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春と嘯く

 

作者: 218
Summary: ギンコ×すず

 

辺りは、闇。
そして全ての音を吸い込んでいく、白い雪。
見上げると、真っ黒い空から無数の白い切片が落ちてくる。
静かに。絶え間なく。
吸い込まれていくようだ、と、雪と同じ色の髪を持つ男―――ギンコは思った。
もう、いくら歩いただろうか。
冬の雪山で蟲を探していたのは良いが、気づくと日は暮れて、おまけに吹雪いてきた。
灯りといえば足元を照らす行灯のみ。
―――こりゃあ、やばいな。
寒さで感覚の鈍くなった足を動かして、山の中を進む。
―――遭難してんじゃねえか。
自分で自分の行いに呆れてしまう。
もともと昼間のうちに通過する筈の土地だったのだが、珍しい蟲を見かけて追いかけるうち、こんな事態に陥っている。
寒さを通り越して痛くなってきた顔面をふ、と上げると、前方に暖かい光が見えた。
里から外れた雪山にひっそりと、その家はあった。



『春と嘯く』



ギンコを泊めてくれたその家には幼い弟と年頃の娘が二人きりで住んでいた。
姉の名をすず、弟の名をミハルという。
ギンコは暫くの間、この姉弟の家に世話になることになった。
というのも、姉のすずに「依頼」されてしまったからなのだが。

ギンコは蟲師を生業としていた。
動物とも植物とも違う、生命の原生体――蟲。
人智を超えたその存在にヒトは怖れを抱き、惑う。
その蟲を調べ、蟲を知り、ヒトに伝え、対処を探る――それが蟲師の仕事である。
ギンコが蟲師であることを知ると、すずはミハルの奇行について相談し始めた。
ヒトの中には蟲が見える者とそうでない者がいる。
どうやらミハルは前者の体質らしい。
他の者は見ることのできない蟲たちを追いかけては、不思議な行動を繰り返す弟をすずは心底心配しているようだった。
弟を心配する健気な姿に絆されて、今回ギンコは報酬のない依頼を請け負ってしまった。
害を成す蟲とそうでない蟲とをミハルに教え、対処の仕方を学ばせること――それがすずの依頼だった。
ただし、期限付きである。
ギンコは昔から蟲を呼ぶ性質で、その為ひとつ処に身を寄せることができなかった。
蟲は集まりすぎても害を成す。
蟲を寄せる体質から、ヒトでありながらヒトの中で暮らすことは叶わず、流れ歩いては、蟲についての伝聞を集める。
そんな暮らしをギンコは一人で続けていた。もう、何年も。
今回も蟲が集まってきた時点で終了という約束だった。
幸い、姉弟の暮らすこの土地は蟲が貧しい土地柄で、暫くは居ても支障がないようだった。
こうして冬の雪山でギンコは「家庭教師」の暮らしを始めることになった。

ミハルは蟲が大好きで、直ぐになんでもかんでも捕まえようとした。
一時として目が離せない。
半分は子守だな、と思いながらも小さなミハルに振り回されて山を歩くことが、ギンコは少しずつ楽しくなってきていた。
山での「授業」が終わると、いつもすずが暖かい笑顔と夕餉の匂いで迎えてくれた。
そんな暮らしが一週間、続いた。
里で暮らしたことのないギンコにとっては、なんだか妙にくすぐったくなる様な日々だった。
ギンコには家族と暮らした記憶がない。
というよりも、子供の頃、一人で山を歩いていたという記憶より以前の記憶が全く思い出せなかった。
気づけば、いつも一人だった。
遡れる最も古い記憶の中でも自分の髪は白く、眼の色は色素の薄い緑色で、片目はぽっかりと穴が空いていた。
何故そうなのか、その理由は分からず、教えてくれる者もなかった。
蟲だけが彼の周りに集まり、大抵の人々はこの奇妙なよそ者を気味悪がって遠ざけた。
優しく接してくれる者もいたが、どんなに共に過したくとも、彼の周りに集まる蟲たちが、それを許してはくれなかった。
知らず、自分でもヒトと一線を画すようになり、深く関わることを避けるようになった。
それは自分と関わった人々を傷つけたくないからであり、自分も傷つきたくないからだった。
ヒトの中にいるよりも、深い自然の只中で蟲と居るほうが、落ち着くこともあった。
そうした瞬間に、ふと思う。
自分は一体、ヒトなのだろうかと。
ヒトと蟲の両方の世界を行き来するうち、ギンコは己がヒトでも蟲でもないような気持ちになっていた。
どちらの世界にも住むことのできない、境界をただ行き来するだけの、存在。
蟲より不確かで、正体の知れない、生き物。
―――ヒトの世で生きられぬのなら、いっそ己をヒトと思わぬことだ。
いつしか、己にそう言い聞かせているギンコがいた。

