冷たい金属のポールに身体を絡ませ、扇情的に踊る。客席からの突き刺さるような視線が、私の体を熱くする。
身体をくねらせて尻を突き出すたびに、視線が集中するのを感じる。
視線に載せられた熱気が私の中にこもり、そしてダンスポールに移っていく。冷たかったポールが、男の欲望をはらんだ肉棒のように熱くなる。それにしがみついて踊りながら、男に身を任せるときにも似たエクスタシーを感じる。
私が今身につけているのは、ヘアバンドとハイヒールのシューズ、そしてアヌスをふさぐプラグだけ。フェイクファーのブラとショーツはとっくに脱ぎ捨てられて舞台の上に落ちている。ヘアバンドには狐耳、アナルプラグには狐の尻尾が付き、私を女狐に仕立てている。
エロティックな装身具だけを身につけて踊る私を、十数人の客が鑑賞している。スピンするたびに、身体をのけぞらせるたびに、足を上げるたびに、腰を振るたびに、胸に、ペニスに、そしてアヌスに視線を感じる。
熱い欲望のこもった視線が、私の体も熱くする。
熱に浮かされるように、私は踊り続ける。
● ● ●
私の名前はアリス。一条アリス。
本名ではない。
私は週に三回、ニューハーフショーパブ『マグナハウス』のステージで踊っている。アリスという名前はいわば芸名というわけだ。
昔から、自分に違和感を感じていた。
女の子のスカートやドレスを見るたびに、自分もあんな格好をしたいと思った。
はっきりと自覚したのは高校生の時、学園祭で女装ミスコンの企画に出場したときだった。堂々と女物が着れる、と思って出場したそのミスコンで私はぶっちぎりの得票数で優勝した。
そのとき私は思った。
『ああ、これが本当の自分なんだ』
高校卒業と同時に、私は家を出た。大学には日数ぎりぎりしか通わず、アルバイトと女装サロン通いに明け暮れた。
抗男性ホルモン剤、女性ホルモン剤、美容整形、全身脱毛にエステティックと、お金はいくらでも必要だった。豊胸手術をしてそれまでのアルバイトが無理になると、夜の町で風俗で働くようになった。
アナルバージンは客相手に失った。それが私の二度目の目覚めだった。
『気持ちいい』
その時純粋にそう思った。男の器官で貫かれることそのものが快感だった。
それからの私は、商売そっちのけで男を咥え込むようになった。とは言っても、料金をしっかりと頂くのは忘れなかったが。何しろ金が必要なのだ。
その後、家族にカミングアウトして父に絶縁された。大学も中退し、夜の町で生きてきた。
マグナハウスの事を知ったのはそのころだ。
面接で、ホステスとしては不採用になった。オーナーいわく、私は「がっつきすぎ」だそうだ。その替わり、ステージ専門のアトラクション要員として契約した。
オーナーからの援助でその手のステージ専門の講師をつけてもらい、集中訓練でダンスの基礎を身に付けた。その後は、時々その先生に見てもらいながらステージで踊りを磨いている。
いかに男を興奮させ、誘惑するか。
それが私の踊りだ。
踊りながら客を誘惑し、自分も熱くなっていく。
踊りの後のことを考えて。
● ● ●
曲が終わり、ポールに抱きついて尻を客席に突き出した姿勢をホールドする。客席側からは、プラグについた尻尾に隠されてアヌスとペニスは見えないはずだ。とは言ってもショーツをはいていないのも丸見えだから、客の想像の視界ではプラグの埋まったアヌスと勃起して涎をたらすペニスが露出しているだろう。
「さて其れでは、此処で狐さんにインタビューと参りましょう」
オーナーの台詞とともに、こちらに近寄る足音が聞こえる。
「今のご気分は如何ですか?」
「はい、アリスは、皆さんにダンスを見てもらえて、とっても嬉しかったです……」
「嬉しいだけですか? 何やら興奮なされているようですが?」
いつもどおりのダイアローグ。
「はい、とっても、興奮しちゃいました……」
「其れは大変ですね。如何したいですか? 正直に仰ってください」
