お題 017. 【露天風呂】 (4悟空×猫チチ)
※表の『sweet lil' cat -猿と猫-』の悟チチ設定です。苦手な方はご注意ください。
















猿の様な男悟空と、猫の様な女チチが結婚して数ヶ月。
ふたりの生活は相変わらずであった。
 
悟空が山や川の恵みを獲り、それをチチが料理する。
他愛ない話をし、肌を重ね合わせる毎日。
穏やかで質素な生活は、偶然同居を始めた頃と変わらず大きな変化はなかったけれど、ふたりは幸せに暮らしていた。
 


山の峰が綺麗に色づき始める季節。
チチは今日も変わらず、ふたりの城である小さな家を綺麗に掃除していた。
 
「んん〜ふふん」
 
鼻歌交じりのその動作は、見ていると楽しそうなぐらいだ。
その証拠に今も健在の猫の耳はピンッと立ち、尻尾はリズムを刻むようにゆらゆら揺れている。

「次はお風呂掃除だべ」
 
てきぱきと家事をこなしていく様は慣れたもの。
もう間もなく、今日の夕飯の食材を持って悟空が帰ってくる。
甲斐甲斐しく家事をする姿は、大好きな悟空の嫁になった事を喜ぶが如くである。

浴槽を洗い終え、お湯を溜め始めた頃。
 
「ただいまー」
 
聞き慣れた愛しい声が、玄関が開かれる音と共に響いた。
猫の耳をぴくりと反応とさせ、まるで跳ねるようにチチは一目散に玄関へと向かった。
 
「お帰りなさいだーっ!」
「わっぷ!」
 
いつもの遠慮知らずの勢いで、悟空の胸に飛び込む。
もう慣れたものなのか、驚きつつも悟空はしっかりチチを受け止めた。
 
「いい加減、普通に出迎えられねぇのかよ」

一応は窘めるものの、悟空も内心満更ではない。
自分に一心に愛情を注いでくれるチチが愛しくて堪らないのだ。
そんな事、本人には絶対言わないけれど。

「だって……嬉しいんだもん」
 
本人は言われてもしょげる所か、むぅ、と訴えるように上目遣い。
歓喜を我慢出来ず、尻尾がゆらゆらと揺れる。
その様に、悟空は随分自分も甘くなったものだと思いながら、結局何も言えなくなるのだ。
 
「ほら、今日はこれ」
「うわぁ!こんなに沢山。大変だったべ」
 
悟空が山から取ってきた食材を受け取り、早速キッチンへと運ぶ。
袋一杯に入っている食材をひとつひとつ取り出していき確認していくと。
とある物を手に取ったチチは、その作業を一旦止めた。
 
「なんか見た事ない食材があるだよ」
「あぁ、今日はちょっと今までとは違う所まで行ってみたんだ」
 
チチと一緒にキッチンまで着いて来ていたが悟空が、隣から袋の中にまだあるその食材を取り出した。
時期的に茸だったのだが、この辺では余り見かけない種類のもの。
 
悟空としては、新しい食材に喜んでくれるとばかり思っていたのだが。
どうして、チチは顔を顰めた。
 
「あんまり遠くまで行ったら危ないべ」

まるで子供に言うような口調に、思わずあんぐり。

「誰に言ってんだよ」
 
呆れ笑いを浮かべながら言っても、チチは本気だ。
今まで散々悟空が如何に強いかを物語る場面を見ているのに。
他の人間から言わせれば、『悟空に限って』なのだが、心配性は相変わらず。
 
「農場主に教えてもらったんだよ。そうそう危ない場所じゃねぇから心配すんな」
 
宥めるように頭をぐりぐりしてやると、目を擽ったそうに顰めた。
猫の耳がへにゃりと伏せる。
 
「ご飯と一緒に炊くと美味いらしいぜ」
 
いつもお世話になっている、山ひとつ向こうにある農場の主に頼まれ、よく仕事を手伝いに行っている悟空だったが、
その時にこの珍しい茸がある場所を教えてもらったのだった。
何でも香りも強く味もしっかりしていて、とても美味しいとの事。
悟空としては、これはもってこいとばかりの話だと、早速赴いたのだ。
 
