ひうひうと喉が鳴る。
モールは薄らと目を開け、すりとシーツに頬を擦り付けて、必死で息を整えていた。
何時もながらランピーは、どうしてこうやりたがりなのだろう?セックス依存なのかと疑いたくなるほど。
ランピーとのセックスが嫌いではないけれど、そもそもの体力と持久力を、少しは考慮して欲しい。
ぱくりぱくりと、アナルが閉じてくれない。ペニスが深く埋まっているときは気にならないのに、今は恥ずかしくて仕方がなかった。
いや、それよりも。
「るぅ、も…これ、とって」
自身のペニスに緩く巻きついた、紐状のもの。痛い程ではないけれど、射精は確実に止められて、辛い。
とって、とって
うわ言のように繰り返すモールを、ランピーが背後から抱きかかえたようだ。力が全然入らないから、なすがままだけれど。何だか、危険な気がして。
「ゃ、もう」
「うん、もうしない。でも凄い可愛いよ、リボン結び。ぴくぴくしてて」
リボンがひらひら揺れる
上機嫌なランピーの声は危険。蕩けるように甘くて、少し掠れて。耳の中を、ぐるぐると犯されてしまいそう。
「勿論取るけどね、ミィが辛いの嫌だから。だから、いっぱい出そうな!」
それだけで、変な声を出してしまいそうで。かしりと爪を噛んだモールは、その時何か冷たいものが首に当って、ビクリと体を震わせた。



冷たい。冷たくて、円形のもの。
「オプション。ほんと俺んち何でもあるよね、びっくりした」
首にかけられた何かは、カランと鈴のような音を出す。けれど鈴よりも、もっと太い。もっと大きい。
「なに…?」
恐る恐る触れてみても、ただのベルのように思える。今まで触った事がないような、重厚な感触。
多分、人につけるものではない。
「カウベル。可愛い、俺の子牛さん」
牛!!
過去一度も例えられた事がない。牛にも触ったことはないけれど、大きくてモォモォいう動物。けしてモールは小さくないけれど、ランピーと比べたら絶対ランピーの方が牛。
「いや、いい加減…ッ」
いくら頭がぼんやりしていても、流石に聞き逃せない。ここははっきりさせよう、はっきりさせて突き放そう。そんな思いで顔を上げたモールは、ブゥンと鳴った機械音に、またビクリと体を震わせた。
それは一瞬で止まったけれど。多分、ランピーが起動するか確かめただけ、だろうけれど。嫌な予感しかしないのは、何故だろう?
きゅぽりと鳴った音は、ローションの蓋を開けたから?
「らん…んんッ?!」
何故今、何故。
とろりとしたゲル状のローションがまだリボンを結んだままのペニスにかけられた。冷たくて、気持ち悪い。アナルに塗られるときは、そんな風に思わないのに。
「やだ、ゃ…ぁん、ん…しない、て…ッいった」
「うん、俺はもうしない。でもモールはまだ出してないんだから、いっぱい出さないと」
ランピーと、呼ぼうとした事に合わせてか。モール、言ったランピーの声は心底楽しそう。ペニス全体にローションを擦り付けられ、亀頭にぺたりと何かが当てられた時には、鼻歌が聞えてきそうな有様で。
絶対、ろくなことしない!
モールが考えられたのは、ここまでだ。



