明日葉「じょーじさん、ですか!?
     わ、わたし、輪ちゃんからの紹介で来ました、にににに新田明日葉と申します!」


 ――間違いない。彼女だ。
 が、待て。この構図はなんだ?

明日葉「あ、輪ちゃんというのは天野輪廻さんのことで、すみません、いつもそう呼んでるからつい……」

明日葉「それで、あの、もう伝わっているとは思うんですけど、わたし……わたしもトリアノンに連れてってくださいッ!」


 がばっとさげられた新田明日葉の頭頂部は、俺には向けられていなかった。

明日葉「輪ちゃんから聞きました……。じょーじさんが部隊の最高権力者だって……」

明日葉「や、やっぱりその、迫力ありますね……」


 いわゆるひとつの国民的FRP樹脂製人形であるゲンタッキーおぢさんと……話している?

明日葉「わたし、実は過去に一度トリアノンの面接落ちてるんですけど……それでカフェ・ヴィトーになんとか引っかかって……」

明日葉「でもヴィトーが潰れてしまったら、もう一回どっかに受かる自信ないんです……」


 そうだろうな……。この支離滅裂具合からして面接で落ちることは疑いない。

明日葉「でも、今だったら一人だけ、入れてもらえるぞって輪ちゃんが……」

明日葉「えと、うう……その沈黙は拒絶ですか?」


 人形に拒絶もなにもないだろう。

明日葉「あの、ちゃんとわかってます!
     じょーじさんが外人部隊あがりで、その筋では畏怖と敬意をこめられて大佐と呼ばれているって……」


 新田明日葉はぷるぷると震えだした。



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