「ありがとう、DLSの設定…OK…オフライン…」
「ふぅ、つかれ…」
DLSを外した志麻が光太の方を向く、しかし、目の前に映るのは
ただ、真っ白な世界だった。
「やっ、ああ!!」
「志麻っ!?」
あわててDLSを外す光太。
しかし、
「!!」
「どうしました!?」
通信の声に応答はなく、
スタッフがインフィーのコックピットを開けると
二人が苦しみながら倒れていた。
「くっ、、、うっ…」
「はぁ、、やだよ、もう、だめ、助けて…」
その部屋、ステルヴィアの誇る医療施設の1つ、
塵1つ通さないスーパークリーンルームに二人はいた。
「何とかなりませんか?」
「……前例がありません」
「薬が使えないのではどうしようも」
「しかしこのままでは…」
ミーティングルームに集まったスタッフたちが事態の解決を図ろうと話し合っていた。
「皆さん、落ち着いてください」
「ふぅ、、」
全く進まない激論を交わしていた医療チームが言葉を止める。
「まず、原因はDLS。これは間違いないですか?」
「それはほぼ断言できます。DLSのノイズを除去するために、大量の情報があるにもかかわらずその情報を弱くして見た」
「結果、たしかによりクリーンな情報は得られたでしょうが、驚異的な集中力を連続させた状態で、長時間神経はその情報を処理し続けた」
「それで、神経が敏感になってしまったということですね?」
「敏感というのは…どうでしょうか、柔らかな布団に寝ただけで触覚を刺激し失神しかねない状況です。通常の空気を吸うのも負担でしょう」
「危うく鎮静剤を注射する所でした。考えるだけでも恐ろしい…。状況の説明がなかったら。しかし、通常こんな事は考えられないのです…」
光太が言った、大量の情報を低出力DLSで長時間見て、神経が鋭くなりすぎているのではないか、という推測。
もっともそれを話すだけで数分を要したが、それがなければ、通常の医療措置がとられていたかもしれない。
注射とはいえこの時代針はない。
しかし、皮膚を通る液体の感覚だけでもショック状態になっている可能性は十分にあった。
とにかくできるだけ何も無いところ、スーパークリーンルームへ運ばれるまで、二人は苦しみ続けた。
「では、過敏になった神経を収めるには?」
「鎮静剤しかありませんが、注射はできませんし…飲ませても、」
「それに一度収まっても、また薬が必要になります。解決とはいえません。こういう状態にも慣れが存在するなら別ですが…」
「とりあえず今を考えるべきだろう!」
「それは、そうだが…」
「少し落ち着いてください。苦しんでいるのは私たちではないのですから、早くベストな方法を考えましょう。」
「……そうですね、、」
ほぼ全ての病気の治療が可能となったこの時代に、対処療法すらできない自分たちにいらだちながらも、再開される議論。
「つまり…空気に混ぜると、、しかし危険だ」
「他に方法がないのならば仕方ないでしょう…ショック症状が出たら…最悪の結果に」
「……くそっ、」
数分後、結論は出た。
「痛いっ、息するとっ、骨の中も…もうやだっ!」
「…っ、、志麻…がんばって…きっともうすぐ何とか……」
何か方法がないのか、状況を認識していた光太は考えようとするが、流れ落ちる汗の感覚だけで
思考が破壊されてしまう。
「…だめ、、だよっ。きっと、助からないよ…痛い…いたい…」
「くっ、、うう、」
空気が動くだけで全身に針が突き刺さるような痛みに呼吸を整えることすら困難だ。
もうあと何分理性を保てるのか、時折意識が遠のき、このまま…、と思うが
次の瞬間また強烈な痛みが意識を強く呼び起こす。
「では、酸素濃度の調整と、、麻酔を空気に混ぜます…」
「濃度は…」
結論から導き出された数値を慎重に機械に打ち込んでいく。
内部に供給されている高品質な空気に薬物が混じる。
その空気が広がっていった。
「あ、、ぐっ」
変化が数十秒で訪れた、激痛が徐々に和らぎだした。
「…う、、なにか、したんですかっ」
「光太くん、遅くなってすまない。特殊な麻酔剤を空気に混ぜている。痛みは和らぐが、感覚がおかしくなるかもしれない。だが、少しはマシになるはずだ。目は見えるようになったかい?」
「…、、分かりません、でも、だいぶ…楽です。……志麻?」
「、、」
志麻の荒い呼吸。しかし、苦痛に満ちた声は聞こえなかった。
「志麻…もう、大丈夫だから。志麻…」
「…ぅ、、光太…くん」
「志麻」
「あ、う…やだよ…死んじゃうの、やだよっ」
「大丈夫」
志麻に触れようとするが、さわっただけでどうなるか分からない。
ギリギリで理性を保っている状態を考え、再び力を抜いた。
全身がぼわんとした霧に包まれ、次第に周囲が見えてくる。
全体がクッションに覆われ、特殊なフィルターを通った空気が音もなく流れ込んでいる。
そして、目の前に…
「だいぶ、楽になった…。志麻、少しは楽になった?」
「あ、…あ、……怖い…、、怖い」
「くっ、」
