渓流に出るには、原則として武器を装備しなければならない。村長がそう決めているから、ハンディはいつも双剣を持つ。
渓流なら絶対火属性!!出てもトカゲかイノシシでしょ。最悪くまくま〜だから、火属性!!
スプレンディドが騒ぐものだから、自分には少々荷の重いサラマンダー。勿論素材は全部スプレンディドからの提供で、どうやって持つんだよ…悪態をつきながらも親方と一緒に作った双剣。
スプレンディドの言う通り火属性。何時もより多く自分の手が入っているその双剣が、ハンディは気に入っていた。最上位ではないけれど優秀な武器で、フリッピー辺りが持ったらきっと役に立つ。優雅に舞いながら、モンスターを屠って行くのだろう。
実際はただ持っているだけで、一度も振るわれた事のない武器だけれど。


別に、心配じゃないけどね。いつでも僕がついて行けるとは限らないし、それなら体勢くらい繕っておくべきじゃないの?別に、素材揃えるの難しくないし。アグにゃんなんて、上位でも僕ひとりで十分だし。どうせハンディは取りに行けないんだから、僕が先を見越して全部揃えてあげたよ。凄いでしょ、感謝していいよ。あ、でもやっぱり行く時はなるべく僕もついていってあげる、どうせ武器持ってても意味ないから。別に心配じゃないけどね!!いるときは絶対声かける事!!てかいないときは行くな!!


結局どっちなんだよ…思わなくはないけれど。多分、心配してくれているのだろう。素材を山盛り台の上に積み上げながらまくし立てたスプレンディドは、笑みを作れないほどだったから。
赤と黄色とオレンジの、花弁のような双剣。完成してから、まるで花を贈られたようだ…思ってしまい、むず痒い気分になったのもいい思い出だ。
ユクモ地方最強と言われる死天王のひとりが、何故ハンディのような腕のない鍛冶職人見習いに固着するのか、それはいまだにわからないけれど。サラマンダーを持ち蜂蜜狩りに行く時は、特にひとりのときには、ハンディは機嫌がいい。鼻歌を歌うほど、機嫌がよかった。
それも、大猪に遭遇するまでだったけれど。





何故いる。
いつも最初に訪れるフィールドの中心。いつもなら鬱陶しい虫がいるだけなのに、何故か鼻息荒く猛る猪。上位ハンターがフィールドに入っているのだろうか?思うほど、今まで見てきたどの大猪よりも大きい。咄嗟に切り株に昇って腹ばいになったハンディの判断は、間違いではないだろう。
その切り株は壊せない
スプレンディドの、いざとなったときの対処法が役に立ってしまった。どちらにしろ、逃げられもしないけれど。最初の時点で即座にブロックから退避すればよかった…思いついてももう遅い。
「…スプレンディド〜」
小声で呼んでも気付かれないのはわかっているけれど。とりあえず名前を呼んでみたハンディは、顔に熱が宿っていくのを感じていた。
恥ずかしがっている場合ではないけれど、やっぱり恥ずかしい。なんで我が物顔で名前なんて呼んでしまったのか、相手はユクモ地方最強のひとりだというのに。スプレンディドは、朝凍土へ出向いてしまったから、来るわけなんてないのに…
「もっと大きな声でもう一回!!」
くるわけなんて、なかったのに。








全員揃ってホットドリンクを忘れた事に気がついて、途中で引き返しました。戻ってきたら、ハンディがハニーハントに出ていました。逆上して走ってきました。
スプレンディドの説明は、以上だった。
ユクモ地域最強は、たまに、でもなくこんなうっかりをやらかす連中で。だからこそ、皆に愛される。
ではなく。
今はそんな、現実逃避をしている場合でもなく。逆上したまま40秒ほどで大猪を薙ぎ倒し、逆上したまま切り株にしがみ付くハンディを睨んでいるスプレンディドを、どういなすかが問題で。
「……一緒にハニーハントす」
「いらないよ。僕は600個ほど在庫がある」
取り付く暇もないとはこの事だろう。随分前にモールが言っていた事がある。
前衛組は、兎に角蜂蜜が必要だから。頼めばいくらでも出てくるだろう
渓流を散歩がてらが目的だからと、その時は笑って凄いな!言っただけ。けれど実際リアルな数字を言われてしまうと、なんとも言えない。しつこくしつこくしつこく採取し続けたスプレンディドの姿が目に浮かぶ。
ヴヴと呻くハンディに、スプレンディドがため息をひとつ。それから気を取り直したように、少しだけ笑みを見せて。
「でも、まあ…あるに越した事はないし、蜂蜜取ろうか。ほら、降りておいでよ」
手を伸ばしてくれたとき。だからハンディは、気軽に安心すべきではなかったと、反省する事になる。
その場では、まるっと安心しきってしまったけれど。





