ロスト〜何も無い世界〜

抹消さん

第一話 グラップラー

20XX年 日本 東京 渋谷 地下闘技場

今日も地上に突き上げんばかりの声援がこみ上げてくる。6角形の囲いの中に砂が敷き詰めてある試合場には

タキシードを着た礼服の男がマイクを持ちレフェリーをしていた。

「さあ!今日はチャンピオン狙いの二人の対決だ!私の右手からやってくるのは20戦中13人を締め落とした

ロシアのサンボの達人ロマノフゥウ!!」

喚声を浴びながら柔道着と短パンをはいた男が今日も締め落とそうと張り切りながら試合台に上る。そして対角線上から

ぼろい軍服を着た170cmくらいのいい体つきの日本人男性が歩み寄ってきた。

「そして、我等が国産ファイター別名「切り裂くジャック」出来杉!!」

更に喚声は大きくなる。この出来杉は地下闘技場の上位ランクにただ一人日本人としてランクするファイターなのだ。

俄然(がぜん)熱入るだろう。

「さあ、見合って見合って!ファイト!!」

ロマノフはスグに相手の襟首を掴んだ。だが、出来杉も同じように胴衣をつかみ出す。

「バカヤロー!サンボの達人と遣り合ってどうするんだ!」

観客からの非難轟々。だが、ロマノフが自分のペースに引き込もうと足を引っ掛けこかそうとしたところを出来杉が逆手に取り、

足場を自分のペースに持ち直し一本背負いを瞬時にかます。そしてすぐさま足でロマノフの左手と首を挟みきっちり関節技をかけた。

「すげえ、出来杉って何でも出来るんだ!」

完璧に決まった関節技というのはどうあがいても逃げられない。それを知っているロマノフは瞬時に手を地面に打ちつけタップした。

「勝者!出来杉!!」

大衆の喚声は湯のように沸きあがる。その湧き上がる様は限度を知らない。その歓声にこたえるべく出来杉は大衆に手を

振りまくった。それに乗じてロマノフはタックルをかましてくる。

「おい!試合は終わってるだろうが!!」

タックルで相手を倒しマウントポジションを取り子供のけんかのように叩きまくった。

「誰か止めろ!!」

しかし出来杉もそれなりに技能がある。スグに相手の攻撃に順応し受けをきちんととった。それに無駄だと感じたロマノフは

懐に隠していた拳銃を取り出し引き金を引いた。

「ころすうう!!」

そして打ち込もうとしたら手首から大量の血が出てくる。ての動脈を切断されていた。

「ぐあああああ!!」

そして、手首を押さえ出来杉の上にただ呆然と痛みを嘆いているロマノフにまた切り口が4,5こ開いた。

「ぐ、がああ……」

出血多量のせいか、そこで寝込んでしまったようだ。その寝込んだロマノフを横に寝かし、大衆の静寂の下かれは

控え室へと血をぬぐうためにどうどうと歩いていった。

 

第二話 ザムエル

「そろそろ雑居房へ行け!!」

ぼろいローブを着た男が小銃を振りかざしシャワー室の前に立っていた。

シャワーを浴び終わった出来杉はスグに体を拭き服を着なおし、手錠をはめる。

「それでは行くぞ!」

出木杉を先頭にローブを着た男が銃を突き刺し廊下を歩いていった。

「そろそろランク1だな。」

男がしゃべりかけてきたので出来杉も応答する。

「はあ、そうですね。」

出来杉はあくびをした。

「あまり驚かないのか?ランク1になったら平民になれるのに。」

「オレの狙いはチャンピオンだ。」

「へ〜お前もチャンピオン狙いか。確かにお前の強さならチャンピオンを呼び出せるかもな。だが、もう少し圧倒的な試合を

見せないと来ないぞ?それに超能力の素養はあるのか?」

「俺を見くびるな。対超能力訓練を受けてきた。AESP能力は普通の超能力者よりも高い。」

「そいつぁご苦労なこった。後一つ聞いて言いか?」

「なんだ?」

「今日のロマノフにかましていたあのかまいたちみたいなものは何だ?」

出来杉は自分の両手の第一関節を見せた。

「ここだよ。」

「ここだよって言われてもわからねーよ」

「それじゃあ、ムエタイのひじを見たことあるか?」

「ああ、あれは肘で肉を切るんだろ?」

「それとおなじさ。」

「なるほど!よく考えたな!!」

「そろそろ房だ早く鍵の用意をしてくれ。」

「おお、分った。」

ローブの男はズボンから鍵を出し出来杉の前を行き出来杉がつくまでに雑居房の鍵をあけた。

「はいれ。」

出来杉はおとなしくその中に入った。

「言い忘れていた」

男は帰ろうとした矢先に自分が言わなければならないことを思い出す。

「貴族の静香様がお前に会いたがっていたぞ。それと伝言だ、『魔弾の射者はザムエルを待ち構えている。』たとよ。」

ローブの男は雑居房を後にした。

 

第三話 殺人の理

「魔弾の射者はザムエルを…」

トイレすら置いていない雑居房の真ん中で体操座りのまま考え続けている。

(確かに作戦は最初は成功すると思うが、この地下闘技場の設計図も手に入れていないのにこのまま作戦を続ければ

高確率で見つかっちまう。それにどうやってここから脱出できるんだ?)

