溺・想 《NARUTO カカ×サス 小説》 先輩、背中からそんな慣れない呼ばれ方をされては、驚くに決まってる。 ゆっくりと振り返れば中忍、上忍らが4人ほど立っていた。 「…何だよ、その先輩って」 苦笑しつつ、俺は声を掛けてきた奴に言葉を返した。 「いや、これから皆で飲みに行くんですけどね。もし良かったらカカシさんも如何かと…」 俺を誘うなんて珍しい事をするもんだと、心の中で呟きつつ、「いいよ」と言った。 よくよく考えてみれば、ナルトたちが部下になってから、ゆっくり飲むことも減った。 (近頃は、あいつらに何かと振り回されてるなぁ…) そんなことを考えながら前を行く奴の後を追う。 しかし、気がつくと思いをしめるのはいつだって張り詰めながらも頼りなく立つ、一つの小さい背中。 カカシは、小さな歓楽街のネオンを見上げ、意味深い笑を一つ零した。 *** いつもの日課どおり、俺は今朝も遅刻をしてナルトたちとの集合場所に顔を出した。 相変わらず遅れてきた俺に、ナルトは火の点いた勢いで怒りだした。きっと続けてサクラも怒り出すだろうと思い、サクラの方に目を向ける。 ところが今日のサクラは文句一つ言わなかった。その代わりに、きょろきょろと辺りを見回している。 「どうしたサクラ、今日は怒んないのか?」 「…サスケくんがまだきてないのよ、どうしたのかしら?」 「サスケの奴、カカシ先生より遅れるなんてな。間抜けな奴!!」 キシシ、とナルトが馬鹿にしたように笑う。 (サスケはお前より間抜けじゃないと思うがな) 「まぁ、時間はあるし。もう少し待ってみよう」 口喧嘩を始めたナルトとサクラに、ため息混じりにそう言って、俺は壁にもたれて目を閉じた。 それから5分ほどして、聞きなれた足音が聞こえてきた。 「…来たか」 俺が壁から背を浮かせると、ナルトとサクラはいつもサスケが通ってくる道へ目を向けた。 程なくして二人にもサスケの姿が見えたようだ。ナルトが大きく手を振りながらサスケを呼んでいる。 ふと、サスケの右腕が気にかかった。袖から覗く、いささか細い腕が少し腫れているような、そんな気がした。 「悪い、遅くなった」 俺の顔をみて、小さく詫びる。 「俺が言うのもなんだが、あんまり感心しないな。それより、その腕どうした?」 サスケは身を強張らせた。そのまま俯いて、消え入りそうなほど儚い声音で「別に」と言った。 心配そうなサクラの横をすり抜けて、そっとサスケの手を取る。 「…打ち身か、かなり酷いなー。転んだって感じじゃないけど?」 「・・・大丈夫だ」 サスケが俺の手を解く。 地面を見つめたままの瞳に、確かに何かよぎるのを見たが、俺はため息一つでもうそれ以上の詮索は止めた。 「取りあえず、任務へ行くとするか。もうすぐ約束の時間だ」 確かにこいつ等は俺の部下だが、過ぎた干渉は無粋だ。 俺の言葉に頷いて歩き始めるサスケに、俺は何か引っかるものを感じつつ、依頼者の家へ歩き出したのだった。 *** 俺は里の中心街にある居酒屋にいる。 透明な蒸留酒を飲みながら、気分の乗り切らない頭を持て余していた。 まるで、水みたいだ。 俺をここに連れてきた奴らは、ビールやら焼酎やらを煽り飲んで、にぎやかに談笑している。 当り障りのない程度に奴らの話に相槌しつつ、店員に新しい酒を注文する。 「カカシさん、ペース速いですね〜」 「…そう?この頃ゆっくり飲む機会も少なかったからねぇ」 俺は適当な返答をして、カウンターに出されたグラスを取った。 昼間の任務先で、合間を見計らいサスケに声を掛けた。 そのときのサスケの態度がどうも気にかかって仕方ない。 『サスケ、腕の怪我はどこで負ったんだ?』 『…アンタになんか、関係のないことだ。俺の問題だ』 いつになく苛ついた風に吐き捨てて、サスケは顔をそむけた。 『 』 その後に呟いた言葉が、風に紛れた。 俺が何も言わなかったから、サスケは自分の呟きが小さく、相手に届かなかった事を察したのだろう。 