お題 021. 【キスマーク】 新婚悟チチ 










最近、悟空がはまっている事がある。
修行の内容のバリエーションが増えたとか、テレビのドラマにまさかの大はまりとか、そういう類ではない。
それは少しだけチチを悩ませる事だった。
 
「こんなに沢山…」
 
風呂上り、洗面所の鏡に自分の裸体を映し見たチチは小さく溜息を吐いた。
鎖骨の下辺り、特に乳房の周りや腹の柔らかい所に、これでもかと赤黒い痣が無数にあるのだ。
原因は紛れもない、悟空である。
 
夜の営みを重ねていく内に、悟空が突然興味を抱いたものが、この所謂『キスマーク』。
初めは不慣れながらチチの身体にちゅっと吸い付いたのが始まりだったか。
白い柔らかなチチの肌に、吸い付いた痕が残る事に面白さを見出してしまったのが運の尽き。
 
勿論、こうする事によってチチが自分のものであるという、征服欲みたいなものも満たされるのもあったのだろう。
付ける事により微かに震えるチチの身体に、興奮がますます煽られる。
白肌に紅い痣は綺麗に映え、悟空はいつしか夢中で吸い付くようになっていた。
 
余程気に入ったのだと寛容に構えていたチチだったが、此処まで来ると度が過ぎていると思う。
正直この数は尋常ではないし、日が経つにつれ色がくすんでいく様は気持ちのいいものではない。
いくら服を着れば見えないと言っても、エスカレートしつつあるこの行為をなんとかしなくてはと思っていた。
 
寝室に戻れば、ベッドの上で待ってましたとばかりに待ち焦がれた様子の悟空。
チチに向き直り、早くと言わんばかりの雰囲気に、今夜も否応なしに展開が読めてしまう。
 
「チチぃ!待ってたぞ」
 
今日こそはキスマーク禁止令を出さなくては。
その面持ちだったチチに、悟空はお構いなく無遠慮に身体を組み敷いた。
 
「ごっ、悟空さ、ちょっと待っ…」
 
慌てて静止させるも、どうやら耳には届いていないらしい。
表現するなら一心不乱。
苦しくなるぐらい深く唇を塞いだかと思うと、次の瞬間には舌が口内で蠢いていた。
 
「んっ…!ふ…」
(駄目だべ…このままじゃまた…)
 
最近小慣れたせいか、悟空は器用になっていた。
チチと肌を重ねる内に覚えたのか、キスしながら服を脱がすという行為を会得していた。
しかも今日に限ってパジャマではなく、浴衣タイプの寝巻。
紐さえ外してしまえばいとも簡単に裸にする事が出来る。
 
案の定、しゅるりと腰に巻かれた紐を取り去り、前を肌蹴させた。
手は流れるように露になった乳房に添えられ、弾力を確かめるように揉みあげる。
勿論、未だ口は塞がれたままだ。
 
「んぅ…は…っ」
 
舌と舌を絡ませる水音がくちゅり、時折漏れる甘い吐息。
悟空はいつもの調子でチチを攻め立てていく。
思考がぼやけとろんとした感覚に囚われてしまい、つい肝心の事を忘れてしまいそうだった。
 
「あ!駄目だべっ」
 
首筋に顔を埋められ、ちゅうっと吸い付かれた時だった。
チチははっと意識を取り戻し、強い抵抗の声をあげた。
さすがにいつもとは違う声に、悟空も何事かと驚きにその行為を止めた。
 
「な、なんだよチチ。どうかしたんか?」
「どうもこうもねぇだよ!おら、悟空さに言いたい事があったんだべ」
 
悟空としては中途半端に昂ぶった身体のまま、現実に引き戻されたのだから堪ったものではない。
一刻も早くその身体に吸い付きたくて仕方ないのだ。
第一目の前には美味そうにぷるんとしている乳房。
我慢なんて出来ようか。
 
「それ、後にしてくんねぇか?オラ我慢出来ねぇぞ」
 
言うや鎖骨辺りに顔が沈んでいく。
此処は何としてでも死守だ。
 
「そっ、その事なんだけどもっ!!」
 
ん?という疑問の表情を浮かべた悟空の目とかち合う。
何が、という雰囲気を察したチチは、いよいよ本題を投げかけた。
 
「あのな、その…あんまり…しねぇで欲しいだ」
「何が?」
 
どうしても恥ずかしさが先に立ってしまって、ごにょごにょと言ってしまうのはチチの悪い癖だ。
悟空に遠まわしに言ったところで通じないのは解っているのに。
例の如く、ちんぷんかんぷんという顔をしている。
 