頭を駆け巡る思考。出来杉は寝もせずに朝方まで考えていた。

「おい!ランク1の昇格がかかっている試合だぞ!オレもお前に賭けたんだ!負けんじゃねーぞ!!」

体操座りをやめ牢から出る。

そしていつものように銃を突きつけられながら試合場へと立った。

「紳士淑女の皆さん!今宵も集まっていただき誠にありがとうございます!!それでは今日の見所!

 出来杉対プッチのランク1昇格戦だ!!」

試合場を見渡せばありも這い出る隙間も無いほど人が混雑していた。

(人を何だと思ってやがる。こいつ等の欲望は人の死をも受け入れるのか!!)

出来杉は観衆を睨む。横から大きい罵声がした。

「びびってんじゃねーぞ!!かかってこい!!」

出来杉の対戦相手からのようだ。

(この服からしてアメリカの特殊部隊の曹長といったところか。特殊部隊名は…忘れちまった)

「それでは昇格戦を始めるとしましょう!」

一気に喚声が沸いたそして出来杉とプッチはにらみ合う。

「それでは互いに見合って……開始!!」

出来杉ははじまるや否や相手に攻撃をし始めた。

「これは!今まで受けていたスタイルから攻撃のスタイルに変わった!!彼は何でも屋なのか!!!」

出来杉は相手に第一関節での攻撃をし始める。相手もそれなりによけたりはするが、生傷が何本も深く出来てくる。

(こいつ!一掃するつもりか!!そうはさせん!!!)

すぐに防御している手を外し頭部に攻撃を食らわないように突っ込んでいく。

「捕まえた!!」

肉を切らして骨を断つ、その言葉どうり彼の手を掴んだ。

「コレで終わりだ!!」

すぐさま手を折ろうとした矢先にプッチの視界は反転してしまう。

「捕まえたのは俺だ。」

プッチに掴まれた手を器用に九十度回転させ相手を地面に叩きつける。

「ぐふう!」

プッチの視界は脳への衝撃により混乱していた。そこへ激しい痛みがたくさん襲う。

「くそおおお!!」

その激しい痛みの正体は出来杉の蹴りだった。ガードしようにも視界がゆうことを利かないのでおぼつかないガードになる。

彼の口からちが出始めた頃に出来杉は一時蹴るのを止めた。

「ギブアップしろ!次は殺しかねん!!」

だが、その言葉とは裏腹にプッチは足を掴む。

「ここで負けたろれは死ぬしかねーだろ!!」

彼の執念はもの凄かった。なぜならばもう一度同じランクで戦わなければならないこと、それと回復時間は1日だけ。

何よりもランク1になったらエリート部隊のクルーパーになる代わりに平民の位をもらえるからだ。

「しょうがないな。」

出来杉はもうひくきはない。彼の目はもう既に狂気が支配してしまった。

「ぎゃあああ!!」

うつぶせになっているプッチの首に貫き手を決めた。この貫き手は達人になると人を貫通する威力があるらしい、

出木杉もそれと同様の技術をものにしていた。ここでプッチは首から大量の血を噴出しながら息絶えた。ただ最後に「母」の名を呼んで。

「勝者、出来杉!!」

いつものより多い喝采を受けた。この声援はプッチの死によるものだろう。なんともふがいない気持ちになりながらも試合場を後にした。

 

