『貴方様の思うがままの従順なメイドロボットを製作いたします』

 『貴方様の思うがままの従順なメイドロボットを製作いたします』

 散歩の途中に目に付いた看板。そこに書かれていた文字が何故か気になった。
メイドロボ?へぇ~、そんなの売ってるんだ、知らなかったなぁ。
あの広い屋敷での一人暮らしも飽きたところだ。
お金なら腐るほどあるし、試しに1体買ってみようかな?
僕はそんな事を考えて、その小さな店の扉を開けた。
……その安易な考えが、僕の人生を刺激たっぷりの人生に変えてしまうことも知らずに。

「いっらしゃいませ、本日はどのようなロボットをお求めでしょうか?」

 店に入った僕を迎えたのは、いかにもといった感じの口ひげを蓄えた店の主。
僕はその風貌に少し驚きながら用件を切り出した。

「表の看板を見たんですけど……メイドロボを1体欲しいんですが」
「メイドロボをですか?ありがとうございます!では早速どのようなメイドにするかお話を……」

 店長がパチンと指を鳴らすと、店の奥から綺麗な女性がアンケート用紙のような物を持って来た。
綺麗な人だなぁ……そんな事を考えていると店の主が怪しい笑みを浮かべる。

「どうですか?我が社自慢のロボットは?綺麗なものでしょう?」
「へ?……ええ?こ、この人ロボットなんですか?……見た目全然分らないですね」

 綺麗な黒髪に、にこやかな笑顔。
僕にアンケート用紙を差し出す動きもスムーズで、その細い指先なんてとてもロボとは思えない。

「はっはっは!そうでしょう、そうでしょうとも!
見た目だけではなく、体のほうも人間そっくりに出来てますよ。
それは御購入後にベッドの上でジックリとお確かめください……ぐっふっふっふ」

 妖しい笑みの店主の言葉に思わずゴクリと唾を飲み込む。
そ、そうなのか?そういうことも出来るのか?出来てしまうのか?
思わず目の前にいる彼女の胸に視線が行ってしまう。……大きくて柔らかそうな胸だ。
僕は少し大きくなった下半身がばれないように、彼女から受け取ったアンケート用紙に視線を移した。

「えっと、これはいったい何のアンケートなんでしょうか?」
「あぁ、これは貴方様がどのようなメイドを欲しているかのアンケートですよ。
このアンケートに書かれたとおりに仕上げますので、必ずや大満足していただけるはずですよ」

 アンケート用紙にはメイドの身長や3サイズ、髪型や肌の色に瞳の色。
性格に趣味などを細かく書くようになっていた。
僕は夜のメイドロボを想像し、アンケートを一気に書き上げてしまった。
……考え無しだったんだよなぁ。僕のバカバカバカバカ!


 今、世の中にはロボットが溢れている。
工場や工事現場、病院などでも人に従順なロボットが活躍し、世界的にも認知されている。
どんなに辛い仕事でも嫌な顔一つせずに黙々とこなすため、大人気なんだ。
そのおかげで人型作業用ロボットを開発した僕の御爺様は莫大な富を得た。
御爺様の残した遺産のおかげで僕は働きもせず、毎日ブラブラと過ごせているんだけどね。
働きもせず、やりたい事もなく、ただ毎日ブラブラと過ごすだけ……そんな日々に飽きてきたんだろうね。
だから暇つぶしの軽い気持ちでメイドロボを買おうと考えたんだ。

 ……その軽い気持ちのせいで静かな日常が逃げ去ってしまった。どうしよう?

