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晶の奇妙な冒険 456(モJOJOJO)様


 なぜ私は逃げているのだろう。
 後ろを振り返れば、自分達を追いかけてくるとんでもない大人数。
 笑顔だったり、何故か怒っていたり、様々な表情をした人たち。
 けれど、あの人達が追いかけているのは、私達ではない。
 グレート・ミッションを成功させた要。天才予科生の二人。
 自分達はその代わり。彼らが無事に家へ帰れるための、おとり。
 結構な長い時間を走って、晶の息は切れ、そんなことばかりが頭に浮かぶようになってきた。
 泣きそうだ。何が悲しいのか知らないが、晶は段々視界がぼやけてくるのを感じた。
 ふいに、晶の手を握る力が強くなる。
 ジョイ・ジョーンズ。通称ジョジョ。この間までは友達で、今は、恋人。
 彼は晶よりも体が小さい分体力の消耗も激しいのか、辛そうに汗を流していた。
 けれど、追いつかれまいと一生懸命に走っている。それは多分、きっと晶のために。
 なんとなく、笑みがこぼれる。けれど、余所見をしながら走れるほど、晶は起用ではなかった。
「うわ、あ、わ!」
「お!? お!? のわ!」
 転倒。晶の頭部に衝撃が走る。悲しくもないのに、視界がぼやけた。
 あ、まずいな。
 そんな事を考えながら晶は目線を未だ追いかけてくるおっかけ達に向ける。
 危ない。
 踏み殺されてしまうのではないか、と晶はボンヤリと思った。
 しかしその時、おっかけ達の前に一人の男が立ちふさがる。
 どこかで見たことがある気がする。忍者みたいな人だ。
 その男は彼らに向かって走り出すと、まるで走り来る牛を押さえ込むように、全員を受け止めた。
「百人に一人で押し勝ってる!?」
 そんな驚愕の声が聞こえた。けれど聞こえてくるのはそれだけじゃなく。
「晶、晶!」
 ジョジョが不安そうな顔で呼び立てる。
 晶は彼に何かを伝えたくて、
「……と…」
 なんとか声を絞り出した。何を言ったのか、自分でも分からなかった。

 起きる。
 ベッドの上。
 天井が白い。
 ここはどこ。
 狭い個室。
 周りを見渡す。
 ジョジョの顔。
「…」
 ジョジョの顔。
「ハァイ」
 フジヤマの中での光景とだぶった。晶も同じように返して聞いた。
「ここ、どこ?」
「医務室。空港のな」
 思い出す。思い出した。
 そして晶のなかの重い泥のような感情がざわめく。
 それは今まで時間をかけ、少しずつ沈殿してきたもの。
 晶は体を起こした。
「…だめだな」
「お?」
「やっぱり私、だめだ。あんな、…」
「晶?」
「なんで私は、いつもこう…駄目なんだろう。普通なんだろう」
 格好が悪い。
 例えば「あの」片瀬志麻なら、こうはならないんじゃないか。
 晶の思考ベクトルは、どんどん負の方向へと傾いていく。
 現実的な生活レベルで言えば、恐らく晶の方が高い。
 それは毎日のように志麻と接していた者なら分かる筈なのに。
 思考が泥沼という表現は、まさに言い得て妙だった。
 シーツを抱き寄せる晶。握り締めたそこはシワになった。
「完璧な人間なんていない」
 そんな言葉が聞こえた。