「それなら大丈夫だども」

農場主が知っているという事は安心だと、チチは即座に安堵した。
それが顔だけではなく、猫の耳や尻尾にも現れるのだからやっぱりわかりやすい。
 
機嫌が直った所で、悟空は続ける。
 
「そんでさ、ついでに面白いモンも教えてもらったんだ」
「面白いモン?」
 
チチが小首を傾げて。
 
「温泉が湧いてたんだ」
「温泉!」
 
チチは予想だにしなかった返答に目を丸くした。
この山に温泉があるなんて初耳だ。
 
「温泉があるって今まで知らなかったのけ?」
「俺もここに住んで長いけど、温泉があるのは知らなかったんだ。
興味本位でついでに行ってみたら、小さいけど確かに温泉があったぜ」

悟空が知らないのも無理はない。
その温泉とやらは、普段食材を取っているエリアよりもさらに北へ足を運んだ辺り。
いつもの場所だけで十分食材を確保出来ていた事もあり、足を踏み入れた事がなかったのだ。
 
「悟空さ、入ってきただか?」
「いや。ただ見てきただけだけど、手入れたら丁度いい湯加減だったな」
 
それを聞いて、チチは手を合わせ天を仰ぐような仕草をした。
その目は、キラキラと輝いている。
 
「そうだか〜、きっと気持ちいいだべなぁ」
 
この姿だったから、おいそれと公共施設の温泉などには行けなかった。
立ち上る湯気、しっとりする肌。
何より天然の露天風呂なんて、開放感一杯で素敵ではないか。
しかも今の時期は紅葉が見事で、それだけでも露天風呂に想いは馳せる。
 
「明日行くか?」
「いいのけ?!」
 
勢いよく悟空を見ると、あまりの喰い付きっぷりに少しだけ身体が慄いていた。
しかしそんな事は気にせず、チチは尻尾をふりふりしながら悟空へ身を寄せた。
 
「連れてってくれるだか?」
「元々そのつもりだったけど」
 
その言葉に、チチは嬉しくて堪らなくて、悟空にぎゅっと抱きついた。
いつも意地悪されたりするけれど、基本優しい悟空が大好きで堪らない。
 
「おら嬉しいだ!悟空さ、ありがとうな」
 
ニコニコしながら見上げてくるチチが可愛くて。
悟空はその唇を優しく塞ぐ。
 
「ん……」
 
優しかった口付けは激しくなり、舌と舌が絡まり合い、お互いの息が上がっていく。
気分は盛り上がりを見せていた、のだが……。
 
「ん……?」
 
遠くで何かの音が聞こえる。
それに気付いた悟空が、一旦唇を離して。
 
「なんか音がするぞ……?」
「―――あっ!!!!」
 
チチが叫び声をあげ、あっと言う間に悟空から身体を離し駆け出した。
……そう、お風呂のお湯を出しっぱなしにしていたのだ。
 
「きゃーー!!溢れてるだー!!」
 
遠くからてんやわんやしている声が響いてくる。
残された悟空は、ひとりぽかんとしていたが。
少しして、苦笑いを浮かべた。
 
「ったく……落ち着きがねぇったら」
 
きっとひとりでてんぱっている事だろう。
ここはふたりでやった方が早い。
未だパニックになっているチチの元へ向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 






歩くと言ったチチだったが、こうした方が早いと、悟空がチチを抱きかかえてくれた。
正直、歩いていたら時間がかかり過ぎるのもある。
チチひとり何て事ない悟空は、身軽にあっと言う間に山の中を駆け抜けていく。
 
見慣れない景色が流れ、見事に色づいた紅や黄の葉が燃える様に悟空達を迎えた。
ふたりしか居ないこの場所は、完全な貸切状態だ。
 
「うわぁ!凄いだなぁ」
「今年は綺麗に色づいたな」
 
悟空の腕に守られながら、チチはそれらを目一杯堪能した。
はらりと落ちていく銀杏の葉が悟空の髪に降り注ぎ、それをそっと取ってやる。
 
「ふふ、綺麗な色だべなぁ」
 
と、チチの髪にも赤い紅葉が降り注ぎ、悟空はまるでチチの唇の色だと思った。
何もかも奪いたくなる、赤。
 
しかし、今は露天風呂に向かうのが先決である。
悟空はチチの髪にからまる紅葉を取ってやると、チチに渡し、前を向いた。
 
 