「悟空さ…おら、の身体見て何とも思わねぇだか?」
 
改まってじっと見てみる。
白い肌に柔らかそうな乳房。
桃色をした、刺激を与えていないまだ小さな乳首。
腰から太腿にかけての緩やかなライン。
どれをとっても美味そうにしか見えない。
 
「どうって、すっげ美味そうで、早くやりてぇんだけど」
「なっ…!馬鹿ぁ!!」
 
真っ赤になりながら怒鳴る。
どうしてこんなにもストレートなのだ。
やはりはっきり言わなくてはならないらしい。
チチはすっと、徐に一箇所指を差した。
 
「これ、何だか解るべ?」
 
見れば薄らと残っている紅い痕。
解るも何も、自分が付けたのだから解らない訳がない。
 
「何って…オラが付けたヤツだろ」
 
言うや、差していた指を動かし、またさらに違う痕を指差した。
 
「此処も、此処も、此処も!ぜーんぶ悟空さが付けた痕だべっ」
 
チチが何を言おうとしているのか解らなかったが、どうやらお冠であるのは解った。
しかし、何故怒っているのかが解らなかった。
 
「何で怒ってるんだ?」
「これ見てもなーんとも!思わねぇだか?!」
 
どうって言われても…。
 
「もっと付けてぇんだけど」
 
正直にのたまった。
当たり前と言うか、目の前のチチは思い切り脱力したのだが。
 
「はぁ…あんな?悟空さ。付けちゃ駄目とは言わねぇが、これ以上はおらも困るだよ」
 
懇々と、子供に言い聞かせるようにチチは語り始めた。
付けられるのは嫌じゃない、しかしこれは付けすぎだ。
こんなにあちこち付けられて、もう何処にも付ける所などない。
鏡で見る度にびっくりしてしまう、と、とうとうと説いて聞かせたのだ。
 
「解っただか?だから今日は付けちゃなんねぇだ!」
 
突然の禁止令に、悟空は不満たらたらであった。
ブームと言っては何だが、キスマークを付けるのがチチとエッチする上での楽しみになっていた悟空としては、何とも納得がいかなかったのだ。
 
「そんな事言ったって…痛ぇ訳じゃねぇだろ?服だって誰の前で脱ぐ訳じゃねぇし」
「それでも駄目なもんは駄目だ!おらが嫌なんだべ」
 
取り付く島もなく言い切られてしまい、気分は凹み気味だ。
あの柔らかい白い肌に吸い付くのが堪らないのに。
楽しみを奪われてしまった悟空は、やけになりそうだった。
それを察知したのか、チチはフォローを忘れない。
 
「これからずっと駄目だっては言ってねぇべ?ちょっと間を置いて欲しいだよ…せめて今付いてる痕が消えるぐらいは待ってけろ」
 
今後も禁止という訳ではないのなら、呑むしかない。
此処で駄々を捏ねれば、今日はさせてもらえない可能性だって十分あり得る。
そこは悟空も学習していた。
 
「解った。今日は付けねぇ」
 
悟空の了承に、チチは一応の安堵の溜息を吐いた。
これでこの惨状からも一時だけではあるが解放される。
その頃には悟空もキスマークを付ける事に飽きているだろう。
チチなりの算段でもあった。
 
何となく話のせいでムードは盛り下がっていた。
はて、どう攻めようか…キスマークを付ける事は禁じられたし…と。
ふと、悟空は閃いた。
 
「じゃあさ!チチがオラにキスマーク付けてくれよ」
 
いつだってされるがままだったチチは、悟空にキスマークを付けた事は一度足りともない。
だったら、今度はチチが付ければいいのではないか。
実に単純明快である。
 
「そっ、そったら事…」
「別に恥ずかしい事じゃねぇだろ?此処にちゅーって吸い付けばいいだけだし」
 
にこにこしながら、鎖骨の下を指差した。
悟空もチチにキスマークを付けて欲しいと思ったのだ。
いつも付けてばかりだったが、付けてもらえばお揃いだし、何となく『チチから付けてくれた』という事実が欲しかった。
 
