Scandal?



 その雑誌を見たのは、ドラマの撮影が終わった数日後のことだ。 鼻先まで掛かってきた前髪がう
ざったく感じていた俺は、近所の美容院で髪を切ってもらうことにした。
 女性ばっかりの待合席。
 俺が席につくと、いくつもの視線を感じた。
 こういった視線は小学生の頃からなので、もう慣れている。
 今は美容院に行く男も多くなったとはいうものの、やっぱり珍しいのだろう。
 それと俺の容姿の賜というのもあるんだろうけど。
 湊はいつも床屋に行くらしいのだが、俺はどうも美容院に行ってしまう。
 母親にずっと美容院に連れて行かれていたので、なんだかこっちの雰囲気の方が落ち着いてしま
うのだ。
 待合席のテーブルには女性誌が置いてあり、その中の一冊をなにげに手を取った。
 ぱらぱらと頁をめくっていたが、ある記事に目がとまる。

『菜穂、俳優Sと極秘デート!!』

 菜穂とは確か加々美菜穂……湊とドラマで共演していた女優だ。
 確か二十歳そこそこ。俺と歳は変わらないけど、胸がGカップあって、唇もぽってり厚め、目はくりっ
としていて、何だか肉感的な美人という印象が。
 いかん、いかん。女の胸を思い出している場合じゃないぞ!
 俳優Sって、明らかに湊の事じゃないか。
 写真には仲良く食事をしている姿や、腕を組んで町を歩いている姿がばっちり写っている。でも、よ
く見たら周りにスタッフさんらしき人も……その周りはぼかしてあるからよく分からない。
 食事も恐らく他のスタッフもいた状況だろうし、町を歩いている所も、周りが不自然なくらいにぼかし
てあるから、多分スタッフだ。
 デートしている訳じゃないというのは分かるからいいのだけど、彼女が湊を見つめる目はフツーじゃ
ない。それに湊もなんだか満更でもない笑みを浮かべている。
 まぁ、この二人、ドラマでは恋い焦がれる二人。
 撮影の場以外でも、そういう表情になってもおかしくはないんだけど。
 ……………………やっぱ、むかつく。
 この記事書いた奴、地獄に堕ちろ。
 その時、丁度俺の名前が呼ばれたので、俺は雑誌テーブルの上に置いて立ち上がった。
 本当は雑誌をたたきつけたい気分だったけど───


『駄目よ……私……本当は』
 リサは悲しそうに目を伏せ、掠れるような声で言った。
『俺は君が何者でもかまわない』
 ヒロキはそう言って、リサをきつく抱きしめた。
 このドラマは殺し屋の女性リサが、平凡なサラリーマンヒロキと恋に落ちる話。
 美容院から帰ってから、丁度最新話が始まっていたので俺は不本意ながら、ソファに腰掛けてそれ
を見る。
 湊がテレビに出るときは常にチェックをしているのだ。
 今やTVドラマ、映画、CMにも出るようになった湊は若手人気俳優の一人として、あちこち雑誌にも
取り上げられている。
 湊の人気が鰻登りなのは嬉しいことだ。
 きっとより多くの人が、湊の演技を見て、褒め称えてくれるだろう。
 そんな彼の恋人であることは、俺も誇らしいことだと思う。
 だけど今回は、何だか見るのが嫌な気分だ。
 リサ役は加々美菜穂(かがみ なほ)。
 そしてヒロキ役は、湊なんだよな。
 名前、俺と同じだし。
 湊が『ヒロキ』と呼ばれているのは、何だか変な気分だ。
 二人はそれから何度もキスをして。
 なだれ込むようにベッドの上へ。
 湊の唇が加々美菜穂の額に触れ、そして首筋に。
 それだけで俺はびくんと身体が震える。
 あいつの感触を思い出してしまったのだ。
 もう何度も、何度もあいつに抱かれているんだ。唇の感触だって、温度だって、それに
吐息の熱さだってすぐに思い出すことが出来る。
 あの感触を、あの女優が味わっている。
 もちろんそれは演技であり。
 俺が味わう感触とは全然違うことは分かっている。
 だけど、やっぱり───