 メイドロボの購入を決め、お金を振り込んでから一ヶ月が過ぎた。
今日はそのメイドロボが屋敷に来る予定日だ。
代金は超高級外車が1台買えるほどの値段だった。だからメイドロボはあまり世間には出回っていない。
いくらロボが世間に広まっているといっても一般家庭にはまだまだ手が出ない値段だ。

「……ふぅ~、緊張するな。僕はご主人様なんだから威張ってればいいんだよな?」

 約束の時間が近づくにつれ、緊張の度合いが増してきた。
普通ならそんなに緊張しないはずだけど、今日来るメイドロボには夜の機能もついているらしい。
……それが僕を緊張させている理由だ。
いいんだろうか?初めてがロボットで本当にいいんだろうか?
そんな事を考えながら、僕がアンケートに記入したメイドロボの特徴を見てみる。

 身長……155~160cmぐらい 髪の色……黒 瞳の色……黒 3サイズ……人並みに 
 性格……素直だがドジなところがある 趣味……プロレス  

 最後の趣味のプロレスはいらなかったかな?
けど僕自身がプロレス見るのが好きだしなぁ、昔のプロレスのことをいろいろと話せたらいいな。
あの時は何故かテンパッテたからあまり深く考えずに一気に書いちゃったんだよね。
おかげで得意料理が卵焼きとか訳の分らない事書いちゃったんだよなぁ。
せめて和食全般とか書けばよかったかな?そんな事を考えていたら呼び鈴が鳴った。
来たのか?正門に設置している監視カメラで覗いて見る。……それらしい姿をした女の子が立っている。
つ、ついに来たんだ!……やばい、喉がカラカラだ、どうしよう?
とりあえずは正門を開けて、玄関に来るように指示を出す。
カワイイ声で返事をする彼女。……いい感じの声だな。この声で毎朝起こしてもらえるなんて夢のようだ!
少しすると今度は玄関の呼び鈴が鳴った。慌てて玄関まで走る。
そしてドキドキしながら玄関のドアを開けてみる。……そこに彼女はいた。
黒髪を白いリボンを結んでメイド服に身を包み、不安な表情で僕を見つめる彼女が。
何故か背中には大量の荷物が詰まっているであろう大きな風呂敷を背負っている。
その風呂敷をギュッと握っている小さな手がなんかもうたまらない!!
……カ、カワイイ。メチャクチャ僕のタイプじゃないか!いよっしゃぁぁぁ~!
思わずガッツポーズを取ってしまう僕。予想以上の出来だ!よくやった店主!

「は、初めましてご主人様!不束者ですが、今後とも末永くよろしくお願い致します!」

 そう言って勢いよく頭を下げるメイドロボ。
んん~、その一生懸命な仕草がカワイイね……ええ?
彼女が背中を見せるぐらいの勢いで頭を下げたために、
彼女が背負っていた大きな、いや、巨大な風呂敷袋が僕に向かって飛んで……ごぼあああ~!!
玄関の扉を開けて30秒、僕は風呂敷に吹き飛ばされてしまった。

「はわわわわ!た、大変ですぅ!ご主人様、大丈夫ですか?」

 慌てて駆け寄る彼女。そこには何故かバナナが落ちていた。
なんでバナナが落ちてるの?不思議に思い、ふと横に落ちている僕を吹き飛ばした風呂敷を見てみた。
風呂敷からは、バナナやスイカ、電子レンジや掃除機等がはみ出していた。
そっかぁ、このバナナは大きな風呂敷の中に入ってたんだぁ、納得だね。
風呂敷で吹き飛ばされて薄れ行く意識の中、大慌てで駆け寄ってくる彼女がバナナを踏んづけたのが見えた。
危ない!……そう思った瞬間、見事につるっと滑った彼女。
勢いよく滑ったためだろうか?豪快に背中から床に倒れこんだ。
……床じゃないね、倒れてる僕の上にだね。…………ドゴシャ!

 ……玄関を開けて1分で僕は自己紹介をする前に、
職人肌のプロレスラー、受身の達人『ヒロ斉藤』の得意技、『セントーン』を食らう羽目になった。

「はわわわわわ!も、申し訳ありませんご主人様!私、ドジなものでつい……大丈夫ですか?」

 あばら骨から聞こえた『ボキボキ』という破滅の音を聞きながら思う。
これをドジで済ますつもりなの?あのアンケート、ドジとか書かなきゃ…よかっ……た………がふっ!