 晶は顔を歪めてジョジョを見る。
 ジョジョは天井を見上げていた。晶の方からは見えないが、恐らくは無表情。
「ジョジョ…?」
「天才なんていない。いたとしても、その分努力すればいい」
 晶は眉間に皺を寄せる。半ばジョジョを睨むような表情になっていた。
 なんでそんな事を言うの? 私は、そんな言葉が欲しいんじゃない。
 けれど、ジョジョはさらに続ける。
「オレたちにだってしーぽんには無い、特別な何かがある」
 そこまで言って、ジョジョは晶の顔を見た。そして、大きなため息をついた。
「そんなん、ふざけんなって感じだよな」
「…」
「けど、やっぱ天才ってのはいるし、なりたいよな。
 努力の天才ってのもなんだかなって思うぜ。努力した時点で天才じゃないじゃん。
 俺だけの特別な才能って言われても、すんげーパイロットになりたくてここに入ったのに、それじゃ駄目なんだよ。
 卑怯だよな。人間の数は滅茶苦茶いっぱいいるのに、才能の数は人数分用意されてねー。
 今までそれなりに頑張ってきたつもりだったけど。言い訳かな。
 あー、なんで俺は特別じゃないんだろ。天才になりてー。なんで光太達なんだ? なんでそれが俺たちじゃないんだ?
 なんでこの世界は、自分の思い通りにならないんだ?」
 そこまで一気に言って、ジョジョはヘヘ、と笑った。
「オレってこんな奴。見損なった?」
 晶はその言葉を、慌てて首を振って否定した。
 すると突然にジョジョは立ち上がり、晶を見据えた。
 そして恥ずかしそうに言う。
「おれ、あ、お、お前が、すきだ。いや、二度目、だけどさ」
 晶の頬が少しだけ赤く染まる。確かに二度目の告白だが、だからと言って慣れるものじゃない。
「がー! なに言ってんだ、オレ!」
 ジョジョはそう言って頭を掻き毟った。
 数秒間そうしていると、ジョジョは晶よりも赤い顔で、
「だから、オレが言いたいのは、アレだよ。
 オレがお前のことを好きな気持ちは、光太があいつを好きな気持ちよりも…! がー! がー!」
 そこまで言って、再度頭を掻き毟る。

 けれど、晶には伝わった。
 伝わってきたこの気持ちは、多分勘違いではないと晶は思った。
「ジョジョ」
 晶は恋人の名を呼んで、こっちへ来て、と手振りで示した。
「…なんだよ」
 恥ずかしさのあまり不機嫌そうなジョジョ。それでも晶に歩み寄った。
 ジョジョの身長は低い。こうしてベッドに腰掛けている状態で、やっと彼の方が高いくらいだ。
 けれど、ジョジョは大きい。きっと、自分よりも。
 晶は目の前まで来たジョジョを、抱きしめた。
「…!」
 突然の抱擁に硬直するジョジョ。
 晶は思う。
 私は、こいつの事が好き。
 上ばかり見ていた私を、こいつは真横からしっかりと見てくれていたから。好きになってくれたから。
 いつもそばにいてくれて、いつでも私を見ていてくれたこいつが、大好き。
「ジョジョ…」
 頬を赤く染めて、息を切なげに吐く晶が、ジョジョにはいつもとは違う晶に見えたのだろう。
 ジョジョの動揺が、晶には手に取るように分かった。
 そんな彼を、可愛いと思う。好きだと思う。
 晶はジョジョをさらに強く抱きしめて、ベッドに引きずりこんだ。組み伏せるような形になる。
「うえぁ!? 晶!?」
 暴走。完全なる大暴走。
 彼女の行動は傍から見ればそう映るかもしれないが、当の晶の意識は、意外にも冷静だった。
「おい、なんだよ。あき、あきら! やめろって!」
「私だって、負けてないよ」
「…!?」
 晶は示したかった。それは光太達に対する対抗心などではなく、ただジョジョに理解してもらいたかった。
 自分の思いの強さを。負けたくないとかそんなことじゃなくて。
 私はこんなにもあなたが好きなの。
 ただそれを伝えたかった。証明したかった。
 手段は、これしか思いつかなかった。