「なっ、いっだろ?オラにもチチのものーって言うの付けてくれよ」
 
子供のような笑顔でそう言われて、チチだって悪い気はしなかった。
それぐらいなら別に…やっても恥ずかしくはないだろう。
悟空が喜んでくれるなら、それもいいと思えたのだ。
 
「じ、じゃあ…」
 
おずおずとしながら、ゆっくりと顔を近づけていく。
悟空はと言えばどんな感覚なのか、ワクワク。
 
そっと胸板辺りに触れる。
相変わらず鍛え上げられた見事な肉体。
無駄な肉など何処にもついていない、チチとは全く違う硬い感触。
 
悟空はその小さくて柔らかい唇が、いつ自分の肌に吸い付くのか、今か今かと待ち焦がれていた。
何だかチチのドキドキしている感じが伝わってくるように、先程まで何ともなかったのに心臓の鼓動が強く鳴り始める。
 
「い、いくだよ…」
「お、おぅ」
 
律儀なやりとりの後、チチはゆっくりと鎖骨の下辺りに唇を寄せた。
見よう見真似と言うか、いつも自分がされているように、まずは遠慮がちにちゅっ、と吸い付く。
 
「んっ」
 
中途半端な刺激がくすぐったくて、つい声が漏れてしまった。
チチの吸い付きは優しすぎて、そんな力で痕なんか付くのだろうか。
純粋に疑問に思った。
 
「チチ…そんな弱くっちゃ痕付かねぇんじゃねぇのか?」
「へっ?そ、そうだか?」
 
ちらりと見れば、確かに自分に付いている痕と同じとは言いがたい、付いてるのか付いてないのか解らないぐらいの
薄らとしたものしか残されていなかった。
結構力がいるものなのだな…と思い直し、同じ場所に今度はきつく吸い付いてみた。
 
「んぅ…」
 
力む余りか、思わずチチの方が声を漏らす。
あんまり強くすると悟空が痛がるかな、と思ったけれど、どうやらそれは杞憂らしい。
痛がる様子はなく、チチが吸い付くまま。
ある程度吸い付いた後口を離せば、見慣れた痣が浮かび上がっていた。
 
「付いただよ」
 
成功した嬉しさからか、チチはつい声を弾ませた。
硬い硬い悟空の肌に付けた、自分のものだという痕。
なるほど、これはクセになるかもしれない…そう思ったのは秘密だ。
 
「へへっ、これでお揃いだな」
 
にかっと笑う悟空に、チチも釣られて笑った。
何だか悟空が可愛くて…気分がどんどん盛り上がっていく。
 
「もっと付けていいだか?」
 
ついつい調子に乗って、次から次へと、チチは悟空の肌に吸い付いていった。
悟空もチチが付けてくれるのが嬉しかったし、したいようにさせていたのだが…。
むず痒くなっていくのは何故だろう。
 
(嬉しいんだけどなぁ…)
 
一生懸命付け続けるチチを、ちらりと見下ろす。
付けて離れる度に、その柔らかい乳房がふるりと揺れる。
よくよく思い出せば、自分が欲していたのはそちらだったではないか。
 
まな板の鯉状態で手持ち無沙汰。
さっきから硬い自分の肌にチチの柔らかな唇や肌が触れて、何だか悶々。
 
(…)
 
いつしか悟空が無言になっている事にさえ、チチは気付かないまま夢中で吸い付いていた。
 
「結構付けただよ」
 
気付けば胸の辺り一面散らばるように、五、六個のキスマーク。
どうやら満足したらしい。
 
「ふふ、おらでもこんなに付けられるだなぁ」
 
それは可愛く、にっこりと笑った。
チチは無自覚な事が多い。
本人は全くそのつもりはないのだが、知らない内に悟空を煽っている事もしばしば。
…今がまさにその状態であった。
 