強すぎる照明がまぶしい。
「すいません、照明を、、落としてください。まぶしくて…」
すぐに照明が落とされる。
いくつかの機器の表示パネルの光だけだが、十分に見渡すことはできた。
「志麻…」
そっと、起きあがる。
全身にまた痛みが走り思わず倒れそうになるが、何とか座り込むことができた。
目の前には荒い呼吸を繰り返す志麻がいた。
「もう大丈夫…、志麻?」
「あ、…、、う、」
「……、リチャード教授、くっ…、第410エリアの使われていない部屋に転入記録がある部屋があります。そこの装置を全て持ってきてください…それで、きっとなんとかできます」
「装置?」
「お願いします…。早く…」
「……分かった、すぐに持ってこさせるよ」
素早い返事に少し安堵する。
「志麻ちゃん、大丈夫だから…、もうすぐ1つに…そうしたら、」
「あ、っ、だめ、見つかったら、…うっ」
崩れ落ちる光太。その衝撃に声を漏らす。
志麻は横たわったまま、呼吸の痛みに耐えていた。
「これは…」
その部屋に到着した者は何もないはずの部屋の状況に唖然とした。
いくつかのパーツが部屋の隅に転がっていたが、
メインのシステムは完成しているといっても差し支えない出来。
電源を落とすと、部下に持って行くよう命じる。
「最新の有機コンピューターネットワークのようだな…」
つぶやいたその声が誰かに聞こえることはなかった。
小さな塵を含め、クリーニングが完了し、光太と志麻の元に運ばれたのは15分ほど後になった。
「それでどうするのかね?」
少し回復している光太に問いかける。
「…過敏になっている神経を押さえます…」
人類初となった、脳の神経を接続しての治療が行われた。
志麻がまもなく疲労は隠せない状態だったが動けるようになり、
実際は意識レベルでの意思伝達が行われているが、
言葉少なに、呟いた。
「光太くん…、、死んじゃうかと思った…」
恐怖が直接伝わる。
神経を優しく撫で、過敏な反応を抑えていく。
このイメージを表現しろと言われても光太には無理だったが、
ごく自然にすることができた。
行為の後、優しく撫でるような感覚。
回復を確認し、通常の病棟へと移動される事になる。
ここ数週間で最近何度入院したのだろう。
「私たちって…かなり…バカだね…」
「…そうだ、ね…」
運ばれた後、心音モニターをBGMに、呟いた。
「あ…、、んぐ…」
服の中に滑り込んだ手に反応して声が漏れる。
寂しさを紛らわすための行為がまた、再開されていた。
「志麻ちゃん、なんだか普通にこうして、するの久しぶりな気がするね」
「ふぅっ。 そうかな、光太くんエッチだし、久しぶりでもないような…」
「ひどいな…。 でも、普通に、だよ」
苦笑すると、布団の中に潜り込み…。
「ひゃっ、舐めるのは…だめ…」
ジリジリと甘くしびれた場所にチロチロと舌が撫でるように何度も刺激を加えてくる。
反応を隠せず全身が熱くなっていく。
しかし舌は構わず志麻の奥の方を舐め始める。
「ん、ん…」
一人、声を押さえる志麻。
「んっ! や!」
ずにゅ
指が奥へと進入する。
堅い異物感に悲鳴を上げてしまうが慌てて自らの口を押さえる。
「ふゃっ、や、めっ」
バサッ
布団をはぎ取ると、きょとんとした光太。
「だめだって、、」
「だって、声を抑えてたら」
「違うよ…昨日から…光太くんが夜這いみたいに……」
「夜這いって……」
そう言われればそうなのかもしれないが、
肌を重ねている安心感を考えると我慢できなかった。
「…光太くんベッドに寝なさい」
珍しく命令形な志麻に思わず従う。
その前に顔についた体液を拭き取る。
「も、もう、早く!」
「別に他意はないよ…」
「横になるっ!」
「あ、うん…」
既に準備万端と言ったところの光太のペニスを取り出す。
「わ、、意外と…ちゃんと見てないかも…しれない…」
「そう? でも、何……っ」
座り込むとそのまま口にくわえ込む。
「しまっ!? っ、あ…」
どのあたりが敏感なのか、という余計(?)な情報をお互いに知る二人。
志麻は容赦なく、裏側を何度も舌で往復すると先端を吸い上げ…。
「くっ、、あっ」
「(早いと恥ずかしいんだよね…)」
一気に深くくわえ込むと光太を見上げる。
逃げるようにベッドの上へ移動するが、何の意味もなかった。
ちゅ、くちゅ
「あっあ、…!!」
我慢することもできず、放出してしまう。
「うっ、あ…」
構わず、強く吸い上げ、舐め続ける。
「ひっ、志麻っ、痛っ、あ、いっ」
たまらず悲鳴を上げると、志麻が強く吸い上げ、口から解放した。
「くっ、、ああ、…はぁ」
「……」
そのまま光太と唇を…。
光太の目が大きく開かれ暴れ出したのはその数秒後だった。
「はぁ、なんで私の患者は困った人たちばかりなのかしら…」
「中毒ですか…」
大人達の不毛な悩みは深まるばかりだった。
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