『Foolish hair means "ahoge".』

「あっ……ん、あ、あく、んんっ!」  煌々と明かりをつけた部屋の中で、細やかで切なげな声がひと時の静寂を打ち破った。  金髪の少女が押し殺そうとする喘ぎ声は、彼女を背後から犯す銀髪の少女によって次 第に音程を引き上げられる。  鮮やかな朱色に染まった肌と肌が絡み合う淫靡な宴は、まだ始まったばかりだった。 「こ、こらっ、やめぬか、あ、ふぁっ……っ」  精一杯声を荒げて抗議したつもりのアドニアだったが、口から漏れ出たものは弱弱しい 哀願にしかならなかった。  尻穴に挿し込まれたレテティシアの指がアドニアを苦しめるのと同時に、逆らいがたい 快楽をもたらして自然と歓喜の声を上げてしまいそうになる。  それを誤魔化すように怒って見せたわけだが、レテティシアには通じなかったようだ。 彼女は不敵な笑みをひらめかせて、さらにその指を奥深く突き進めた。 「やめろと言ってもさっきから私の指を咥え込んで離さないのは君の方だろう」 「そんなわけあるかっ、この……アホ天界人めっ……んんぁっ」  アドニアは必死に首を左右に振って否定するが、それに合わせてねだるように腰を振っ ては説得力がなかった。 「はぁ……あっあっあっ、あぁんっ」  レテティシアによって腸壁を擦り立てられるごとにアドニアの理性は削り取られていく。  浅く指が引き抜かれたかと思えば再び突き入れられる抽送の動きに翻弄されて、もはや アドニアは抗議することもままならない。それどころか、指遣いのリズムに合わせて自ら 快感を高めていく。 「あんぁっ、あんっあんっ……あっ、ああぁっ」  聞く者の性欲をそそらせずにはいられない鈴の音のようなアドニアの嬌声は、普段の古 めかしい言い回しにそぐわない。ひとたび力を開放すれば恐るべき魔法を放つ魔女も今は 肛虐に喘ぐただの女の子でしかなかった。  それはレテティシアも同じで、ややサディスティックな表情でアドニアの菊門を激しく 責め上げる姿は、武勇に優れ、清廉潔白と謳われる天界人からは程遠かった。ひたすら肉 欲を貪る雌の臭いを全身から発するレテティシアこそ、淫蕩な魔女に見えてもおかしくは ない。 「はぁんっ、あ、んっ、あっあっ」  絶えることのないアドニアの嬌声を愉しみながら、レテティアは尻穴に入れる指をもう 一本増やした。 「あぐっ、んぁっ、あっ」  一回り大きくなった異物感にアドニアが苦悶の声を漏らすが、それとは裏腹に後の窄ま りはすんなりとレテティシアを受け入れる。  広まった穴から溢れた腸液が女陰から垂れた愛液と混ざってアドニアの太腿を汚した。 「ふぅんっ、あふっ、あっはっ、やっ、あっ……」 「ふふ。もうイきそうなのかい」  鼻にかかった喘ぎ声からアドニアの絶頂が近いことを知ったレテティシアは、底意地の 悪そうな顔をして尋ねた。  緩やかに指の出し入れを繰り返しながら答えが待ったものの、返ってきたのは意外にも 強情な台詞だった。 「こ、この程度で我をイかせようとは片腹痛い。そもそも貴様のやり方などアルラウラの 責め苦に較べれば児戯に等しいわ。ん……んんっ、だから、い、今やめれば我とて許して やらんこともないぞ天界人」 「む」  挑戦的な言葉のすべてに不満を覚えたレテティシアは、アドニアの背中に乗り上げるよ うに肌を密着させて、彼女の耳元で囁いた。 「まったく私というものがいながら、この場にはいない女性の名前を呼ぶとは無粋にも程 がある。それに、二人きりの時くらい名前で呼んでくれといつも言ってるじゃないか」  至極平静な口調のレテティシアだったが、胸の内では嫉妬と苛立ちがどうしようもなく 沸き起こり、その強い感情の発露がアドニアに対する責めを陰湿なものに変える。  レテティシアは先ほどから物欲しそうに濡れそぼっていたアドニアの縦すじを指で割り 開き、蜜液を湛えた膣口の縁をえぐった。 「んああぁっ、そこはっ、そこはダメじゃ、やめっ……あぁあああっ」  たまらず一段と甲高い嬌声を漏らしてアドニアが背中を仰け反らす。  