 僕たちが衝撃的な出会いをして一週間。書斎でくつろぎながらコーヒーを飲む。
しかしあれだけやられてあばら骨は折れてなかったのは、ある意味奇跡だね。
そんな事を考えながらカップに口につける。
……うん、甘すぎる。っていうか、カップの底に砂糖が溶けずに残ってるね。

「お~い、葉月~、ちょっと来てくれ~」

 初対面の僕にセントーンを食らわせたロボメイドの葉月を呼ぶ。
葉月は一生懸命に働くんだけど、いかんせん、ドジだからミスが多い。
あばらを痛めて動けない時は何度殺されかけた事か……それをドジで済ますなんて恐ろしいヤツだ。

「はぁ~い、お呼びでしょうかご主人様?」

 葉月は呼ばれて慌てて走ってきたのか、両手にたわしを握り締め、はぁはぁと息荒く僕の前に現れた。
そのカワイイ僕好みの表情で誤魔化されていたけど、今日こそガツンと言ってやる!
お前、いい加減にしないと廃棄処分にするぞってな!

「おい葉月!お前、このコーヒーな……」
「どうでしたか?ご主人様の言うようにスプーンで1杯、しっかりとお砂糖をお入れしました!」

 ニコッと、まるで輝くような笑顔で微笑む葉月。
……か、可愛すぎる、こんな純粋な笑顔を見せられたら文句も言えないよ。
輝くような笑顔でポケットからそのスプーンを取り出して……うん、それはスプーンじゃないね、レンゲだね。
っていうか、なんで持ち歩いてるの?

「あ~、葉月さん、残念なお知らせなんだけど……それ、スプーンじゃないから」
「ふえ?そ、そうなんですか?はわわわわわ!わ、私またドジをしちゃって……申し訳ございません!」
「あぁ~そんなに謝らなくてもいいよ、前みたいに塩じゃなくなっただけでも進化した証拠だしね」
「ご、ご主人さまぁ、ドジばかりの私にそんなお優しいお言葉……ご主人様ありがとうございますぅぅ~~!!」

 僕がかけた優しい言葉に感極まったのか、抱きついてきた。
本人もミスばかりするのを気にしてたっぽいからね、無理してたんだろうね。
僕をギュッと力いっぱい抱きしめながら、泣きじゃくる葉月。
おいおい、照れるじゃないか、いい加減に離して……お、折れる!背骨が砕け散ってしまう!離せぇぇぇ!

「ひぐ、ご主人様……葉月は一生懸命頑張ります!ご主人様のために頑張ります!」
「が……ごぼあ………ぐぶぅ…………がふぅ!」
「至らないところもあるとは思いますが、頑張ります!ですからご主人様……ご主人様?」

 あぁ……綺麗な花が咲いてるなぁ。屋敷にこんな綺麗なお花畑なんてあったかなぁ?

「ご主人様……よっぽどお疲れなんですね。クスッ、なんだか可愛く感じちゃいます、ご主人様」

 あれ?こんな川なんてあったっけ?おや?向こう岸にいるのって……5年前に死んだ御爺様じゃないか?

「さ、ベッドで寝ましょうね?では失礼して肩に担がせていただきますね?……よっと」

 御爺様?なんで急に離れていくの?何処に行くの?僕も連れて行ってよ!待ってよ御爺様~!

「お……じいさ………ま……行かない…………でよ……」
「ご主人様……やはりこんな大きなお屋敷に一人きりでお住まいになってて寂しかったんですね。
……任せてください!この葉月がこれからは御一緒します!」
「う……うぁ……んん、は、葉月?お前、何してるの?」

 なんか懐かしい夢を見たような気がする。……なんで葉月に担がれてるの?
夢から目が覚めたら、何故か葉月の左肩に担がれていた。
葉月は華奢な体に見えるけどそこはメイドロボ、僕なんかじゃ束になっても敵わない怪力の持ち主だ。

「あ、お目覚めになられましたかご主人様?
急にお眠りになられましたので、今、ベッドへお連れしようとしてたんです」

 ……何故だろう?この葉月の無邪気な言葉に殺意が芽生えるのは?
ま、いいや。何故か体が動かないし、このまま運んでもらおうかな?