「ひいぃうッ?!!」
ぬぽりと、何かがペニスに嵌められた。柔らかい、けれどゴリゴリとした何かの中。勃起し、少しの刺激だけでも弾けてしまいそうなペニス。それでもまだ、リボンが邪魔をしているというのに。
「入ったぁ!これ絶対俺の入らないから、心配だったんだ。良かったね、気持ちよくなれるね」
きゃいきゃいといつものテンションで、しゃべりだすランピーの声など、モールの耳にはもう入らない。いつものテンションで、人生全力で楽しいです!みたいな声で。あっさりスイッチを押したから。
「ひゃうッ!!ゃ、な…ッッああぁ?!」
ブゥンとまた、何かが起動した。それに合わせ、ゴリゴリしていたものが、まるで揉み解すようにペニスに絡む。
強制的に、射精を促されるように。
「あうッ!!あ、んんんんッッ!!やら、ゃ、む、いいぃぃッ!!」
暴力的なほどの振動。二色しか映さないモールの目は、明暗を繰り返している。チカリチカリと時たま光るような感覚は、火花が散る、というものだろうか。
ぐちゃぐちゃと何かの中で捏ねられ、吸われ。激しすぎて、息が出来ない。
「うわ、凄い声…今解いてあげるね」
ひうひうと、また喉が鳴りだした。そこで漸くランピーも、張り詰めたモールの苦痛に気付いたのだろう。少し慌てて、リボンの端をするりと解くものだから。
「や!!やだ、やッんああぁぁぁぁ!!」
タガが外れるのは、当然の事。



ゴウンゴウンと、音がする。
「ぁ、あっ、あ、あ」
体の痙攣が止まらない。射精感も、何時まで続くのか。
「凄い、チューブ通って、ミィの精子どんどん運ばれてる。凄いエロい」
ぎちぎちと、何かに爪を立ててすら。ぶるぶると震える腰が止まらない。引っ切り無しに、首や頬に落ちてくる唇の感触は、わかるけれど。
「うぁ、飛んじゃった顔、やばい。なんでもうしないとか言った俺…」
かしりと、耳朶が噛まれた。背中でごそごそと、何かが動いている。とても忙しない。
オナニーをしていたのだと、気付いたのは、背中に生ぬるい液がかけられてから。何を見て、そんなに興奮したのか、モールはわからない。
「ひ…ッん、んぁ」
精子を全て吸い尽くされて、機械音が止んでも。力んでしまった手は硬直し、何かに突き刺さった爪も抜けない。
「それ俺の腿だよ、痛いよ」
苦笑交じりに優しく手を撫でられて、漸く強張りは取れたけれど。
頬に押し当てられた、生温いガラスの感触。つるりとしたそれと、嗅ぎなれた臭いがするまで。モールは動く事も出来なくて。



「ん…」
空気を吸う事を思い出したのは、どれくらい後だろう。つい癖で、かしりと爪を噛んで。鉄臭い味に、意識が引き戻される。
太股に爪が食い込みすぎて、ランピーを傷つけてしまった
理解は出来ても、驚くほど悪いと思わない。
「ミィ凄い、まだ温かいよ。搾り出しても案外いかないね、俺なら1/4くらいは…無理かな。あ、チューブの中まだ残ってる」
何故この男と、恋人関係を続けているのか。問い質したい、心底自分に問い質したい。モールは、耳元でちうと、何かを吸い込む音に、心から思った。
「…るーぴぃ」
「ん、何?」

全力で爆発しろ









スプレンディドは、モールの華麗な杖捌きに惚れ惚れと見入っていた。
それはもう、見事にランピーの、足の小指に直撃しているらしい。ガスガスと、聞えてはならない音までする。
本当に、やれば出来る男だモール。
「いた、ごめ、痛い!マジ痛いごめんなさいッ!これびみょ、いたっ、全然微妙じゃなく痛い!!そろそろ爪割れるモールほんとマジ痛い!!」
物凄い早さで小刻みに杖を突き刺すモールは、いつも以上に無表情。どうやらランピーが怒らせたらしい。
それにしても、小刻みな動き見れば見るほど素晴らしい。
「モール!ねえその動きで、僕の扱いてくんない?」
つい調子に乗って、声をかけてしまったスプレンディドは。
「…任せろ」
そんな予想外の返答に、ぱくりと口を開け呆けてしまった。
「何言って…ッ!ごめんなさい!痛い、ほんと痛いですモールさんッ!ごめんなさいッ!!」
どれだけの事をしたら、モールはこんなに怒るんだろうね。



END




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