「ん…」
「ん!?」
 晶はジョジョに唇を重ねる。間違いなく、ファーストキス。多分それは相手にとっても。
「…」
「…」
 ゆっくりとしたキス。やがて晶はジョジョを解放する。
「…晶」
「ごめん。でも、好き」
 そう言って、晶は。
「……え、お、え、ええ!?」
 ジョジョの右手をつかんで、自らの胸に押し当てた。
 決して大きくはないジョジョの手が、晶の決して小さくはない乳房に触れている。
 ジョジョは目を見開いて晶を見詰めて、口をただ開閉した。
「ごめん。でも、好き」
「さっき聞いたっつーの!」
 ジョジョはうろたえるばかりだが、晶もまた、困惑していた。
 ここからどうすればいいのだろう。
 いや、何をどうしたらどうなるのかは知っている。けれど、どうすればそうなるのだろうか。 
「…」
 取り合えず、服を着ていたら出来ない事は理解した。
「!」
 目の前で着ている物を脱ぎ始める晶に、ジョジョは驚くと共に、さすがに静止した。
「やめろって! なんなんだよ、急に!」
「ジョジョも脱いで…」
「…まずいって!」
「いやだ。お願い。私に、この気持ちを、伝えさせて」
 懇願。ジョジョの表情が悩むような、恥ずかしがるような、色々な感情が混ざったものになった。
 しばらく考え込むように俯く。そして、
「…分かった」
 承諾。あるいは諦めなのか。けれど、ジョジョの表情は一つに定まった。

 その真剣なまなざし。晶は何故か体が熱くなるのを感じた。
 再び晶は服を脱ぎ始める。ジョジョも、少し躊躇したあとで、服を脱いだ。
 やがて。
「…どうしたの?」
 晶は、自分の方を見ないジョジョに声をかけた。
「いや、別に」
「私だって、恥ずかしいよ」
 そう言って、ブラジャーのホックを外す。そして、その大きい乳房は完全に外気に晒された。
 ジョジョがやっと晶に目を向けて、すぐさま動きを止めた。
 綺麗だよ。そんな事を言ってくれるのかと思ったが、
「すげえ…」
 晶はすこしだけガッカリした。ガッカリして、お互いの姿を見てみる。
 両者とも、下半身に布をつけているだけの格好。
 さっきはとりあえず頭の中だけは冷静だったのだが、今更になって晶は恥ずかしさで震えそうになっていた。
 心臓が壊れるかと思うほどの動悸を聞きながらジョジョにキスを求める。
 ジョジョはそれに答えて、ぎこちないながらも口付けた。
 やがて唇は離れ、晶はベッドの上に背を下ろす。
「さ、触っても、いいかな」
 ジョジョの問いに、晶は僅かに頷くことで返答した。
 さっきとは逆に、今度はジョジョが晶に覆いかぶさった。
 乳房に手が、触れる。今度は直に。
 ジョジョの親しい女友達のなかでは、二番目に大きい。
 手が触れて、少し力を込められると、晶の胸は簡単に形を変えた。
「…」
 ジョジョの顔に驚きの感情色が浮かぶのを、晶は見逃さなかった。
「…どう、かな」
 尋ねてみるが、ジョジョは目を見張るばかりで答えない。
 晶は喋るのを止めた。今はただ、感じるままに。
 ジョジョは両手で晶の乳房を触った。握ったり、押しつぶすような感じで力を加えたり。
 自分の胸はそんなにも柔らかいのか。晶は、目の前で形を変える乳房に、不思議な感じを覚えた。