ホッとしたような困惑したような目をして、俺から距離を離した。 そのときの顔はこのまま泣くんじゃないかと俺に思わせて、今も頭を離れない。 「全く、問題児ちゃんばっかりだねぇ」 俺はそんな言葉を口にしていた。 それを耳にした奴らが笑う。 「さすがのカカシさんも、子守りは疲れるみたいですねぇ?」 子守り?あいつらは一様部下なんだけどな、まだまだ未熟で頼りないが、忍びには違いない。 「貴方のとこ、九尾の子供とうちはの生き残りがいるんでしょ?気苦労が耐えないのも無理ないですよ」 一人の男が妙にしんみりとそんなことを言った。 俺はため息を一つ吐いて肩をすくめる。 「確かに厄介な奴らではあるが、お陰で退屈はしませんよ」 俺はその一言でこの会話を終わらせようと思ったのだ。しかしその後に思いもよらない情報を得ることになった。 「そういえば最近のウワサ、知ってます?何でもうちは一族を大量虐殺した…何とかってのが里の近くで目撃されたとか」 俺は目を見張った。 「うちは イタチですか…?」 ああ、そうそう。男が頷き、店の入り口を指差した。 「店の前の通りを行くと、橋があるだろう。そこにいるいかにもなチンピラが情報源だが…な」 となると、本当かどうか極めて妖しい代物だ。…しかしサスケがあのイタチに関 することで、冷静な判断が下せるのだろうか。 (なんか、厄介な事になってるらしい) 俺はポケットから札を取り出してカウンターに置いた。 「あれ、先輩。帰るんですか?」 だから何が先輩だって?後ろの声に、ちょっとした反感を感じながら手を振って見せた。その足で店を出る。 通りの端に出たところで、少し考える。サスケを訪ねるのが先か、例の情報を確かめるのが先かと。 (こっから近いし、橋まで行ってみるか) 胸がやけにざわついていた。事は急を要すると身体が警告していたが、頭はやけに冷静だ。 (日頃の成果か…?) 思わず笑ってしまう。 自分を見つめる、暗い色の…しかしその真はまったくの無垢な瞳が、鮮やかに思い出される。 (よっぽど、気にかかっているのか。あんなガキが…) カカシは人ごみに足を一歩踏み出した。 *** 街灯ひとつ無い、橋の中央。暗闇にはお世辞にも品行方正とはいえない、ごろつきのような男たちが自分を待っていた。 サスケは、鈍く疼いていまだ痛みの消えない腕をぐっと掴み、橋の上へ進む。 男たちはあからさまな視線でサスケを頭から足先までじろじろと見つめてくる。 「あれぇ?昨日のボクじゃない。また来たの?」 彼らの中で一番ガタイのいい男がからかうように言った。 それに続き「パパとママは?」とか「子供は早く帰らなきゃ」と、周りの奴らもサスケを茶化す。 「…うちは イタチを見たというのは本当か?」 サスケが低い声でそう言うと、リーダー格らしき男が笑う。 「お前みたいなガキになぜ俺が答えなきゃならないんだ?教えて欲しい事があるんなら土下座ぐらいして見せろ!それにタダって訳にも行かないな。情報料でも貰わないとねぇ…」 にやりと顔を歪めた男に、サスケは悪寒を感じた。それと同じくして、侮辱された事に対する苛立ちが全身を小刻みに震わせる。 「あららぁ、震えちゃって、かぁいいの!」 節の目立つ、やけに硬い掌が、肩から首にかけて触れた― それと同時、サスケはその男を蹴り倒していたのだった。 *** カカシは橋のすぐ近くまでやって来ていた。 「…騒がしいねぇ」 イタチについての情報源が居るというところへ来てみたはいいが、喧嘩の真っ最中らしい。 いや、正しくは集団リンチといったところか。 一歩一歩近づくごとにだんだんと状況は分かってきた。 酷い罵声が飛び交う中で、周りの人間より一回り小さな影が見て取れる。 「全く、しょうがないな…」 顔を見ずとも、誰に言われなくても分かる。 サスケは3人に身体を抑えられてもはや身動きすら取れていない。 俺は、短く息を吐いて静かに橋へ近づいた。 