第四話 

外 

登場門には既にローブの男が居た。

「おめでとう、今日からお前は平民に昇格だ。そして特殊精鋭部隊『鷹』へのトルーパーとして天上界の方々のため頑張ってくれ。」

言い終わると男は手錠の鍵を外し始める。

「久しぶりというべきかなコレは。」

ローブの男が手錠を外し終わり開放された両手首をまじまじと見る。

「たった一ヶ月でここまで下やつはいないぞ。」

「そうか?まあ、スポーツとしての試合は苦手だが、殺し合いの試合は得意なものでね。」

「イロイロ死線をくぐってきたんだな。とりあえずここからお前を『鷹』の寮へ連れて行く。話は歩いてしようか。」

「寮はどこにあるんだ?」

「平民になったから地上にあるぞ。」

登場門からまたいつものように背中に小銃を突きつけられながら出木杉とローブの男は奥へと歩んで言った。

「お前のプロフィールを見せてもらったよ。」

「第一印象はどうですか?」

「おまえ、この場所に残っていれば天上界行きも夢じゃなかったぜ。」

「そいつぁどうも。」

「伝説の『赤眼の梟』だったって言うだけでも驚きだ。」

「新日本の軍事コンピューターにアクセスしたのか?」

「一様資料を集めるためにな。エレベーターが見えてきた。上に上がるボタンを押せ。」

銃を突きつけながら男の言うとおりにした。

「アンタ等の情報技術は本当に驚きだよ。」

「こっちには『万能の狸神』様が居るんだ、我々の科学技術に勝てるわけが無かろう。あ、ついたぞ。中に入れ。」

コントロールパネルがあるほうへ出木杉は小銃の先っぽで追いやられる。

「一階な。」

「分った。」

出木杉も言うとおりに行動する。

「話は変わるけどランク1は『鷹』は10日に一回出場しなければ権利剥奪だぞ。でも、超能力者は減給だけですむ。」

「超能力者はランク1にスグに戦えると聞いたが本当だったのか。」

「結構下調べしてるんだ。」

「勿論。ついたぞ。」

「そうだな、外に出ろ。」

久しぶりの外の景色はとっても冷たかった。幾度と無く続く戦いにより荒廃した景色はなんともいいがたいものがあった。

そしてその中をまた歩かされる。

「相変わらずというか、平民が居るところは結構いいんだろ?」

「まあな、結構いいぞ。」

「ここからどのくらいだ?」

「車に乗らなくてはならん。」

「今車庫に向かってるってとこか。」

「もうそこが車庫だ。車動かすからそこに居といて。」

「逃げ出すかも?」

「お前の考えはある程度分ってんだ、逃げ出すわけねーだろ?」

「そういうやつがよくいるのか?」

「まあな。」

ローブの男は車庫前まで歩いていった。

真実? 虚言? どっち?

(久しぶりに人を殺した。どうしても未だにその思い振るえが消えない、身体には出てはいないけど。

俺は狂気に飲まれていくのだろうか。もうあの世界に行かないようにしていたのに。だが、)

出木杉はあたり一面をもう一度見回った。やはり植物や小動物、虫さえも見えなかった。一面にはただ焼き焦げた死体が散らばっている。

(この世界を戻すためにもオレは狂気を体現せねばならない。もう一度狂気に身を落としたら俺は戻ってこれるのか?)

車のエンジン音が出来杉を現実へと戻す。

ローブの男は車を出木杉が助手席に乗りやすいように反対側のドアを出木杉に見せて止った。

「車用意できたぞ、早く前に乗れよ。」

出木杉のいるほうのドアのウィンドウを開いて男はウィンドウから顔を出し、言い終わるとドアの鍵を開けた。

「ありがとよ。」

ドアをすぐに開けどしっとイスにもたれかかった。

出木杉がドアを閉めるのを確認した後車は地下闘技場を後にする。

「それにしても傷跡は深くないか?復興作業はどうなってる?部分部分がいいだけ?」

「お前の言うとおりだ。ま、天上界の方々が我々を天上界へと導くまでの辛抱さ。地球はもう不浄の地、もうどうにもならないさ。」

出木杉はそれを聴いた瞬間大笑いをした。

「は!ばかげたはなしだな!!」

男は車を運転しながらも怒りを表す。

「貴様のような何も信じないクズとは違う!我々は涅槃するのだよ!貴様も今のうちに神を信じるのだ。」

更に出木杉は笑う。

「だが、お前等の宗教はいまいち訳がわからん。バカすぎる。何が涅槃だ?本当にふざけてやがる。」

男も更にヒートアップ。

「こけにしおって〜!!貴様はこの地で煉獄を味わっておけばいい!!」

いきなり大笑い状態の出木杉から笑みは消え始めた。

「煉獄か、確かにそうかもしれない。でもな、もともと人生は痛く辛いものだ、そこから逃げるのはなんともおろかな

生き物の選択じゃないか?それが人間だというのもあるが。」

男も怒りを抑え冷静に出木杉の意見を返し始めた。

「お前の言ってることは正しいところもあればそうでないのもある。デゥーイ曰く人は理性で欲求を抑えられるが人は

出来なかった。だから今こそ涅槃がいる。」

「お前等は上のやつ等に操られたとも思わないのか?」

「思わん、彼等は人類のメシアだ。」

男のきっぱりした言い方に出木杉はこれ以上言うのは無駄だと感じた。

「そうか、まあ人それぞれさ。オレはこの地でいきたいよ。」

「お前の言うとおり人それぞれだ。でも、時期に我々の考えが分ると思う。」

「へ〜。」

話が終わり始めた頃に車は目的地へとたどり着く。

 

この話は続きます。

 


 

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