モーツァルト/ロンドK371

ミヒャエル・ヘルツェル(1972)
CD(SonArte SP 18)

モーツァルト/ホルン協奏曲全集
1.ホルン協奏曲第2番変ホ長調K417
2.ロンド変ホ長調K371(パウムガルトナー編)
3.ホルン協奏曲第4番変ホ長調K495
4.ホルン協奏曲第3番変ホ長調K447
5.ホルン協奏曲第1番ニ長調K412

  ミヒャエル・ヘルツェル(ホルン&指揮)
  ザルツブルク・カメラータ・アカデミカ
  録音 1972年

 ミヒャエル・ヘルツェルは1936年生まれのドイツのホルン奏者。シュトゥットガルトとザルツブルクでホルン、ヴィオラと指揮法を学びました。そしてザルツブルク・カメラータ・アカデミカの首席ホルンをつとめ、バンベルク響やミュンヘン・フィルでもソロ・ホルン奏者をつとめ、1973年からデトモルト音楽アカデミーで後進も指導にあたっていました。
 ホルン協奏曲第2番は透明感のある美しい響きのホルンが歌います。時折聴かれる軽いビヴラートが何とも言えません。第1楽章の展開部では実に美しい響きのホルンが聴かれます。再現部の流麗な演奏もまた素晴らしいです。第2楽章のアンダンテは流麗なホルン、軽いビヴラートのかかった演奏がきれいです。第3楽章のロンドは軽やかなホルンが歌います。ここでカデンツァが入ります。このヘルツェルのカデンツァ挿入がその後の演奏にカデンツァが入るきっかけだったのかもしれません。 
 ロンド変ホ長調はヘルツェルの流麗なホルンが素晴らしいです。カデンツァもヘルツェルの自作で高音から低音まで自在に吹きまくる見事なものです。オーケストラの編曲はベルンハルト・パウムガルトナーによります。
 ホルン協奏曲第4番はソロが始まるとホールに広がるホルンの響きが奥行まで感じる美しいものです。このヘルツェルのホルンはドイツのホルンのお手本のようです。第1楽章の展開部から再現部の流麗なホルンはこれぞザルツブルクのモーツァルトという音楽に聞こえてきます。カデンツァはヘルツェルの自作でハイトーンから低音まで使う長大で素晴らしいものです。第2楽章のロマンツェは今まで聴いたことのないような演奏です。同じテンポでありながらヘルツェルの指揮で歌うオーケストラとホルンの溶け合うような一体化した音楽です。素晴らしい演奏です。第3楽章のロンドは明るい響きのホルンが歌う屈託のないモーツァルトのようです。まさに新鮮な響きです。コーダ前に叫ぶようなカデンツァが入ります。見事な演奏です。
 ホルン協奏曲第3番は冒頭のホルンのドーソードーが目立たないように押さえています。ソロでなくオーケストラの一部として吹いています。そしてソロが始まると明るい響きが時としてフランスのホルンをも彷彿させる美しい響きがあります。第1楽章の展開部ではホルンの世界に引き込まれてしまいそうです、再現部のレガート、スラーの滑らかな演奏は絶品です。カデンツァは細かいフレーズの響きの良さ、明るい響きの素晴らしい演奏です。第2楽章のロマンツェは弦楽の美しさ、ホルンの響きの良さ、この演奏もまた絶品です。第3楽章のアレグロは押さえの利いたホルンがこの楽章の美しさを引き出しています。オーケストラとの対話が素晴らしい演奏です。
 ホルン協奏曲第1番は第1楽章の弦楽の美しさ、ホルンの流麗な演奏、モーツァルトのホルン協奏曲の代表はこの1番ではないかと思える響きの素晴らしさがあります。そこをしっかり音に出しているヘルツェルの読みの深さを感じます。第2楽章のロンドはやや遅めのテンポで演奏しています。このロンドはこのテンポで歌う美しさ、オーケストラの響きの良さがよくわかります。ホルンとオーケストラの溶け合う響きも素晴らしい。
 このヘルツェルの演奏はモーツァルトのホルン協奏曲はこのように演奏すればいいという説得力を感じます。絶賛したいと思います。


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