やはりここは、先程足にすり寄ってきた猫がいい。
そう思っていたのだが……。
「ウチは猫飼う余裕なんてないだろ」
「えっ!?」
まさかの悟空の反論に、チチは驚いた。
思わず素っ頓狂な声をあげてしまったぐらいである。
普段あまり反対しない悟空が言うなんて、一体どんな風の吹き回しなのか。
しかし、ここで諦めるチチではなかった。
押せば何とかなる!という考えだ。
いつだって、悟空は何やかんやでチチに甘かった。
「でも、可愛いべ。一匹ぐらいなら……」
「一匹でも同じだ」
ぴしゃりと言い切った悟空に、チチはあんぐりと口を開け、それ以上言葉をつむげなかった。
「そうかい、残念だね。でもここに来ればいつでも会えるから」
「すみません。それじゃまた」
悟空はそう言うや、さっさと玄関へと歩き出した。
なんて勝手な事か。
こんなに可愛いのに、悟空は何とも思わないのだろうか。
猫、悟空の背中、交互に見続けたチチは、農場主に頭を下げ、渋々悟空の後ろ姿を追いかけた。
我儘なんて滅多に言わないのだから、聞いてくれたっていいのに。
内心ムカムカのチチの眉間には、気付かぬ内に皺が寄る。
足早なチチは、気付けば悟空を追い抜いていた。
あれだけ向かう前は賑やかだった道中は、静けさの一言。
無論、チチがへそを曲げ、むくれているからである。
「なぁ、チチ」
「……」
「チチ」
「……」
何度呼んでも、チチは振り返る様子もなく、前をずんずん歩いていく。
ふぅ、と悟空はため息を吐き、仕方なくそのまま無言で後ろを着いくる。
わからずや!
絶対家に居たら可愛いのに。
一匹ぐらい飼う余裕はあるのに。
大体悟空さより食べないのに、何の問題があるんだべ。
ぐるぐる脳内で文句だけが流れていき、チチは不機嫌きわまりなかった。
チチのご機嫌斜めは、結局夜まで続いた。
ベッドの上に座ると悟空側に背中を向け、クッションをぎゅっと抱きしめる。
こういう時は機嫌がすこぶる悪い事を、悟空は知っていた。
いい加減、このままで寝る訳にもいかず。
お姫様の機嫌を戻さないと、明日の朝が思いやられるのは明白だ。
ただでさえ静かな夜の食卓を経験したばかりだ、あんな重苦しい空気、朝には絶対味わいたくない。
悟空はベッドに腰を下ろし様子を伺った。
「なぁ、チチ。いい加減こっち向けよ」
「……」
立ち上るオーラは完全に、「怒っている」と主張している。
猫の耳はぴんっ、と逆立ち、心なしか黒い尻尾は毛が逆立ち、ふっくらしているようにも見えた。
こうなると、中々機嫌は直らないのが常だ。
「何でそんなに怒ってるんだよ」
「……あんなに可愛かっただにっ」
ひとつ呟かれた言葉に、悟空は、あぁ、と声をあげた。
余程あの猫が飼いたかったというのか。
それにしても、それだけでこんなに怒るなんて、子供じみている。
「一匹飼うのだって大変なんだぞ。生き物なんだ、人形じゃねぇし」
「おらっ、ちゃんと育てられるだよ!」
がばりと後ろを振り返ったチチは、顔を真っ赤にしながら悟空を睨んだ。
クッションを胸の前にぎゅっと抱えたまま、逆立っていた猫の耳はぺしゃりとへたれている。
「俺が面倒みきれねぇ」
「元々悟空さには期待してねぇもん」
むぅ、と口を尖らせ、チチは何気に失礼な事を言う。
悟空としては、まさかこんなにもチチが猫に執着するとは思ってもみなかった。
「そもそも、ウチにはもう猫が居るだろうが」
一瞬きょとんとしたチチだったが、その言葉を理解した途端、眉を吊り上げた。
「ねっ、猫っておらの事け!」
垂れ下がっていた猫耳と、だらりと力を失くしていた尻尾が、にわかにぴんっと立ち、毛が再び逆立つ。
チチにとったら心外の一言である。
確かに猫の耳と尻尾はあるけれど、れっきとした女性であり、悟空の妻だ。
自負があっただけに、怒りやら哀しいやらで、ぐちゃぐちゃになった。
