目の前に広がる景色は余りにも綺麗でとてもこの世のものとは思えなかった。
棘に守られるように咲き誇る花々は、まるでミーティアのようで。
近付きたいのに近付けない。
そんなもどかしさに苛まれながら。
その棘を全て取り払いたくなる自分がいた。
お題 009. 【棘】 (主姫)
「エイト、今日は違う所で休憩しない?」
それはいつもの昼下がり。
休憩の時はミーティアと一緒にお茶を飲むのが日課となっていて、それはミーティアの部屋が多かった。
突然の場所変更の言葉にエイトはただ目を丸くした。
「実はね、エイトに見てもらいたい場所があるの」
そう言ってミーティアははにかんだ。
いつだって純粋な笑顔を向けてくれるミーティアにどれだけの幸せをもらっているだろう。
それに比べ自分は。
いつだってその純粋な笑顔の先を見たいと願ってしまう。
自己嫌悪に陥りながらも、普段は何の素振りも見せずミーティアと接していた。
「私に見せたい場所って何処ですか?」
ミーティアに促されるまま、後を付いて行く。
肝心の内容は微笑むだけで核心を教えてはくれない。
城内でミーティアの部屋以外お茶が飲める所などあっただろうか・・・と頭を巡らせても全く検討がつかない。
そんなエイトを他所に、ミーティアはどんどん城内の奥へと進んでいく。
裏手の方にある出入り口まで来ると迷わず外へ出た。
お茶を飲む場所が外だとは思いもよらなかったし、ピクニックみたいなものか・・・。
そう思ったエイトの視線の先に見た事もない建物が目に入った。
「実は庭師さんに温室を作っていただいたの」
それは普通の温室よりも大きく、奥行きも大分あるように見えた。
ルームトラスまで完備された、かなり本格的なものだ。
いつの間にこんなものが城内の庭に・・・とエイトは目を丸くした。
ミーティアは嬉しそうに温室目掛けて小走りに走っていく。
そのはしゃぎように目を細めながら声をかけた。
「姫、そんなにはしゃぐと転びますよ」
くるりと振り返ったミーティアはそれは嬉しそうで。
満面の笑みを浮かべさらに声を弾ませた。
「だってエイトにずっと見せたかったのだもの!此処で一緒にお茶を飲みたいってずっと思っていたの」
はしゃぐように言うミーティアを微笑ましいと思う反面。
ミーティアが純粋であればあるほど、自分の心の中に渦巻いているものが罪のような気がした。
気付いてないのだろうか。
本当はどんな目でミーティアを見ているのか。
知って欲しい、知って欲しくない。
相反する想いがエイトを苦しめ、表情を曇らせた。
お茶を一緒に飲む度に、自分の理性をフル稼働させていて。
目の前に愛しいミーティアが微笑んでいるのに、何も思わない訳がない。
肌を重ねた事がない訳ではなかった。
けれど、ミーティアの身体を欲する気持ちは日々エスカレートしていって。
最早自分でどうすればいいかすら解らない所まできていた。
「どうぞ」
案内された温室は沢山の花々が咲き乱れ、その匂いに咽返りそうになる程。
日差しが差込み、色とりどりの花は競うようにキラキラと輝いていた。
「・・・スゴイですね・・・」
「ふふ、そうでしょう?庭師さんがミーティアの好きな花を沢山用意してくれたの」
そう答えるミーティアこそが、この温室に咲く花のように見えた。
光り輝き、美しい花々に負けるとも劣らないミーティアの存在が眩しすぎて。
如何に自分が場違いであるか、エイトには少し居心地の悪さを感じてしまった。
外から見えたルームトラスにはテーブルと椅子が備え付けられており、
エイト達が来る事を予め知らされていたらしくお茶の用意が出来ていた。
ミーティアはエイトを椅子へと座るように促し、自分も目の前に座った。
ミーティアが注いでくれた紅茶に口を付ける。
この穏やかな空間、誰も居ない温室の花々はまるで外界からふたりの姿を隠すように咲き乱れているようで。
エイトは何処か緊張してしまい、紅茶の味なんか解らなかった。
「この温室を作る際に庭師さんがどうせならとこうしてお茶を飲むスペースを作ってくださったの。
ミーティアとても気に入って、是非エイトと一緒に此処でお茶を飲みたいと思っていたの」
カップを手に持ちながら楽しそうに話すミーティアに、エイトは当たり障りなく相槌を返す。
最初から感じていた居心地の悪さは消える事無く、ずっと燻り続けていて。
それはエイトの心の中にずっと渦巻き、飲み込んでいくようだった。
「しかし本当に凄いです・・・知らない間にこんな物が出来ているなんて」
ミーティアの視線を避けるように、自然に温室を見渡す。
そんなエイトに気付かず、ミーティアは満足そうに言った。
「ずっとお花を沢山見れるようにしたいとは思っていたのだけれど、
こうして立派に作っていただけてミーティア本当に嬉しいの」
ホラ、あの辺りなんか凄いでしょう?