だが姉弟との暮らしの中で、ギンコに変化が生まれ始めていた。
薄暗くなりかけた冬景色の中、暖かい灯のともった家に帰る。
隣にいるミハルの手を引いて、戸を開けるとすずが嬉しそうに振り返る。
その笑顔を見るたびに、チリチリと何かがギンコの胸を焦がす。
この笑顔をずっと見ていたいと思う己に気づく。
慌てて己の考えを否定するのだが、動揺は抑えられない。
―――この家に長居をすると、きっと、自分は勘違いをする。
ギンコは己に言い聞かせた。
―――勘違いをしてはいけない。自分はこの家の住人じゃない。ヒトの中で暮らして良い生き物じゃない。
蟲が集まることよりも、己がこの暮らしに執着を持ち始めることをこそ、ギンコは怖れていた。
想いが深くなれば旅立ちがつらくなる。心を残しては、旅は続けられない。
己がひとつ処に住まうことなど許されない。住めば、共に暮らす者を不幸にする。
間違うな。忘れるな。常に己に釘を刺す。
―――きっと、冬のせいだ。
ギンコは己の心の動きを季節のせいにすることにした。
冬の冷たさの中で、その家の灯りはあまりに暖かだったから。
冬で弱ってしまった心身に、その笑顔と手の温もりは手放し難く感じられたから。
全ては、冬のせい。
ギンコは己の想いから目をそらして、出発を考え始めていた。
そんな晩のこと。


夕餉の後、ミハルとの「おさらい」が終わると、ミハルはいち早く床についた。
今日も表で遊びすぎたらしい。揺すろうが、抓ろうが、起きやしない。
熟睡しているミハルの寝顔をすずと二人で覗きこんでいると、どちらともなく笑いがこぼれた。
囲炉裏を囲んで二人で炎を見つめる。
沈黙が、暖かい。
外はまた吹雪き出していた。
明日にも出発しようと考えていたギンコは、ふと、決心が揺らぎそうになっている自分に気づいた。
目の前に赤い炎に照らされた白いすずの顔があった。
ギンコの視線に気づいたのか、顔を上げたすずと目が合った。
まっすぐな瞳の中に自分が映っていた。
揺れる炎に照らされたその姿は、何故か儚く感じられた。
艶やかな黒髪に、同じ色の綺麗な瞳。聡明そうな額にすっと通った鼻梁。
細い首や華奢な肩を見ていると、一人で小さな弟を養っていることが信じられない。
見つめていると、その髪や肩に触れたい、という気持ちが自然と湧いてきて、ギンコを困らせた。
すずから目をそらして、己に釘をさした。
―――明日には出発する。俺はここの住人じゃない。この娘も、俺とは違う暮らしの中で生きている。
すずが小首をかしげてこちらを見ている。
どうにも気まずくなり、席を立つ。
「厠に行ってくる」
「ギンコ?」
すずが何か言いかけたが、構わずに外の厠に向かった。


―――小便した端から凍んぞ、コレ!!
厠に行ったはいいが、あまりの寒さに歯の根が合わなくなる。
真っ白な息を吐いて、部屋の中へ戻ろうとしたとき、ギンコの目の前を緑色の光が過ぎった。
―――あ?
この家に来る前に追いかけていて見失った、珍しい蟲だった。
―――…今度こそ捕まえてやる。
蟲の放つ光に誘われて、男はそれまでのことも忘れ、雪の中に踏み出していった。