「悟空さの馬鹿ぁ!もう知らないっ」
再び悟空に背を向け、布団に潜りこもうとしたのだが。
ぐっ、と腕を引かれ、いとも簡単に阻止されてしまった。
「そういう意味で言ったんじゃねぇよ」
「じゃなかったら、どういう意味だべっ」
嫌がるように首を左右に振って、何とか悟空の腕から逃れようとするも。
悟空はそれを許さず、チチの身体をぎゅっと抱きすくめ、胸におさめた。
それでも嫌がるチチだったが、悟空が離す気配はない。
「勝手に考えてひとりで暴走するのは、変わらねぇな」
出逢った時から、そして嫁になった今でも、チチのこの性格は変わらない。
時に呆れたり、どうしてそうなるのかと困ったりもするけれど。
それもひっくるめて、悟空はチチを愛していた。
決して、口に出して伝えるような事はしないけれど。
「悟空さの言い方じゃ、そうとってもおかしくねぇべ」
まるで子供に諭すように言う悟空が憎らしくて、子供じみてる自分が恥ずかしくて。
けれど、振り上げたものを簡単に下ろす事も出来ない。
チチはふくれっ面のまま、悟空を見上げた。
「悟空さは、あの猫が可愛くねぇのけ」
「別に」
「じゃあ、おらも可愛くねぇって言うだか!?」
急にいきりたち、きゃんきゃんと噛み付いてくるチチに、悟空は気持ち身体を引かせた。
猫扱いされた事に怒ったというのに、この矛盾。
悟空としては何でそうなるのかという発想だったが、女とは実に難しいものなのだと実感させられた。
しかしそれもこれも、悟空が言った件のせいでもある。
元々口下手で、上手く言葉で伝えられない悟空は、時にチチがへそを曲げるような事を言ってしまう。
その真意は全く逆のものであったりするのだが、大概は伝わらない。
今もその状態だ。
口下手の悟空と、はやとちりのチチ。
結局似たもの夫婦だというのは、ふたりの友人の弁。
「だから、そうじゃねぇって言ってるだろっ」
「う~~……」
くりっとしたチチの目が細まり、みるみる潤む。
まずい、泣きそうだ。
泣かせるのは本位ではない悟空は、ぽふん、とチチの頭を撫でた。
「俺は、お前が居ればいいって言ってんだよ」
計らずも突然の愛の告白に、チチは一瞬で面食らい、顔を赤くした。
忽ち俯き、もじもじと悟空の胸の中で小さくなる。
余り言葉を言わない悟空だからこそ、こういうストレートな物言いが胸に響く。
嘘偽りないとわかるし、何より大事に想われているのがわかるのだ。
けれど、チチとしても、どうしても猫が気になって仕方ないのも事実。
「でも……でもな、とてとて歩く姿が凄く可愛かっただよ」
擽ったそうに目を瞑り、それでもなすがまま毛繕いされていた、小さな毛玉のような猫。
その様子が微笑ましくて、可愛くて、今も脳裏にその姿が浮かぶ。
「お母さん猫に毛繕いされて、気持ちよさそうにするのも可愛かっただ。悟空さだって、あの姿見て、可愛いって思ったべ?」
何となく遠慮しいしい言うのは、悟空が爆弾を投下したからか。
しかし、悟空の反応は――。
「別に」
もう何度目になるかわからない返事に、チチはがっくり肩を落とした。
駄目だ、この男には何を言っても通じない。
そもそも、可愛いの基準がどうなっているのかすら判別がつかないのだから、仕方ないのかもしれなかった。
最早諦めモードで、チチは小さくため息を吐いた。
「お前が感じてる姿のが可愛い」
言葉に弾かれるように、チチはばっ、と悟空を見やった。
一瞬耳を疑ったのだが、どうやら間違いなさそうだ。
悟空の真剣な表情とかち合い、チチはみるみる茹蛸のように顔を赤らめた。
「なっ、何言ってるだ!!そっ、な……」
意味がわからないとばかりに喚くのだが、想像もしていなかった言葉に、チチは内心あわあわしていた。