そう言ってミーティアが指をさした先には、見事な薔薇が咲き乱れていた。
綺麗に棚のように木々が組み立てられ、其処を這うように薔薇の棘が伸びていて、花のアーチが出来上がっている。
ミーティアもあれを見た時が一番嬉しかったの、と言った。
「折角だから近くで見てみない?」
誘われるまま、エイトは薔薇のアーチの真下まで足を運んだ。
近くで見るとさらにその迫力は増し、美しさが際立っている。
アーチを組み立てている木々に絡みついている薔薇の棘は、その美しさを守るように見え、
ふと、ミーティアとその姿を重ねてしまった。
ミーティアに棘がある訳ではないけれど。
その”純粋”というある意味エイトにとっての棘が、薔薇の棘とリンクしてしまった。
触れたいのに触れられない。
もどかしさに身体の奥底を浚われそうになるのを必死に堪え。
それでも尚、求めてやまない気持ちを解放するように。
エイトは徐に薔薇に手を伸ばした。
「・・・っ!」
一瞬にしてエイトの顔が歪み、薔薇から手を離した。
薔薇の棘が柔かい手を拒むように、突き刺さったのだ。
ツツッと一筋の血を流しながら、エイトはただ呆然とその行方を見詰めていた。
「エイト!大丈夫?!」
慌ててミーティアがエイトにかけよった。
心配かけないように、エイトは笑った。
上手く笑えていたかなんて解らなかったけれど。
「大丈夫です。ちょっと・・・棘が刺さってしまっただけですから・・・」
大した事などないと告げても、ミーティアは心配そうに覗き込む。
思ったより傷は深く、血はエイトの指を流れ落ちていく。
「舐めてれば治りますか・・・ら・・・」
エイトは一瞬何が起こっているか解らなかった。
そっとミーティアの手が自分の手を包んだかと思うと、血が流れている指に口付けたのだ。
咄嗟の事にどうしていいか解らず、なすがまま・・・。
一旦口を離したミーティアはエイトを見つめた。
「ミーティアが治してあげる」
そう言って再び指に口付けたのだ。
流れる血を舐め取るように舌を這わせて。
ミーティアの突然の行為に頭の中が真っ白になってしまった。
ミーティアの柔らかな手と、温かい舌が何とも言えず・・・。
エイトの理性は徐々に押さえが利かなくなっていった。
「ひ、姫・・・大丈夫ですから・・・」
もうこれ以上は。
必死に、且つ冷静にやめるように促してみても、ミーティアは意に介していないようだった。
「駄目よ。ちゃんとしないともしバイキンが入ったりなんかしたら大変でしょう?」
そう言う事ではない。
これ以上そんな優しく指を舐められたら我慢出来るものも出来やしない。
指を舐められる感覚は何処か、自分自身を愛撫されてる感覚に似ていて・・・。
頭の中にその情景が思い浮かんでしまい、必死に思考を振り払おうとしても。
咽返るような花の匂いと、ミーティア自身の甘い匂い・・・。
いつの間にかエイトの全身系は支配され、冷静な判断が出来なくなっていた。
目の前には愛しいミーティア。
この温室にはふたりきり。
この状況で自分を抑えるなど、今のエイトには出来そうになかった。
「エイト・・・?」
不意に舐めていた指を取り払われたミーティアは不安になった。
もしかしたらエイトにとっては迷惑だったのかもしれない。
よく考えもしないで行動してしまった事に、もし嫌がられていたら・・・。
戸惑いが頭を過ぎったけれど。
あっと言う間にその考えは吹き飛んだ。
奪うようにエイトが唇を重ねてきたのだ。
それは深く、ミーティアの口内を味わうようにエイトの舌が蠢いた。
合間にミーティアの苦しそうな息遣いが漏れていたけれど。
構わず口内を犯し続けた。
「・・・血の味がしますね・・・」
口を離すと目の前には顔を真っ赤にしたミーティア。
急な出来事に明らかに戸惑っているようにも見えた。
けれど。
最初に戸惑ったのは此方の方だと。
ミーティア自身が箍を外したのだと。
責任転嫁するように、エイトはミーティアの身体をかきいだいた。
ふわりと脳天を支配するような甘い匂いがさらにエイトをかき乱す。
温室に咲く、どの花にも負けないミーティア自身の匂いが、どんな花よりも惑わすのだ。
「姫の・・・せいですよ・・・?」
耳元で囁けば、ミーティアは何の事か解らず固まったまま。
意に介さずゆっくりと身体を横たえさせていく。