 しかし、ジョジョが少し強く乳房に力を加えたとき、
「うぁぅっ」
 晶は声を漏らした。
「ごめん、痛かったか!?」
「あ、うん、もう少し、優しく、して」
「…わかった」
 ジョジョは頷いて、愛撫を再開した。
「…ぅ…」
 晶は困惑していた。なんだか、足の付け根の真ん中辺りが、ムズムズする。
 先ほど強く触られたとき、実は痛みなどではなく、何かのスイッチを押されたような感覚があった。
 ジョジョの手によって形を変える乳房。そこから、なにか得体の知れない感覚が伝わってくる。
「は…はぁぅ、あ、ん、あ…」
 思わず声が漏れる。
 胸を触られただけでこんな感じがするの?
 晶はそんな事を断続的に考えつつ、与えられる感覚に翻弄されていた。
「ゃぁう!」
 ピリっと電気が走るような突然の感覚。ジョジョが愛撫の標的を乳首に移行していた。
「あ、また痛かったか?」
 申し訳なさそうなジョジョの口調。晶はさらに体が熱くなった。
「大丈夫、大丈夫だから…」
 晶の了承を得たジョジョは、まるで子供みたいにそこを吸いたてる。音を立てて、必死に吸っている。
 勢いだけの愛撫。けれど、晶はそれが何故か心地よくて、とても。
 突起が乳房に押し込められ、もとの位置に戻る。両の乳房が擦りつけあうように大きく揉みほぐされる。
 声を抑えられない。ものすごい感覚が体を暴れまわっている。
 私、感じてるんだ…。
 けれど、それを理解してしまった後で、彼女はまた困惑した。
 胸だけでは、なんだかもの足りないのだ。
「…」
 言おうか言うまいか。大体何を言えばいいのか。
「あ、あの…」
「…え?」
 少し夢中になっていたジョジョは、晶の声に反応した。

「なんか、そこだけ、さっきから…」
 自分でも何を言ってるんだか分からなかった。
 でも、言えるわけが無い。そんなのは恥ずかしいにも程がある。
「…?」
「だから、その、そこだけだと、だめ」
 表情が更に訝しげになるジョジョ。
「…」
 晶は分かって貰えない苛立ちと、恥ずかしさと、切なさで、少し泣きそうになった。
「…下も、触って」
 遂に口に出して言ってしまう。本格的に泣きそうになった。しかし、
「晶、キレイだ。スゲーキレイだ」
 今更何を…。
 晶はそんな事を思って、でも、なんだか嬉しくて、
「…ありがとう」
 そう言った。
 そして思い出す。意識を失う際に、自分が言った言葉。
「ありがとう」
 もう一度言ってみた。ジョジョは優しく笑うと、体の位置を下げていく。
 そして、下着に手をかけ、ゆっくりと取り払った。
 不安になる晶。どこか変な所はないだろうか。
 しかしそんな間もなく、ジョジョは手を動かす。
「ぁ…」
 触られてしまう。触ってもらえる。対比の感情。しかし矛盾ではない。
 ジョジョが唾を飲み込む音が静かな室内に響いた。当然、晶にも聞こえた。
 指が近づいてくる。そして確かに触れられた感触がして、晶は、
「ふぁう!」
 声を荒げた。
「…大丈夫か?」
 なんだか触れられるたびに心配されている事実に、晶は恥ずかしくなった。今更という感じだが。

「ごめん、なんでもないから…」
 その言葉とは裏腹に、
「…手、どかしてよ」
 晶は両手を性器にかぶせるようにして、隠してしまっていた。
「…だって」
 予想外。予想以上。さっきの感覚には、少し危険を感じた。
 触れられただけであんななのに。
 晶の視線は、自然にジョジョの股間へと移った。
 よく分からないが、下着を押し上げているものがある。
 自分の体に興奮してくれている。この事実は、なんとも言えない感情を晶にもたらした。
「どかさなきゃ、触れねーよ」
「…だって」
 怖い。みんなは、こんなものに耐えているのだろうか。
 本気で触られたりなんかしたら、自分は壊れてしまう。
 けれど、自分から誘ったのだ。そして、あの気持ちは忘れていない。
 晶は、一人で決心して納得すると、おずおず手をどかした。そして驚く。
「…!」
 どかした手と性器の間に橋が渡っていた。体液で出来た水の橋。
 ピチャリと音をたて、晶の処女地からこぼれ出ている。
 一気に赤く染まる晶の頬。ジョジョの顔を覗き見ると、食いつくように見入っていた。
「あんまり、みるなぁ…」
 絞り出された晶の言葉に、ジョジョはハッとなって手を動かし、触れた。
「ぁ…あ! はぁぅ!」
 またあの快感。晶はシーツを掴んで耐えた。唇をかみ締めようとするが、どうしても声が出る。
「ん、やぁ! くぅ…あぁう!」
 入り口の所と、その上の突起に僅かに触れる。
 とんでもない快感。晶の目じりに涙が浮かんだ。
「ああ! く、ぁ! ジョ…!」
「!」
 晶は耐え切れなくなっていきなり飛び起き、ジョジョに抱きついた。