「そっか、ならこのままお願いするかな?」
「はい!私にお任せください!責任を持ってご主人様をベッドまでお運びいたしま……きゃ!」

 突然の葉月の悲鳴。……嫌な予感がする。
僕を肩に担いでいた葉月は、床に落ちていたたわしを左足で踏んでしまい、足を滑らせた。
そっか、このたわし、葉月が持ってたヤツだね?
足を滑らせ左側に倒れる葉月。で、その左肩には僕が担がれてるわけで……うおおおおおお~~~!!!
葉月が気を効かせて、頭が揺れて僕が起きない様にと、しっかりと右手で僕の頭を押さえてたのが災いした。
手を離せばいいのに、そのまま横に倒れこむ葉月。
葉月の肩に乗っていた僕は頭を押さえつけられたまま床に対して頭から垂直に落ちているのに気がついた。
……これはあのエルボーの貴公子『三沢光晴』の必殺技『エメラルドフロージョン』じゃないのか?

 そう思った瞬間、頭に物凄い衝撃と『ゴスン!』という嫌な音がして、僕の意識は暗闇に落ちてしまった。

「ん……んん、ここは……どこだ?」

 薄暗い部屋の中で僕は目が覚めた。
目が覚めるとそこは寝室で、僕はベッドに寝かされていた。
そして僕の手をギュッと握り締めたまま眠っているように見える葉月。
しかしこれは寝ているのではない。
その証拠に、首筋から生えているコードから葉月の動力源である電気を吸収している。
……家庭用の100V電源でいいとは凄い技術力だよね。さすがはロボット大国日本だ!
妙なところに納得し、葉月の手を離しベッドを降りる。
……大変な目に会った。これは傷害事件だぞ?
なんで主人なのに殺されかけなきゃいけないんだ?
もはやドジで済まされる話じゃないだろう?……返品だ。
葉月には悪いが命のほうが大事だからね。殺される前に返品してやる!
怒りに震える僕は電話を手に取り、葉月を買った店にクレームの電話をかける。

『はい、御電話ありがとうございます、こちらは……』
「もしもし?この間メイドロボを購入した者ですが、店主をお願いします」
『おや?私がですが、いかがなされましたか?』
「アンタのところのメイドは殺人鬼か?この一週間で何度も殺されかけたぞ!」
『えええ?そ、そんなはずはありません!依頼されたとおりの設定で送り出したはずです!』
「現に今日もプロレス技をかけられて、ついさっきまで気絶してたんだ!僕を殺す気か?」
『はぁ?しかし貴方様がプロレスが趣味のメイドにしてくれと注文されたはずでは?
ですからてっきり2人でプロレスごっこをして楽しむものとばかり……』

 ……はぁ?確かに僕は趣味の欄にプロレス観戦と書いた。
それが何でプロレスごっこになるん……あれ?趣味の欄が『プロレス』となってるね。
アンケートに書いた葉月に関する事を見てみる。確かに趣味は『プロレス』となっている。
はたから見ればこれじゃ観戦するんじゃなくて、プロレスをするのが趣味みたいに見えるんじゃないのかな?

「そ、それにいつも失敗ばかりしてるし……」
『それも貴方様がドジなところがあると記入されたからそう設定したのですが……お気に召しませんでしたか?』

 ……確かに性格の欄には『素直だがドジなところがある』と書いちゃってるね。
そっかぁ、ドジの前に『少し』という言葉を入れておけば、ここまで酷いドジっ子にはなってなかったのかな?
ってことは何か?葉月は僕がアンケートでリクエストした通りのメイドなのか?

