お題 054. 【虜】 (悟チチ)
















何かを渇望するように、悟空は目を覚ました。
喉がやけに乾いていて喉元に手をやるけれど、起き上がって水を飲みに行く気は何故かおきない。
しんと静まり返る闇の中耳を擽る温かい吐息が聞こえ、視線をそちらへと向ける。

そこには仰向けになっているチチの姿があった。
ぐっすり眠っているらしく、すぅすぅと寝息を立て、悟空が見つめている事には全く気付かない。

寝顔を覗きこめばそれは安らかで、何の邪気も感じない。
それとは対照的に、悟空の中で徐々に言い様のない塊がむくむくと湧き上がる。
 
そう言えば、今日は肌を重ねずそのまま眠りに落ちた。
正確に言えば、チチが風呂からあがってくる前に悟空が寝てしまったのだ。
 
そんな日だってたまにはある。
けれどこんな風に夜中目が覚めて、まして寝ているチチに――明らかに欲情するなど滅多にない事だった。
心がざわついて落ち着かない。
 
遠慮しいしい、ベッドサイドに設置されている灯りを最小限の明るさに調節して点ける。
ほんのりと照らし出される部屋、チチの姿に、何故かワクワクという好奇心にも似た気持ちを悟空は抱いた。
罪悪感の中にも堪えられない欲求を求めるような、まるで秘密を抱えるような、そんな心境だ。
 
薄っすらと照らしだされたチチの表情は、それは穏やかだった。
ゆっくりと上下する、チチの身体に乗せられた掛け布団。
長くくりんとした睫、すっと通った鼻筋。
――そして吐息を漏らす、小さくて艶やかな唇。
 
触りたいと本能が告げた次の瞬間には、悟空は迷いもなくチチの唇に手を伸ばしていた。
 
ぷに、と指を押し返す弾力。
ほんのりかかる息がくすぐったい。
チチが目を覚まさない程度に、何度かその弾力を楽しんだ後、頬に触れた。
 
すべすべとした肌触りが、悟空の掌に優しく吸い付くようで。
 
「柔らけぇ……」
 
小さな、掠れる声で悟空は呟いた。
チチはいつ触っても柔らかで気持ちがいい。
男の悟空にはないきめ細やかさと柔らかさは、初めて肌を重ね合わせた日から全く変わっていない。

今迄女性の身体など全く知らなかった。
興味もなかったし、そんなもの知らなくても修行には全く困らなかった。
 
けれど、身体を包み込むような温かさと柔らかさを一度味わってしまったら。
求め止まないものに変わってしまう。
知らないものは求めない。
だからこそ、知ってしまえばその欲求は強いものとなる。
 
触れる場所全てが柔らかくて。
気付けば悟空の心臓が、これでもかと鼓動を早めていた。
頬や唇だけじゃ、おさまりそうもない。
 
「起きねぇよな……?」
 
自分に言い聞かせたのか、それともチチに問いかけたのか。
ぽつりと悟空は呟いた後、行動に出る。
 
そっと布団をはがし、チチの身体を露にする。
チャイナ風の薄ピンク色の寝巻きは、彼女によく似合っていて。
しかし、そんな事を思うのはほんの僅かの時間で、すぐさま視線は上下する胸に釘付けになった。
 
悪い事をしている自覚はある。
けれど、そうそう悪い事でもないのでは?と思う悟空も居る。
触れたいと思うのに、何を躊躇う事があるのだ。
チチにばれさえしなければ、一度触れればきっと落ち着く――その時はそう思っていた。
 
恐る恐る手を伸ばし、チチの身体で一番柔かい双丘にそっと触れた。
寝ているチチを起こさぬよう、優しく触れたつもりなのに。
悟空の指は面白いようにチチの肌に埋もれた。

「すっげ……」
 
ごくり、と喉を鳴らす。
柔らかいとは思っていたが、改めて実感し驚いてしまった。
 
指だけでは足りなくて。
服の上からでもわかるほどの弾力と柔らかさに、悟空は何もかも忘れてチチの乳房を掌で包み込んだ。
ふにゃり、と乳房の形が変わる。
 
「簡単に変わっちまうよな」
 
いつもの直に触る時の心地と見目を思い出した途端、ぶるりと身体の芯から震えが沸き起こる。
駄目だ、思い出してはいけない――そう思うのに、視線はまじまじとその部分を凝視してしまう。
 
思い切り思考を振り払うように首を左右に振った。
チチが寝ているのを起こすつもりもないし、こうして内緒で身体を触っていたのがばれたらどうなるか。
そう自分自身に言い聞かせるのに、悟空の中でモヤモヤとしたものが蓄積していく。
 
「もうちょっと、だけ」
 
もう少しだけだから。
最後にもう一度触れたら、寝る。
そう決めて、再びチチの乳房に触れた。

勿論チチに気付かれないよう、細心の注意を払ってはいた。
けれど、やはり指に感じる感触につい力をこめてしまい、何度も揉みしだく度にぞくぞくとする。
服の下で形を変えているそれを想像して、それはどんどん頭から離れなくなっていった。