温室の芝生の上に横たえたミーティアは不安げに此方を見つめていた。
「・・・エイト・・・?」
逆光によってエイトの表情が読み取れないず、さらに不安にさらされる。
どうして今こういう状況になっているかは解らない。
ただ解っているのは、エイトは本気だと言う事だ。
徐々に近付いてくる。
瞳に映るのは切なげでいで、何かを求めるようなエイト・・・。
ミーティアは何故か抵抗出来なかった。
エイトの今迄見た事もない表情に息が止まりそうだった。
「ん・・・」
再び唇を重ねられた。
エイトの全てを伝えるような深いキス。
何もかも呑み込むように、思考さえ奪ってしまいそうなその口付けは、
ミーティアの舌を誘い絡めとる。
やがてミーティアの口の端からどちらのとも取れない唾液が流れ始めた。
「っはぁ」
口を離せば息苦しそうに息をした。
唾液をながしているミーティアがみだらに見えて。
行為は加速の一途を辿る。
「んんぅっ!」
何度も唇を重ねられ、余裕すら与えられない激しい行為に、
必死にエイトの腕にしがみ付くので精一杯だった。
情熱的で、息苦しさすら感じる口付けに戸惑いながら、
時折漏れる吐息に混じり、甘い声が漏れた。
「・・・姫・・・・」
名を呼ぶ声が遠くで聞こえるようで。
ゆっくり衣服に手をかけているエイトに抵抗すら出来ず、
喉はからからに渇いているようだった。
「エイト・・・誰かが来てしまったら・・・」
やっと口に出した言葉は、それでも手を止める事は出来なかった。
エイトは知っているのだ。
城の裏庭など滅多に人が来ない事を。
ミーティアがエイトと此処でお茶をする事は事前に知らされており、
皆が気を使い近寄らない状況でもあった。
「大丈夫です・・・この花達が隠してくれますよ」
抵抗したいのに出来ないのは何故だろう。
怖くないと言ったら嘘になる。
明らかにいつもと違うエイトに戸惑っているのに。
何処か切なげで寂しそうなエイトを拒むことは出来なかった。
咲き誇る花々に囲まれながら、少しずつその身体を曝していく。
明るい温室の中、身体を見られるのは羞恥心を煽られる。
エイトの顔を見ないようにきつく目を閉じ、顔を逸らした。
ツンと上を向いたピンクの突起と白い肌に、エイトは眩暈がした。
どんな花よりも美しく、芳香を漂わせているようで・・・。
先程の薔薇に触れたように、ゆっくりと手を伸ばせば。
柔かい感触がエイトの掌を支配した。
「ん・・・」
静かに上げる声。
目はまだ閉じられたまま。
赤く染まった頬で、恥ずかしいのが解る。
「姫の胸は柔らかいですね・・・」
触れていると我を忘れそうになる。
ほんの少しの罪悪感と、飲み込まれていく理性。
もっとその柔かさを確かめるように円を描くように下から上へと動かすと、面白いように形を変えた。
「や・・・ぁ・・・」
緩やかな丘陵の真ん頂点にあるモノに人差し指を置く、と途端にミーティアの体がピクリと反応した。
甘く漏れる声に誘われるように、はますますその部位への刺激を強くする。
刺激によって硬く上を向いたソレはとても美味しそうで。
エイトは迷う事無く、自分の顔を近付けていった。
「んんぅっ」
周りの花なんか目に入らない。
今は目の前の、自分だけの花に夢中になる。
きつく吸い上げて舐れば、花はますます甘い芳香を匂いたたせるのだ。
白い肌に赤い花を散らし、全身を汲まなく愛撫する。
舌を這わせ、甘さを堪能するように。
ミーティアは為される事にただ翻弄され、善がり、高く愛らしい声をあげた。
「エイ・・・ト・・・そこっ、やぁ・・・」
執拗な愛撫に悶えながら拒否の言葉を呟くミーティアに、エイトは聞こえない振りをする。
本当に嫌なら跳ね除ければいい。
強い力と声で。
そうすればいつだって何も出来ず動けなくなるのだから。
愛撫を止めないまま上目遣いでミーティアの表情を確認する。
息は乱れ目はますます潤みを増していて・・・。
ひとつひとつの動きに素直に反応する姿に、エイトの行為は一向に止まる気配はない。
優しく愛撫していた硬くなった突起を軽く甘噛みした。
すると小さい悲鳴に似た声を上げ体を仰け反らせる。
「ダメェ・・・んぅ・・・」
途切れ途切れにしか声が出せなくなっているミーティアを愛しいと想うのは。
何処か壊れているのだろうか?
