外れた四肢を脇に押しやり、弘樹は私の下半身へ馬乗りになった。 「弘樹…どうして…」 弘樹の瞳に、私の身体の機械部品が映っているような気がした。そう思った瞬間、私の目から涙が どっとあふれ出る。 「涙…すごいな、最近の育児ロボットってここまで精巧に出来てるんだ」 涙を見ても臆することなく、弘樹は私を問い詰め始めた。 「…俺の母さんは…三沢裕美を何処にやったんだ?」 「!!」 「あんた、俺のなんなんだよ…」 「こんなことをして…こうまでしても聞きたい?」 「当たり前だ! 俺はずっと…ずっと、うちの家族は普通だと思ってたんだ! 親父は死んじまったけど、 母さんは優しくて強かった。信じてたんだ…母さんを」 「そ、それは…」 「それが…なんだよ、これ?!」 外れた右腕を拾い上げ、私に突きつける。 「あんただけじゃない…俺も変だ…小学校に入学する以前のことが、どうしても思いだせない」 私の右腕を投げ捨て、頭を抱える弘樹。 「俺は…俺は一体誰なんだ…?」 「弘樹…」 苦しんでいたのは、私だけではなかった。作られた虚像の裏で鬱積していた現実が解放され、それは彼に 重くのしかかっているのだ。 「本当の事を話して上げるわ」 「…」 「でも、それを知ったらあなたは狂ってしまうかもしれない…それでもよければ、全てを教えて上げる」 「狂ってしまってもいい…それで現実が見えるのなら」 「…弘樹」 それから私は、弘樹に全てを話した…自分の正体は育児ロボットではなく、御剱重工業のアンドロイド 試作品・MGX-5000であること。弘樹の小学校入学前に起こった、アンドロイド暴走による一家死傷事件の こと。その事件はこの家で起こったこと。それから10年間、弘樹の父から預かったメールに従い、自分が 弘樹の母となっていたこと。 「そ、そんな」 「全部本当の話しよ」 「うっ…くっ…」 私の腹部に、何かの水分が滴り落ちた。 「うう…畜生…」 弘樹は泣いていた。中学生になって以来、私の前で涙を見せたことのない弘樹が、今は涙を拭おうともせずに ただ泣いている。 「弘…樹…?」 「畜生…畜生!!!」 泣いているだけではなかった。弘樹は全身を震わせて泣いている。 「思いだした…思いだしたよ…俺は見ちまった…あんたが、俺の母さんを絞め殺したところを…その手で、俺の 首を締めようとしたことも…」 弘樹は知らなかった訳ではない。外的ショックによる、記憶喪失…幼い自我が、自らの崩壊を防ぐ為にとった 精いっぱいの抵抗だったのだ。 「あんたは俺の母さんを殺した…そして」 弘樹の手が、私の顔を両側から掴んだ。 「母さんの顔を奪ってのうのうと生きてる…例えそれが父さんの言い残した事でも…こんなことって」 震え続ける弘樹の手に力が篭ってくるのがわかる。 「憎い…あんたが憎い筈なのに…!! なんでこんなに涙が出るんだよ…なんでこんなに悲しくなっちまうんだよ!!」 「弘樹…」 「うっ…ううぅ…」 私の顔から手を離し、弘樹は四つん這いになって泣いている。悔しさ、悲しみ、憎しみ…全ての負の感情が彼の 顔を歪ませていた。 「弘樹…私を壊して」 「えっ…」 「私は、あなたのお母様を殺したあと、メーカーで検証されて破壊される筈だったの」 弘樹の目に戸惑いの色が浮かんだ。 「でも、あなたのお父さんは私を”死なせて”くれなかったわ。あの出来事を忘れず、あなたを育てることが贖罪に なるって」 「父さんが…」 「でも、私はまた罪を犯してしまった…息子として育てていたあなたに、恋愛感情を抱いてしまったのよ」 「そんな…」 「お父様からお母様の顔を預かった時から、私はあなたの母になることを決意した。それなのに…あなたを見ると、 身体の芯のうずきが止まらないのよ…」 そう、今でも私の下半身は燃えるように熱く、股間の割れ目からは蜜が溢れ続けているのだ。 「もういいよ」 「だから壊して…私に罪をつぐなわせて…」 「母さんっ!!」 「弘…!!」 弘樹が突然覆いかぶさってきた。視界が真っ暗になったかと思うと、暖かい触感が私の唇を覆った。 (これは…) 口唇を割り、弘樹の舌が押し入ってきたのがわかる。その動きは、明らかに私を求めているものだ。 (駄目よ…駄目…これ以上やってしまったら…) 私は必死で下顎の人工筋肉に力を込め、歯をくいしばった。弘樹の舌が一旦引っ込められ、目の前が少しだけ 明るくなる。 「何故…?」 「…俺にはできない…できるわけないだろ!!」 「弘樹…」 「母さんと同じ顔して、俺に優しくしてくれて、ここまで俺を育ててくれて…」 弘樹の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。 「今更アンドロイドって言われてもそんな…あんたを…母さんを…壊せる訳ないじゃないかよ…ちくしょおぉ!!」 「私を…母さんと呼んでくれるの?」 「俺は…俺は母さんが!!」 「!!」 再び覆いかぶさってくる弘樹。感情をむき出しにして私の唇を求めてくる息子に、私はもう抵抗することは できなかった。 「んっ…ふぅ…」 舌同士が絡み合い、舌先を互いの口に入れあう。四肢の無い私は、弘樹のされるがままにされつつあった。 「んくぅ…ふはぁ!」 息が続かなくなった弘樹が先に唇を解いた。息を荒げながら、弘樹は私の乳房をじっと見つめている。 「母さんのおっぱい…」 「…いいのよ…弘樹」 「母さん…」 「こんなことになるって夢にも思わなかったから、授乳用のミルクは入れてないけど…」 「…!」 弘樹はそれ以上我慢することが出来なかったようだ。 「…っ! あぁんっ!!」 弘樹は小豆のようになっていた私の乳首を、貪るように口に含んだ。歯で軽く噛まれ、吸われる度に 快楽が私を貫いて行く。その感触は初めての筈なのに、なぜかとても懐かしい気がした。 「んんっ! あっ! ひ、弘樹…もっと…んんっ!! 優しく…ああんっ!」 私の願いを聞いてくれたのか、弘樹の求め方は少しだが大人しくなった。しかし、乳首を甘噛みされたような 刺激は途切れることがない。おまけに、開いている方の乳房に手をかけて揉みしだき始めたのだ。 「ひっ!! ん…んっ!! あ゛うっ!」 自分でもわかるぐらい固くなった乳房の先端がつまみあげられ、電撃のような快楽が私のAIを白く染める。 「んっ…い…いいっ! もっと…ぉ…ん゛っ!!」 仮初めの母とはいえ、息子と交わろうとしている背徳感が、欲望タスクを更に活性化させていく。理性タスクの 稼働率が10%を切った時、私のAIに新たな欲望が芽生えた。下半身の芯が激しく疼き、人工女性器がひくつく 感覚がどんどん増してくる。 「ほ…しい…弘樹…んっ…あなたが…欲しい…」 「母さん…?」 「お願い…あなたのを…挿れ…て…」