『しかしお気に召しませんでしたら一度回収し、再度作り変え致しますが。いかがいたしましょう?』
「……作り直す?葉月を作り直すのか?」
『はい、そうです。回収したロボは一度全てをリセットして作り直します』
「リ、リセット?それはどういうことですか?」
『簡単に言うとスクラップにしてから再度一から新品として作り上げるんですよ。
メイドロボという物はお買い上げなされたお客様の要望どおりに作り上げますからね。
回収してもなかなか他の買い手がつかないんですよ』

 スクラップだと?つ、つまりは葉月を壊す……殺してしまうということか?

『それともあれですかね?お客様もやはり大人の女の方がよかったんですかね?』
「……なんのことだ?」
『またまたぁ、夜の営みの事ですよ。ぶっちゃけSEXですな、SEX!』
「な……SEXだと?」
『いえね、私もメイドロボを抱くのに飽きたらスクラップにして新しいのにするんですよ。
しかしお客様はたった一週間で飽きてしまうとは!……よっぽどヤリまくったんでしょうな。
アソコの具合はいかがでしたか?ケツの穴も使えますのでスクラップはそちらを試してからでも……』

 下品な声で笑う店主の言葉を聞いて頭が真っ白になる。
確かに最初はえっちな考えもあったさ。それは認めよう、僕も男だからね。
けどな……お前に何が解る?お前に葉月の何が解るんだ!
怒りが爆発し、大声で怒鳴ってしまった。

「葉月はな……葉月は僕の為に一生懸命なんだ!一生懸命頑張ってくれてるんだぞ?
毎朝僕の為に美味しい卵焼きを作って起こしに来てくれるんだ!
毎日僕の為に屋敷を綺麗に掃除して、毎日僕の為に庭を掃除して、毎日僕の為に……笑顔で頑張ってくれてるんだ!
そりゃちょっとはドジで、何故かすぐにプロレス技をかけてくる!
そんな少しヘンな葉月だけど……僕にとっては大事な家族なんだ!」
『……そうですか。なら後生大事にすればいいでしょ?じゃ、電話切りますよ?
そうそう、今のに飽きたら新しいメイドロボの御用命は是非当社まで……』
「ふざけるな!貴様のところなど二度と使うか!」

 怒りのあまり、電話を叩きつける。
ふざけやがって……ロボを、葉月を何だと思っているんだ!
怒りに震える僕の脳裏には、屋敷に来てからの葉月の姿が思い浮かぶ。


 洗濯物を全部縮めてしまった葉月。
 
 一生懸命洗車をしすぎて、塗装を剥いでしまった葉月。
 
 卵を割った時に黄身が双子だったと、朝6時なのにベッドで寝ている僕に嬉しそうに報告に来る葉月。
 
 朝、僕を起こしに来た時に躓いてこけてしまい、何故か僕の首筋にエルボードロップを落とした葉月。

 お風呂で背中を流しますと、僕の背中を力いっぱいゴシゴシとこすり、流血騒ぎを起こして慌てる葉月。


 …………ろくでもないね。とんでもない思い出ばかりだね。
けど、なぜだろう?とんでもない目に会っているのに……思い出すだけで僕の顔は綻んでしまう。
……そうなんだ。葉月といると、とても楽しいんだ。
御爺様が死んで、身内同士の醜い遺産争いに嫌気が差して引きこもりになった僕には、他人との接点があまりなかった。
そんな僕のことを大事に思ってくれる葉月との生活が、とても楽しかったんだ。
そして……気がついていなかったけど、僕も葉月の事を大事な存在と思うようになっていたんだ。
自分の葉月に対する気持ち……そのことに気がついた僕に、背後から話しかけてくる声がした。
もちろんこの屋敷には僕以外には一人しかいない。……葉月だ。

「ごじゅじんざばぁ……わ、たし、ひぐ、わだじなんがを、ぐしゅ、ありがどうございばずぅ~」

 涙をボロボロと零し、号泣してる葉月。
ま、まさか聞かれたのか?……聞かれちゃったんだろうなぁ。
ぐしゅぐしゅと泣きじゃくる葉月をそっと抱きしめ頭を撫でる。
葉月の髪はサラサラで、とてもいい香りがした。