で。
一度あることは二度ある。歴史は繰り返される。
ギンコは今一度、己の学習の足りなさを思い知ることになった。
――ぜってぇ、捕まえられると思ったんだがなァ。
半時も雪の中を彷徨ってみたが、またしても見失った。
吹雪の中で捉え損ねた蟲の特徴を思い出しながら、一週間前と同じように、その家の前に立った。
「ギンコ…!!」
戸を開けるなり、すずが目に涙を浮かべて振り返ったのでギンコは面食らった。
「どこ行ってたの!! こんな吹雪の中でいなくなって…本当に心配したのよ!?」
凄い剣幕で押されるので、思わずギンコは後ずさった。
ギンコの肩に積もっていた雪が足元に落ちた。
「いや…。珍しい蟲が、居たもんで…」
たじろぎながら答えたギンコの言葉に、怒っていた筈のすずの口がぽかんと開く。
次の瞬間。
弾けたようなすずの笑い声が家に響いた。
「ぎ…っギンコ! それじゃミハルがもう一人増えたみたいだわ…!」
年下の少女に笑われて、バツの悪さを感じない訳ではなかった。
だが、何よりすずがいつものように笑ってくれたことにギンコはほっとしていた。
「あー、もう。頭も雪だらけじゃない」
すずは笑いながらギンコに積もった雪を払い落としてゆく。
弟のミハルにするのと同じように、愛情の感じられる仕草で。
自分でもおよそ大人げがあるとは言いがたい行動を反省してか、ギンコはすずにされるがままになっていた。
「手もこんなに冷たくして…」
すずの柔らかい両手がギンコの右手を包む。
そのまま、すずは自分の口元に持ってゆき、いつも弟にしているように自らの息でギンコの手を温めた。
雪でかじかんだ指先が、すずの吐息でじんわりと温まってゆく。


ギンコは自分の手を温めようと一生懸命になっている少女を見おろしながら、一つの考えが自分を占領していくのを感じていた。
―――この温もりを、ずっと自分のモノに出来ないだろうか。
無意識のうちに空いているもう片方の手が動いていた。
そっと包むように、その手がすずの頬に触れた。
「!…つめた…」
驚いたすずがギンコを見上げた。
その瞳と目が合った瞬間、ギンコの体は勝手に動いていた。
―――あ、やべ。
ギンコは己の行為を後悔したが、後の祭りだった。
ギンコの唇は目の前のすずの唇を覆っていた。
すずの体がわずかに硬直する。
重なった唇の感覚が思考を痺れさせていく。
ギンコはさらに角度を変えてすずの唇を舐っていった。
抵抗されるかと思ったが、すずはギンコにされるがままになっていた。
ギンコの舌が少女の唇を押し開く。
歯列をなぞるようにじっくりと、その舌はすずの口内を這い回った。
舌を吸われ、呼吸を乱されて、すずの唇からは途切れ途切れに苦しげな吐息が漏れた。
「ん…っふ…ぅ…!」
いつの間にか、すずの両手はギンコのコートを強く握り閉めていた。
長い口付けのあと、二人が唇を離すとお互いの唾液がつう、と糸をひいた。
「…にがい、ね」
すずが上目遣いにギンコを見上げて、照れたように笑った。
ギンコはヘビースモーカーなので舌からタバコの味がしたのだろう。
すずはチロリと舌を出して眉を顰めて見せた。
その両手は未だにギンコのコートを掴んでいる。





自分から離れないすずを見おろしてギンコが訊ねた。
「……逃げねぇのか」
「なんで?」
「………(何で、って…) 嫌じゃねぇのか」
「何が?」
「…………。(何が、って…)」
ギンコは自分をまっすぐに見上げるすずの瞳を見つめ返した。
すずは若くて器量良しだし、料理も上手くて働き者だ。
里に行けば嫁の貰い手などいくらでもあるだろう。
弟のミハルのこともあるが、それを考えたって縁談がないとも思えない。
そんな娘がこんな得体の知れない男の相手をすることも無かろうと、ギンコは思うのだ。
側に居てやる事さえ出来ない流れ者の自分に、目の前の娘は勿体無い気がした。
それにこれ以上の関係になれば、つらくなるのはお互い様だ。
自分から口付けておいて何なのだが、ギンコは迷っていた。
深くヒトと関わるまいとして生きてきたのに、この数日の暮らしがギンコを惑わせていた。

