「胸の中で蕩けて」
開け放たれた襖から月が見えなくなるほど高く登ったころ、背中から、元親に抱き締められた。
慶次の着ていた着物は、するり、するりと、脱がされていく。
特に慶次は抗う事はしない。
断る理由が無いからではなく、自分もそうしてほしいと思うから。
項や、首筋に押し付けられる唇と、吐息と。
過敏になった身体は、すぐに下帯を押し上げて、僅かに染みを広げた。
頭の中が、これから始まる行為に既に、痺れていく気がする。
元親の指が下帯を解き、勃起して既にてろりと光る慶次の男根へと触れる。
くちゅっ。
くちゅん。
ぬるり。
「ンっ…んー…ッ」
「慶次…声、抑えるな…」
耳元で囁かれるから、声が、耳の奥まで、頭の奥まで響いてくる。
言われる通りに慶次は、噛んでいた唇を開く。
頃合いを見計らったように、元親の手が、慶次自身を上下に更に擦って追い上げていくから。
呼吸が、更に短くなって。
透明な液が滴り、指先に、喘がされる。
「あっ、もとちか…や、ァっ」
身体を抱き竦められて声を出していると、慶次は、自分が男なのを忘れそうになる。
それほどまでに、元親の胸は温かで。
それでいて、下肢だけではなく胸の内まで全てを昂ぶらせていくのだ。
すり、と胸に擦り寄ってみる。
覆い被さる様に、また、強く抱き締められた。
腰が自然と揺れてしまう。
それを無意識の行為と知ってか知らずか、元親の押し殺した笑みが、慶次の耳にまた、響いた。
「慶次」
「は…っあ、も、もう…もうっ…」
片手が、触れずとも立ち上がっていた胸の突起に触れ、摘まれる感覚が気持ち良い。
限界を訴える声も震えて。
「受け止めてやる、出せよ…慶次」
「ん…ッ、…もと、ちか…あッ、あァっ!」
腕の中で身体が大きく跳ねる。
甲高く張り上げた嬌声と共に慶次は、元親の手の中へと欲を吐き出して、果てた。
元親の掌の中には熱い精液が多量に溜まり、ぽたりと、滴り落ちるのと一緒に指を後孔へと滑らせた。
普段は受け入れる場所ではない其処は、いまはまだ、締まったまま、
崩れ落ちそうになる身体は、元親に支えられ、そして慶次は気付く。
「…元親、背中に、あたってる…」
「当たり前だ、アンタのアノ声聞いて、勃たなきゃ男じゃねェ」
「そんなの元親が助平なだけ…ッ!!」
叫ぶ声も唇も、未だ荒い呼吸も全部、強引な口付けで、塞がれて。
抱き締められた広い胸が心地良く、絡み合う視線があまりに甘いから、慶次の奥が、きゅうんと疼いた。
=素敵挿絵=