「あ、さっそくドラマチェックしているのか」

 不意に声を掛けられて、俺はびくんっと身体を震わせた。
 振り返るといつの間にか湊が帰って来ていて。
 スプリングコートを脱いでハンガーに掛けている所だった。
 な……なんだよ。
 帰ってくる気配しなかったような。
 いや、それだけ俺がドラマに集中していたってことか。
「あ……湊」
「お、髪の毛さっぱりしたな」
 湊は俺に歩み寄り、髪をさらっと撫でた。
 ただ、それだけなのに。
 何だか身体がうずく。
 テレビはもう情事のシーンは終わって、警察署のシーンになっている。
 リサを追いかけている刑事のシーンだ。
 だけど、湊と加々美菜穂がからんだ場面は、事細かに焼き付いてしまい。
 ヒロキがリサを見つめるあの眼差しは、毎日俺に向けられているものと同じで。
 そう。
 あの瞬間、湊は間違いなく加々美菜穂に恋をしているのだ。
 もちろん演技というのは百も承知だ。
 だけど演技がリアルすぎる故に、俺はあの女優に嫉妬してしまう。
 それに湊と目があった瞬間、彼は少し気まずそうな顔をしたのを、俺は見逃さなかった。
 ドラマ撮影の余韻が、まだ彼の中で残っている。
 リサを想うヒロキが、残っているのだ。
 俺は目を伏せた。
 あと何十、いや何百とこんな想いを味わうのだろう?
 湊が役者であるウチは避けられないことだ。
 また俺自身も舞台やドラマの中で、たくさんの人間と恋をするようになるのだろう。
 それとも、だんだん慣れてきて何とも想わなくなるのか。
 俺は髪の毛に触れていた湊の手を掴んだ。
「良い演技してたな、湊」
「洋樹……」
「本当にリサに恋しているみたいだった」
 俺は掴んでいた手の力を強める。
 湊が僅かに目を見開いた。
 俺はその瞬間、湊の胸倉を掴み自分の方へ引き寄せた。
 重なる唇。
 柔らかくて、熱い感触。
 いつも味わっている感触なのに、今日はひときわそれが敏感に感じられて。
 何度も角度を変えて、キスを繰り返す。
 湊が舌を絡めて来ようとしたが、俺はその前に唇を離し、また別の角度からキスをする。
 そんなもどかしい行為を繰り返していくウチに業を煮やしたのか。
 湊は両手で俺の顔を挟み、そして唇を重ねて歯列を割って入ってきた。
 ぬるっとした感触が舌に絡んでくる。
 俺はテレビのリモコンを消す。
 静になった部屋の中。
 熱い吐息と、唾液が絡み合う音だけが響き渡る。
「あ……ふ……」
 俺が何度か合間に吐息と共に声を漏らす。
 自分でも信じられないぐらい、甘い声だと思った。
 唇が離れた時、互いの唾液が糸を引く。
 濡れた唇を親指でぬぐいながら、俺は湊の目をじっと見つめる。
「……まいったな」
 湊の口元には笑みが浮かんでいた。
 だけど目は決して笑っていない。
 俺をソファの上に押し倒すと、シャツのボタンを外さずにそのまま引きちぎる。
 いつになく荒い手つきでシャツぬがされ、濡れた舌が胸の先端を這う。
「あ……」
 意識に反して、声が漏れる。
 その間にも、ジーンズを下ろされて下着越し、湊の指が俺自身を軽くなで上げる。
 敏感な部分を同時に攻められて、俺の身体はそのたびに、びくびくと震えた。
 やばい……何もかもどうでも良くなってしまいそう。
 このままだと主導権は湊のものになる。
 いつもだったら、それでもいいんだけど。
 今日は何故かそれを許せない俺がいる。
 下着も脱がされ、湊が俺自身を直に触ろうとしたけど、俺はその手を阻んだ。
「洋樹……」
「その前に、湊も脱いで」
「ああ、そうだな」
 湊はくすりと笑って頷くと、一度立ち上がり背を向けて服を脱ぎだした。
 スーツ姿、似合うよな。