――自分には選択肢等ないと、明日には出発するのだと決めていたはずだ。
  今、自分が迷っているのは単に冬のせいだ。冬が終わる前に自分はここを去らなければならない。

再度自分に言いきかせて、ギンコは口を開いた。
「やっぱり今のは忘れてく…」
だが言いかけたギンコの言葉を、今度はすずの唇が遮った。
唇が離れても、驚いて目を見張ったままのギンコにすずが言った。
「私はかまわないから…ギンコの好きにしていいよ…」
すずの潤んだ瞳と目が合ったとき、ギンコの理性の糸が切れた。
心の中で散々己を制止してきた筈なのに、それは実にあっけなく崩れ去った。
ただ、目の前の温もりが欲しかった。僅かな間でもいいから、この温もりが、欲しかった。


ギンコはその腕の中にすずを抱きしめた。
そのまま、すずの首筋に顔を埋めて深く呼吸する。
春の花の香に似た、どこか甘い香りが鼻腔をくすぐった。
ギンコはもう、考えることをやめていた。
溺れるように口付けを繰り返し、存在を確認するように抱き合った。
二人はもつれる様にその場にくずおれた。


部屋の中は囲炉裏の赤い火の色に染まっていた。
炭がはぜる音だけが部屋に響いていた。
その静寂の中で、途切れ途切れに濡れた吐息と衣擦れの音が混じる。
ギンコによって半裸に剥かれたすずが布団の上で身をよじらせていた。
「声、出せよ」
「ダメ……ミハルに聞…こえちゃ…っぁ」
「起きねぇよ…たぶん」
「なにそ…れ…んんっは…!やめ…!」
すずは涙目になりながら声を噛み殺していた。
着乱された着物からこぼれたすずの片方の乳房をギンコの舌が舐っていた。
ギンコの片手はその着物の裾を割って、膝から腿、腿から内腿へすずの柔らかな脚を愛撫していた。
感じているのか、時折その脚はぴくりと反り返る。
ギンコは着物の合わせ目に鼻先を突っ込んで、すずの着物の中に潜り込むようにした。
その中のすずの肌は柔らかく、ほんのりと上気していて、ますます男を溺れさせていく。
ギンコの舌や手で愛撫され続けて、すずの体はすっかり火照っていた。
ギンコは乳房の頂や脚の間にある女の入り口そのものには決して触れようとしなかった。
意図的に焦らしているのだろう。
すずは限界に近づいてその太腿を擦り合わせた。
体の奥が熱く潤って、溶けてしまいそうな感覚がすずを襲っていた。
隣の部屋では幼い弟が眠っているというのに、髪を乱し、乳房や太腿を男の前で露わにして淫らに感じている自分が信じられなかった。
「ギンコ…」
すずの唇から熱い溜息とともに男の名が呼ばれた。
それは更なる快楽をねだっているようにも聞こえた。
「どうして欲しい」
ギンコは顔を上げてすずの目を覗き込んだ。