先程の言葉といい、こういう事は平気でさらりと言ってのけるから、悟空の人となりがわからなくなる。
そもそも、可愛いの基準が違うというのに。
「もうっ、そんな冗談言わねぇでけろ」
「冗談じゃねぇよ」
悟空の影が、チチに落ちる。
戸惑うチチを攫うように、悟空の唇がチチの唇に触れた。
ベッドのスプリングが、ふたり分の体重に軋み、音を立てる。
恥ずかしさに悟空から逃れようとしたチチは、ベッドへと身体を沈められ、結局組み敷かれてしまった。
「俺が、毛繕いしてやるよ」
そんな事誰も言ってない――チチの言葉は、悟空に呑み込まれた。
悟空の舌が無遠慮に口内へと入り込み、チチの舌を絡め取り翻弄する。
ぴんっ、と立っていた猫の耳が、たちまちへちゃりとへたっていった。
「んぁ……っ」
深い口付けから解放され、ぷは、と空気を一気に吸い込む。
しかし、それも許さないとばかりに、再び悟空の舌が進入し、再び貪られた。
角度を変えながら、深く深く、チチを味わうように唇を重ねて。
抵抗していたチチの手が力を失くしていくのを、悟空は感じ取っていた。
口を離せば、名残惜しげにふたりの間に引く、銀の糸。
目を潤ませ、まるで子猫のようなチチの表情に、ぞくりとした感情が走る。
「大人しく、親の言う事は聞かねぇとな」
冗談めかしているけれど、目は欲を纏いチチを見つめている。
しゅるり、と悟空の尻尾が揺れ、チチの太腿を撫でながら、顔を鎖骨の辺りに埋めた。
「んっ!」
ちゅっ、と吸い付いた後、れろ、と舐めあげる。
そのまま這わすように首筋を通って、猫耳に到達した舌は、舐り、食んだ。
「念入りにしねぇと」
低く落ち着いた悟空の声と水音がダイレクトに響き、チチはぞくりと身体を震わせた。
元々耳が弱く、ここを攻められると最早陥落したも同然。
止めを刺すよう、ふっ、と息を吹きかけられ、力ない甘い声が漏れた。
「ふあぁ……っ」
半開きの口から白い歯をこぼし、目をきゅっ、と瞑り刺激に耐えるその姿が、まさに悟空が虜にされるもの。
どこを攻めてもいい声で啼くから、止まらなくなる。
力を失くしたチチの腕を万歳させると、上の衣服を脱がしにかかる。
するりと腕を通り抜け、露になった白い肌と、ふるりと揺れる胸。
チチは、ブラを着けていなかった。
いつもなら、このまま乳房に吸い付く所だが。
悟空はチチの身体を反転させ、自分の身体の前で抱っこするように抱える。
乳房の両脇から手を這わせ中央に寄せながら、再び猫耳に口を寄せた。
「あっ……っ」
悟空の吐息から逃れようと、チチの肩が竦む。
それを逃さぬように悟空の唇が追いかけ、ちゅっ、と音を立てた。
両側から沿わせた手は、いつしかチチが感じる両の突起を摘み、擦り上げる。
「あ、あっ、んっ」
柔らかな乳房は悟空の無骨な手にふにゃりと形を変え、それと反比例するように突起はくりっ、と硬くなっていく。
中指と親指で摘まんで擦りつけたり、指で弾いたり。
徐々にチチの声が甘く溶けるようなものに変わっていった。
「ふあぁ…っん、んぅ、ご、くう……さぁ…」
耳から頬へと滑り落ちるように動いた悟空の舌は、チチの肌を舐め味わう。
近くで感じるチチの荒い吐息を感じながら、悟空はえも言われぬ感情に支配されていった。
誰も愛さず、ひとりでひっそり生きていくつもりだった悟空が手に入れた、愛しい存在。
狂うようによがらせ、乱れる姿が見たくて堪らなかった。
「んっ…は……」
突起を弄ったまま口を食むと、どちらともつかない唾液がチチの顎を伝い落ちていく。
その様がやけに扇情的で、さらに悟空を煽った。
「悟空、さぁ……」
とろんとしたチチの瞳が、悟空の姿を映す。
悟空に触れられると意識がぼやけて、何も考えられなくなってしまうのだ。
「!あぁっ」
悟空のふらちな指が強く突起を弄ぶと、チチの意識はびりりと覚醒したかのように鮮烈に脳内で弾け、強く甘い声をあげた。