ある程度進むと、ごつごつとした岩肌が目立つようになってくる。
そこを上手くバランスを取りながら、悟空は軽々と上っていった。
 
「しっかり掴まってろよ」
「んだ……
っ」
 
ぎゅっと悟空の身体にしがみ付く。
彼の鼓動が耳に響き心地よい。
安心して身体を任せ、目を閉じている事数分――。
 
「着いたぜ」
 
顔を悟空の身体に預けていたチチは、言葉に視線を向けて……。
 
「うわぁ〜!」
 
そこは、秘境の湯という言葉がぴったりくる、野趣溢れる露天風呂だった。
周りは沢山の木々に囲まれ、それが目隠しとなっているが、今は紅葉の時期だ、黄色や赤に囲まれ風情たっぷり。
はらりと落ちる葉が湯にゆらりと浮かび、鮮やかな色を目に焼き付けてくる。
辺りには湯気が立ちこめ、温泉という雰囲気をこれでもかと醸し出していた。
大きさは10人ぐらいは一度に入れるぐらいの大きさで、勿論天然だから整備されていないが、
周りに岩や石等があるので、そこに衣服を置けそうだ。
 
「本当だべ、丁度いい湯加減だなぁ」
 
色は無色透明で、匂いもない。
手を入れてみると、しっとりと肌に吸い付くようなお湯だ。
これは美肌になるかもしれないと、期待大。
何より、人の目を気にせず入れるのがいい。
 
昼間だと言うのに少しだけ薄暗いのは、鬱蒼と生い茂った紅葉した木々が太陽の光を遮っているから。
少しだけ漏れ届いた秋の優しい光が、湯の表面を弱くキラキラと照らしていた。
 
「入ろうぜ」
「んだ!」
 
……と、大きく頷いたチチだったが。
とある事に気付いた。
 
「何してんだ?」
 
一向に脱ぐ気配のないチチを、悟空は訝しげに見つめた。
 
「……悟空さ、あっちさ向いててけれ」
「は?」
 
明後日の方を指差すチチに、悟空は首を傾げた。
 
「あっちに何があんだよ」
「そうじゃなくて……」
 
モジモジするチチを見つめながら、実は何を言いたいか悟空は気付いていた。
何て事無く見つめていたけれど、内心はニヤニヤ。
それに気付かないチチは、顔を真っ赤にして、猫の耳と尻尾を所在無さげにへたれさせ揺らしていた。
 
「温泉、だべ?」
「あぁ」
「温泉って、このままじゃ……」
「まぁ普通は入らねぇな」
 
ここまで誘導尋問しているのに、向こうを向く気配のない悟空に。
さすがのチチも気付き始めていた。
 
「悟空さ、わかってて意地悪してるだべっ」
「何の事だ?」
 
ここで、我慢しきれなくなった悟空の顔に笑みが浮かぶ。
 
「やっぱりだべ!!おらが恥ずかしくて服脱げねぇの知っててからかってるだ!!」
 
ぴんっ、と立つ耳と尻尾。
きゅっ、と釣りあがった眉と目。
少しだけ突き出された赤い唇。
そんな可愛く抗議したって、痛くも痒くもないのだけれど。
 
「だって、今更じゃねぇか」
 
しれっと伝えると、チチの顔が赤く染まった。
まるで、紅葉の如く色づく葉のように。
 
「なっ、何言ってるだ!!」 

だって、もう何度肌を重ね合わせたと思っているのだ。
チチの何所が弱いとか、何所をどうするとよく啼くとか、よがるとか。
そんなのは悟空には手に取るようにわかっているのに。
 
「いいい、今更でも!だって今は昼間で外だべっ!」
「一緒に脱げば恥ずかしくねぇだろ?」
 
そう言って、悟空は自分の腰巻を緩め始めた。
 
「きゃーーー!!悟空さのえっちぃ!」
「えっちって……」
 
本当に今更である。
 
きゃーきゃー喚いて止まらないチチに、仕方なく悟空は意見を呑む事にした。
 
「しょうがねぇな。さっさと着替えろよ」
 
くるり、と背を向けたのを確認し、チチも悟空に背を向けた。
チチが着ている服はワンピースで、それを脱いでしまえばキャミソール一枚。
いそいそと脱ぎながら、悟空への確認も忘れない。
 