この兎は本当に人を焦らすのがうまい。いつか食べてやるんだから、などと頭の片隅で考えつつ、私は答える。
「お客様の、おちんちんで、アリスを犯してください! ザーメンいっぱい注ぎこんでください!」
「これは大変なおねだりですね。それではお客様に御協力願うと致しましょう」
カードをシャッフルする音が聞こえ、私の目の前に扇形に開かれたカードが差し出される。私がその中から二枚を選ぶと、オーナーがそのカードのスートと番号を読み上げた。
客席から歓声や溜息が上がり、抽選された客が喜びの声を上げるのが聞こえた。
この後を想像して、私は押さえきれない疼きに身体を震わせた。
「御客様は初めてですね」
「あ、はい。まさか当たるとは思って無くて……」
「左様ですか。もし御辞退されたいのであれば、抽選をやり直しという事に致しますが」
「おいおい兄ちゃん、やめるのは勿体無いぜ」
「……あの、やります。よろしくお願いします!」
ポールから離れて後ろを振り返る。ステージ上には、二十歳を少し過ぎたばかりと思える青年と、四十がらみの中年男性がいた。
中年男性がリラックスした雰囲気なのに対して、青年はコチコチに緊張している。私は青年に向かって微笑み、彼の緊張をほぐそうとしてみた。ところがこれは逆効果だったようだ。彼は真っ赤になると、私から視線をそらして俯いてしまった。
初々しいのはいいのだが、このリアクションには正直困ってしまう。私も接客の経験といえばウェイトレスのアルバイトぐらいしかないのだ。積極的に私の体を求めてくる相手ならばいくらでも経験しているのだが……。
「……どうでしょう、御客様。本日はこちらの御客様とアリスさんのお二人だけという事に致したいのですが。御客様には次回無抽選でステージに上がって頂くと言う事で如何でしょうか?」
オーナーが中年男性に向かって言う。私と青年を苦笑しながら見ていた中年男性がそれを承諾した。オーナーが中年男性にジョーカーのカードを渡し、中年男性がフロアに戻る。
オーナーがステージ袖に下がると、ステージ上には私と青年だけになった。
「あの、そう固くならないでください」
「す、すいません……」
どうやら言葉ではいくら頑張っても彼の緊張をほぐせそうには無かった。
「私に任せて、リラックスしてくださいね」
青年の返答を待たず、私は彼の服を脱がせ始めた。
シャツの前ボタンをはずして前をはだけると、着痩せをするタイプなのか意外と厚い胸板が現れた。シャツを脱がせた裸の上半身に抱きつき、青年の胸に私の乳房を押し付ける。乳房が押しつぶされ、その頂から甘い刺激が走った。
私はそのまま青年の唇に自分の唇を押し付けた。彼も拒絶せず、私の口づけを受け入れてくれた。おずおずと背中に回された腕が私を抱くのに身を任せる。
十分にキスを堪能した私は、青年から身を離すとその前にひざまずいた。
スラックスのベルトを緩め、ジッパーを下ろす。ボクサーパンツの前を開くと、柔らかいままのペニスが転がり出た。
緊張のせいか、それともやはり舞台の上というのは恥ずかしいのか、たいていの客はこの時点で既に固くしているのだが、青年のペニスはいまだ力なくうなだれている。
私はそのペニスの先端にそっとキスをした。
左手で竿の部分を捧げ持ち、亀頭に唇をつける。先端に舌の先を当てて敏感な穴の周りを刺激してやると、青年がうめき声を漏らした。
舌の先を押し当てたまま唇を離し、そのまま亀頭を舐め上げる。舌だけを使って亀頭を隅々まで舐め回す。竿部分は左手で支えるだけにして、極力刺激を与えないようにする。
敏感な部分に集中して与えられた刺激に、青年のペニスがどんどん固くなってゆく。既に左手で支えていなくても大丈夫だ。私は左手を彼のペニスから離すと、舌と唇だけでペニスへの奉仕を続けた。
まず亀頭をくわえ込み、舌で転がすように刺激する。唇で雁首を咥えて固定し、舌先で亀頭全体をつつきまわす。続けて竿を飲み込んでいき、舌と口蓋で裏筋と亀頭を刺激する。更に奥まで飲み込み、喉奥から唇まで使って全体を刺激する。