「ゴメンね。僕、一度は葉月の事、屋敷を追い出して店に返してやろうかと考えちゃったんだよ。
でも、もうそんな事は考えない。葉月は僕の大事な家族だ。……うん、かけがいのない家族なんだ」
「ご主人さまぁ……嬉しいです。葉月は嬉しいですぅ~」

 僕の旨に顔を埋め、涙を零す葉月。
あれ?涙なんか流せるんだ?さすがは最新鋭のロボットだな、驚いたよ。

「葉月、涙なんて流せるんだ?」
「ふぇ?当たり前です!私はこう見えても最新鋭のメイドロボなんですからね?」

 頬を膨らませ、胸の中から僕を見上げ文句を言う葉月。
そんな葉月を見ていたら……我慢できなくなった。

「あははは、ゴメンゴメン。けど凄いなぁ、まるで本物の涙だ。ちょっと味見していい?」
「ふへ?味見ってなんです……んあ!ご、ご主人様?そんなダメです!汚いです!」

 綺麗な瞳から流れる涙を、キスで拭き取る。……うん、少し甘いかな?

「少し甘いね、これが葉月の味なんだ。唇はどんな味なのかな?」
「へ?ふええぇぇぇ?ご、ご主人様?いったいどうし……んん!」

 僕の言葉にワタワタと慌てる葉月をギュッと抱きしめ唇を奪う。……やはり唇も甘いんだ。
なら他の部分はどんな味なんだろう?
唇から首筋、首筋から耳へと舌を這わす。

「ん、んん!ご、しゅじん、さまぁ……あん!」
「葉月は全身が甘いんだね。じゃあこの柔らかい胸はどんな味なんだろうね?」

 葉月の少し小ぶりながらもいい形をしているであろう胸に手を這わせる。
……や、柔らかい。これが女の子の胸なんだ。

「ふぁぁぁ……ダメです、ごしゅじんさまぁ、葉月はおかしくなっちゃいますぅ」
「どうおかしくなるの?言ってごらん?」
「視界が白くて、思考回路が混乱して……全身をヘンな電気信号が走っちゃって、体が少し発熱して……」
「そっか、葉月はもう感じちゃったんだ?注文通りだね」
「ふぇぇ?ごしゅじんさまぁ、んあ!ちゅ、注文通りってなんですか?」 

 メイド服の上からでもわかる、葉月の柔らかい胸。
その感触を確かめるようにモミモミしながら綺麗な耳を軽く噛む。
胸を揉む度に、耳を噛む度に小さな喘ぎ声を出す葉月。
よほど感じているんだろうか、僕の服をギュッと掴んで息が荒い。……パーフェクトだ。
あの店主、性格はクズだけど、腕は確かなようだね。

「葉月を注文した時に書いたアンケート、これ見てみる?エッチのときの葉月の事も書いたんだよ」

 机の上に置いてあるアンケートで性行為の項目を葉月に見せる。

「はぁはぁはぁ、『性感帯……全身 感度……良好で、何度でも連続で絶頂に達することが出来る』
ごしゅじんさまぁ、これってどういう意味なんで……きゃん!」

 揉むだけでは我慢できなくなり、メイド服を無理やり剥ぎとりその綺麗な白い胸に顔を埋める。
あぁ……柔らかい、これが女の子なんだ。

「それはね、簡単に言うと葉月は僕好みの女の子だってことさ」
「あ、はぁん!う、うれし、んん!ごしゅじんさまに、ひゃう!す、吸っちゃダメです!
ごしゅじんさま、胸からはまだ何も出ません!」

 綺麗なピンク色の乳首に吸い付いてみる。
吸う度に、噛む度にビクビクと身体を震わせる葉月。
口の中で舌を使い嬲ってみる。……顔をブンブン振りながら喘いでいる。
葉月はホントに感じやすいんだね、注文通りだ。
……まだ出ないってなに?