再び力を失くし、悟空の肩にもたれかかるように頭を投げ出し、喘ぐ様を晒す。
「チチ、気持ちいいか?」
「あ、あ、あ…ふぅ……ん!」
指の動きとは相反するように、悟空が優しく目尻にキスを落とすと、チチは瞑目し、口を色っぽく半開きにする。
まるで親猫のような愛しみのキスと、雄猫のような荒々しい指とで、チチを翻弄していった。
悟空の唇が項を這い、口づけ、熱に浮かされながら。
ころりとうつ伏せにされたチチの、尻尾が不安げにゆらりと揺れる。
上から見下ろしたチチの様は、悟空の雄としての部分を強く刺激する。
白い肌が薄桃に色付きはじめ、か細く震える様が何とも言えないのだ。
とっくに力を失くしたチチの下半身から衣服をはぎ取り、ショーツ一枚の姿にする。
乳房とはまた違う、張りがありながら柔らかな尻が、悟空の目の前に露わになった。
「もっと、気持ちよくしてやるから」
「んっ!」
ぬるりとした温かさが、チチの肌に触れた。
腰の辺りから肩甲骨にかけて、悟空の舌が滑っていく。
つつっ、と線を描いていく様に、快感とくすぐったさが交錯し、チチは身体を震わせた。
「はっ、あ、あぁ……くふぅ」
ぞくぞくとした感覚に支配されるまま、チチは悟空の舌から逃れるよう、背中を仰け反らせる。
必死にシーツを掴み、逃れようとするけれど。
それを追うように、悟空の舌が誘い、離れる事はなかった。
何度も何度も、背中を悟空の舌が往復していく。
まるで本当に毛繕いしているかのように、丁寧に。
いつしか悟空の這った跡が、薄明かりに照らしだされた。
「ふぁ……」
びくびくと震える身体を満足そうに眺めながら、悟空は舌なめずりをした。
ゆるゆると力なく揺れるチチの尻尾を掴むと、あむ、と口に含む。
「んん~~っ!」
散々愛撫され敏感になったチチの身体は、どこを触ってもいい声で啼くようになっていた。
撫でられる感覚と、しゃぶられている感覚とが、尻尾から身体全身へと伝わり、身悶える。
尻尾を撫でていた悟空の手は、ゆっくりと下へと降りていき、チチの尻へと触れる。
それに追従するように、尻尾の付け根から割れ目の辺りに顔を埋め、ショーツを口で噛むと、一気にずり下した。
「すげぇ……もう濡れてるぞ」
ショーツを全部下すのもそこそこに、悟空はチチの秘部を指で撫ぜた。
粘り気を含んだ密がとろりと指を流れ、触れられたそこはひくひくと震える。
「やんだぁ……」
チチはどうにかなってしまいそうだった。
ただでさえ尻を高く上げさせられ、悟空に恥ずかしい部分を見られ、弄られ。
散々愛撫された後だ、溢れはじめていた事にチチ自身も気付いていたのだから。
当たり前のように指摘されるのは、羞恥でしかない。
「悟空さぁ、見ねぇ、で……」
「なんで」
「だってぇ……ひゃんっ!」
すりすりと悟空の指の腹が、前部分の小さな突起を擦りあげた。
く、く、と緩急つけて触れる指に、チチは顔をシーツに沈める。
「あ、あんっ、ん、ん、ぅん」
「今更だろ」
悟空の目の前で、チチの尻尾が力なく揺れる。
だらりとなった様は、全ての力を抜けさせられた証拠。
硬くなり始めたのを指先に感じながら、滑るように秘部を悟空の指が動く。
たらり、たらりと垂れはじめた密が秘所を濡らし、滑りをよくする。
「簡単に入るな」
「ぅうん!」
何の苦も無く悟空の指が内へと入り込むと、チチは肩をびくつかせた。
短く息を吐くように甘い声を漏らし、シーツを握る手により力がこもる。
内を指で苛みながら、悟空はチチの肌に舌を這わす。
丸みを帯びた弾力のある尻を、付け根から上へと舐め上げると、チチの足ががくがくと震えた。
「あっ!やっ……ごくぅ……!」
密は悟空の指を伝い、ぽたぽたとシーツに落ちていく。