「ん……」
 
時折漏れるチチの声にどきりと心臓が飛び出しそうになるのに、息を潜めながらも悟空は行為をやめなかった。
今も、寝ているチチの身体を無断で弄るのは悪い事だという意識はある。
かと言って、目覚めてしまった自分の中の何かを収めるほどの理性もない。
 
「まだ、もうちょっと……いいよな」
 
見るだけだから。
見たら今度こそやめる、何度目になるかわからない誓いを立てる。
……この時点で、そんな誓いは既に守られるものではないものだと、悟空は気付いていない。
 
そっと上着のボタンに手をかける。
もどかしくひとつずつゆっくりはずしていくと、薄明かりに照らされた白く透き通るような肌が悟空の瞳に飛び込んできた。
それだけで興奮は増し、んく、と唾を飲み下す。

はだけた部分を横に広げれば、柔らかな双丘の片鱗が垣間見られた。
興奮を抑えながら全てを開けさせれば、待ち焦がれたチチの乳房――。
真ん中には可愛らしい薄桃色の突起を携え、まるで誘っているかのようだ。

一呼吸置いた後、悟空はそっと手を伸ばした。
くっ、と力を入れれば、柔らかな肌が悟空によって形を変える。
まるでマシュマロのように、ふわふわした感触に翻弄された。

「……んぁ……」

寝ぼけながら声を上げるチチだったが、どうやら起きた訳ではないらしい。
寝ながらにして身体に植えつけられる快感に、無意識に反応しているようだった。
 
本当にやめるつもりだったんだ。
けれど、こんな状態で後戻りなんて出来ないだろ?
待ち焦がれていたものを目にして、やめる事なんて無理だ。
――それ以上を続けたい自分の欲求を、悟空は勝手に理屈付ける。
 
もう、チチが起きてもいい。
スイッチが切り替わり、悟空は無遠慮に美味そうに鎮座するチチの薄紅の突起を口に含んだ。

「――あ……っ?!」

チチの身体がびくりと一度跳ねる。
悟空の愛撫によって硬く主張し、敏感になっていた場所を舐られた事により一気に意識は覚醒した。
 
「な……?」
「チチ……起きたか?」

まだはっきりしない意識の中で、チチは悟空の声を聞く。
何事かを判断しかねないまま、再び電流が走るような快感がチチの身体に走った。

「んんぅっ!!」

突起部分を口で包み見込むようにした後、吸いあげる。
唾液を絡ませるように舐め、軽く歯を立てた。
チチはさらに身悶え声を震わせる。

「ご、くぅ……さぁ……?」
「わりぃチチ。止まんねぇ」
 
気付いたら着込んでいた筈のパジャマが脱がされていた。
身体の横から、先に寝ていた筈の夫が乳房にむしゃぶりついている。
状況が理解出来ず、けれど強制的に与えられる刺激に、チチの思考はこんがらがる他ない。
 
「はっ!な、に……?」
「したくなった」
 
はっきりそう告げた悟空は、チチの上にのしかかった。
起きたならもう遠慮はしない。
片方を舌で攻め、もう片方を指で弾く。
 
我慢していたものが全て解き放たれ、悟空の行為は止まらなかった。
 
「あ!あ、あ、んっ、やめぇ……」
「やめねぇ」
 
口に含みながら答えるから、悟空の息が直接かかりくすぐったい。
ぞわぞわと身体中を這っていく感覚がチチを襲った。
 
「んー」
 
ふにゃん、と顎までもチチの乳房に埋め、思う存分味わう。
すべすべの肌、もちもちの弾力、チチの可愛い声、全て自分のものだと悟空は思う。
 
「んっ!うん、あ、……んぁ」
 
ころころと舌で転がし、硬く立ち上がった部分をさらに舐って吸い付く。
くっ、と持ち上げるようにして離すと、ふるりと乳房が揺れた。
 
「立ってる」
「ひあぁ!」
 
人差し指で表面を擦りながら刺激し、チチの表情を伺う。
やはりチチが起きていて、何かしら反応があった方が興奮する。
 
「んっ、や、あ、あぁん!あ……っ」
 
刺激したまま、反対の乳房の横側に吸い付き、痕をつける。
ちゅ、ちゅ、と音を立てながら移動し、頂に到達すると、また舌を這わせた。
チチの身体がまた強く反応する。
 
「やぁ……っ!」
 
徐々に汗ばんでいく肌、弾む息。
チチの甘い声を聞きながら、悟空はとにかく夢中でチチの身体を貪った。

「も、やめ……」
 
ずっと続けられる愛撫に、チチは悟空の頭に手を添えた。
逃れようとしているのを感じ取った悟空は、自分の上着を脱ぎ捨てる。
 
「やめていいのか?」
 
声と同時に、悟空の指がチチのパジャマズボンに差し入れられる。
無遠慮に沿わされたのは、寸分違わず小さな実が眠っている場所。
 
「んあぁああ!!」
「ここだって、刺激して欲しいだろ?」
 
ショーツの上からくりくりと指を押し付けるように刺激してやれば、チチの身体がびくびくと跳ね上がる。
濡れていた中心部分に、さらにじわりと冷たさが齎される。
チチの愛液が溢れてきた証拠だ。
 
