双六遊び

24 ventiquattro ◎■□一回休み


 大きな門のある庭へと帰り着いた所で、光と影の境目の美しさに目を留めた。
 カエルは暫く黙ってその場から枯れた芝生の名残が揺らぐのを見ている。
 そうして枯れ草の中を走った見慣れた白い毛皮の塊を、物珍しそうに眺めていた。
 向かう先の日溜まりでは天を仰いで青年が一人寝転がっている。
 日差しを浴びた黄金の髪は明々と輝いていたが、彼の顔の陰影の加減で暗らかにも見えた。
 行く雲の形に何を見て取ったのか、彼は微かに笑ったようだった。
 戦ぐ風は何も囁かず、日の光は心を温めない。
 どこへも向かわせる当てのない痛みを青年は感じずに、頬を伝った涙を拭わなかった。
「ケガでもしたんですかー?」
「…………どっこも痛くねえし」
「そうですかー」
 知らぬ間に傍へ近寄っていたフランは、ベルの頬へと当てた指先で光を素通りさせていた涙を掬う。
「痛そうですけどねー」
「ぜんぜん」
「そうですかー」
 膝を立てて折り曲げた脚で三角形を作って少しだけ離れた所へと座る。
「フラン」
「なんですー?」
「さみい」
「そうですかー」
 沈んでしまった会話はもう続けることが出来ずに、二人は少しの間だけ黙り込んで何でもいい周囲にあるだけの音を聴こうとしていた。
 徐に立ち上がったフランはベルの隣へと寝転び直した。
「アクビだから」
「そうですかー」
「さんかいめ」
「そうですかー」
「よんかいめっ」
「センパイ」
「なに」
「いい天気ですねー」
「あー」
「今度晴れたら………に行きましょうよー」
 フランが言いたかった場所と、ベルが聴きたかった場所が重なった所で、ちょうど東へと風が強く通って声は聞こえなくなった。
「どこ?」
「また今度言います」
 逸らされた会話の軌道を戻せずにフランは寝転がった地面に腕を伸ばす。
 日向に時々差した雲の翳は、追う気流に流れてベルへと掛っていた日差しを遮った。
「センパーイ」
 呼びかけたものの、幾ら耳を澄ませてみても、返答も寝息も聞こえては来ない。
「寝ちゃってるんですかー?」
 確認するのにベルの顔を覗き込みながら鼻を指先で摘まむ。
「寝てねえよ、クソガエル」
 鼻を摘ままれたベルは起き上ってフランの鼻を摘まんで捻る。
「ものすごい地味にイタイのでやめてくださーい。ゆっくり休ませてあげようと思ったんだけどなー」
「てめーがゆっくり休んでろよ」
 居心地が良くもなく悪くもない真昼の庭園を、酷く穏やかで強い太陽が照らし続けている。
 また戻った陽光に眩しく潜めた瞳を二人は同時に空へと向けた。



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