こんな場所で身体を奪って。
花を手折るように味わいつくし。
それでももっと、もっとと欲望が湧いて溢れてくるのだ。
気持ちをどうする事も出来ず、欲求のままミーティアの身体に手を這わせていった。
「はっ・・・はぁ・・・」
あがっていく息に我慢出来ず、エイトはミーティアのスカート部分に手を滑り込ませる。
ピクンッと肩が跳ね、背中を仰け反らした。
ミーティアの秘裂は既に濡れており、なんなくエイトの指を侵入させた。
「んぁ・・・っあ・・・!」
水音が静かに響き、エイトの指を伝って内股を濡らしていく。
純粋を絵に描いたようなミーティアが、自分の手によって”女”へと変わっていく姿は、
エイトにとってこの上なく至福の時間だった。
穢れを知らないからこそ。
穢したいと思うのは罪なのだろうか。
求めても求めても、果てる事ない欲求はどうする事も出来ない。
たとえ嫌われたとしても。
この行為を止める事は最早無理だった。
それはまるで何かの魔法にかけられたようにエイトを支配し、ミーティアしか見えない。
今まで以上に仰け反る体。
それを上から確認し、親指を秘裂の上部の小さな突起にギュッと押し付けた。
容赦ない愛撫にミーティアの身体は引くつき、口からは涎を流す。
気付けばエイトは笑っていた。
おかしかった訳ではない。
嬉しかったのだ。
自分の手で快楽に堕ちて行くミーティアが愛しくて。
同じ人間なのだと、そう思えたから。
薔薇の棘のように纏う純粋を剥ぎ取り、何もかもを手に入れたような気がした。
「あっ!あぁ・・・っ・・・あぅん・・・ふ・・・!」
齎される快感に身を捩り、その反動で周りの花を手で散らしていく。
ミーティアの周りに落ちて行く花びらが綺麗で。
快楽に歪む表情のミーティアと対照的である筈なのに、やはり花は花なのか。
たとえ乱れ狂っていたとしても、失われないものなのだろうか。
途端にエイトは嫌悪感に支配された。
ミーティアにこんな事をしている自分は一体何なのだろう。
自分の欲求を求めるように行為を進め。
ただ奪うように身体を貪ったのだ。
ただその先を見たかったのだ。
手に入れて、全て自分のものなのだと実感したかった。
その想いはこうして身体を繋ぐようになってから、日ごとに増していた。
しかしそれはただのエゴではないだろうか。
心の中で自問自答していた。
ミーティアは沢山のものを与えてくれる。
それでは自分は・・・?
そう考えてしまった時。
エイトは息苦しさに襲われるのだ。
自分の中で感じたミーティアとの見えない壁を何とかしたい。
だからこそ自らの手で滅茶苦茶にしたくなったのだ。
棘を感じたのはミーティアにではない。
いつの間にかミーティアを思うあまり、コントロールが利かなくなったエイト自身の心に棘が出来ていたのだ。
それに気付いてしまったから。
エイトは行為を止めた。
何も出来ず、動けなくて・・・。
声すら出せない。
「エイ・・・ト・・・?」
異変に気付いたミーティアが名を呼ぶ。
ポタリ、と頬を掠める一滴。
気付けばエイトは涙を流していた。
「あ・・・・」
声が掠れる。
何が起こっているのか自分自身ですら理解出来ず、途方に暮れる。
ただ、ミーティアも自分と同じ気持ちで居て欲しかったのだ。
願うように幸せに出来る何かをを与えていると。
それと同時に、心とは裏腹な自分の行為が許せなかった。
「エイ・・・ト・・・」
ゆっくりとミーティアから手が伸ばされる。
その腕を求めるように、エイトは身体を預けた。
「大丈夫・・・大丈夫よ・・・」
優しくミーティアの言葉が耳に響く。
何処までも優しいミーティアが嬉しくて、切なかった。
「ミーティア、エイトが大好きよ。だから・・・大丈夫・・・」
そう言わせてしまったのは自分で。
いつだって何も出来ない事が歯痒くて仕方がなかった。
人を愛するという事は、どうしてこんなにも胸を苦しくさせるのだろう。
「姫・・・私は・・・」
搾り出すように懸命に言葉を紡ぐ。
何もかもを吐き出してしまわなければ、胸の棘はなくなる事はない。
「いつだって姫と・・・こうしたいと望んでいるのです・・・」
それが罪だと。
いけない事なのかもしれないといつからか思い始めていた。