「あ、あ、あ、んあ!んっ、んぅ!!」
 
かぶりを振る様に、左右に顔を揺らし刺激に耐える。
そんなチチの様子を見ながら、徐々に形をなした粒をきゅっと摘んだ。
 
「――!!あぁ!!」
「ここも、立ってきた」
 
強い刺激に、がくがくと腰を揺らし悟空の腕を止めるようにチチの手が伸びる。
きゅっ、と掴まれたそれを無視し、悟空の行為はさらに続いた。
 
布の摩擦も加わり、いいようのない感覚がチチを苛んでいく。
これ以上されたら――駄目だと理性が止めるのに、身体がいう事を聞かなかった。
 
「あ、あっ!だめ、だめぇ!!も、……!!」
「イっちまえよ」
 
悟空の手と声に導かれるように、チチは高みに上り詰め、そして果てた。
 
薄闇に響くチチの荒い吐息と、衣擦れの音。
悟空は畳み掛けるように、チチの両脚を大きく開いた。
 
「チチ」
「あっ――!!だめ!まだ、おらぁ……っ!」
 
チチの止める声を無視し、悟空はゆっくりと秘裂を割って己を内へと進入させた。
ぬるぬるとした感触と、ひくひくと吸い付く感覚、きゅうきゅうと締め付ける動きに、眉を顰めた。
 
「チチ、すげぇ……絡み付いてくる、ぞ……!」
「あ、あぁん!だ、てぇ……」
 
達したばかりのチチの中は、これでもかと濡れまくっていた。
潤ったそこは呑み込むように悟空自身を誘い、奥へと難なく導く。
 
ぴたりとおさまったそこから、再び動き始める。
緩急をつけ突いて突きまくると、先程まで愛撫していたチチの乳房が揺れた。
悟空の唾液の後を薄明かりに浮かび上がらせ、その様が卑猥でさらにぞくぞくと感情が昂ぶっていく。
 
正常位から、今度はチチの体を横向きにし、後ろから攻め立てた。
掌は乳房を包み込んで揉みしだく。
突起を指の間に挟み、閉じたり開いたりしながら刺激を与えてやると、チチの声はますます高さを増した。
 
「あぁん!あ、んぅ!や、あ、あぁん」
「あー……すっげしまる……っ!」
 
締め付けが強くなる頃、悟空は自分の身体を起こした、
チチは横向けにしたまま、股の間に自分の片足を入れ強く突きこむ。
 
「あぁ!あ、あ、んぅう!」
 
チチの快楽に歪む顔を見ながら、満足気に目を閉じる。
ビリビリとした感覚が一点に集中し、そして――。
 
「くっ、あぁ……!!」
 
全ての熱を曝け出した。
 
 













「なぁーチチぃ、機嫌直してくれよ」
「知らねぇだ!」
 
ふい、と背中を向けたチチに、悟空は宥めようと必死だった。
全てが落ち着いた後に待っていたのは、やはりと言うかチチの説教だった。
 
「人が寝てる時にこんな事するなんて、信じられねぇだ!!」
「そんな事言ってもよぉ〜……」
 
どうしても触りたかったのだから、仕方ねぇじゃねぇか。
もごもごと言おうものなら、チチからまた怒りのオーラが立ち上がる。
 
「悟空さ、疲れて寝てたんじゃねえのけっ」
「それは、そうなんだけどさぁ」
 
ばつが悪そうに頭をかく。
どうしたら曲がった臍が治るのか考えても、全くいい案は浮かばなかった。
 
「部屋さ来てみれば、高鼾掻いて寝てたのは悟空さだべ!」
「うん」
「おら、丁寧に身体さ洗ったのに」
「うん……えっ?」
 
今の言葉は――。
という事は、チチも期待していたという事か。
 
悟空はにっ、と笑顔を浮かべ、後ろからチチを抱きしめた。
 
「なぁんだ!チチもしたかったんかぁ」
「ばっ!そうじゃねぇだよ!!おらは、女の嗜みとして……っ」
 
チチの言い訳を流すように、悟空の手が乳房へと伸びてくる。
 
「な、何触ってんだ!」
「んー?だって気持ちいいんだ」
 
ふにふにと動かすと、掌に肌がよく馴染んだ。
 
汗ばんだチチの背中と、悟空の胸板が密着し、それがどこか心地よい。
チチの甘い匂い、柔らかい身体を感じて、悟空は満足感に包まれた。
 
「なんだか子供みてぇだべ」
「子供はこんな事しねぇだろ」
 
きゅっ、と忘れた筈の熱を突起に与えてやると、チチの身体が僅かに震えた。
 
――満足したけれど、もっと味わってもいいかもしれない。
悟空は頭の隅でぼんやり考えながら、チチの項に口付けた。
















過去にweb拍手にてアップしていた作品に加筆修正しました
仮タイトルが『夜這い』ってなってたんですが
どう考えても『夜這い』じゃなくて、『寝込みを襲う』ですね、わかります

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