膣口と菊肛を同時に責められ、愉悦と快感が身体の中で乱反射してアドニアの肌を粟立 てた。  さらにレテティシアは包皮から顔出した陰核に指を伸ばして爪で引っ掻いた。 「がっ、くぁっ……バ、バカもの! そこはもっと優しく……あっ!」 「君は少し痛いくらいの方が気持ちいいんだろう?」  そう言いながらレテティシア自身も興奮で鼻息を荒げ、その豊かな乳房でアドニアの背 中を押さえつけて組み伏せる。  犬のように四つん這いにさせられた屈辱的な姿勢に歯噛みしていたアドニアだったが、 いよいよ足腰に力が入らなくなり、今にもベッドに倒れ伏しそうだった。 「あっあっあっ、ひぁあっ、くぅううっ」  ふたつの穴の中で蠢く指の動きに誘われるまま、アドニアは艶やかな嬌声を上げて唇を わななかせた。 「あっんっ、んんっ、あっあっあんんっ」  そして最後まで残っていた理性の一片までもが剥がれ落ち、頭の中で火花が弾け始める。  しかし、あと一突きで絶頂に達しようかという時にレテティシアの指が動きを止めた。 「は……ぁ? な、なぜじゃ……なぜっ」  最後までしてくれぬ、とまでは強がった以上言えないアドニアだったが、レテティシア には言外の気持ちまで知られていたようで、肩越しに見やった銀髪の少女の顔には薄い笑 いが張りついていた。 「な、何を笑っておるのじゃ! 我は別に……」 「私のことをちゃんと名前で呼んでくれれば、君の望みを叶えよう」  言いたいことを最後まで言わせてもらえず、それどころか一方的に要求を突きつけられ てアドニアは憤慨した。 「だ、誰が呼ぶものか! 誰が……あっ、んっ」  あくまで強気な態度でレテティシアを突っぱねるものの、お預けを食らった身体の方は 強烈な快楽の余韻に悶えて収まりがつきそうになかった。  たったひとつの名前を呼ぶだけで、焦げついた欲求が満たされるのがわかっていたが、 どうしてもアドニアには出来なかった。  だが、それはレテティシア本人に嫌悪感を抱いているからではなく、単に恥ずかしいだ けだった。 「そうか。私としては別に構わないんだが、君がそれでいいなら今日はこれで終わりにし よう」  そっけない物言いをしながらも、レテティシアは緩やかな愛撫でもってアドニアの性欲 を刺激し続ける。    そんな名前を呼べ呼ばないのやり取りを5分近く続けたところで、ついにアドニアの理 性の糸が切れた。  瞳を潤ませ、だらしなく涎を撒き散らして金色の髪を持つ少女は懇願する。 「レ、レ、レテティシア! 後生じゃ! た、頼むからイかせてくれ! 我は、我はもう 我慢できぬのじゃ!」  アドニアは高々と腰を上げて、レテティシアに惜しげもなく己の秘所をさらけ出した。  完全に羞恥心を捨てきったアドニアの態度に、いささか調子に乗りすぎだろうかと思い もしたが、レテティシアは望外の満足感を得て頷いた。 「アドニア、本当に可愛いな君は……」  愛しそうに目の前で揺れる金髪を眺めて、華奢な背中に口付けの雨を降らせる。一点の 曇りもない魔女の肌に桜の花びらが舞い落ちたようにいくつものキスマークが残った。 「あっんっ、こ、こら、そんなことよりもっと……ふぅんんっ」 「もっと、何をして欲しいんだい?」 「そ、それは……っ、んぁああっ」  レテティシアは最後に弓なりに仰け反ったアドニアの背骨を舌で舐め上げて、彼女の快 感が頂点を迎えたところを見計らい、再び前後の穴の最奥へと指先を突き入れる。 「ひあぁああっ、ダメ、ダメじゃ、あっあっああああああぁっ!」  白く長い指は焼け串のごとくアドニアを貫き、内側から火傷しそうな快感を刻み付けて、 あっという間に彼女を絶頂まで昇りつめらせた。 「はぁ、はぁ、はっ、ふぁ」  極限まで高められた性欲を体外にほとばしらせた後、アドニアは荒く息を吐き続けた。  強すぎる悦楽の名残りを持て余しているのか、子宮がうずいている様な錯覚に囚われて いる。  