足音もなくゆっくりと。翔けたがる体を抑えて・・・・・・。 「お兄さんたち、そんな子供捕まえてなーにやってんのかなぁ?」 俺が声をかけると、サスケを取り囲んでいた奴らは一斉に振り返る。 あくまで笑顔を崩さない俺にサスケはおぼろげな視線を向ける。 状況が把握できていないらしい。 「その子、俺の部下だから。悪いけど返してくんない?」 「あ?喧嘩売ってんのか!返せといわれてハイそうですかと言うと思ってんのか!!」 穏便に事を済ませようと思っていたのに。どうやら彼らはそうはさせてくれないらしい。 「台詞が、時代遅れだね…」 俺は片手、略式の印を結ぶ。こいつらに掛ける金縛りなどこの程度で十分。 思惑通り、身体の自由を失ったそいつらは、鋭く指を鳴らしただけで、地面に膝を折った。 「あっけないものだねぇ…」 そう呟きつつ、サスケの横に俺は屈み込んだ。 やっと上半身だけを起こしているサスケを横抱きに抱き上げる。 「喧嘩ふっかける相手、間違えたんだよ、君たち…」 そう捨て台詞を残し、サスケを抱いたまま、俺は橋から消え去ったのだった。 *** サスケは、放心した瞳でやけに大人しく俺の腕の中にあった。 見かけより、ずっと華奢な身体は腕の中にあっても、心地いい重みに感じるだけ。 薄く開いた唇から吐息を漏らす。僅かだが体の緊張が解けた。 俺は橋から少し離れた神社の境内に来ていた。 社は長い間、雨ざらしにされた影響で半ば朽ちかけている。石畳も所々剥がれて、荒れ放題になっている。ここは、去年新しく社が建てられ、祭っていた神自体もういないのだ。 当然、人は寄り付きもしない。 社の端の方、まだ綺麗に残っている床板を探し、そこに慎重にサスケを降ろす。 僅かな月明かりを頼りに、サスケに目立った外傷はないか確かめた。 幸い、ちょっとした擦り傷程度だろう。 「・・・・・・なんでアンタが」 サスケは第一声でそうとだけ呟き、何か考えるような目で虚空を見つめている。 「兄貴が、里に姿を見せたって―…。」 サスケの呼吸が乱れている。肩が揺れて、時折苦しげな喘ぎが漏れる。 笑いを貼り付けた口元が歪んで、落ち着きを無くした瞳があたりをさまよい続ける。 サスケの指先が床をすべり、俺の服を探り当てる。 きゅっと、思いのほか強い力で握られた。 俺は服を握り締めている手を外させる。手首を掴む手をそのままに、そっと身体を引き寄せると、サスケの頭が揺れた。 俯く顔を、顎を掴むことで上向かせ、自然な流れで接吻けを仕掛ける。 意外にもあっさりとサスケはそれを受け止め、俺が舌を差し入れても抗いはしない。 俺は自分がこの行動に、疑問や躊躇い、少しの罪悪感すら持っていないことに、自嘲する。 こうなることは決まっていたらしい。 濡れた唇を軽く舌で舐めてから、この接吻けから開放してやった。 サスケは俺の顔を見上げた。 「大丈夫だ…」 俺が呟く。 サスケその言葉に肩を震わせた。 まだ子供、幼いこの手で人を殺めることに恐怖を覚えないわけがない。 それに付け込もうとしている、自分。 「俺がいてやる」 「…何だよ、急に。そんなこと頼んだ覚えはない」 冷静を装う、枯れた声。 「本気で言ってるんだけどなぁ」 そう呟いてサスケのシャツの裾から手を差し入れた。 「…なっ、」 たったそれだけで恐ろしくうろたえたサスケは、身を捩る。それより僅かに早く腰に手をまわしてあったので、逃がしはしない。 腕をつっぱてできる限りの抵抗を示すサスケに、俺は苦笑してしまう。 「いつもと一緒。お前が苦しむような事はしないよ」 「…嘘つけ!―あっ…」 わき腹を探りつつ、指は少しずつ胸の突起へ近づいていく。 サスケは俺の肩口に頭を預け、必死に声を抑えているらしい。耳にかかる、普段より熱い息がサスケが少しならず感じているのだという事実を教えてくれる。 指に少し硬くなったものが触れた。それを押しつぶすように刺激すれば、サスケの背が跳ねる。 「どう?