「葉月、まだ出ないってなんのこと?」
「ですからぁ、んん、母乳はまだ補充してませんので出せませ……ふあぁぁぁ?
ヘンなところに手を入れないで……ひゃん!やぁん!へ、ヘンですぅ!
体が、視界が、思考が真っ白にぃぃ!ヘンな信号が全身を走って……きゃうううう~!」

 スカートをめくり、白いショーツの中に手を入れてみる。……ヌルヌルしてる。
これが世間一般で言うところの『濡れる』というヤツなのかな?
ショーツの中で軽く指を動かしてみる。
……ぐちょぐちょという音とともに、葉月が泣きそうな声で喘ぎだした。
時折背中を大きく反ったかと思えば、力なくぐったりとする。
葉月、いったいどうしたんだろ?……まぁいいや。
っていうか人の心配してる場合じゃない。痛いぐらいにいきり立っているこれをどうにかしなきゃね。
ズボンを脱ぎ、下半身裸になる。
そしてぐったりとして動かない葉月のショーツを脱がせる。
……ここもいい香りがするんだね、次はここも味見しなきゃね。
今、僕の目の前にはメイド服を強引に脱がされて白くて綺麗な胸を露わにし、
そして下半身はスカートを穿いたままショーツを脱がされている葉月がいる。
自分でしておきながら、なんだけど……エロい!そんじょそこいらのAVなんかよりもずっとエロいよ!
露わになっている人工物とは思えない葉月の下半身に僕の物を添える。
御丁寧に、ヘアーまでついてある。……うっすらとだけどね。

「葉月……葉月大丈夫?」

 息荒く、虚ろな目の葉月の頬にそっと手を添える。

「ご…しゅじんさ…ま?なにがおこったんです……か?」
「葉月、体は大丈夫?」
「は、はい……とくにエラーも出ていませんし、どうにか動けますけど、ただ思考回路が少しおかしいですぅ」
「そっか、じゃあ大丈夫だね?行くよ?」
「ふぇぇぇぇ?ごしゅじんさま、なにが大丈夫なんですか?どこに行かれる……いっ、きゃあああ~!」

 『グジュ!』

 僕は何が起こるのか理解できていない葉月に一気に突き入れた。
思ってたほどの抵抗はなく、葉月の中にすんなりと入ってしまった。ええ?SEXってこんな物だったの?
もっとこう、ギュギュギュって締め付けてくるものだと思って……う、うおおおお?

『ギュギュ……ギュギュギュギュギュギュ!』

 葉月の中に全部入ったと思った瞬間、葉月の中が別の生き物のように蠢きだし、僕を攻め立てる。

「う、うぁ……は、づきぃ、これ、すごいよ……も、出る!」

 僕は情けない事に、蠢きだした葉月の中に、一度も動くことなくドクドクと大量に吐き出してしまった。
吐き出している僕から一滴残らず、全てを吸い出そうとするかのような葉月の動き。
あまりの気持ちよさに頭の中が真っ白になり、僕は息荒く葉月の胸の上に顔を埋めてしまう。
うあぁぁ……もう出しちゃったのに、まだ締め付けてるよ。これがSEX……これが葉月なんだ。
そんなことを考えながら葉月の胸に顔を埋めていると、僕の頭をそっと優しく抱きしめてくれた。

「ごしゅじんさまぁ……嬉しいですぅ、葉月はえっちしてもらえないと思ってました」
「はぁはぁはぁ……なんで?こんな素晴らしい体の葉月を抱かないなんてことはありえないよ」
「だってごしゅじんさま、今日までえっちなことしてきませんでしたし……
もしかしたら女の子には興味がないのかなって」 
「バ、バカ言うなっての!僕は正常な男子だよ。その証拠に葉月に物凄く欲情してる。
まだまだ葉月を抱きたいと思ってる。……その、まだしてもいいかな?」

 あんなに大量に出したばかりだというのに、葉月の中でムクムクと大きくなってしまった。
仕方ないよね?だって葉月が物凄く気持ちいいんだからね。
葉月はクスリと微笑み、僕の首に手を回し、唇を奪ってくる。