チチの内股すらも濡らし、たらたらと流れ落ちていく様に、悟空は生唾を呑み込んだ。
ちゅっ、と吸い付き、舐め上げ。
指は休む事無く緩急をつけ攻める。
チチ自身も知らない、悟空だけが知っているチチが一番よがる部分に、指が触れた。
「――っ!!」
呑み込まれそうな程の快感が、チチの身体中に押し寄せてくる。
びりびりと電気が走ったように身体をびくつかせると、絞り出すように声をあげた。
「~~あぁ……っ!!」
強烈な刺激から逃れようと、チチの腰が揺らめく。
それを逃がさぬよう、悟空の腕がチチの腰に回され、しっかりと繋ぎとめられてしまった。
「やぁ!だめっ、そこぉ!や、あ、あぁん!」
「……イっていいぞ」
悟空の声を合図に、チチは唇を噛みしめながら、身体をぶるぶる震わせた。
脳天から足先まで痺れるような何かが走り抜け、肩で息をする。
猫の耳と尻尾の毛が少しだけ逆立ち、しかし力を失くしどちらもへたりこんでいた。
「は、は、は……は…」
悟空の指は、チチの愛液でびっしょりと濡れ、手首までも濡らしていた。
ゆっくりと抜き去った後、優しくチチを仰向けにする。
チチの目はおぼろげに悟空を見つめ、目尻には涙の跡があった。
「ご、くぅ……さぁ……」
まるで子供のように名を呼ぶ姿が愛しくて。
悟空は涙をぬぐうように、チチの目尻にキスを落とした。
荒い息遣いのチチを感じながら、目尻、頬と辿り、唇にキスする。
そして、鎖骨へと流れ、優しく吸い付いた。
「んっ……」
上りつめた後のチチは意識がまだ朦朧としていて、悟空が何をしようとしているのか計りかねていた。
穏やかに肌を滑るように口付けていく悟空に、肌の体温を感じながら少しばかりの穏やかな時間が過ぎていく。
「あっ……」
鎖骨下、乳房の上辺りに吸い付いていた悟空は、柔らかな丘陵の側面を舌で滑った後、乳房の下部分に舌を這わせた。
つつっ、と山を登るように舌を滑らせ、つん、と赤く実る突起の手前でそれは止まった。
くるり、と円を描くように周りを一舐めすると、チチと視線が交わる。
「悟空さぁ……」
「まだ舐めてなかったし」
いつもなら、すぐに悟空が内へと入ってきてくれるのに。
緩やかに意識がはっきりしてきたというのに、チチはさらに悟空に翻弄される事になる。
「ってもまぁ……これじゃ親猫って言うより子猫だよな」
「んぁ」
毛繕いというよりも乳飲み子のように、悟空はチチの乳房にむしゃぶりついた。
子猫が母猫の乳を求めるように、ちゅく、と吸い付き舐る。
内心、子猫はこんな吸い方しねぇだろうな、と思いながら。
「んっ、んぁ、あん!」
つん、と立った所に、舌をぐりぐり押し付け、こそぐように舐める。
それだけは、親猫が子猫を毛繕いするような仕草だった。
快楽に歪むチチの顔。
汗ばんだ身体が心地よく悟空に張り付いてくる。
「あぁ!あ、あんっ、ん!」
乳房を堪能した後は、濡れそぼった茂みを掻き分け、進んだ先。
一度達した部分は、強烈な程の女特有の匂いを蓄え、悟空を誘う。
先程内股に流れた密を舐め上げ、付け根に口付け、徐々にと中心へと動いていく。
そのじれったさにチチが身体を捩り、涙声交じりに訴えた。
「悟空さぁ…もう……」
こちらを伺う悟空の目と合う。
羞恥心よりも、疼きを早く解放されたい欲求の方が勝る。
「言っただろ。チチが感じてる姿のが可愛いって」
すい、と逸らされた瞳が瞑目すると、震える赤い実に吸い付いた。
「んあぁ!」
舌先で転がした後吸い付くのを繰り返し。
硬く立ち上がった所を、丁寧に舐め上げれば……。
「あっ、あ、あっ!」
軽くチチがびくつく。
足ががくがくと震えた後、力を失くしてシーツに投げ出された。
「は、は、は……」
今一体、自分はどんな表情をしているのか。
ぼんやりとしか見えない悟空の姿が、より近いものとなる。
――と思った次の瞬間、ふわりと身体が浮かんだ。