 学校の時も、この人はこの格好で。
 俳優になってからも、現場にこの格好で行く事が多い。
 せっかく買ったスーツ一式が勿体ないからっていうのが理由らしいけど。
 ワイシャツを脱ぐと、現れたのはよく鍛えられた肉体だ。
 ジムに行ったりはしないけど、家の中でもトレーニングは怠らない。
 地道な努力の賜が、この身体だ。
 ……。
 ……。
 さっき、ドラマでは、加々美菜穂がこの身体を抱きしめていた。
 もちろん演技なのは分かっている。
 だけど、触れたってだけで腹が立っている自分がいる。
 こんなことで腹を立てていたら、この先きりがないっていうのは分かっているけど。
「洋樹?」
 気づいたら、湊の前に立っていた。
 俺はその前に跪き、目の前にある湊自身を口に含む。
「おい……洋樹」
 戸惑う湊を、俺は上目遣いで見上げて一度口を離して言った。
「お前にはまだ早いなんて言うなよ?」
 もちろん、男のモノをくわえるなんて行為、初めてだ。
 だけど湊と関係を続ける以上、こういったこともしてみたいとは思っていたし。
 色んな形で、俺は湊が欲しいと思っている。
 この人が、好きだから。
 俺は湊自身の先端を舌で嘗めながら、ゆっくりと加えていった。
 「う……やるな」
 湊自身を舌と口を使って締め上げてやった。
 突然のことにわずかに眉を寄せながらも、ますます固くなるその部分に、湊がちゃんと感じているこ
とを俺は確信する。
「出してもいいよ」
 くすりと笑う俺に、湊は僅かに目を瞠る。
 だけど、すぐににっと笑みを浮かべ。
「馬鹿を言うな」
 と一蹴。
「遠慮することはないだろ」
「お前に遠慮なんかするか。だけど……」
 湊は俺の顎を持ち上げて、その唇に自らのそれを重ねる。
 そのまま舌が入ってくるのかと思いきや、湊は膝を着きながら唇を首筋へ移動させる。
 まるで撫でるようなその感覚に、俺の全身はびくりとした。
 そして胸の先端にたどり着き、今度はそこにキスをする。
(う……そんな)
 いつもなら執拗に攻めてくる場所も、軽く触れるキス。
 物足りないと思っている自分がいる。
 そのまま床に押し倒されて、今度は臍を、そして下腹部を口づけ、ついには俺自身の先端も。
「あ……湊。やめろ……」
 しまった。
 俺は何をしているんだ。
 唇の愛撫に乗せられて、そのまま押し倒されて。
 固くなったその部分をいつのまにか湊がくわえていた。
「ひっ」
 悲鳴を上げそうになる声をなんとか堪える。
 湊は俺自身を銜え込むと巧みに舌を使って弱い部分をなぞりながら、締め上げていった。「湊……
やめ……」
「気持ちが良いんだろ?出しても良いぞ」
 言い返された!
 確かにその部分は、容赦無く舌と口で扱かれて、みるみる固くなっていった。
「あ……駄目……」
 抵抗の声が上がらない。
 逆に吐息混じりの甘い声にしか聞こえないだろう。
 言いようのない快感の波が突き上げてくる。
 しかも───
「あっ」
 俺は目を見開いた。
 湊の右指がいつのまにか腰から下に。
 お尻の中心にたどり着いて中をかき分ける。
「あ……やめ……」
 身をよじらせて抵抗するが逆手に取られ、腰が浮いたと同時に指の進入を許してしまう。
 そこを許してしまったらもうおしまいだ。
 湊はすぐさま俺の性感帯を探り当てて攻めだした。
「ひっ……やぁ……っ!!」
 前と後ろ。同時に快感を与えられて俺はなすすべもない。
 やっぱりこの人には適わないのか。
 経験値があまりにもちがう。
 それに。
 何だかんだ言っても惚れた弱みだ。
 こんなことされてしまったら、もう何も考えられなくなる。
 俺自身はもう絶頂の直前まで追い込まれ、そして後ろも湊自身で満たして欲しくて溜まらなくなって