ミーティアの笑顔が眩しすぎて。
あまりに純粋すぎて・・・。
「私は、姫に何も与える事が出来ません。ただ・・・こうして求めるばかりで・・・」
自分の中のものを全て吐き出すように、伝える。
「ミーティアは」
そう言って、一旦切る。
一呼吸置くように、エイトを抱きしめている腕に力が篭った。
「エイトが求めてくれるのが・・・嬉しいの・・・」
エイトは目を見開いた。
ミーティアも同じ気持ちで居てくれたのだろうか。
だが、しかし。
まだ何処か半信半疑であった。
「恥ずかしいけれど・・・エイトがミーティアを・・・抱きたい、と思ってくれるのだから・・・
エイトがミーティアを好きって事なのよね?」
問い掛けには頷かず、エイトはミーティアの言葉を聞いていた。
ミーティアの言わんとしている事を受け止めようと、必死に。
「それがミーティアにとって・・・幸せだと思える瞬間なの」
だから、エイトとこうしたいと思うの。
ミーティアはそう言った。
エイトの心の中にあった痞えは徐々に消えて行き、温かいものが流れ込んでくる。
これからも、そうしたいと望んでもいいのだろうか。
「エイトはそんなミーティアをはしたないと思う?・・・嫌いになってしまう?」
その言葉にエイトは途端に顔を上げた。
かち合ったミーティアの瞳は揺らぎ、不安な色を滲ませていた。
ミーティアもそうだったのだ。
エイトと同じく、そう思う事がもしかしたらエイトに嫌われてしまうのではないか。
不安を抱いていたのはエイトだけではなかった。
「ミーティアだってエイトに何も与えてなんかいないわ・・・。ミーティアが笑っていられるのは・・・
こうしてエイトが毎日城の警備をしてくれて、ミーティアを想ってくれているから・・・」
心が柔かいもので掴まれたように痛んだ。
それは切なくて苦しくて、でも温かくて心地良い・・・。
どう表現していいか解らないけれど、こんな気持ちになるのはミーティアの言葉だからだ。
お互いがお互いを想うからこそ戸惑ってしまうけれど。
実は酷く単純で悩む必要などないのだ。
相手を想えば想うほど、その想いに応えられているか不安になったりもしてしまうのだ。
エイトがミーティアと肌を重ねたいと思うのも。
ミーティアがエイトに抱かれたいと思うのも。
愛し合っているふたりなら自然な事・・・。
「嫌いになるなど、ある筈がありません・・・」
ミーティアを見つめながら言うと、表情は忽ち和らぎ微笑んだ。
その表情が綺麗で、愛しくて。
エイトはゆっくりとミーティアに翳を落とした。
唇から伝わるお互いの熱に魘され、望むように求めれば。
再び衝動がかきたてられた。
「姫・・・」
愛しむように名を呼べば、見つめる瞳とぶつかる。
熱を解放するように、エイトはミーティアの内に進入した。
「く・・・っ・・・はっ」
一気に最奥まで押し入れた自分自身を確認しそこで一旦動きを止める。
まるでひとつに溶け合うような感覚に、何もかも忘れていくようだった。
「エイト・・・」
切なげに名を呟くミーティアと唇を重ねた。
髪を撫でながらひとつになっている実感を分け合う。
温かく包み込むミーティアに、何処までも溺れていきそうで・・・。
でもそれは杞憂だ。
もう、何も恐れるものはない。
溺れてもいい、我を忘れてもいい。
この想いは間違いではないのだから
「あぁっ、んぅ・・・!」
快楽に顔を歪めるミーティアを見ながら攻め立てる。
背中を抱きしめる腕を感じれば、よりリアルに感じられた。
「大丈夫ですか・・・?」
行為の後、ミーティアの頬に触れた。
白く透き通るような頬は、薔薇色に染まっている。
ミーティアは静かに頷くと、柔かく笑った。
「エイト・・・綺麗・・・」
ミーティアの言葉に戸惑いながら身体を揺らすとひらりと舞い落ちる花弁。
何時の間にか行為の間に降り落ちていたらしい。
気付けばミーティアの周りも花弁が落ちていた。
それは何処か幻想的で。
此処に来た時よりも、この温室に咲く花々が美しく見えた。
棘はもうない。
花弁に埋もれながら、エイトは優しくミーティアに口付けた。
最初は攻めエイトを書こうとしてた筈なのに
気付けば病んでるエイト・・・
シリアスチックになってしまいました