優しく抱っこするように抱きしめられたチチの身体は力なく、しかし簡単に悟空自身を呑み込んだ。
「あぁ!……ぅん」
じれったいぐらいの熱がこもった場所に、楔が打ち付けられる。
ゆっくり、しかしぐいぐいと奥へと向かっていく熱が、チチのよがる部分をこそぐように刺激した。
「悟空さぁ……」
半開きのチチの口からは、だらしなく涎が流れ落ちる。
いつもきちんとしているチチからは想像出来ない姿だ。
しかし、その欲情に囚われたチチの表情こそ、悟空にはこの上ない喜びでもあった。
求めるままにお互いの唇を貪り、チチは必死に悟空の身体にしがみつく。
下から突き上げられる度に、じわじわと奥底から何かがせり上がってくるのを感じていた。
悟空の尻尾が、チチの尻尾に絡みつく。
無骨な手が乳房に這い、舌と舌を絡ませ、お互いが高みへとのぼっていった。
「悟空さぁ…っあ、あ!」
「チチぃ…っ……!!」
きゅっ、と悟空の手がチチの尻を掴み、より強く刺激される。
ずん、という衝撃と、じわじわと溢れ出す感覚が綯い交ぜになり、チチは顔を仰け反らせた。
「あぁぁぁああん!」
「くっ…ぁ……!」
悟空の唇が引き結ばれる。
一番奥に熱を感じながら、チチは力なく悟空の腕の中で果てた。
後日、チチはひとり、農場へと向かっていた。
悟空が手伝いに来ているのもあったのだが、丁度卵が無くなってしまったので、お迎えがてらやって来たのである。
「ちょっと待っててね」
卵を持ちに席を離れた農場主の背中を見送って。
代わりに奥から、あの子猫がにゃんと一鳴きしながらやってきた。
「ちぃっと大きくなっただなぁ」
優しく抱き上げると、鼻先をチチの鼻にこすり付けてきた。
やっぱり可愛いし、飼いたいという気持ちはまだある。
……けれど、またあんなに激しくされたら、身体が持たない。
「全く、悟空さってば加減さ知らねぇんだから」
文句を言いつつ、その顔は赤く染まっていた。
その様子を、子猫はどこか不思議そうに見ている。
「抱っこしてもらってたのかぁ。よかったなぁ」
卵を持った農場主がやって来て、チチと子猫の姿を見て目を細めた。
――と思った次の瞬間、何故か吹き出したのだ。
チチとしては訳がわからなかった。
「?どうしただ?」
「いや、こんな小さいのにヤキモチ焼かせるなんて凄いなって思って」
「ヤキモチ?」
農場主は、内緒だよ、と前置きして話してくれた。
「今日、悟空くんが来ているでしょ。仕事に入る前にその猫を抱き上げてさ」
首根っこを摑まえ、自分の視線に合わせると、悟空は言った。
『お前にチチはやんねぇからな』
そう一言言うと、親猫の元に戻したという。
「頑なに反対するから何かあるなとは思ってたけど、その子猫にチチちゃんを取られると思ったんだねぇ」
くすくす笑う農場主に、チチは顔を真っ赤にしながら子猫を見つめた。
悟空が反対したのは、この子猫に嫉妬したから。
子猫を飼ったならば、チチはこの子猫に付きっ切りになるだろう事は容易に想像出来る。
それが気に入らなくて、あんなに頑なに拒んだと言うのか。
「……もう、何で本人に直接言えねぇんだべ」
全くウチの旦那様は。
もし子供が出来たら、どうするつもりなんだべ。
その時もこんな風に、ヤキモチを焼くつもりなんだべか。
内心子猫に愚痴を零しながら、チチの口の端は嬉しさに上がる。
チチの猫の耳も、尻尾も、嬉しさを隠せないようにぴん、と立ち、揺らめいた。
「土嚢の積み上げ、終わりました」
裏口から悟空が戻ってくる。
チチは抱いていた子猫をそっと床に下すと、一目散に悟空の胸に飛び込んだ。
ウチの4様豆知識→チチ命です(`・ω・´)シャキーン
久し振りに裏小説書いたら、なんだかねちっこい…かも?
それもこれも、4の7に対する愛情故です(キリッ)