「射的?」
「そう! 結構いい景品が並んでるんだって」
ケイスケにそう言われて着いた教室には、特設された大きな棚があり、その上にたくさんの景品が並んでいる。
結構賑わってるな。
アキラがそう感じるくらい教室の中には人が多く、ケイスケもその盛況ぶりには驚いているようだ。
「今なら目玉のシークレット景品ゲットのチャーンス!」
カランカランとベルを鳴らしながら、呼び込み担当の生徒が廊下を駆け回っているらしく、二人の後からもどんどん人が流れ込んでくる。
「……っ」
勢いに後ろから押され、アキラの体が軽くよろめいた。それでもなんとか踏みとどまろうとするが、ちょうど一番混み合っている場所に入り込んでしまって流されそうになる。
「アキラっ」
その声と共に引き込まれかけた体が強い力に抱き寄せられた。
「大丈夫?」
「……悪い」
「ううん。これじゃあはぐれちゃいそうだし、一回あいてる場所に抜けようか」
アキラが頷くと、しっかり捕まってて。とケイスケが指を絡めてくる。そして、そのまま手を引かれ少し時間はかかったがなんとかすいている場所に抜けることができた。
「大丈夫だった?」
「あぁ」
「それにしてもすごい人だね……。やっぱり温泉の力はすごいんだ」
「温泉?」
突拍子もない言葉に首を傾げると、ケイスケが目玉景品のことだと説明してくれる。どうやらここに来た時に渡された案内用のパンフレットに書いてあったらしい。
「実は、俺もちょっとだけ狙ってたんだ」
「温泉をか?」
「うん。アキラと旅行にも行きたいなって思ってたし」
でも、これじゃあ無理そうだよね。と、増え続ける人の波を見て苦笑いを見せた。
そして、目玉景品が置いてある場所以外の棚は人も比較的すいていたため、せっかくここまで来たのだからと二人も一度やってみることにする。
「あ、アキラ見て。ソリドがあるよ」
料金を払い、コルクを嵌めた銃を持って、ケイスケが指差した先には、ソリド五個セット。の札が見えた。
「ソリドセットの味は選べますよー」
アキラとケイスケの会話を聞いていた店員担当の生徒がそう言って、札を当てやすい場所に移動させた。
「目玉景品の方があまりにもすごくて暇だったから、オマケです」
「やったねアキラ」
「……そうだな」
最近あまりソリドを食べていなかったのもあり、アキラは妙な懐かしさを感じてそれを狙うことに決める。特別にそれが欲しいというわけではなかったが、味が選べるならば貰って困るわけでもない。
隣のケイスケも狙いを決めたらしく、何かに銃口を向けている。
そしてアキラもしっかりと狙いを定めて、ゆっくりと引き金を引いた。
「ありがとうございましたー!」
しばらくしてそんな声に送られながら、二人は相変わらず混み合っている目玉景品の前を抜けて教室を後にした。
「取れてよかったね。アキラ」
そう言って笑顔を向けたケイスケの手には、狙っていた景品らしい箱が握られている。対するアキラの手にも、しっかりとソリドセットの袋があった。味はもちろん五つともオムライス味だ。
「お前は何を取ったんだ?」
「へへへー。これだよ」
満面の笑みでケイスケは箱を開いて、中身をアキラの方に見せた。中を覗くとお揃いの湯のみが二つ入っている。
「湯のみ?」
「うん! アキラとお揃いの湯のみ、欲しかったんだよね」
結構難しい場所にあったんだけど。と言いながらも、どうやら一発で落としたようだ。
そういう運はあるんだよな。
つられてアキラが少し表情を緩めて見つめる先で、嬉しそうに箱を鞄へとしまい、ケイスケは次の場所に行こうか。と言ってきた。
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