アンサンブル
ザール・ベルガー/2つのトランペットとホルンのための作品集 |
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CD(Ensemble Modern Medien EMCD-033/034)
コールス・スタディース&ゲームズ
〜トランペットとホルンのための作品集
CD1
1.エリオット・カーター/コール
2.ベアト・フラー/スタディ
3.今井千景/インターウィーヴ
4.ヴァソス・ニコラウー/エリニアス
5.マテイ・ボニン/モメンタム
6.ベルンハルト・ガンダー/不信心な説教
7.マンフレート・トロヤーン/
序奏とスケルツェッティーノ
8.マルチェロ・ペルティコーネ/注釈
9.マルティン・マタロン/金属の金属
10.シュタイングリムール・ローロフ/生物
11.マートン・イレシュ/エン・コール I
12.ナタリオ・スエド/白から黒へ
13. 〃 /ウォーミング・アップ
14. 〃 /プリズマ
15.デーモン・リー/ラザロの縁
16.ミゲル・ガルペラン/塵から塵へ
17.ヴィト・ズラジ/お静かに願います!
18.ヴァレンティン・ガーヴィ/アンチ・ウィーン
CD2
19.ヘルマン・クレッチマー/サ・ヴァ・サ・ゲームズ
20. 〃 /新しいサ・ヴァ・サ・ゲームズ
21.アダルベルト・アンドレ=ヴィダル/
5つのエチュード
サ・ヴァ・サ三重奏団
サヴァ・ストイアノフ(トランペット)
ヴァレンティン・ガーヴィ(トランペット)
ザール・ベルガー(フレンチ・ホルン)
録音2015年1月2〜10日&
3月15&16日
ドイツのアンサンブル・モデルンのメンバー、サ・ヴァ・サ三重奏団による録音で2本のトランペットとホルンのトリオ集です。いずれもオリジナルの作品でほとんどがこのトリオのために書かれていますので、これが世界初録音になります。サ・ヴァ・サ三重奏団とは3人の頭文字をトリオの名称にしたものです。
エリオット・カーター(1908〜2012)の「コール」は2004年に初演された作品。いわば「呼び出しの音楽」ともいえそうです。前奏曲によさそうです。
ベアト・フラー(1954〜)の「スタディ(練習曲)」はロングトーンあり、こまかなフレーズありの練習曲ですが、クレッシェンドがきつそうです。
今井千景(1979〜)の「インターウィーヴ」は2本のトランペットとホルンの語り合い、そして嘆きのような風変わりな作品です。
ヴァソス・ニコラウー(1971〜)の「エリニアス」は高音を使う作品。神経質そうな人々の騒がしい声のようです。演奏はかなり難しそうです。トランペットはミュートを使います。
マテイ・ボニン(1986〜)の「モメンタム」は2つのトランペットとホルンがミュートを使いこなして音色の変化、そして息を吹き込み、声を出すなど面白いです。ワンワンミュートでの語り合いは笑えます。
ベルンハルト・ガンダー(1969〜)の「不信心な説教」は宗教的でありながら、説教の重い語り口が中低音で演奏されています。不協和音が響きます。
マンフレート・トロヤーン(1949〜)の「序奏とスケルツェッティーノ」は3本の金管楽器によるかん高い音の序奏とホルンの主題が流れるスケルツェッティーノになります。トランペットが細かなフレーズを演奏します。そして3本の和音が奏でられます。
マルチェロ・ペルティコーネ(1960〜)の「注釈」は3本の楽器が息を合わせて同じフレーズを吹くところが素晴らしい。そのあとにはきれいな和音が流れます。
マルティン・マタロン(1958〜)の「金属の金属」はやはりミュートで金属的な音を出しています。ホルンはゲシュトップも使っていると思われます。この作品は9分近いものですから演奏はかなりきついと思われます。そして細かなフレーズが続きます。中間部にはホルンの低音だけが響きます。その後はトランペットとホルンのミュートでのおしゃべりが続きます。そして後半には開放での和音、フラッタータンギングなどにぎやかになります。面白い作品です。
シュタイングリムール・ローロフ(1971〜)の「生物」は3つの楽器が演奏しながら「かけ声」もあげるというもので、演奏者も生きものという視点からでしょうか。面白いです。様々なテクニックを使っています。響きとしては素晴らしいものです。
マートン・イレシュ(1975〜)の「エン・コール I」はうめき声のようなホルンで始まり、トランペットのグリッサンドはミュートを使う金属的な音です。声も出して異様な響きです。
ナタリオ・スエド(1973〜)の「白から黒へ」は同じ音域の音をホルンからトランペットに引き継ぐ面白い手法です。つまり「白から黒へ」はホルンからトランペットへ、トランペットからホルンへという流れです。
ナタリオ・スエドの「ウォーミング・アップ」はまさに楽器のウォーミングアップです。トランペットは音階の繰り返しをしています。ホルンも同じようンあ音型を吹いています。エチュードのようです。タンギング、スラーなどが続きます。
ナタリオ・スエドの「プリズマ」は途切れ途切れの音型、そして細かいフレーズの連続、忙しい小品です。
デーモン・リー(1972〜)の「ラザロの縁」は縁側でおしゃべりしているかのようです。それほど賑やかではなく音域も広くはないようです。
ミゲル・ガルペラン(1972〜)の「塵から塵へ(ダストからダストへ)」は2つのトランペットとホルンが特殊な音、というか声と音の交錯のようにも聞こえます。
高音で息のつまりそうな音が続く作品です。息の吹き込みは塵をはらうかのようです。
ヴィト・ズラジ(1979〜)の「お静かに願います!」はまさにおしゃべりです。3つの楽器が騒がしいです。声も入ります。猫の声のようでもあり「静かにしなさい」と言っているようにも聞こえます。
ヴァレンティン・ガーヴィ(1973〜)の「アンチ・ウィーン」はウィーンの音楽に反抗したい気持ちを表した30秒ほどの小品です。これは素晴らしい音楽です。
ヘルマン・クレッチマー(1958〜)の「サ・ヴァ・サ・ゲームズ」はこのサ・ヴァ・サ三重奏団のために書かれた12の小品による組曲です。第1曲「ファンファーレ」から第12曲「ワルツ」までよくできた作品です。第9曲「ランドスケープ」ではミュートを使うので音色が独特です。第11曲「ポートレート」では声も出します。
ヘルマン・クレッチマーの「新しいサ・ヴァ・サ・ゲームズ」は13の小品による組曲です。この組曲は多彩な響きで聴いていて楽しくなる曲は多いです。第4曲の「ウェイティング」は寂しげな響きが印象的です。この組曲は大変美しいアンサンブルもあって素晴らしい作品です。第13曲の和音の美しさは絶品です。
アダルベルト・アンドレ=ヴィダル(1974〜)の「5つのエチュード」は第1曲がスタッカートとシンコペーション、第2曲がスタッカート、レガート、スラー、第3曲ではスラーのオクターブなどの難しい上向スラーを主としたエチュードです。第4曲は下降スラーのエチュード、第5曲は三連符と付点音符といったエチュードになりますが、5曲通しで聴いてもよくできた作品と思います。
このアルバムは新しいアンサンブルとしての作品の紹介とエチュードまで収録した素晴らしいものです。 |
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