新しく造られたチエの筐体は、今のチエの物と同じアサカタイプ2005チセを原型にしたらしく、 パーツの70%以上は共通らしい。 作業室で一度バラバラに分解されたチエは、頭部だけ天井からぶら下がった状態で澄まし顔をしていた。 「換装作業は2時間程で終わります。ただし履帯走行から二足歩行に変更するわけですから、 彼女自身の姿勢制御がそれに慣れるまで少し時間がかかるでしょう」 デスクの端末でチエの細かいシステム変更を行っている技術者が、人の顔も見ずに説明した。 なんでこういう連中は自分の研究にしか興味がないんだろうねぇ…女の子のロボもっと造ってくれ! 「チエすぐに現地に行くんでしょ?」 「機内で省電力モードでスリープしている間、学習プログラムを使って自習させますので、 向こうについた頃には功夫だって習得していますよ」 冗談に聞こえねぇし第一笑えない。 そんな事より俺が気になるのはだ。 「…アレはどうなの?」 「アレ?」 技術者のキーを打つ手が止まり、不健康な面が訝しげに俺を見上げてくる。 「アレと言ったらアレだよ君ぃ、ガイノイドなんでしょ?女の子型!色々できる事あるじゃん…」 右手の指二本で作った穴に、左手の親指を出し入れするしぐさをすると、技術者もようやっと 俺の言わんとしている事を察したようだ。 人間の♂って本当にバカですね\(^o^)/ 「セックス機能ですか!?」 ちょwwwww声でkwwww聞wかwれwwるwwwww 救助犬以上の聴力感度を誇る、チエの高性能パッシブソナーがそれを聞き洩らすはずはなく、 首だけのチエがすげぇ目つきでこっちを睨んできた。 やべぇ… 「ちょっとそれは、難しいですねぇ…」 「はぁ!?あんでだよ!コハルとか特別仕様ってやってたじゃんかケチ!」 思わず声に出して言っちまった。 うん、正直に言いますタナカさん…俺はあんたがうらやましかった! 「だから『特別仕様』で『別途料金』なんですよ」 どうやらガイノイドに模造性器を取り付けるには、色々と法律的な問題があるらしい。 コハルの時は通販会社を介し、性玩具専門の別会社と購入者自らが契約しただけで、販売元の アサカ社はあくまでも『個人カスタマイズ可能なように一部パーツを変更するだけ』というわけだ。 要はオランダ人妻のオマ○コと一緒だな。 だがしかし、俺にはわかる、わかるぞ!このやせっぽっちの技術者が考えている事が、手に取るようにわかる! 「…できるんだな?」 「…ぶっちゃけできます」 俺のヤラシイ問いに対し、技術者はヤラシイ笑顔で返答し、デスクの引出しの一番下を開いた。 中に入っていたのは、ヤラシイ某一流メーカーが販売しているセクサロイド用特殊パーツ「ホール・オブ・オナー 3」。 タイプ2557コハルを世界的ヒット商品にさせた、全自動オナホールのヤラシイ名作だ。 アサカ社製ガイノイドとの相性は抜群で、AIからの信号によって作動する高性能油圧ポンプと 電動モーター、さらに100個を超える感圧センサーからのフィードバックにより、AI自身が 最も具合の良いよう学習できるという優れモノ。 こいつでイカない奴は男じゃない。いや、人間じゃない。 ちなみに女性向け用オニンニンタイプもあるそうで、極少数ながら女性購入者から注文が あったそうだ…会社のボス(巨乳)が買ってきたコハル、妙に下半身が逞しかったような気がアッー! 考えるの良そう。 「できる事は出来ますが、こっちでは無理ですね…サエキさん自ら改造する分には問題ないですが」 つまりそれはあれか? オ○ンコ以外はもう、完全ょぅι゛ょのチエをすっぽんぽんにしてあげて、その体に俺の手でパーツを、こう… 「盛っている所水を刺すが主人、そのパーツは私が“機内”で取り付けるから余計な事は考えるな」 ちょwwwwwなんでおまえがwwwww 「“向こう”で必要になるかもしれんからな…」 「反対!