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続・天辺後日談

 

作者: 303
Summary: 清志朗×吹

 

吹は早いうちから起きて朝餉の支度にいそしんでいた。
味噌汁の具にする青菜を刻みながらも、心はすぐに別の方面へと
さまよっていってしまう。
……昨夜、清志朗に初めて抱かれた。そのことに思いを馳せると
頬が熱くなる。思わずため息を漏らすほど、体に余韻が残っていた。
――セイジロさん、すごく逞しかったなぁ……。
それはとりもなおさず数ヶ月に渡るニワカ畑仕事の成果ではあった
のだが、吹にそんなことは分からない。
当の本人はまだぐっすりと眠っているはずである。

裏の鶏小屋では雄鶏がさかんに時をつくっていた。
――そうだ、もし鶏が卵を産んでいたら、セイジロさんの椀に落として
あげよう。
土間の敷居をまたごうとして、ピリッと体の芯に走った微かな痛みに
ひるんだ吹はその場に膝をついてしまった。
……最初は確かに気が遠くなるほど辛いだけだったのだ。
わずかでも動かれると小さな悲鳴が口から漏れるのを止めようもなく、
ぎゅっとつぶった目からは涙がこぼれ落ちた。体の力を抜くように
言われたのに、とてもそんな余裕はない。
C志朗は痛みにすすり泣く吹を気遣いながらも、少しずつ腰の動きを
早め、さらに深々と貫いていった。動きのひとつひとつをとれば
たいそう優しく緩やかなのであった、が。

「ひあっ……! ああっ……くぅっ、んっ、ふああっ、あうっ」
吹にとっては絶え間ない責め苦に変わりなかった。C志朗にひしと
しがみつき、彼の与える苦痛まじりの荒波に絶え間なく揺さぶられ
続けて、畳に擦れる背中の痛みもかき消えてしまった。
「っ……吹の中、すごく……気持ちいい、ぜ……っ」
C志朗の感極まったような囁きが吹の眠れる官能を呼び覚ました。
「……ふぁ、あぅ、うぁあっ……!」
体の奥から、じゅん、と濡れてくるような感じがし、その潤いが
C志朗の動きをさらに助ける。動きが早まっていくにつれ、いつしか
吹の悲鳴には甘さが混じり、涙も苦痛のせいだけではなくなっていた。
「ああっ、う……んっ、はぁ……んくっ……ぁうっ!」
C志朗に一突きされるごとに吹の女陰からくちゅっ、ずちゅっという
濡れた音がかすかに聞こえてくる。それに肌と肌が擦れあう音、
互いの荒い吐息とが混ざり合い、吹をますます惑乱させた。
「はぁっ……セ……ジロ、さ……、セイジ……んんっ……!」
吹は夫の名を切れ切れに連呼する。
――姿を消していた間のことはぼんやりと霞んで、あまり記憶に残って
いない。ただなんとなく、立ち去りがたい気のする場所に留まって
いたに過ぎない。
だが今ははっきりと自覚している。C志朗を慕い、そばを離れたく
ない思いだけが吹を地にとどめる重石たりえたのだ、と。

このままずっとC志朗に縫いとめられていたい。もっと、もっと激しく
貫いてほしい。夫に抱かれながら、吹の胸にひたひたと押し寄せる
のは途方もない幸福感であった。
「……ああっ……ああっ、ん、んんっ、いいっ……」
C志朗が荒い息の合間に呟く。
「ふ、吹っ……イきそう……だっ」
ううっ、と押し殺したうめき声がしたかと思うと、C志朗の体が痙攣した。
吹の体を強く抱きしめたとたん、その中で彼のものが破裂する。
腟の奥めがけて勢いよく精が放出されるのを感じた瞬間、
「ん、んっ、あぅ、ふ、あ……あああっ……!」
体の芯から痺れるような快感が吹の全身を駆け巡った。
まぶたの裏が真っ白に染めあげられ、吹はいまだ体験したことのない
高みへと昇りつめていた。

ゆっくりと快感の波が引いていき、我に返るとC志朗がずっしりと
体を預けてきているのを知った。その重みが愛しくて、吹は気だるい
体をそっと動かして夫に体を擦り寄せる。
「セイジロさん……」
「俺、……こんなに良かったの、初めてだ」
C志朗が掠れ声で囁いた。彼はまだ体の中にいて、心地よい
充実感を与え続けていた。吹は整わない息の下でやっと答える。
「私も……。気持ち……よかった……」
「ほんとか?」
嬉しそうな夫の声に答えようとした吹だったが、唇を唇で塞がれて
もう何も言えなくなってしまった。

あらためて床をのべたC志朗が吹を抱きあげて運ぶ。
横たえられる暇もなく膝の上に向かい合う形でまたがらされた吹は
なんなく夫を受け入れ、交わりが再開された。
乳房に顔をうずめたC志朗に、頭がヘンになってしまいそうなくらい
激しく攻めたてられ、吹は白い首をのけぞらせて何度昇天したか
わからない。
ここが感じるんだろうなどと言ってC志朗は尻の丸みを撫で回し、
きわどい部分に指を這わせては吹をあえがせた。
唾を呑み込むことも忘れた吹の口の端からよだれがしたたった。
うつ伏せにされ、高く尻を持ち上げた姿勢で後ろから貫かれたときは
吹もかなり敏感になっていて、それだけでも感じてしまうのに
C志朗は容赦なく腰を使ってきて――。
思い出すだけで顔から火が出そうなことを何度もさせられて、吹は
恥ずかしくてたまらなかった。……決して嫌ではなかったのだが。

昨夜の痴態を微に入り細に入り思い出してしまい、背すじに走った
震えを押さえるために吹が自らの体を抱きしめた、その時。
「ふ、吹――、吹ッ!?」
やたら騒々しい音が近づいてきたかと思うと、寝巻を雑に羽織った
だけのC志朗がものすごい勢いで走りこんできた。
吹の姿を認めたとたん、土間にへたへたと座り込む。
「よかった……。また消えちまった、のかと……」
吹は突然のことに驚きながらも、盛大に安堵のため息をついて蹲った
夫の前に膝を揃えた。
「大丈夫。私、もう消えたりしませんから」
「……そうか」
きっぱり言いきった吹に、精志朗はちょっと意外そうな顔で微笑った。

「セイジロさん、すぐ朝ご飯にしますからね」
「ん? ……うん、そうだな、まあ、どっちかといえば」
精志朗は吹の頬をつつき、耳元で囁く。
「お前をもう一度食いたいけど。……また夜に、な」
「……」
返答に困って俯いた吹は、驚きのあまり息を呑んだ。
視線の先に、下帯もつけていない精志朗の下半身が
もっと直截的に同様のことを語っていたのである。
頬がかあっと火照っていくのが分かった。首筋まで真っ赤になった
吹は、人の悪い笑みを浮かべている夫から慌てて身を離す。
「え……と、鶏に餌をやってこなくちゃ……」
ぎこちなく告げると、吹はまぶしいほどの朝日の下に飛び出して
いったのであった。 (終)

 

 

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