脱力した身体をベッドに投げ出し、天井を仰ぎ見るアドニアの視界をレテティシアの澄 ました顔が遮った。 「お疲れのところ悪いが、これで終わりではないよアドニア。私はまだまだ満足していな いからね」 「あまり調子に乗るでない」  おもむろにアドニアが両手で触覚のように長く伸びた銀髪を掴んだ。 「――――っ!!?」  思い切り髪を引っ張られてレテティシアは言葉にならない絶叫を発して白目を剥いた。 電流が脳天から足先まで貫いたかのような感覚に襲われて、頭の中が真っ白になった。  天界人と魔女に共通する性感帯、収まり悪く飛び出した一房の髪の毛こそがそれだった。  しかもレテティシアはそんな性感帯がふたつも伸びているのだから、それらを一度に刺 激されてはたまらない。 「あ、ひゃ、は……ゃ、アドニア?」  天界の少女は、焦点を失った瞳をアドニアに向けてはいるが何も映ってはいないだろう。 「ふむ、将来は天界最強の戦士になると言っておっても、この弱点を克服しない限りそれ も無理そうじゃのう」  喋ることで落ち着いてきたアドニアは起き上がって、酔っ払いのように倒れてしまいそ うなレテティシアを支えた。  明らかに脱力して半ば意識を失った彼女を見て、アドニアには閃くものがあった。  今やレテティシアは前後不覚に陥り、たとえ辱められても無抵抗でそれを受け入れるに 違いない。  そこでアドニアは自分なりに邪悪な笑みを浮かべてみた。 「ふん、愚か者め。我に恥をかかせた報いを思い知って後で悔いるがいい」  そう言って、たどたどしくレテティシアの乳房や尻を愛撫してみたが、あまり長くは続 かなかった。  仕返ししようにもアドニアは他人に責められることに慣れていても、自分から責めるこ とには慣れていなかったのだ。 「こ、これから先はどうしたものかのう」  とりあえず自分がされたようにレテティシアの割れ目に指を這わせ、尻穴を弄くっては みたものの、相手の反応がなければ復讐している気分にも乏しかった。  仕方なくレテティシアが覚醒するまでの間、何をするわけでもなく彼女を抱きしめてい たアドニアだが、ただそうして相手の肌の温もりを感じているだけで和みかけている自分 に気がついた。 「わ、我は別にこやつのことなど何とも思っておらんぞ!?」  いったい誰に弁解しているのか、それが己自身にあると気がついたアドニアは、いつま でも正直になれない自分に辟易した思いを募らせた。  レテティシアのように普段から「私は君のことが好きだ」とか「アドニア、愛している ぞ」とか、恥ずかしげもなく言ってのける素直な性格がこの時ばかりは羨ましかった。  しかし、滅多に言葉にこそしないが、アドニアはアドニアなりにレテティシアのことを 愛しく思っているのである。  いつ頃のことかは思い出せないが、迂闊にもいちど肌を許した時から始まった異種族の 少女に対する思いは、身体を重ね合わせるたびに大きくなってしまっていた。 「じゃ、じゃから、貴様は我を本気にさせた責任を取らねばならぬのじゃぞ。わかってお るのか、レ、レテ、レテティシア」  いまだにうまく舌に乗らない名前を紡ぎ、顔を真っ赤にするアドニアの顔は確かに恋す る少女のものだった。  ひとたび沸き起こった恋慕の情に突き動かされて、アドニアはレテティシアの頬をそっ と両手で包み込んで、ゆっくりと顔を近づける。 「ん……」  ふたりだけの世界の中、アドニアはレテティシアの唇に己のものを重ねた。 「んっんっ、んふっ、んっむぅ」  最初はついばむように相手の唇に触れ、次第にその表面が湿り気を帯びてくると今度は 深く食い込ませるように唇を押しつけた。  たっぷりと時間をかけて朱色に彩られた花びらを貪り、それに満足して次の段階に移ろ うかという時になってようやくレテティシアが自分を取り戻した。 「ア、アドニ……あ、むっ、んっ!? んんっ!」  瞳に輝きを取り戻した少女に何も喋らせないよう、アドニアは彼女の口内を舌で貪った。  