「もう、だめ…」
「…やっぱ、やめるか?」
「違う、そうじゃなくて」
「……いいのか?」
「……………………うん」
 二人はそこでもう一度キスをして、再び晶は寝そべった。
 その間にジョジョは下着を脱ぐ。今まで押し込められていた性器が、ピョンと上下した。
 他のと比較した事がないが、イメージしていたより。
「……大きい…………の?」
「…疑問系かよ。…いや、多分、あんまり」
「そっか…」
 少し安心。何故だろう。
 足を開く。ジョジョがその間に入ってくる。
「……ぃ」
 怖い。晶は誰にも聞こえないようにそう呟いて、そしてそれは誰にも聞こえなかった。
「い、いくぞ」
 ジョジョはそう言って男性性器を女性性器へと押し当てた。
 ピチュリ。水音が聞こえて、圧迫感がした。
「ん…ふぅ…」
 思わず息を吐く晶。
「いま、先っぽがは入った…」
 なぜに実況するのか分からなかったが、ジョジョの顔は苦悶に染まっていた。
 さらなる圧迫感。ピリっと少し裂けるような痛みが晶を襲った。
「やっと真ん中ぐらい…」
 まだ、半分。晶はこの瞬間を異様に長く感じた。しかし同時に、思ったよりも痛みが無いことに安堵も感じる。
「痛い…?」
「大丈夫…ジョジョは?」
「…出ちまいそう」
「や、駄目、中は駄目だからな!」
 晶の言葉にジョジョは、頑張ってみる、と答えて、更に腰を押し出した。

「なんで、ゴムとか、そんなこと、全然考えてなかっ、うああ!」
 ぼやいている最中に急に根元まで入れられてしまい、晶は悶えた。
 晶はジョジョを睨みつける。
「わ、悪い。止まらなくて」
 ジョジョは焦って、アキラの中から抜こうとする。
「ああん! ちょ、っとぉ…!」
「ご、ごめん…」
 ジョジョはもう何も出来ずに、そのままの体勢で止まった。
 晶は少し落ち着きたくて、深呼吸する。でも、結合部がジンジンと、攻め立てる。
 整えたい筈の息が荒くなっていく。
「……ごめん、ジョジョ…」
「ん?」
「…動いて…」
「あ、あ、うん」
 言われたままに、ジョジョはゆっくりと、体を動かし始める。
「あ、ああ!」
「…っ」
 少しだけ動いただけなのにこんな。
 晶の中でゆるゆると摩擦されるたびに、そこから快楽の波が打ち寄せてくる。
 抜き出されればピッチリと閉じ、入り込まれるたびにそこは押し広げられた。
 クチックチックチッ…。
 密閉した空間で粘液をかき混ぜる音。それが確かに二人の耳に届いて、行為を加速させていく。
「んあ、はあ! んやぁ! あ、ああ!」
 声が漏れる。止めることはもう不可能。晶はもう完全に泣いてしまっていた。
 ジョジョはぷるぷると揺れる乳房を鷲づかみ、代わりに晶は必死でシーツを握り締める。
 お互いに何も考えられず、ただ感じることしかできなかった。
 挿入されてから、十数秒ほど経つ。しかし、晶は自分がもう限界に近いことを悟る。
「はぁ! わた、し! も、う!」
 おかしくなる。晶は段々と意識が「高み」へと誘われていく事を感じていた。
「あ、あ、あ、あ、ああ、あ! ぅあああ…!」
 達した。急激な変化にジョジョもまた果て、同時に膣内から抜き出た。
 ギリギリまで膨張した性器から放出された体液が飛び、晶の顔にかかる。