「……言えない」
すずは顔を真っ赤にして目をそらした。
「言わなきゃわかんねぇだろが」
「知らないよ…ギンコの好きにしてって言ったでしょ」
「ほぉ…そおか」
言うとギンコはすずの脚の間に右手を割り込ませて、その割れ目をゆっくりとなぞり始めた。
「やぁ…っ!んぁあっ」
焦らされ続けて熱くなったそこは男の指の動きに敏感に反応した。
「なぁ、ここ擦るとなんかヌルヌルしてくるぞ」
ギンコがすずの耳元で囁くと、すずは小さくかぶりを振った。
それはまるで小さな子供が“いやいや”をするように見えた。
ギンコは構わずにすずの割れ目をなぞり続け、その中の充血している小さな突起を指の腹で撫でた。
びくんっとすずの体が跳ねて、つま先が反った。
すずの様子を見てにやり、とギンコの口が歪んだ。
「ギンコのバカ!」
すずは顔を真っ赤にしてギンコをにらみつけた。目には涙が溜まっている。
「じゃ、やめるか?」
言うなりギンコは手の位置はそのままに、なぞる動きを止めてしまった。
ギンコの指が当たっているところが熱くて溜まらなかった。
触れているのに、このままでは達せないもどかしさに吐息が荒くなる。
すずの体は先ほどの快感を欲してひくついていた。
溜まりかねて、すずは自ら腰を擦り付けてしまう。
恥ずかしくてギンコと目を合わせることができない。
しかし、腰の動きを止めることもできなかった。
そんなすずの様子を楽しみながら、再度ギンコが尋ねる。
「どうして欲しい」
すずは諦めてギンコの胸の中で小さく呟いた。
「…ギンコが、欲しい。…私の中に…ギンコがほしい。」
ギンコは「いいぜ」と答えると、自分の服を脱ぎ始めた。
すずはこれからされることを思いながら、それを見つめた。
すずには自分の唾を飲み込む音が大きく聞こえた。
纏うもののなくなったギンコがすずの上に覆いかぶさった。
ギンコはすずの片足を持ち上げると、ゆっくりとその中心にある花弁を押し広げた。
「なぁ、ひくひくしてんぞ、ここ」
「あんまり…見ないで…」
「ナカはどーなってんだ?」
ギンコは中指を花弁の奥に突き入れた。
蜜をたっぷりと滴らせたそこは、しかし大変狭く、ギンコの指一本でもきゅうきゅうだった。
「…………なぁ、もしかしてお前、初めてか?」
身を硬くして、息を止めているすずを見てギンコが尋ねる。
すずは上目遣いにギンコを見ながらこくり、と頷いた。
「…………。(こくり、って…!!)」
ギンコは固まった。
感じているようだったし、濡れやすかったから経験があるものと思い込んでいた。
さすがに生娘は抱いたことがない。
いや、そんなことよりも初めての男が自分でいいのかという疑問がまたしてもよぎる。
考えるのはやめにした筈なのに。
黙ったままのギンコを見て、すずがギンコの頬を両手で挟み込む。包むようにそっと。
そのままギンコの目を覗き込んで言った。
「私から抱いて欲しいって言ってるんだよ。…抱いてよ」