「んぁ…ッや、だっすぷ…んん!」
結果はこれだ。巣をもぎ取ってその場で蜂蜜を搾り出し、ぬれぬれとした指を口の中にねじ込まれ。舌を掴まれて、何度も撫で上げられ。ごほりとえずいたハンディの耳をかぷりと噛んで。
「いないときは、行くなって言ったよね僕」
耳元で、低く叱咤され。もうこの時点で、ハンディは涙目だった。
笑わない、まではよくある話。けれど、同意も何もなく、しかも低い声を出される時点でもう最終段階。今日は皆ウルク揃えで、言っていた朝、何故強く止めなかったのだろう。こんな(他に比べ)脱ぎやすい装備では、最後までコースは目に見えている。
「んぅ!!ッや!ここは…ッ」
ここは嫌だと言ったら、何処ならいいのだと返される事は目に見えているけれど。どちらにしろ場所の変更は不可能だろう。咄嗟に逃げようと指を吐き出し、振り向いて。木に額を強打した時点で、もう決定だ。
「何ハンディ、お仕置きして欲しいの?見かけによらず、積極的」
頭を掴まれて、そのまま樹皮に頬を押し付けられ。ひどく楽しげな声を出したスプレンディドはきっと、しつこくしつこくしつこく攻め立てる。わかってしまってもう、ハンディは腕をじたばたさせるだけしか抗議のしようがない。








一番最初にここ、開発してあげるよ
女の子みたいにしてあげる
君にとっては屈辱でしょ?
言われて、何度も何度も快感を教え込まされた乳首は、べたべたとした蜂蜜を塗られるだけで痺れてしまう。
蜂蜜をすり込んで、指で摘まれ嬲られて。条件反射のように揺れる腰を視姦され。
常に熱と戦う鍛冶屋見習い、服装の脱がせやすさはユクモ随一。少しくつろげただけで一気にむき出しになった尻を、いやらしく撫で回す手は流石という他ない。
「ハンディやらしい…何腰振ってるの、こんなところで」
項に歯を立てられる。腰を掴まれ、既に勃起しているらしいペニスを服越しに擦り付けられる。何をやっても変態くさい。それなのに、顔は爽やかイケメンなのだから。
「うぅ…ッん!も、ぜん…ッすぷれん、どのせぃ…ひんッ?!!」
外で下着越しとはいえアナルを指で突かれ、咄嗟に物足りないと思ってしまう事も。意地悪な事を言われてなお、高まってしまう事も。全部全部、スプレンディドのせい。
「こっちもぱくぱくしてる、蜂蜜欲しいの?」
大剣を、まるで木の棒でも振るようにブンブン振り回す指にかかれば、下着が腰に食い込むほど奥まで指を突き入れられ、布のざらざらした感触で肉壁を擦り上げられる事だって簡単で。
勃起してしまったペニスが自身の腹に押さえつけられ、指を動かされるたび擦れて痛い。それなのに、萎える気配もない。アナルがむず痒い熱を持ち、楽しげなスプレンディドの声にさえもう、感じてしまう有様で。
「蜂蜜、欲しいんでしょ?ここで垂れるくらいたっぷり味わいたいでしょ?ねえハニィ」 それでもハンディは、どうしても欲しいなんて言えない。
「いらな、い!そのあ、だなッいゃ!」
スプレンディドが、否定すればするほど喜んでしまう人種だという事を、嫌というほど自覚していながら尚。難儀な性格だと思う。
「うん、全然遠慮しなくていいよ、ハニィ!」