 ツンとする生臭い臭い。真っ白になった晶の意識を、その臭いが覚醒させた。
「…へんな臭い」
「…悪い」
 晶は不機嫌そうな表情で頬辺りについた雫を指で拭い、少しだけ舐めてみた。
「…へんな味」
「…悪い」

 最初に目覚めてからどれくらい経ったのだろうか。
 晶はジョジョと共にベッドでまどろみながら、頭上のデジタル時計をのぞき見る。
 多分、三十分くらい。
 そして、いまさらながら事の重要性に気づく。
 もちろんジョジョとの行為もそうだが、今はそれどころではない。
「ちょ…ジョジョ…!」
「あー…んー…?」
 よほど疲れたのか、眠ってはいないながらも、
 すぐにでも寝息をたててしまいそうな表情で彼は晶を見た。
「起きなきゃ…ここ、医務室なんでしょ?」
「んー…あー!!」
 少々声が大きいが、ジョジョもそれを思い出したらしく、急いでベッドから降りた。
 もちろん何も着ていなくて、それは晶も同じ事で、いま人に来られたらとてもまずい。
 すると、ドアがノックされた。
「入るぞ」
 この声は聞いたことがある。ビッグ4の一人。ショージン。
 あまりにも二人の帰りが遅いのを心配して、様子を見に来たのだろう。
「!!!!」
「まっず…! ちょ、ちょっと待って! くだ、さい!」
 ジョジョは大慌てで下着を履こうとする。
「バッ…! それ私の!」
「んわ! た、助けて!」
 状況の変化に混乱して、ジョジョは思わず助けを呼んでしまった。

「大丈夫か!」
 助けを求められたのなら、見過ごしてはならない。
 ショージンはわざわざドアを蹴破って入ってきた。
 そして二人の痴態を目の辺りにし、
「…そうか」
 何故か落ち込んだ様子で部屋を出て行ってしまった。
 ちなみにドアは多少歪んではいるが直されている。一瞬で。
「見られた…」
「見られた…」
 二人はぐったりとしながら、今度はちゃんと服を着た。

 その後晶たちはショージンと別れ、それぞれの帰路に向かって歩いていた。
 さっきとは違って誰も追いかけてはこない。
 ショージンが「なんらかの方法」で彼らを追っ払ったため、静かなものだった。
「…」
「…」
 二人は何も喋らなかった。
 先ほどの行為への気恥ずかしさもあったけれど、火照った体に風が気持ちよくて。
 今はただ、それを体全体に受けていたかった。

 もうすぐ二人は別れる。住んでいる場所が違うから、当然だ。
 もちろん冬休み中に電話をしあったり、もしかしたらどこかへ一緒にで出かけることもあるかもしれない。
 けれど、なんだか知らないが、ここで別れてしまうのは、とても嫌な感じがした。
 ふいに、ジョジョが晶の手を握った。自分の手よりも小さい。けれど、とても暖かい。
 こんなに暖かいものがこの世界にあるなんて、晶は知らなかった。
 この暖かさを知って、自分は変われるだろうか。
 多分、変わらない。
 これからも多分自分の才能の無さに苛立つし、志麻や光太に嫉妬もするだろう。
 けど、いま横で一緒に歩いている人間は、それをきっと受け止めてくれる。
 自分は天才じゃない。けれど、彼が同じように苦しんだときにそれを受け止められてあげられるように。
 願わくば、そんな人間でありたい。そんな人間に、なりたい。
 少し強い風が吹き抜けて、二人の髪を揺らす。
 晶は少しだけの笑みとともに、ジョジョの手を握り返した。

                                     完


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