ディープスロートでたっぷり楽しんでもらった後は、激しい往復運動で攻め立てる。頭を激しく前後させ、唾液をたっぷり含んだ口の中で彼のペニスを擦りたてる。思い切り吸引することで、負圧による刺激を与える。唾液の立てる水音と、下品な吸引音。飛び散る唾液と、振り乱される髪。どこからどう見ても、ペニスをむさぼる雌狐にしか見えないはずだ。
口ではフェラチオ奉仕をしながら、空いた両手は私自身を責めている。
右手は勃起したペニスをしごき、先端から垂れる蜜をペニス全体に塗り広げている。私自身の耳にもぐちゅぐちゅという音が聞こえている。一しごきするたびにペニスから甘い刺激が起こり、先端から更に蜜が溢れ出す。
左手は右の乳首を弄っている。こちらも固くとがった乳首をつまみ、ひねり、転がし、つねりあげる。胸からも絶え間なく快感が湧き起こり、私の中にたまっていく。
客席から突き刺さる、無数の視線が感じられる。すぐそばからも、私を見つめる視線が感じられる。淫らな姿を衆目に晒すことで、私は更なる快感を得る。
『私を見て!』
『アリスのバキバキに勃起しまくったちんぽを見て!』
『お客様のおちんちんをしゃぶって喜ぶ姿を見て!』
『ちんぽをぶち込んで欲しくてひくひくしてるいやらしいケツ穴を見て!』
頭の中で大声で叫びながら、ひたすらフェラチオ奉仕をし、自慰をする。青年のペニスの先端から漏れる液の匂いと味が、私を更に興奮させた。
『お客様のおちんちん美味しい!』
青年が私の奉仕に興奮している。
『アリスもう我慢できない!』
昂ぶり続けた身体は、最後のとどめを求める。
『このちんぽでアリスのケツ穴犯してください!』
アヌスが勝手にうごめき、挿入してある尻尾付きプラグを噛み締めた。
「っ、ぷはっ、はあっ、はぁ……」
「ア、アリスさん、大丈夫ですか!?」
限界に近づいた私は、彼のペニスから口を離した。深呼吸して酸素をむさぼる私に、青年が気遣わしげな声をかけた。
「だっ、大丈夫です。ちょっと、興奮しすぎちゃいました」
私は青年の顔を見返してにっこりと笑う。
「それより、お願いです。次はこっちにもお客様のおちんちんください……」
私は彼に背を向けると、ステージに四つん這いになった。肘を突いて顔を両手の上に伏せ、尻尾の生えた尻を彼のほうに突き出す。尻を左右に振り、尻尾を揺らしながら懇願した。
「お願いです……」
ごくり
生唾を飲み込む音が聞こえた。数秒後、尻尾の根元が掴まれ、ずるりと引き抜かれた。プラグの太い部分が肛門を通過すると、あらかじめ注入してあったローションが少しこぼれた。内腿を液体が伝い落ちる感触がある。
「い、いきますよ……」
「来て下さい、早く……」
腰が両手で掴まれ、アヌスに熱い物が押し当てられた。快楽の予感に、私のアヌスがひくひくと震えた。
ずるり
とろけたアヌスに青年のペニスが侵入してくる。熱くほぐれたアヌスは、全く抵抗無くそれを受け入れた。体内を掻き分けて侵入してくる感触が感じられる。
「あっ、ああっ、んんっ、あああんっ!」
肛門を一番太い部分が通過する感触。
先端が内壁を押し広げながら中を突き進む感触。
ペニスの竿が肛門を通過していく感触。
そして先端が突き当たりを叩く感触。
敏感になった神経がそれらを全て感じ取り、脳に送り込んでくる。背筋に電気のようなものが走り、私は声を振り絞った。
「くっ、すごい、中は熱くて、僕のを締め付けてますよ……」
全て挿入し終わったところで、一旦動作を止めた青年が声をかけてきた。
「お客様の、おちんちんも、とっても、熱くて、気持ちいいです。どうぞ、アリスのお尻、お好きなように楽しんで、くださいませ」
『がちがちのちんぽ気持ちいい! もっと、もっと激しく、ケツマンコ犯して! アリスのスケベなケツ穴、壊れるぐらい激しくして!』
オブラートに包んだ言葉で続きを哀願し、おねだりをする。