そんなの絶対反対!家のチエをそんなイヤラシイ目的で使わせるわけにはいきません!」 「言っている事と考えている事が全く逆のようだな、後で矯正してやろう」 俺死亡決定。 3時間後、チエの筐体換装は終了した。 規格の怪しい中国の電力設備に備え、専用の変圧器を新しい筐体の充電機に取りつけた為、 少し時間を食ったようだ。 さぁはやく生まれ変わったチエの姿を見せてくれ!具体的には超マブいょぅι゛ょメイドロボ! 「おまたせしましたサエキさん、こちらが新しいチエ…アサカタイプ2565Xチノです!」 もうネーミングとかどうでもいいんだよ糞ボケがぁ!はやく激マブエロメイドよこせってんだ! 「まったく、貴様ら人間という奴は何でもかんでもお祭り騒ぎにして…」 「…!?」 ひゃっほーう!メイドロボ!メイドロボ! 俺の目の前に現れたのは愛らしい流線型のボディに無骨な四本アームと履帯を装備して 生まれ変わったメイドロボ! 具体的には炊飯k… 「元に戻ってんじゃねぇかあああああ!!!!」 怒りのあまり顔を真っ赤にした俺は、叫びながら研究員の襟首を掴んで前後にガクガク揺らす。 チエの姿はコハル事件で破損する前のチエの姿…ょぅι゛ょの影も形もない炊飯器そのものだったからだ。 「おちついてくださいサエキさんおちついて!これには事情があるんですよ!」 「私に任せろ」 暴れる俺をチエは四本アームでクイッ!っとやった。効果てきめんだねっ! まぁ騙された俺が凹みまくってる事に変わりはないが。 「まったくバカ主人めが、いつも下半身で物を考えてばかりいるから、細かい事に気がつかんのだ」 サーセンwwww 「サエキさん、チエは人命救助ロボットなんですよ?メイド姿で現地に向かったら不自然でしょう?」 そうですね炊飯器なら凄く自然ですね。 「ここからは我々技術者の腕の見せ所です」 なんだトランスフォームでもするのか。 『トランスフォーム!』 本当にしやがった。 炊飯器は版権とか色々ヤバそうな掛け声と共に、どっかで聞いた事のある「ギョギョギョギョ…」 という奇怪な効果音を発し、怪しげなメカニズムを経て金髪ツインテールのロリメイドに変形した。 余計な機能つけんな。 「ふん、貴様の性処理なら帰国後にたっぷり付き合ってやる…『トランスフォーム!』…こっちの姿でな」 まさに外道! 換装の済んだチエは、その日の内に△△国際空港発、重慶江北行きの便に積み込まれた。 表向きの名目はNGO所有の「人命救助ロボット」…元々チエは被災地人命救助用多機能 ロボットとして開発されたのだから、これ以上ない隠れ蓑というわけだ。 当然炊飯器じゃ客席に乗れるわけないので、普通に考えても積み荷扱いだよねー☆ 俺は特別に立会を許され、生まれて初めて滑走路に直に立ち、旅客機の荷台に搬送されるチエを見送った。 バカでかい発砲スチロールと緩衝材に包まれたチエを目にした時、言い知れぬ不安を思い出し、 俺は思わず駆け寄ろうとした。 だが中に居たチエは俺の足音を感知し、相変わらず無感情な声で言った。 「少し行ってくるからな。悪い物は食うな、遅刻せず仕事に行け、無駄遣いはするな…具体的にはソープ行くな」 こいつなりに俺に気を使ったつもりなのかね。かわいくねぇ。 「征ってこいよ、待ってるからさ」 「あぁ、征ってくる…」 チエを乗せた旅客機の荷台が閉じた。機はゆっくりと動き出し、やがて離陸準備に入る。 俺はもう心配するのはやめた。 あいつが自分で決め、自分で望んでこうなったんだ。 それが、何より大事なのだ。 俺にとっても、あいつにとっても… 機は轟音と共に中国大陸に向け飛び立った。 「サエキさん、送りますよ」 情報保全部のエージェントが、俺の肩を軽く叩いてほほ笑む。 結局男は置いてきぼり、かわいい彼女は戦争に征っちゃった。 だから役者が逆だってんだよ、まったく… さて…ソープにでも行くか。