いる。
「み、湊……もう……」
「どうした?」
 してやったり顔で、問いかける。
 くやしいが、その時の上目遣いが無茶苦茶色っぽくてカッコイイ。
「もう、湊の入れて欲しい」
「いいよ。だけど、その前にお前が苦しいだろ。出してしまえよ」
「で、でも」
「遠慮するな」
 また言われた。
 くそ、本当は俺が先にそれをしたかったのに。
 でも湊が言っていることも事実で。
 もはや少し触れただけでも、限界に達してしまいそう。
 湊は再び、俺自身を口に含んだ。
 優しくゆっくりと、口腔内で愛撫されて。
 俺は悔しさと気持ちよさで涙を浮かべながらも、自身を解放してしまった。
 湊は何のためらいもなく、出したものを飲み込む。
 そして軽く指で口をぬぐい。
 「今度は俺も限界だ」
 そう言って湊は俺の足を広げた。
 もう何度、こうやって身体を開かれたことだろう。
 そして誰にも見せたことがない部分をじっくりと見られて。
 その視線だけで、俺の身体はむずむずとしてしまう。
 早く来て欲しい……
 そう思うのだけど、湊はそうせずまずは俺の顔をのぞき込み囁く声で言った。
「お前は嫉妬すると、とんでもない色気をだすよな」
「な、何だよそれ」
「お前の目、まるで娼婦みたいだったよ」
「しょ……娼婦って」
「そうやって沢山の人間を惑わすんだろうな」
 湊はそう言って俺の唇にキスをする。
 だけど先ほど指を受け入れた場所に、再び指が入り。
「お前がドラマや舞台で恋をするのは俺だって不本意だが、仕方がないと思っている……だけど」
「や……」
 中をかき回され、俺は声を上げる。
「此処には他の男は受け入れるなよ?」
 最も感じる部分を指先で突きながら、湊は低い声で俺に警告してきた。
 俺は快感に気が遠くなりそうになったが、意識を奮い立たせきっと睨みつける。 
「それは、こっちの台詞だ」
「ん?」
「あんたが舞台の上やドラマの中で恋をする度に、俺はあんたの中に居座るそいつを消してやる」
「ああ、望むところだ」
 湊は嬉しそうに笑って頷いた。
 またその笑顔だ。
 この人が笑うと、本当に俺も嬉しくなってしまって。
 もう、何に腹が立っていたのか分からなくなる。
 湊は指を引き抜くと、固くなったモノを入り口にあてがった。
 すっかり男を受け入れるように、ほぐれた部分はいやらしく濡れた音を立てて、根元まで飲み込ん
だ。 
「あ……っ……あ……」
「今日はいちだんと濡れているな」
「う……うるさ……ああっ!」
 抗議しようにも、一番感じる場所を熱くて固い部分で突かれてしまうのだから、全く声にならない。
「お前主導なのも悪くはないとは思ったけど、その顔見ていたらどうも苛めたくなってな」
「な、何だよそれ」
「ま、俺を御するのはまだまだ早いってことだ」
 言うなり、湊は俺の膝の裏を両手で掴み、足を持ち上げると今までよりも奥へ突き上げてきた。
 最後まで残っていた悔しさも、その瞬間ふっとんでしまう。
 結局、また湊にされるがままな状況になってしまったけど、とりあえずこれだけは言える。
 今、湊は俺だけを見ている。
 ドラマの余韻も、もはやどこかへ消え失せている。
 俺はきっとこれからも、湊と共演する人間に嫉妬していくだろう。
 だけど、そのたびに彼の中にある誰かを俺は消してやる。
 そして俺自身も、きっと同じように誰かに恋をしたり、愛したりするのだろう。
 その時には、湊。
 あんたが俺の中に在る誰かを消して欲しい。
 滅茶苦茶にしても良いから。
「湊……」
 まだ繋がった状態のまま、俺は名前を呼んだ。
「洋樹……」
 湊が何度目かのキスをする。
 俺はその首に手を回した。
 