最初はゆっくりな動きだった。私の直腸内部を確かめるように、位置や角度を少しずつ変えながらゆっくりストロークしてきた。はじめてのアナルファックに加減がつかめないのかもしれない。私にとってはまるで焦らされているようなものだった。
「んっ、お客様、もっと激しくしても、大丈夫ですから」
『もっと、もっと激しくして! 焦らさないで! お尻の中ゴリゴリして!』
青年の動きが少しずつ速くなってくる。体内を抉られる感触が全て快感に変換され、腰を中心に私の全身がその快感に満たされた。全身の力が抜け、涎と精液を垂れ流しながらアヌスからの快感をむさぼる。
「すっ、すごい! 女のあそこなんか比べ物にならない! アリスさんも、気持ちいいんですか!?」
青年が私のアヌスを賞賛する。無論その間も腰の動きは一瞬も休まない。私は彼の腰の動きに合わせて尻を振る。自身がより多くの快感を求めると同時に、彼のペニスにもより多くの快感を与えるためだ。
「はっ、はいっ、ケツマンコ、ちんぽでゴリゴリされるのっ、気持ちいいのっ、大好きいっ!」
快感の奔流に脳まで犯されながら、私は低下した思考能力で必死に言葉をつむいだ。既に言葉のうわべを整える余裕は無く、思考がそのまま垂れ流しになっている。
「くっ、そ、そろそろ、限界です! 中に出しても、いいですか!?」
「はいっ、アリスの中にっ、ザーメンください! 熱いのいっぱい、どくどく注ぎ込んで、くださいっ!」
それから数秒後。
青年の腰が唐突に止まった。
ペニスがぶるぶると痙攣し、ぐっと膨れ上がった。
アヌスの奥に、熱いインパクトがあった。
青年の腰が私の尻にぐいぐいと押し付けられ、先端も直腸最深部を抉った。
お尻の中にじわじわと熱いものが広がっていった。
中出しされる快感に、私のペニスもビクンとはねた。まだ残っていた精液が飛び出し、ステージの床面を叩く。びちゃっという音がはっきりと聞こえた。
快感の余韻に浸りながら、私はいまだに入ったままのペニスの感触をじっくり味わった。柔らかくなっていくペニスを絞り上げるように、私のアヌスがひくひくと痙攣する。体内では彼の精液が隙間に流れ込んでいく。自分の体内にそんな空間があるなど、普段は気がつかないようなところを熱い液が満たしていった。
ずるりと、青年のペニスが引き抜かれていく。私のアヌスはそれを名残惜しげに締め付けた。
「はあ〜〜〜……」
後ろから大きな溜息が聞こえてきた。私はステージの上に横たわると、上体を起こして横すわりの姿勢をとった。青年のほうを振り向き、彼に言葉をかける。
「い、いかがでしたか? 私のお尻は……?」
「さ、最高でした!」
青年はそれだけ言うと、感極まったように言葉をとぎらせた。
「アリスのステージ、また見に来ていただけますか?」
「勿論です! 毎日通います!」
「ありがとうございます」
私が彼に礼の言葉を述べたとき、フロアのほうから拍手が起こった。蒸しタオルを持ったアシスタントたちが出てきて、彼の身体を拭き清め、着衣を整えさせる。
名残惜しげにテーブル席に戻った彼を、周りにいたほかの客たちが冷やかしたり肩を叩いたりしている。会社の同僚か、あるいはプライベートな友人同士か……。いずれにせよ親しい間柄らしい。
周りの人たちと何やら言い合っていた青年の視線がこちらを向く。私は彼ににっこりと微笑んで、小さく手を振った。釣られるように微笑んで手を振り返した彼の頭が、やっかみの言葉とともに四方からの平手ではたかれる。周囲の席から笑い声が上がった。
いつのまにか舞台の上にいたオーナーが、今日のステージの終了を告げた。アシスタントたちに助け起こされながら私は客席に向かって一礼した。
―了―
*** Backyard *** .()_(). ( ・x・) 「御疲れ様でした」 川 ^∀^)川 ^∀^) 「今日はなんだかいい雰囲気だったんじゃな〜い?」 ノル ・_・ル 「タしかに、恋人同士みたいな雰囲気でしたネ」 ノイ //∀//ノ 「そんな事無いですって。いやほんとに」