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枕小路

 

作者: 378
Summary: 悪夢×ジン(ほんのりCrossover)

 

 こんな夢を見た。

 酷くうなされて目が覚めた。
「大丈夫かい? ジン……」
 女房のきぬが心配げに声をかけてくる。
 刻限は寅をすぎたばかりだろうか、夜明けまでにはまだ時間がある、そんな時刻だった。屋内は闇に沈み、妻の白い顔だけがうっすら浮かび上がっている。
「……また、予知夢なの……?」
 荒い息を押し殺すように肩を震わす亭主を案じる声をかける。
「ひょっとして……悪い夢」
 声色に怯えが混じった。
「いや……予知ではない。ただの願望だ」
 搾るようにしてジンは言った。
「ハーレムだ。ツンデレ委員長とか、おっとりした天然お姉さまとか、ボーイッシュなボクっ子とか登場する、それなんてエロゲみたいな」
「はあれむ? つんでれ……?」
 聞きなれない言葉にきょとんとする。
「そういえばお前、私がいなければ何も出来ないとかいっていた幼馴染の世話焼きだったよな」
「何を突然? ジンは確かに幼馴染だけど」
 ジンは女房の細い肩をつかんだ。
「来る! 奴らが来るんだ!」
 夢の中で登場した、とても人間とは思えない大きさの瞳をした奇妙な髪色の娘たちにコッテリと精液を搾取される。
 こんな夢を見たというのだ。
「ちょっと、ジン。どうしたというのよ」
 その時である。扉を叩く音がしたのは。
 そして、腐臭すらも漂わせる甘ったるい音声でジンの名を呼ぶのだ。
 きぬが見たのは、深遠を覗き込んでしまったような絶望に沈む亭主の顔だったのである。


      了

 

 

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