中がべたべただ、一切滑りなんてよくならない。指が引っかかって、蜂蜜を擦り付けられるたびに痙攣が起きる。
「ひううぅッ!!あっぁ…んあ!!ゃう、だめ、だっ…ぁあッ」
痛い、はずなのに。内側が捲れてしまいそうなほどの圧迫感と、驚く程高速の指使いに息も出来ないはず。それなのにもう、口が閉じてくれない。多分涎が垂れ、舌が出てしまっている。
ハンディの冷静な部分は、そんな自分を嫌悪しているのに。腕だけとはいえ、口を押さえる事は可能なのに。身体はもう、一切の抵抗を放棄していた。
「ゃ、だっ、やだぁああッ、こすれ、いっぱ、こすれる…ッあ、うぅ」
ただ樹皮に頬を擦り付け、善がるだけ。アナルの中では、指が3本も暴れまわっていて。揺るぎなく胸に与えられ続ける刺激で、乳首は完全に立ち上がり。なのに、もう駄目だと思う寸前で全ての動きを止められた。
酷い、もう少しだったのに
言いそうになる口だけは、なんとか噤んだけれど。
「蜂蜜まだいっぱいあるよ。もっと奥まで、欲しいでしょ?」
いつの間にか外気に晒されていたスプレンディドのペニスに、とろとろと蜂蜜がかけられ滑り落ちていく。長くて固いそれを、逃げるでもなくぼんやり眺めてしまっている時点で、欲しいといっているようなもの。
「ぁ…」
それどころか、亀頭をアナルに宛がわれただけで、くぱりと開いてしまった入り口が、零れてしまった吐息はもう隠すことなんて出来なかった。
亀頭がゆっくりと、アナルに埋められていく。それだけでぶるりと震えた身体は、先走りをぴっと跳ねさせて。
「ぁぁ…ん」
亀頭の括れまで、簡単にくわえ込んだ入り口が、またくぱりくぱりと打ち震える。
「興奮してるハニィ、可愛いから。今日は激しくしてあげる」
中ほどまで埋めたところで、顎を取られ、出したままの舌をぺろりと舐められて。微笑んだスプレンディドは、とても欲情しているようだった。





「も、やらぁ!!あし、つかな…ひんんッ!!あっくッうく、うい…ッううぅぅ!!」
激しくするといえばそれは、身体が浮くほど突かれるという事。
大剣をブンブン振り回す腰は強固で、指などよりもずっと捲れそう。肉壁を最大まで押し広げるペニスは、一切の妥協なく隅々まで擦り上げる。早いピストンに、息が追いつかない。手があれば、木にしがみついて自身を固定する事も出来るのに。中途半端な腕は、それすらさせてもらえない。腰の突き上げだけで浮いてしまう身体は、体格差というよりは身長差。
「はっ…浮いちゃうほどちっさいハニィ、気持ちいい?」
言わなくてもいい事まで平気で言うスプレンディドに、悪態をつくことすら出来ない。腰を掴まれ、音が鳴るほど激しい挿入に、呂律はもう回っていなかった。最初の一突きで達してしまったというのに、自身のペニスは今も元気に腹に当る。
気持ちいいかどうかなど、見ればわかる程度の乱れよう。
「はひッッ?!また、ッくる、ゃ、ゃあああぁぁ!!」
自分でもゾクゾクするほど、中が痙攣した。くっきりと形がわかるほどスプレンディドのペニスを締め付けて、射精を促して。どくりと溢れ出た精子が、体内で蜂蜜と一緒に擦り付けられ。それがまた感じるなんて、知られたくないのに。
「ッ!ちょ、っと今のは、卑怯じゃない?」
文句を言いながらも、スプレンディドの声はまだ笑みを乗せていたから。お仕置きだとでもいうように、だらだら精子を垂れ流すペニスを強く擦られたから。
「はぅ!!ぁ、だ…ッんんん!!」
多分、気付かれている。









「1乙取ったの?」
そんな、ランピーの楽しげな声が聞えてきて。
「ん。でも残り2乙取るから、今日は僕狩り行かない」
スプレンディドの、最初の剣幕はどうした、聞きたくなる程ご機嫌な声がして。その内容が、あまりにも残酷だったから。意識を一瞬戻したハンディは、そのまますぐにまた目を閉じた。
正確には既に2乙取られてるよ!!
言ったらきっと、縛られる…絶対だ!
それならずっと、気絶したフリの方がまし。どうせそれもすぐ、ばれてしまうけれど。
傍にいるらしいランピーと、ランピーがいるなら絶対にいるモールくらい、スルーさせて欲しいと思う。



END




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