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天辺の糸・後日談

 

作者: 303
Summary: 清志朗×吹

 

祝言の日から数ヶ月が過ぎた。清志朗と「見えない嫁」との
暮らしは今も続いている。家の者には呆れられ、村の中には
口さがない連中もいたが、清志朗は気にしなかった。
己が短気から危うく愛しい娘を失いかけたのだ。もう二度と同じ
轍は踏むまい。根競べのつもりでかかろう、そう決心していた。
……だが、すぐに吹が姿を見せてくれるとは思っていなかった
ものの、こう孤独な毎日が続くとさすがに気落ちする。
二人きりになれば姿を現すかも甘い考えを抱いていたのだ。
しかし彼が落胆を表に出すことはなかった。昼は慣れない畑仕事、
夜は星空を見上げながら、“新妻”が傍にいるかのように話しかけた。
陽光のもとよりも、星明かりの下のほうが何となく彼女の気配や
息づかいを感じ取りやすい、そんな気もするのだった。

流星群が出現し、思いがけずたくさんの星が降ったある夜。
この神秘的な光景を吹にも見せてやりたい、などと思ううちに
清志朗の目からはいつしか熱い涙が零れ落ちていた。
常に平静に振る舞おうと努めてきた反動だったかもしれない。
「……吹。……誰に見えなくても、そばにいてくれてるんだろ。
なのに俺の目はいまだにお前の姿を映すことが出来ないんだ。
我ながら……何て不甲斐ない……」
涙が頬を流れ落ちるにまかせ、清志朗は呟き続ける。

「お前に触れたい。この胸に抱きしめたい。ささいなことで
笑い合って、何でもないことを語り合いたい。吹とともにずっと
生きていきたい。俺の願いは……それだけだ……」
吹に聞かせるとも、星に願うともつかない囁きが闇に溶けていく。
――ふと、頬に触れるものがある気がした。
清志朗は反射的にその“何か”を捉えようと手足をばたつかせ、
勢い余って平衡を崩し畳にひっくり返る。こんなことは日常
茶飯事だったが、そのじついつも一人芝居に過ぎなかった。
痛みを堪えながら恐る恐る腕の中を見やると、今回はぼんやりと
光りながら半ば透けた吹が彼を見つめていたのである。
「……! ……!!」
名を呼ぶつもりが声にならない。焦りながら腕に力を込める。
血の通った体というより何だか空気に近いように感じられたが、
それでも清志朗は心の底から嬉しかった。そして必死だった。
吹だ。吹だ。透けていようが何だろうが、もう二度と離すまい。
吹の頬から髪の中に指をすべらせ、まじまじと顔を見つめる。
驚いたような表情を返すのが愛しくて、清志朗はむせび泣いた。
……かつて柱に縄で縛り付けたことがあった。俺は愚か者だ。
いなくなってほしくないのなら、こうして己が手でしっかりと
抱きしめていれば良かったのだ。

(セイジロ、さん……)
空耳かと思うような微かな声がした。はっとして腕の力を緩め、
胸に押しつけていた吹の顔を凝視する。吹がそろそろと指を
伸ばして清志朗の濡れた頬に触れた、と思うと慌てて引っ込める。
清志朗はその手を掴んで引き寄せ、熱にうかされたように言った。
「吹……吹。お前が好きだ。頼む、どこにも行かないでくれ」
「……セイジロさん」
空気のようにとらえどころのなかった娘の体から、しだいに温もりが
伝わってくる。細い体の発するわななきが感じ取れる。
吹は、本当に俺の腕の中にいる。歓喜が清志朗を満たした。

愛する娘の名を呼びながら口づけする。唇を割って柔らかな舌を
夢中でむさぼり、甘やかな唾液を吸った。
吹がいきなり腕をつっぱり、清志朗を押しのける。
「ふうっ! はぁっ、はぁっ……」
塞がれていた唇が離れたとたん、吹は苦しげにあえいだ。まさか
口づけの間、息を止めていたんじゃ。……あまりにも未通娘然と
した反応に、清志朗は思わず吹き出した。
「バカだな吹、こういうとき息は鼻でするんだぞ」
「あっ……そうか……」
恥ずかしそうに微笑む彼女は、もうほの白く透けてはいない。
――清志朗も女を知らないわけではない。何人かの娘と共寝した
ことくらいはあるが、彼女らはあからさまに「お屋敷の坊ちゃん」と
寝たがっており、その度に萎えずにはいられなかった。
星を眺めていたほうがどれほどましな夜の過ごし方か知れない。
娘たちも清志朗本人に惚れている訳ではないから、脈がないと
分かればすぐに姿を見せなくなる。
そんな打算と無縁だったのは吹だけだ。飾らない吹の笑顔に
惹かれていると気付いたのはいつの頃だったか。嫁にするなら、
生涯を共にするならこの娘と、心に決めたのはいつだったか。