嫌じゃないでしょ?」 「くぅ…っ」 反応が悪くない事を確かめて、空いているもう片手を背中に滑らせた。 背中を支えるようにして、サスケにこう命じる。 「仰向けに寝っ転がってごらん?」 以外にもすんなりと従ったサスケは、目を硬く閉じて身体を萎縮させている。 少し性急かとおもいつつ、ズボンの中に手を潜り込ませて、後ろを探った。 思った通り、硬く閉じたつぼみは小指さえ受け入れないだろう。 俺はひとまず、そこから指を離し、シャツをたくし上げて胸元をあらわにした。 そしてズボンは完全に足から抜く。 「いや…ぁ」 両手で顔を隠してしまったサスケが弱々しい声で抗う。 「…遠慮しないで声出していいよ」 優しく、諭すように俺が言う。サスケはいやいやを繰り返すばかりだ。 たっぷりと濡らした舌で胸を舐めてやる。吸うように唇を動かしながら歯を軽く 当て甘噛みしてやると、身体は細かく痙攣し始める。 「…ん、あっ…んん」 いつしかサスケから、鳴くような甘い声が出るようになっていた。 俺は掌でサスケの中心を包んでやる。それは先端に蜜を結び、切なげに引くついていた。 根元と先端を交互に刺激してやった。 「いぁ、…っああぁ」 サスケが悲鳴じみた声を上げ、達した。 「…早いのな」 からかうように言う。 せわしなく呼吸するサスケに人工呼吸も兼ねた接吻けをする。 浅く、何度も向きをかえ、唇を貪るうち、サスケが自ら柔らかな舌を差し出すようになった。 我を忘れたようにお互いに舌を絡ませあい、溺れた時に感じる眩暈に似た感覚に酔っていた。 「…っ」 唇を離すとサスケは何か言いたげに俺を睨んだ。 「何?」 こっちから尋ねてやると、しばらく息をととのえて、「酒臭い…」と怒ったように言った。 「…今更」 俺が笑う。サスケはムッとしたような顔をして、そっぽを向いてしまった。 「ごめんね…」 訳も無く謝ってしまった。 するとサスケは小さな声で「別に」という。そしてそっと俺の首にしがみつくように腕を回してくる。 先を促しているのだろうか? 俺は首筋に噛み付くように接吻けて、跡を残す。 そして、さっきは触れるだけで離れた蕾にそっと指を咥え込ませた。 「…ああっ」 サスケの身体に力がこもる。 俺は小さく円を描くようにそこを慣らしていく。 いいところを擦ったのだろう。サスケの声音もより甘いものになった。 「やぁ、もうっ。…欲しっ」 思いもよらないことをサスケは口にした。 「まだ、硬いから。今したら痛いだろうけど?」 サスケは首を横に振った。 「…いいっ、あぁっ。早く―」 そんな風に潤んだ瞳で言われたら…。 「…後で泣いても知らないよ」 自分の声も上ずって聞こえた。 まだ準備の調いきっていない、幼い身体を俺は無理にこじ開けた。 容赦なく締め付けられて、額に汗が浮かぶ。だか、俺よりサスケはずっと辛いはずだ。 慎重に押し進めるも、半分収めるのがやっとだ。 「サスケ、おいで」 俺はサスケを膝の上に抱え上げるように引き寄せた。 そうする間も酷く辛そうだ。 サスケがくっと息を詰めるもが分かる。可愛そうだが、ここで引くに引けないのが男だ。 サスケの体内に収まったそれに爪を立てる。 「…ああぁっ」 サスケが嬌声を上げる。 俺は胸を嬲りながら身体を進める。 奥を小刻みに突きながら入り口付近は指を抜かずに、弄ってやった。 サスケは涙をいっぱいに溜めた瞳を伏せている。 「いい、表情だ」 ガラにもなく、真剣な声音でそんな事を言う。 サスケは薄く目を開けて、心外だというように眉を寄せた。 その顔 ――。 罠にはまった、そう感じた。 手放せなくなる、確信した。 俺は声を殺そうと噛み締められた唇をついばむ様に奪った。 この接吻にサスケが答えれば、そこで俺の覚悟も決まるだろう。 サスケが俺の手を握り締める。それを一度解かせて、指を絡ますように握りなおした。 毛布だろうが、盾だろうが。お前のためならなんにだってなれるだろうよ、多分。 end |