「悟空さ?」
 
何の返事も返ってこない悟空を不審に思い、見上げた途端―――。
 
「きゃっ!」
 
勢いよくベッドに押し倒されたかと思うと、悟空の身体が圧し掛かってくる。
あれよあれよと手を拘束され、左右に開かれる身体。
 
「あぁん!」
 
何の前触れもなく、いきなりちゅぅっと、強く乳房の頂を吸い付かれた。
まるで肌に吸い付けない分を取り戻すように、執拗に舐り吸い上げる。
その刺激たるや、チチの身体が忽ちひくつく程。
 
「あっ、あぁ!やん…ぅっ」
「んーーーっ」
 
ちゅくりと唾液を絡ませ、まるで赤ん坊が乳を吸うように堪能する。
悟空の口の中で、忽ち乳首はぷくりと硬さを増した。
 
「やんだ、ぁ…悟、空さぁ」
「…肌には吸い付いてねっぞ」
 
理屈は合ってる、合ってるのだが、こうも強く吸われては痛いぐらいだ。
しかし構う事無く、次はもう片方にむしゃぶりつく。
解放された乳首は、悟空の唾液で滴り、ぬるりといやらしくてかっていた。

「あーやっぱチチのおっぱいて柔くて美味ぇぞ」

ちゅうちゅう吸いながら、空いている方の乳房でもちもち感を堪能する
恥らうように顔を仰け反らせ、くぐもった声をあげるのは、チチが指を口元に当てているからか。

散々乳飲み子の如く吸い付いた後、やっと口を離した。
舌をれろっと出したままの行為は、そこに未だ執着しているように見えた。
しかし、悟空の中では既に次のターゲットがある。
興味は下半身へと移動した。
 
「あっ、あぁっ!駄目、だめぇ…っ!」
 
首を横に振り、必死に悟空の顔を引き剥がそうと後頭部に手を添える。
しかし、それで簡単に離れる訳などない。
ぐぐっとさらに密着するように近づけると、むわっと甘い女の匂いが鼻についた。
チチの、匂い。
いつだって、悟空を惑わし狂わせるもの。

「こんないい匂いさせといて…」

舌で舐め上げ吸い上げたのは、小さな花芯。
乳首よりは優しく、しかししっかりと、口の中で舌で転がしながら刺激を与えた。
チチの身体は与えられた快楽に簡単に仰け反り、抵抗していた手は忽ち力が抜けていった。
 
「は…だめぇ…そ、な…吸っちゃ…」
「此処は吸っちゃ駄目って言ってねぇだろ」
 
一際強くちゅうっと吸い上げられてしまい、ひくんっと強く腰が跳ね上がる。
チチの喘ぎ声は、どんどん高く甘さを増していった。
 
「あ、あん!んぁっあ、あ、…っ!!」
 
ぬるぬるとした愛液が悟空の顎を濡らし、吸い上げている蕾は花開くように膨らんでいく。
震える脚、捩る身体、甘く耳を犯す声。
 
「―――〜〜あぁぁああああんっ!!」
 
がくがくっと強く身体が震えた後、後頭部に添えられていた手はゆっくり離れてシーツに沈んだ。
悟空もゆっくり顔を上げる。
 
「はっ、は…ん…っ」
 
余韻を残すように、未だ身体をひくつかせている。
シーツは零れ落ちた蜜で濡れ、チチが果てた証のように見せ付けた。
 
(やべぇ…)
 
そんな乱れたチチが可愛くて。
まだまだ足りない、欲望は果てしない。
 
「チチ…まだ吸い足りねぇぞ…いいだろ?」
「ま、待って…あぁん!」
 
イッたばかりのチチに、再び乳首から吸い付く。
ぶるっとチチの身体が震え、しかしもう抵抗の力は残っていなかった。
 
やっぱり自分が吸い付かれるより、吸い付いた方がいい。
そう、自覚した悟空であった。
 
(でも、ま…キスマークは嬉しいけどな)
 
暢気に考えながら、後でチチが付けてくれたキスマークを見返そうと思いながら余裕でチチの身体を堪能する悟空。
それとは対照的に、吸い付かれる度に意識が白付き、何が何だか解らなくなっていくチチ。
 


キスマークを禁じた代償は、一番敏感な部分に齎された意識が飛ぶ程の刺激だった。















eさんとの合同誌の打ち合わせ中にいただいた萌え話から
『チチにキスマークを強請る悟空さ』だったのに、気付けば…あれれ?
素敵な萌えを下さったeさんに捧げます


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