いとおしさが込み上げてきて、吹の顔に口づけの雨を降らせた。
うっとりと唇を受けている娘のうなじに顔をうずめ、芳しい香りを
胸一杯に吸い込むと、耳たぶをそっと噛んだ。
「きゃ……、あっ……!」
吹が身じろぎするうちに帯に手を掛け、着物を剥いでいく。
その間も、また彼女が姿を消してしまうのではないかと恐れ、
決して片手を吹の体から離すことはなかった。
露わになった鎖骨に唇を這わせながら、はだけた襟元に手を
差し入れてふっくらとした乳房に触れる。
「ま、待って……」
「待てないな。……今夜が俺らの本当の初夜だ」
耳元で囁くと、吹が息を呑む音が聞こえた。

「嫌ならやめるけど」
そう言いつつも、清志朗は吹の滑らかな肌に舌を滑らせる。
まろやかな球を描く乳房をやわやわと揉みしだき、薄桃色に
色づいた頂点を指先でくりっとつまむ。
「ん……んっ、あっ! や、やぁ……あぁ」
かたく尖ってきた頂点を口に含んで優しく吸い、甘咬みすると
清志朗の肩に回した吹の手に力がこもった。
「はぅっ……セイジロ……さんッ……!」
吹。俺の吹。清志朗は彼女のすべてを確かめたかった。
この温かく柔らかな体の隅々まで調べ、己の印を刻みつけ、
征服しつくし、かなうことなら彼女は俺のものだと、世界中に
大声で触れ回りたいくらいだった。
脱がせた吹の着物を傍らに押しやり、清志朗も慌ただしく衣を
脱いで丸めると、仰向けになった彼女の腰の下にあてがった。
吹を一度抱きしめ、肌を軽く撫でさすりながら削いだように
へこんだ腹に頬ずりし、臍に舌を這わせる。
吹が思わず身をよじった隙に膝を割らせた。太腿を持ち上げて
内股の柔らかな肌に吸い付き、たくさんの赤い跡を残していく。
「う……ん、ふぅ……んんっ、あぅっ……」
清志朗の指が尻のほうにも伸び、吹はびくんと跳ねた。
「や、ダ、ダメっ……」
そしてついに清志朗は足の付け根に到達する。つややかな
柔毛に鼻先をくすぐられながら、唇と舌で探索を開始する。

「あっ! そ……そんな……、やぁっ……!」
吹は清志朗の頭を押しのけようと手をかけたが、力の入らない
弱々しい抵抗はあっさりと封じられた。もっと恥ずかしい体勢を
取らされて、襞のひとつひとつを舌でなぞられ、敏感な突起を
軽く吸われたとたん、吹の背中は弓なりにのけぞった。
叫びそうになって、とっさに手の甲を唇に押し当てて耐える。
「あうっ……んっ、ふうっ、ううっ、」
(……堪えることはないんだがな)
だが、声を上げまいとする吹もかなり可愛かった。
熱くとろとろにとろけた秘泉を思うさま味わいつくした清志朗は
やがて膝裏から足指まで丹念に愛撫しおえた。
吹は息を乱して肌を汗ばませ、ぐったりと横たわっている。
そんな娘の体に清志朗はゆっくりとのしかかった。

なすがまま、されるままになっていた吹は、何か硬いものが
股間にあてがわれるのを感じて体を強ばらせた。
やはり初めてなのだと確信した清志朗は怯える娘をそっと
抱きしめ、耳元で囁く。
「心配すんな。俺を信じて、体の力を抜いてろ。な?」
「あの……あの、セイジロさんになら、痛くされてもいいです……」
「バカ、優しくするって。……一生、大事にするから」
吹の瞳に涙が盛り上がり頬を滑り落ちていく。
言葉よりも体の動きのほうが雄弁な清志朗は、吹をその夜
快感の波で翻弄しつづけ、幾度も登りつめさせたのだった。

その後は、吹の姿を消すくせはもう二度と出なかったという。(終)

 

 

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