「ん……はい、何度でも。ごしゅじんさまが満足するまでお付き合いします!」

 負けじと僕も唇を奪い返す。

「ん……言ったな?葉月が止めてと言っても止めないからな?覚悟しろよ?」
「はい、大丈夫です。ごしゅじんさまになら、何をされてもかまいません!」
「……なにしてもいいの?ホントにいいんだね?」
「ふぇ?……ヘ、ヘンタイなことは禁止ですぅ!」
「あれ?そうなんだ、残念。ま、今日はいっか。ヘンタイなことはそのうちに、ね?」
「むぅぅぅ……ごしゅじんさまはむっつりえっちのヘンタイさんですぅ」
「あはははは、むくれてる葉月もカワイイよ。じゃ、動くよ」
「ん、んあ……ごしゅじんさまぁ、また葉月はヘンになりますぅ」

 葉月とお互いを見つめ合い、求め合いながらのSEX。
僕と葉月とのSEXは、夜が更けるまで続いた。

(あれ?この店、潰れちゃったんだ。……ま、どうでもいいか)

 久しぶりの散歩の途中、葉月を買ったあの店が無くなっているのに気がついた。
潰れたのか?店が潰れる前に葉月と会えてよかったな。
百貨店で購入した葉月へのお土産の袋を握り締めて思う。
あのクソ店主の側にいた綺麗なメイドロボはどうなったんだろう?
新しい人に貰われたんだろうか?
それともクソ店主が言っていたように、スクラップにされてしまったのだろうか?
……願わくば、新しい人と幸せになっていてほしいな。


 僕は葉月と会うまでロボットをただの機械だと思っていた。でもそれは違う。
彼女達は生まれる方法が、僕達と少し違うだけなんだ。そう考えるようになった。
彼女達も幸せになる権利はある。そう、あるはずなんだ!
……葉月は僕と一緒にいて幸せなんだろうか?
……葉月が幸せかどうかは分からない。けど一つだけ分かっている事がある。
それは……僕は幸せだということさ!
僕は葉月の待つ屋敷に向かい走り出す。
……早く会いたい。早く抱きしめたい!葉月と抱きしめ合いたい!
玄関のドアを勢いよく開け、僕の大事な人の名前を大声で叫ぶ。

「葉月!どこにいるんだ、葉月!」

 僕の求めに応じるかのように二階から声がした。 

「お帰りなさいませご主人様、葉月をお呼びでしょうか?」

 彼女は二階を掃除していたのか、雑巾を持ったまま慌てて走ってきた。
僕が大声で名前を呼んだためか、急いで二階の手すりのところまで走って来ようとしている。
僕はそんな彼女を喜ばすために買ってきたお土産を見せながら話す。

「葉月、二階にいたのか。君へのお土産を買ってきたんだ。外出用の服だよ、きっと似合うと思うよ」
「ふぇぇぇ?わ、私なんかにそのような物をくださるのですか?あ、ありがとうございま……ふわわわわ!」

 急いで走ってきたために、スカートの裾を踏んでしまったドジな葉月。
僕はそんなドジな君も大好きさ!
しかし、僕は葉月を甘く見ていた。……そう、甘く見ていたんだ。
走って僕の下に来ようとしていた為に、裾を踏んで豪快に前のめりに倒れた。
いや、倒れたんじゃないね、前方に飛び込んだ感じだね。
で、何故か二階の手すりを飛び越えて、僕をめがけて一直線に飛んでくる。
御丁寧に、肘を僕に向けているよ。う~ん、これはどこかでみた事のあるプロレス技だね。
……そうか、思い出した!エルボーの貴公子『三沢光晴』の得意技『エルボースイシーダ』だね!

 『ぐちゃ!』
 
 顔面にめり込む葉月の肘の衝撃で吹き飛ばされ、薄れゆく意識の中、僕は思う。
葉月との生活は、刺激たっぷりだね。……こんな刺激はいらないんだけどなぁ。
吹き飛ばされ、玄関の扉をぶち壊しながら僕は意識を失った。

 ……目が覚めたとき、大事な人が側にいる事を祈って。

 

 ……目が覚めるのかな?

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