「悟空さ、見てねぇだな?!」
「見てねぇよ」
「まだ、だからな」
 
さらに念を押し、ワンピースを脱ぎ終え、キャミソールに手をかける。
それも脱ぎ去れば、シミひとつない白い背中が露になった。
華奢な肩と背中に、黒い艶やかな髪がさらりと流れる。
きゅっ、と締まったウエストから、丸みを帯び柔らかそうなヒップにかけてのラインが艶かしい。
 
「悟空さ、まだ駄目だからな!」
「あー」
 
気のない返事。
しかしチチは気にせず、濡れないように髪をひとつにくるっとまとめあげる。
完全に露になる背中に、後はショーツだけ。
少し前かがみになり、するすると脱ぎ去れば、一糸纏わぬ姿……。
 
「いーい眺めだな」
「?!」
 
ショーツを膝辺りで脱ぎかけのまま、悟空の言葉に後ろを振り返って。
自分の右肘を左手で支えるようにし、右手を口に手を当てながら、いつしか振り向いていた悟空と目が合った。
 
「にゃ……」
「ん?」
 
一呼吸置いて。
 
「にゃーーーーーーっ!!!!」
 
チチの叫びがこだました。
 
「ななな、何でこっち見てるだ!!嘘吐きぃ!!」
「だってチチが脱ぐのおせぇんだもん」
 
見れば、悟空はとっくにズボンを脱ぎ去り準備万端だった。
その様に、さらにチチの心拍数は跳ね上がる。
 
「な、悟空さっ!隠してけれ!」
「何で隠すんだよ。これから風呂入るってのに」
 
そういう問題じゃない!と言おうとして、悟空がチチに近付いてきた事により言葉を呑み込んだ。
 
「ぎゃーぎゃー言うなって。初めてでもあるまいし」
「だ、だから、そういう問題じゃ……」
 
くっ、と腰に手を回され、引き寄せられる。
脱ぎ途中だったショーツが、ぱさりと地面に落ちた。
 
「チチの胸がこんぐらいしかねぇのは、もうわかってるから」
「!!」
 
そう言って、左掌で右の乳房を上から覆った。
それは、悟空の掌にすっぽりおさまるジャストサイズ。
 
「ぅにゃーーー!!!悟空さの馬鹿ぁ!!そんな事言って触らねぇでけろぉ!!!」
 
胸が大きくないのを気にしているのを知っていて、この言い草。
半泣きになりながら悟空の胸を押して離れようとするけれど、悟空は離してくれない。
 
「落ち着けって。悪いだなんて言ってねぇだろ?」
「ん……っ」
 
悟空の指が、チチの乳房に沈む。
柔らかさを堪能するように、控えめに、けれど優しく。
 
「俺は好きだぜ?チチの胸」
「ご、悟空、さ……」
 
真っ赤な顔、潤む瞳、戸惑いの表情。
何もかもが愛しくて堪らない。
 
「だから隠すなよ。一緒に風呂入るのだって初めてじゃねぇんだから」
「ん……」
 
結局丸め込まれるのは、惚れた弱みか。
チチがどういう風に言えば大人しくなり、そして納得するのか。
悟空はよく知っていた。
 
「よっと」
「きゃあ!」
 
何の前触れもなくチチの身体を抱きあげ、温泉へと向かう。
悟空の首にきゅっとしがみ付き、驚きからか耳は少しだけへたれていた。
 
淵まで来て屈み、太腿の上にチチを座らせる。
左手で支えたまま、右手でかけ湯をしてやった。
 
「悟空さ、おら、自分でやるだよ?」
「いいから」
 
甲斐甲斐しく世話を焼く悟空の姿を見たら、彼の知り合い達は驚くだろう。
どんなに意地悪されても、こういう優しい所がある事を知っているからこそ、チチはどんどん悟空を好きになっていくのだ。
 
お湯が、チチの白い肌をつつっと流れ落ちていく。
その様がどこか官能的で、思わず無言でかけ続けていると……。
 
「悟空さ、そろそろいいべ。おら、入りたいだよ」
「ん?あぁ」
 
ふるりとチチの身体が震えた。
いくら天気がいいと行っても、山の中、秋の外だ、寒いに決まっている。
チチの身体につい見とれて、そんな事も悟空の中から失念していた。
平静を装いながら身体を抱え、ゆっくりと湯船に浸からせてやる。
 