一言でも何か言われたら恥ずかしさで気がおかしくなってしまいそうだったから、そう するしかなかったのだ。 「ん……む、あむっ、んふぅ、んっんっんっ」  目が覚めてからいきなりの口淫に目を白黒とさせていたレテティシアだったが、しきり に舌をねだるアドニアの心情を察して、自らも舌を絡ませる。  淫らな水音を立てて舌がお互いの口の中を往復する内、唇から溢れた唾液が胸元に垂れ 落ちた。  それを潤滑液代わりにして、レテティシアは自分の豊満な乳房とアドニアのものとを擦 り合わせる。 「あっ、君の乳首が私のに当たって気持ちいい……ぞ、はぁあんっ」 「い、いちいち説明するでないわ。あっあっ、んっ、バ、バカ者め」  口では文句を言いながらも、アドニアもまた痛いくらいに尖った先端を押し付けること を止めなかった。 「あっ、はっ、あっんっああああんっ」  少女たちの喘ぎが重なり合い、互いの身体が密着度を深めるにつれて、ふたりの長く伸 びた髪がまるで意思を持ったかのように絡み始める。 「あっ、これはまずいぞ……んぁ、はぁんっ、は、離れぬか天界じ……レテティシア!」 「いいじゃないかアドニア。こうなったらもう最後までイくところまでイこう」 「我はいーやーじゃー!」  アドニアが嫌がるのも無理はない。触れるだけで感じやすい箇所がお互いに絡み合えば、 女性器を弄くるよりも狂おしい快楽をもたらすことは今までの経験からわかっていた。  強烈な快感によって自分を見失うことを恐れるアドニアは、何としても避けたい事態だ ったがすでに手遅れだった。 「やっあっ、いやじゃ、我は……我はこのようなことで……ひっ、あっああっ!」 「はぁ……今の君はとってもイイ顔をしているぞアドニア。そそられるじゃないか」  余裕そうなレテティシアもまた間断なく襲いかかってくるオルガズムの波に理性が押し 流れそうだった。  もはや金と銀の髪は複雑に絡み合って解くことは難しくなっている。  アドニアの自慢の巻き毛はレテティシアの触覚めいた髪に絡め取られて伸びきってしま い、原型を止めていない。そして、少し顔を動かすだけで互いの髪の毛が引っ張られ、刺 激的な快感をもたらしてしまうほどだった。  あまりの気持ちよさに、気がつけば二人とも下半身が大量の愛液と尿にまみれて濡れそ ぼっていた。 「あっああんっ、あ、相変わらずお漏らし癖はなくならないようだな。んぁ、あっ、はし たない魔女もいたものだよ」 「それは……んんっ、貴様も同じじゃろうがっ、んぁあああっ」  ふたりともその身体のどこに溜め込んでいたのか漏れ出る尿の勢いは止まらず、熱い飛 沫を上げてベッドのシーツにまだら模様を作った。 「アドニア……君はもう限界が近いんじゃないのか、んっあ、身体が震えているぞ……?」 「だ、誰がこれくらいで音を上げるものか……っ! あ……ふぅ……んっ!」  アドニアは強がって見せたものの、劣情の炎がその身を悶えさせて再び絶頂に達しかけ ていた。 「だ、ダメじゃ、我はもう……気が変になってしまいそうじゃっ、あっ……イイっ」 「ならば共に行こうアドニア。私もまたイきそうなんだっ、あ、くぁあっ」 「レテティシアぁ……」  どちらからともなく手を強く握り合い、情熱的な口付けを交わした。まるで言葉になら ない思いをぶつけるように。  そして、終局は不意に訪れた。 「あっ、イクっ、イっ……あっはっあああぁん!」 「アドニアっ……アドニアアドニア、あっ、ああぁああああっ!」  高まった感情を雄たけびに変えて叫び終えると、少女達の艶やかな肉体が力なく崩れ落 ちた。  後には静謐な空気感だけが残った。                                      (Fin)

                                     [目次へ]



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