 一時間後

「なんだ、あの時の写真が週刊誌に載ったのか」
「そ」
 トランクス一枚でまったりとソファでくつろいでいた俺は、週刊誌の話を湊に持ち出した。
 湊は部屋着のジーンズと上半身裸の格好で、冷蔵庫からビールを取り出しながら、成る程と頷いて
いた。
「なーんか湊もまんざらじゃない顔して、腹が立ったんだよ」
 言ってから少し恥ずかしくなり、俺は顔を赤くしながら口を尖らせた。
 そんな俺にくすりと笑いながら、湊は俺の前にノンアルコールの缶ビールを置く。
「そりゃ気のせいだ。そう見えたのなら、ドラマの演技を引きずったままだったのかもしれないな」
「そうかな?」
「ああ、断言できる。心配しなくても、加々美にはちゃんと恋人がいる」
「え……そうなんだ」
「ほら、アイドルグループでいるだろ。10人ぐらいのグループで“かっこつけサンタ”とか歌っていた」
「何言ってんだよ。かっこつけサンタは、グラスエンジェルっていう女の子のグループだよ?」
「ああ。その女の子の一人が恋人だって」
「は?」
「彼女バイセクシャルなんだと」
「ええ!?……ちょ、ちょ、ちょっと、相手の女の子誰なのか気になるんですけど!!」 グラスエンジ
ェルといったら、もう女の子の中じゃトップアイドルグループで、そりゃ可愛い女の子ばっかりだ。その
中の一人が、加々美菜穂の恋人って??
 ま、まぁ俺たちだって男同士で恋人なわけだし。
 女同士でそういうのも有りなんだろうなって思う。
 ……でも女同士って、どうやって付き合うんだ??
 全然想像がつかん。
 なんか俺、今まで何をもんもんと悩んでいたんだろう?
 週刊誌ひとつで凹んでいた自分がアホみたいだな。
 俺はため息を一つついて、ビールを一口飲んだ。
「それにしても、俺の周りにも週刊誌張り付くようになったけど、お前の事はなかなかばれないよな」
「フツーは考えないだろ、男同士で出来てるって」
「そうかな、芸能界じゃわりとよくあるんだけどな。ま、お前の事だったら別に公にしてもいいんだけど
な」
「まぁ、そりゃ俺だって別に良いけど、親が何ていうかなぁ?」
「そん時にはお前の両親トコへ挨拶にいくさ」
「……」
 湊がさらっと言うものだから。
 俺は一瞬聞き逃しそうになったけど。
 だけど、湊のその言葉を認識した瞬間、俺は凄く嬉しくなって泣きそうになった。
 きっとプロポーズを受ける気持ちってこんなんなだろうな。
 俺たち結婚出来ないけど。
 だけど、湊は本当に俺との将来を考えてくれているんだな。
 そう思うと、本当に嬉しくて───
 でもそんな気持ちを湊に見透かされるのは恥ずかしいので、とりあえず俺は缶ビールをくいっと飲ん
だ。
「お、お前何赤くなってるんだ?」
 にやっ笑いながら、湊が俺の隣に腰掛けてきた。
「ビールで酔ったんだろ」 
「ノンアルコールでか?」
「ノンアルコールっつっても、何%かは入ってるし。俺、アルコールに慣れてないし」
「嘘言うな。外の居酒屋で飲んでいるじゃないか」
「オレ マダ未成年。ジュースシカ飲ンデナイ」
「何だよ、その棒読みは。もう一回言い直せ」
 湊はオレの首に手を回した。
「やなこった!」
俺はくすぐったさを覚えながらも、そんな湊にあかんべをした。
 

おしまい   

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ヤマナシイミナシオチナシ話でした。

あ、でも一応オチはあったかな。プロポーズ的な言葉言ってるし。

来嶋氏は真面目だからなぁ。ホントに両親にご挨拶すると思います。

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