「うわぁ……!」
 
貸切の天然露天風呂は開放感で一杯で、思わず湯の中をどんどん進んでいく。
チチが立てた波の筋が、やっと身体をお湯へ沈めた悟空に齎される。
それに翻弄されるように、葉もゆらりと揺れた。 

「凄いだよ、悟空さ!すっごく気持ちいいだ」
 
猫の尻尾をちょこんと水面から出し、ふりふり。
本当に気持ち良さそうだ。
すいすいと足を進めれば、あっと言う間に向こう岸へと辿り着く。
 
「悟空さも早く入るだよ」
 
適当にお湯をかけ、悟空もざぶんとお湯に身体を沈める。
なるほど、確かに気持ちがいい。
温度も丁度いいし、お湯も優しい感じだ。
 
「ふふ、貸切っていいだなぁ」
 
すいすいと悟空へと近寄ってくるチチは、泳いでいるようだった。
はしゃぎっぷりを見て、連れて来て本当によかったと思う。
微笑ましくその様子を見ていると……。
 
「ゴールだべ!」
 
波を立てながら、チチが悟空の胸に飛び込む。
ふたりの周りを少し大きな波がたゆたう。
 
満面の笑みを向けるチチに、悟空も静かに笑いかける。
可愛くて、思わず頭を撫でてやると、また嬉しそうに目を細めた。
 
「悟空さ、ありがとうな。おら、温泉入れて嬉しいだよ」
 
純粋に喜んでくれているチチに、満足するものの。
……徐々に変な気持ちになっていくのは何故だろう。
 
誰も居ない秘境の温泉。
これでもかと嬉しそうな笑顔を向ける愛しい女。
白い肌を惜しげもなく晒し、湯の中で揺らめく裸体が目に焼きついていく。
そして、先程から妙に焼きつく、紅葉に負けない程の赤い艶やかな唇。
 
そんな悟空の思考など気付かないチチは、無邪気に聞いてくる。

「なぁなぁ、この温泉の効能って何だべな?」
「……さぁ?」
「おらが思うに、絶対美肌の湯だと思うだ」
 
何で?と、悟空が顔を覗き込んでやれば。
 
「だって、このお湯ちょっととろとろしてるべ?こういうお湯は肌に良いって本で読んだだよ」
 
水面から出された尻尾は、右往左往と揺れている。
耳もぴんっと立ち、その自信が伺えた。
 
……しかし悟空にとったら、最早それはどうでもいい事だった。
 
「これでおらの肌もすべすべになるだぁ」
 
女ならではの喜びをこれでもかと味わっているチチは、まさに無防備の一言だった。
お湯に入った事で安心しきったのか、悟空からその肢体が見えている事に気付いていない。
透明なのだからわかりそうなものだったが、嬉しさと、悟空と一緒に温泉に入っているという楽しさですっかり失念していた。
 