―――あぁ、もう。そんな目で見るな。

めちゃくちゃに抱いてしまいたくなる。
年下の、しかも恩義のある娘を手篭めにしようとしている自分に後ろめたさを感じていたのに、これではどちらが虜か分からない。
ギンコは目の前の娘に本気になりかけている自分に気づいた。
「すず、…力抜け」
ギンコはなるべく優しくすずの体に口付けていった。
「さっきはいきなり指入れたから痛かったろ…すまん」
髪を撫でて抱き起こす。
「感じやすかったから、もう男を知ってるんだと思ってた」
ギンコに言われるとすずは恥ずかしそうに俯いた。
「夜…自分一人でしてたから…」
「自分で?」
「……うん」
「どうやって?」
顔を覗きながら尋ねてくるギンコから顔を隠すようにすずは彼の胸に顔を押し当てた。
「どうすると気持ちいいんだ?」
聞きながら、ギンコは膝の上にすずを抱いて彼女の脚の間に手を潜り込ませた。
「んっ…っぁ…」
すずの白い喉首がのけぞる。
その首に吸い付きながら、ギンコは愛撫の手を休めなかった。
割れ目に伸びた指は陰核の包皮をゆっくりと剥いて、敏感な突起を優しく捏ねまわす。
すずはすぐに腰を浮かせて身を捩らせた。
どんどん溢れてくる愛液からも、感じていることがわかる。
「く…ぅう…っんんっふ」
声を漏らすまいと強く唇を噛み締めるので、唇が切れそうだ。
ギンコは自らの唇ですずの口を塞いでやった。
「んんぅっんーー!!んんー!!!」
すずの背が大きくしなり、足の先までぴんと伸びたかと思うと、すずは力なくギンコの胸にしな垂れかかった。
ギンコに口を塞がれたまま、その指によってすずは達した。
息の整わないすずの尻の下に指を潜り込ませて、達したばかりのそこに指を差し込んだ。
―――この角度だと、割と入りやすいな…。
くちゅくちゅとかき回して、本数を増やす。
2本3本と増やしていくと、すずの息もすっかり上がって瞳も淫靡に潤んでくる。
―――こんなもんか?
様子を伺いながらすずに尋ねる。
「すず…入れるぞ…いいか…?」
すずはギンコの膝の上でギンコに背中を抱かれる体勢になっていた。
ギンコを振り返りながら恥ずかしそうにすずが言った。
「うん…ねぇ…さっきからお尻に硬いの…当たってる… 」
「…おぅ、ガッチガチだぞ。触ってみるか?」
「!いやだよっ…ばかギンコ!」
なんだか怒られてしまった。
ギンコには何がいけなかったのか分からないが、すずが逃げないので続けることにした。
そのままの体勢で、ぷにぷにと柔らかい肉の花弁に自身を押し当てる。
どちらのものとも分からない粘液が絡まって、擦れると気持ちがいい。
「すず、もちっと尻つきだせ…入れやすいように」
「うん…なんだか、動物の交尾みたいじゃない?…コレ」
「ヒトもどーぶつだ」
言うと、四つん這いになったすずの花弁の中に少しずつ自身を差し込んでいく。
「う…あ…っぁあっんっ…ひ…!」
ゆっくりとした速度ではあるが、指とは比べ物にならない容量にすずが体を強張らせる。
力いっぱい布団を握り締めるすずの指が白くなっている。
「すず…大丈夫だから、力抜け」
ギンコはすずの首筋やうなじの辺りに口付けをしながら低く囁いた。
「堪えると辛いから、声も出せ」
「んん…やぁ…っミハルが…起きちゃ…っ」
ぽろぽろと涙をこぼしながらすずは耐えていた。
すずが辛そうなので半分まで差し込んだまま、二人は横になった。
布団を被って背中をギンコに抱かれていると、繋がった箇所が燃えるように熱かった。
肉を割かれるような痛みは、ギンコが後ろから口付けたり愛撫してくれるうちに和らいでいった。
「ギンコ…いいよ…続けて…」
「いいのか…?」
ギンコは入り口まで入ったそれを前後させながらゆっくりと最後まで進めていった。
互いの粘液が少しずつ絡まって、時間はかかったがついにそれは奥まで届いた。
「…っすず…」
耳元でギンコに名を呼ばれるたびにすずのそこからは蜜があふれ出した。
すずの乳房を後ろから鷲掴んでも揉みしだく。桃色の突起をきゅっと摘むとすずの膣内もきゅうっと締まった。
「なあ…すず…動いても、いいか…」
ギンコがつらそうな声を出したので、すずは痛みを堪えて頷いた。

んっひっぃっあぅっうっあうんっっ
ギンコの腰の動きに合わせてすずの唇から擦れた悲鳴が漏れた。
一度動き始めると、自分でも止められなかった。
久方ぶりに女を抱くというのもあるが、すずの中がギンコを締め付ける力の強さに頭が真っ白になった。
肉と肉が擦れあう音と互いの粘液が絡まる音が部屋の中に響いていた。
最後にはすずまで腰を振っていて、本当に獣がつがっているような影が襖に映っていた。
「すず…っだめだ…もう、出る…っ!」
ギンコは慌てて引き抜いて、すずの白い背中を己の精液で汚した。




―――やってしまった。

すずと同じ布団で横になりながら、男は己のした行為をやっぱり後悔していた。
行為の後すずの体を拭いてやると、すずは涙を拭ってありがとう、といった。
ギンコに口づけをして、いれるだけここに居てね、と笑った。
愛らしい笑顔を見ると、やはり自分なんかに関わらせるんじゃなかったという後悔の念が過ぎった。
今は自分の腕の中で眠っている。
ギンコは視線を隣で眠る少女から天井に移した。
そこには。

―――蛹…?……蟲か!?

蟲が集まる。それは自分がこの地から離れなければならないことを意味する。
ギンコは天井の蟲を見つめながら、胸の中に苦い気持ちが広がっていくのを感じていた。

―――だから、ヒトと深く関わるのは嫌なんだ。
明日、もし家の周りにも蟲が増えていたら、やはりここを離れよう。
そうしなければ、この娘はもっと辛い思いをするし、自分ももっと苦しくなる。

ギンコは目蓋を閉じて腕の中の温もりを今一度抱きしめた。
おそらく、これ以上二度と抱けない温もりを。

冬の雪山でその温もりはあまりにも暖かく、また手放しがたいものだった。



<完>

 

 

RETURN

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