「……子宝の湯かもしんねぇぜ?」
 
不意に落ち着いた声色が、チチの耳に届く。
それは酷く近くで囁かれ、彼女の心をふるわせた。
 
「……え?」
 
ひとつ、強く跳ねた鼓動に弾かれるように悟空の顔を見やると。
そこには、真剣な表情を浮かべた悟空が居た。
 
「ま、まさかぁ〜!そんなのわからねぇべ?」
 
誤魔化しながら、ふいっと顔を逸らす。
心臓の鼓動は落ち着かず、どんどん速さを増していく。
 
おかしい雰囲気を感じたチチは、ゆっくりと悟空から身体を離そうとして―――……。
 
「ためしてみるか?」
 
逃すまいとするように、チチの腰に悟空の腕が絡まる。
上半身だけ仰け反るように悟空から離れた状態になったまま、チチの動きは止められた。
 
「ご、くう……さ?」
「逃げるなよ」
 
言うや、すかさず悟空の唇がチチの唇を攫う。
離れようとしていた身体を取り戻すように、ぐっと身体を引き寄せられた。

「ふ、ぅ……」

舌を絡ませ、唾液すら逃さないよう奪う間。
鼻から抜ける甘ったるく漏れる声に、興奮が走っていく。

「にゃ……あ……駄目だべ……悟空……」
「何で?」
 
聞きながら、有無を言わせないとばかりに猫の耳を食む。
すると、ぴくんっ、とチチの身体が震えた。
 
「だっ、てぇ……こんなとこで」
「場所なんて関係ねぇだろ」
 
優しく食みながら、つつっと舌を這わせてやると、ますます身体を震わせ、捩る。
 
「だって、だって」
「もう、黙ってろ」
 
どんなに抵抗したって、もう止められない。
ふっ、と息を吹きかけてやれば、ぞくぞくとした感覚がチチを襲った。
 
「あ……っ!」
「ここ、弱ぇもんなぁ?」
 
意地悪く言うから、チチは忽ち涙目になる。
チチの身体の隅々まで知り尽くした悟空に、最早勝てる手立てなどない。
強制的に高みに上り詰めさせられ、我を忘れるように求めてしまうのだ。
 
「あと、ここも、か?」
 
すっ、とのばされた手は、形のいい小振りな乳房へと齎される。
下から持ち上げるように撫で上げた後、痛くない程度に力を入れ揉む。
柔らかさを堪能した後は人差し指をずらし、今か今かと触れられるのを待っている頂を刺激してやると……。
 
「ふぁん!」
 
快感に顔を歪ませ、甘い声を上げる。
今度は悟空の身体を言いようのない、ぞくぞくとした感覚が走り抜けていく。
 
徐々に上がっていく口の端。
堪らない衝動に犯され、行動を逸らせていく。
 
「これでもまだ駄目なんか?」
「んぁっ、あぁ……やぁん」
 
くりくりと頂をいじめてやると、力が抜けるのを必死に堪えるように腕を掴んだ手に力が込められるのがわかる。
攻めた耳はへたり、尻尾は力なくお湯に沈んでいく。
 
「顔、真っ赤」
「こ、これは違う、だ……。のぼせちまってるんだべ……っ」
 
入ったばかりなのに、こんなになる訳がない。
悟空が愛撫し始めてからチチの息は上がり、頬に赤味が強く差していったのを知っているのに。
強情な猫には、お仕置きをしなくては。
 
「じゃあ、お湯から身体出さねぇとな」
 
言うや身体を抱え、岸へと近付く。
チチは攻められた事により頭がぼんやりとしてしまい、悟空の行動の意図を読めない。
それどころか身体の力はとうに抜け、抵抗する事すら出来なかった。
 
抱えられた身体は、ざぶりと湯から出される。
そう深くない天然の露天風呂では、それも容易い事。
足だけ浸かる格好で外気に晒されたチチの裸体は、白い肌が綺麗なピンク色に染まっていた。
 
「やぁ……っ!」
 
突然外気に晒された身体が、寒気を覚える。
しかしそれもほんの少しの事だった。
すぐさま悟空の愛撫によって、チチの体温が徐々に上がっていく。
 
「口も赤いけど、ここも赤いよな」
 
ぴんっ、と立った刺激した突起は薄桃色で、いつ見ても綺麗だと思う。
お湯を纏った肌が優しい陽の光を浴び、てらりと艶やかに悟空の視覚を刺激した。
 
「んっ!」
 
ちゅぱ、と吸い付き、一旦口を離す。
すると、もっと刺激して欲しいとばかりに、ぷくりと膨らみ硬さを増していく。
 
「もっと吸って欲しいだろ?」
 
触れるか触れないかのタッチで指で刺激してやると、くぐもったチチの声があがった。
 
「にゃあ……ん……」
 
ん?と意地悪そうな笑みを浮かべ、顔を覗き込んでくる悟空が憎らしい。
わかっていて焦らすなんて――そう思いながらも、恥ずかしさから口に出してなんて言えやしない。
 
そんなチチをわかっていて、悟空は唇を塞ぐ。
同時に今度はくりっとつまみ、今まで以上の刺激を与えた。
チチの眉間に快楽の皺が寄る。
 
「んんぅ!」
 
感度がいいチチは、いつも悟空の愛撫に翻弄されていく。
無骨な手がするりと肌を這っていく、その感触に意識が快感へと傾いていくのだ。
 
「っはぁ……」
 
口を離せば、まるで懇願するような表情に、言葉が無くてもわかる。
それでも、チチに言わせたくて仕方ない。
 
「ほら、チチ」
「ん……っ!」
 
また刺激を弱くする。
じれったさに猫の耳はしょげ、口は半開きになり、どちらともつかぬ唾液を端から流した。
 
「――す……て……?」
 
掠れるような懇願する声に、悟空は褒美を与えるように軽く口付けると、お待ちかねの部分へと顔を移動させる。
チチに言わせたくて仕方なかったが、悟空も早く吸い付きたくて堪らなかったそれに、思い切り吸い付いた。
 
「うぅん!」
 
ちゅっ、と音を立てるようにして吸い上げ、合間に舌を使って刺激してやる。
ころころと転がすように舐めてやると、ますますチチの甘い声が上がり身体を震わせた。
 
「ここも、もう我慢出来ねぇんだろ?」
「やぁん!」
 
ぐっ、と足を左右に大きく開かせるから、チチは忽ち羞恥に涙を浮かべた。
明るい所で身体を見られる事すら恥ずかしいと言うのに、普段隠され、自分さえ知らない部分を曝け出すなんて。
 
「ほら……ひくひくいってんぞ」
「あぁ……っ!」
 
乳首よりもさらに色濃い赤が差しているそれを、優しく刺激してやる。
ぷくりと主張しだし、硬さを増したそこにも無遠慮に吸い付いた。
 
「あぁん!!」
 
チチの身体がびくりと跳ねた。
強い刺激と、優しい温かい刺激と、緩急のついた愛撫に身体全てが甘い痺れに支配される。
れろ、と何度も上を往復していく舌に、最初の軽い絶頂が訪れた。
 
「〜〜〜〜っ!!!うぅん!!」
 
跳ねる身体、抜けていく力。
はらり、はらりと舞い落ちてくる葉が、まるでチチの身体を隠していくかのようだった。
 
そんな事させないとばかりに、達したばかりのチチの身体を抱きかかえ、うつ伏せにする。
快感でほんのり赤く色づいた肌に舌を這わせ、猫の尻尾を優しく撫でながら尻を舐め上げた。
 
「あっ!……だめぇ……」
「キモチいんだろ?」
 
毛の流れに沿って撫でたかと思うと、今度は逆らうように尻尾を撫でられる。
その繰り返しと、ねっとりと這わされる肌への舌の感触に、チチは力なくただ喘ぎ声を上げる事しか出来なかった。
 
肩で息をするチチの耳元に口を寄せ囁く。
 
「もっとキモチよくしてやるからな」
 
そう言って、チチの秘裂を何かが撫で上げた。
それは、悟空の尻尾。
ふさふさではない、少しだけ硬い毛の悟空の尻尾が、チチの秘裂、襞、突起を刺激していく。
 
「あ、あ、あ……っ!」
 
絶妙な刺激に、思わず尻を突き出す格好となる。
もっとして欲しいとねだるような姿に、悟空は口の端を上げた。
 
「キモチいいんだ?」
「んぅ!きもち、い……」
 
ぐっ、と秘裂に尻尾が進入し、内を刺激しだした。
自在に動かせる悟空の尻尾が、ゆっくりと出し入れされ始める。
 
「あんっ、あぁ……!」
 
チチの甘くあがる声に、悟空は我慢出来なくなった。
もっと刺激して、もっと啼かせようと思ったけれど。
内に入っている尻尾ですら自分のものなのに、そうじゃない自分のものを埋没したくて仕方ない。
 
「チチ……」
 
低く、しかし優しい声色を耳元で聞いたチチは、その後はもう快楽に落ちていくだけだった。
 
「はぁ!」
 
ずくっ、と挿入された悟空自身ははち切れんばかりになっており、きゅうきゅうにチチの内を刺激した。
それは尻尾なんかとは比べ物にならない刺激で、チチは必死に自分の手を握り刺激に耐える。
 
そして悟空も。
十分に潤っていたチチの内が自身に絡みつき、気を抜けば直ぐにでも持っていかれそうだった。
チチがよがり、声を上げる度きつく締め付けられ、蠢く何かに翻弄される。
 
「くっ……!」
 
顔を顰め、その刺激に耐える。
弱々しく揺れるチチの尻尾が目の前にあるのですら気にならない程、悟空はその行為に夢中になっていた。
 
「あ、あ……ごくぅ……さぁ……」
 
ゆっくり振り向き、何かを訴えるチチの瞳に、悟空は動きを弱める。
 
「どう、した……?」
 
もしかして痛かったのかと思ったのだが、どうやらそうではないらしい。
 
「おら、悟空さの……顔が見たいだ……」
 
まるで子供のように甘えるチチ。
悟空はチチの身体を反転させ、正常位で再び己を差し入れた。
 
「あぁ……っ!」
 
とろけるような声、顔。
チチの顔を見ていると、後背位の時とはまた違った快感が悟空を襲う。
彼女の全てを支配しているという征服欲とは別の、彼女の全てを手に入れているという幸福の快感が生まれるのだ。
 
悟空はゆっくりとチチを抱きかかえ、お湯につからせてやる。
抱っこの形をとり、一番間近でチチの表情を見つめた。
 
「悟空、さぁ……」
「チチ」
 
唇を貪り、身体をふるい落とす。
座位の形は、チチの奥をこれでもかと刺激する。
しかしそれはふたりの身体が密着している事により強い刺激ではなく、優しく、けれど確実に頂へと上り詰めさせるもの。
一緒に刺激される小さな快楽の実が、さらに快感を植え付けていく。
 
お湯を弾く音、ふたりの息が誰も居ない山に響く。
ふたりの周りをたゆたう色づいた葉が、離れては近付くを繰り返した。
 
「あ、あ、あんっ、んう……はぁ」
 
何より悟空の顔が一番近くにあり、チチは愛しくて堪らなかった。
きゅっ、と悟空の身体に抱きつき、心から安堵する。
温もり、求める熱、何もかもが幸せで、何故か泣きたくなった。
 
お湯の浮力も手伝い、チチ自身の身体が徐々に浮遊感に襲われていく。
ぞくぞくと昂ぶる何かが、今弾けようとしていた。
 
「あぁ!悟空さぁ!!おら、おらぁ……っ」
 
そして悟空も、今にも全てを吐き出しそうだった。
 
「チチ、いっていいぞ……!俺も、いく、から……っ」
 
強く下から突き上げると、チチが白い喉元を曝け出した。
それに吸い付きながら、悟空も縋りつくようにチチを抱きしめ、内に果てた。
 
 
 
 
 
 

 
 






日はすっかり暮れ、山の峰をオレンジ色に染めあげるその様は、葉をより燃え上がらせているようだった。
そんな素晴らしいであろう景色に似つかわしくない、ふたりの会話。
 
「悟空さの馬鹿」
 
悟空の腕に抱かれ、家へと向かっていたチチは毒吐いた。
 
「なんでだよ」
「だって……のぼせちまったでねぇか」
「それって、湯のせいか?」
「湯に決まってるべ!!」
 
ふいっ、とむくれ、悟空とは違う方に顔を背けた。
あの後も何度も求められ、高みに登らされ、気付いたらチチは意識を手離していた。
正直、温泉を楽しんでいるという場合ではなかったのだ。
 
「おら、折角楽しみにしてただに」
「なんだよ。楽しんだだろ?露天風呂でヤるなんて初めてだったんだし」
「そういう事じゃねぇだ!!」
 
ぴんっ、と怒りに立つ耳で、顔が見えなくてもどんな表情をしているかわかる。
これは宥めるのも一苦労だ。
 
「仕方ねぇだろ?目の前に裸のチチが居て、俺が我慢出来る訳ねぇだろ」 
「……」
「チチが可愛いからなんだぞ?」
「……っ」
 
ぴくっ、と猫の耳が反応した。
あともう一息。
 
「思わず食っちまいたくなるぐらいに」
「にゃあ!!」
 
猫の耳をぱくりと食んでやると、チチは素っ頓狂な声をあげながら勢いよく振り返った。
 
「何するだぁ!!」
「機嫌直せよ。な?」
 
いつだって結局、チチは悟空を許してしまう。
それは、悟空に求められるのは嫌ではないからだ。
悟空が大好きで、自分を愛しく想ってくれる事に、最大の幸せを感じているのだから。
 
しかし、そんな事悟空には言えやしない。
 
「キス、してくれたら許すだよ」
 
甘えねだる愛しい猫に、猿は優しくキスを落とした。

















初めてちゃんと猿猫のえちーシーン書きましたが楽しかったです
尻尾を使うのはお約束!
―――という訳で、例に漏れず尻尾を使ってみました



PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル